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  ダイオキシンマグロ事件? 12.05.2004



 水銀マグロ事件というのがあったのは、さて、何年前なのだろうか。ということで、少々調べたら昭和48年のことのようだ。このとき、マグロの売り上げは激減した。

 それなら、ダイオキシンマグロ事件が発生するかどうか、これが本記事の主題である。

 きっかけは、水産庁の調査による魚介のなかのダイオキシン濃度の結果。発表されたのは、平成16年9月29日のことだから、すでに、2ヶ月余を経過している。もっとも、平成11年から続いている調査なのだが。

 飛行機の中で書いた記事の、ヘルシンキからの暫定的なアップ。


C先生:最近、食品安全委員会というものがあって、食品の安全性情報はかなり充実したものになっている。一方、一般社会の食品に対する信頼度はかなり悪い。世界中でもっとも安全な食品が提供されているのが日本という国だと思うが、そんな認識は無いようだ。

A君:企業が不正をしなければ、もう少々信頼性を失わないで済んだのだと思いますが。

B君:安全性と安心ということは、全く無関係。むしろ、安全性が向上すればするほど、ささいなことで安心感が失われる。健康になればなるほど、些細な体調不良でも健康不安に陥るのと同じこと。

C先生:健康にしても、現在の日本のような状況は、世界でもっとも健康な国民であることは統計的には事実なのだ。平均余命ではなく、健康寿命というものがあって、その統計でも明らか。その一方で、世界でもっとも健康不安を抱えている国民であることも事実だろう。

A君:今回の話題は、久々にダイオキシンですね。

B君:世の中、幸いにして、ダイオキシン猛毒神話から徐々に開放されようとしている。そんな状況で、久々のダイオキシン話題。

C先生:このダイオキシンマグロがどのように発表され、どのように報道が行われ、そして、どのように社会が反応するか、いくつかの点からみて、興味がある。

A君:事実関係を整理します。毎年、水産庁も、というのは環境省もやっているからですが、魚介類中のダイオキシンの分析をやっている。
http://www.jfa.maff.go.jp/release/16.0929.02.htm
 それによれば、全体的に見ると、魚介類中のダイオキシン濃度は低下傾向にあるが、様々な魚種について、データはバラバラ。pgTEQが2を超している魚と関連データをその産地と共にをリストアップすると、次のようになります。


平成11年から14年のデータもあって、そのうち、2を超しているのは、次のようなものです。


B君:もっとも高い濃度なのが、山陰沖で取れた天然のベニズワイガニ。まあ、このような高価な食材は、まあ余り問題にならない。こればかり食べる人は居ないから。

A君:もっとも一般的でそして、濃度が高いのが、マグロということになりますね。特に、クロマグロ。地中海のものも北大西洋のものも大体10pg/g程度の濃度のようですね。

C先生:さて、これが余り問題にもならず、これまで、騒ぎにもなってはいない。問題になるのであれば、今なら、食品安全委員会あたりから適切な情報が出る。そのうち何か情報が出る可能性も皆無ではないが、どのぐらい重大なものなのか、検討してみようか。

A君:ダイオキシンの場合、現在のTDIすなわち、日常的に摂取しても影響がないと考えられている量が4pg/kg/日。まあ、体重50kgの人を考えますか。となると、200pg/日。マグロの平均濃度が10pg/gだったとすると、20gしか食べられない。

B君:確かに、20gは余りにも少ない数値のようには見える。

C先生;先日、化学物質円卓会議なる会議があって、そこで、ダオキシン・環境ホルモン国民連絡会議の事務局長の中下さんが、TDIは、そもそも4pg/kg/日では大きすぎる。2pg/kg/日にすべきだ、と主張された。さらに、最近の魚はダイオキシンが多いので、魚類の基準を定め、0.9pg/gにすべきだ、との主張もあった。

A君:もしそうなると、クロマグロは、1日に10gしか食べられない。これは大変だ。また、かなり多くの魚が基準外になってしまう。これは、漁業者にとっては、とんでもないことだろう。

B君:しかし、それで、市民社会が「大変だ」、ということになるのか。

C先生;そもそもダイオキシンのTDIがどのようにして決まったのか、その根拠を述べないと。

B君:そんなものは、1999年ともう大分前になるが、本HPで取り扱っている。
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/DxnHalf.htm
 もっとも重要なことが、ダイオキシンという物質の半減期がヒトの場合には、非常に長く、7.5年程度であること。

A君:このように半減期が非常に長い物質を長期間にわたって同量ずつ摂取すると、ある程度は代謝されながらも、体内に徐々にたまり、そのうち、一定値になる。

B君:体内蓄積量で問題にしたのは、86ng/kg=86000pg/kgといった非常に大きな値なので、ある日、100pg/kg程度の摂取をしたところで、余り体内濃度には寄与しない。勿論、増えることは増えるが。

A君:こんな特殊な物質でありながら、TDIという日々の摂取量を規制していることにどのような意味があるのでしょうか。

C先生:多分無い。これまでの習慣でそうなっているに過ぎないだろう。個人的には、1ヶ月での摂取量あたりを規制するのが良いのではないか、と思っている次第。

A君:1ヶ月ですか。例えば、4pg/kg/日を月に直せば、120pg/kg/月。もしも、体重が50kgだと仮定すれば、6000pg/月。

B君:10pg/gのマグロだと、600gということになる。まあ、さすがに600gものマグロを1ヶ月に食べることは無いのでは。もっとも、他の食品からダイオキシンを一切摂取しないという仮定は非現実的だから、多少割り引いて、500g程度と考えるべきだろうが。

C先生:鉄火丼とかネギトロ丼などを毎日食べる人も居ないとは限らないが、まあ、それは変人だろう。

A君:現実的には、1ヶ月間で食べるマグロとか、アナゴとか、ドジョウとかの量の総量を大体把握するということが現実的なことなのでは。

B君:まあ、結論としては、マグロをかなり大量に食べたな、と思ったら、しばらく食べなければ良いだけ。

A君:魚類の基準値を0.9pg/gにするといった、ダイオキシン・環境ホルモン国民連絡会議の主張は、やはりダイオキシンの本質を無視して、騒ぎを起こすことを狙っているとしか思えないですね。

B君:漁業者をいじめて何になるのだろうか。妊婦は多少注意をすべきなのは分かるが、それなら、若い女性の喫煙をもっと注意するのが筋だ。タバコだって、立派なダイオキシン源。

C先生:そういえば、国民連絡会議の発表資料に、ダイオキシンの心配をしないで野菜を安心して食べるには、よく洗うこと、さらに、生よりは煮て食べること、という注意があったが、これも全く論外。現在のように、ダイオキシンは魚から大部分、そして多少、肉、乳製品という状態だと、野菜に気を配ることは、全く意味が無い。所沢ダイオキシン時代の、灰まみれの野菜は良く洗って食べましょう、という話がこんなところにまだ生きている。農水省のお役人にやんわりと皮肉を言われていた。

A君:そんなことを言ったら、まるでAERAの記事並みの注意になってしまう。立川先生のようなダイオキシンの専門家が居るのだけど、恐らく、少数の活動家だけで、結論を出すのでしょうね。

B君:恐らく、リスクの専門家が居ない。毒性学の専門家も居ない。

C先生:ダイオキシンの問題は、発がん性を問題にしているのは、米国が中心で、他の国は、通常摂取するダイオキシンで発がんが問題であるとの認識を持っているとは思えない。むしろ、母体のダイオキシン濃度が高いと、胎児、特に発生時に問題を起こす可能性があるという、環境ホルモン的な考え方が主流だ。また、母乳を与えることによって、なんらかの悪影響を及ぼすという議論もあった。

A君:母乳についてだが、現在の解釈では、母乳を与えることによるダイオキシン摂取は、確かに一時的に赤ちゃんの体内濃度を上げるのだけれど、赤ちゃんというものは、体重が増える速度も速いので、それほど重大な事態にはならない。それよりも、母乳を飲むことのメリットの方が大きいという解釈だと思いますが。

B君:それで良いと思う。先ほど紹介した、我々のダイオキシンのHP記事にもその点を説明してある。記事の最後の方になるが。このように、母乳から、現在のTDIの8倍程度のダイオキシンを摂取したとしても、それほど悪影響は出ないと予測される。

C先生:となると、やはり胎児の問題が残る。特に、発生時の問題はなんとも言えないのが難しいところ。ダイオキシンの影響としては、環境ホルモン的には、男性ホルモンの効果を打ち消す方向のようだから、女性的になる可能性。もう一つ、知能の発達が遅れると指摘されているのが、台湾の油症事件の結果。ただ、この台湾の油症は、PCB汚染であって、ダオキシン汚染と全く同じとも言いがたいので、実際のところは良く分からない。もしも知能の発達が本当に遅れるのであれば、毎回言っていることだが、日本でも1970年ごろの母体はかなりダイオキシンを蓄積していたので、その頃生まれた赤ちゃんが問題であるはず。すなわち、現在35歳前後の人たちは、平均的に知能指数が低いことになる。調査をしてみたいものだ。

A君:本当にダイオキシンが問題かどうか、歴史的な解析を行えばよいのだから、簡単に分かりそうなもの。

B君:いやいや。そんな調査は簡単ではない。むしろ、最近、一般市民がダイオキシンについて余り騒がなくなったのは、やはり、ダイオキシンの悪影響が、その35歳程度の年代に見えていないと考えているからではないだろうか。実感的に、余り問題にはならないと思っているのではないだろうか。

A君:知能指数が下がると、作家のような職業が成立しなくなると言われている。まあ、そんな傾向が見えているとも思えず。

C先生:そろそろ、最終結論にしよう。ダイオキシンマグロの話は、我々の結論では、特に問題だとも思えないのだが、果たして、もしもこの問題をメディアが取り上げたときに、市民は本当に冷静な対応をするだろうか。それとも、マグロの買い控えが起きるだろうか。

A君:買い控えが起きて、安くなったら、しっかりクロマグロが食べられてうれしい。特に、高級なトロや中トロは、脂身と親和性が高いダイオキシンだけに濃度も高いと想像されますから、オオトロが安くなるのでは。

C先生:個人的には東京湾のアナゴが食べられてうれしい。

B君:それなら、ベニズワイガニを狙うか。(追加:実は、ある方からのご指摘によって、ベニズワイガニは高級食材ではないことが判明。B君には内緒にしてあるが。。。。。)

C先生:どうも、この連中は、今程度の摂取なら、ダイオキシンなどを全く問題にしていないようだ。ということは、適切な情報提供があれば、あるいは、すでにあるのかもしれないが、ダイオキシンマグロ事件は起きないということに結論しよう。