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   オフィス・家庭の省エネ   07.09.2016
         その1:まずはヒートポンプの理解から




 前回の記事で、「自治体の削減計画」を取り上げ、商業施設や事務所、あるいは、家庭部門では、2030年までに40%にも及ぶ排出削減が求められていることを述べました。

 ただし、電力のCO排出原単位が2013年実績で0.57kgCO/kWhでしたが、2030年には、電力会社が0.370kWhにすることを約束していますので、もしも、電力だけを使っているのであれば、原単位の改善のみで35%程度が実現できるので、残りの5%削減を目標として取り組めば良いということを述べました。勿論、ガスを使っている場合、灯油を使っている場合、さらには、自家用車を持っている場合などには、そう簡単なことではないのです。

 ということで、それを加味すれば、やはり後述する環境省の数値である、14%ぐらいの削減が必須ということになりそうです。

 となると、やはり真面目に取り組むにはどういう発想をすべきか、を考えてみたいと思います。特に、投資をするには、やはりかなり慎重に考えるべきだと思いますので。

 ここではオフィスと家庭を取り上げますが、オフィスといっても、ビルの改造を伴わないケース、例えば、賃貸のオフィスビルに事務所を構えているような場合を想定しています。



C先生:世の中には、省エネ診断ということをやっている自治体・団体などがある。すでに確立しているものと思われるそれらの情報を基に、どのような考え方が基本なのか、それを考えよう。

A君:ちょっとその前に、すでに前文で記述されたことなのですが、前回の補足をしたいのです。実は、Yさんからメールを貰いました。


 環境省の「地球温暖化対策のための国民運動の強化について」の「(参考3)家庭部門で約4割削減のイメージ」では、以下の表記になっております。

https://www.env.go.jp/guide/info/eco-first/event_280511b/280511b_mat01.pdf

○電力のCO2排出係数の改善効果(2013年 0.57 kgCO2/kWh → 2030年 0.37 kgCO2/kWh):約26%
○省エネによる必要削減量:約14%(=40%−26%)


B君:まずは、排出係数が0.57kgCO2/kWh(2013年)が0.37kgCO2/kWh(2030年):約26%というこの数値は、例えば、ある家庭で毎日10kWhを使っていたとして、電力使用によって、2013年には、5.7kgのCO2を出していた。それが、2030年には、3.7kgのCO2になる。となると、削減率は、(5.7-3.7)/5.7*100となるので、35.1%となる。どうみても、約26%ではない。

A君:それはそうで、ここでの26%という数値は、家庭部門では、家庭で使うあらゆる種類のエネルギーを利用した場合の数値と思われます。要するに、石油、ガスを含みます。ガソリンは入っていないです。通常、運輸部門は別に集計されていますので。
 例えば、2011年データですが、
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/actual/
によれば、家庭のエネルギー源は電気が50.6%でしかありません。

B君:2050年の家庭はほぼ電気100%。加えて大都市では、都市ガスが水素ガスになっているということが条件になる。排出可能な20%分程度の二酸化炭素の排出権は、鉄鋼とセメント、他の高温を必要とする工業などで買われているという想定をすればだけど。

A君:2030年は、全くそこまでは行きません。前回記事に引用した図1に戻って見ていただきたいのですが、日本全体としては、すなわち、産業や交通などすべてのエネルギーのうち、電力が28%、残りの72%が熱利用・ガソリン・都市ガスが分担しているのです。家庭のエネルギーでも、多少電気の割合が増えているぐらいでしょう。

B君:となると、家庭でも原単位の減少による削減率は、環境省の予測のように、26%程度までで、やはり、14%分ぐらいは、省エネで取り組まないと達成が難しいことになる。

A君:そうですね。電化率を高めるというのが省エネ理論上は有効なのですが、ただ、現在の日本の状況では、供給側の限界があって、それは、原発が動いていないこと。再生可能エネルギーを大量導入はまだ高価であること。そのため、もしも電化率を無理に高めると、石炭発電が導入されて、電気の排出係数が高くなってしまいます。

B君:まあ、そういうこと。石炭をなぜ導入できないか、ということに関連させて、この排出係数という言葉ぐらいは、一般社会にもっと浸透しなければならない言葉は数々ある内でも、その中でもトップに位置するのかもしれない言葉だ。

A君:その通り。そこで、問題点その1、省エネの教室などでは、どのような教科書が使われているのでしょうね。

B君:家庭向けの教科書ではないけれど、家庭の省エネエクスパート検定というものの出題範囲が見つかった。
https://shouene-residential-expert.jp/shutudai_h28.pdf

A君:電力の排出係数を真正面から取り上げている項目が無いですね。

B君:「省エネ=エネルギーのコスト削減」にしかなっていないのかもしれない。

A君:まずは、このあたりを変えることが国民運動の最初にやるべきことなのではないですか。もっとも難しいことではあるですけれど。

B君:それはそれとして、これまでの省エネの手引きというと、何をやるべき、という記述が多いのだけど、今後のCO排出削減を目的とするとき、やっては行けないこと、というリストがあって、そこからまず入る形式にするのが良いと思うのだけれど。

A君:それも、そうですね。なぜダメかという理解が極めて重要なのかもしれない。しかし、この理解は相当難しい。

B君:今回、この相当難しいというところをどうやって説明すべきか、ということにチャレンジするのも良いかもしれない。

A君:やってはダメリストの案の最上位に入ると思われること。
その1:電気をヒーターで直接熱にする行為は、温度が低い場合には不可。特に、使用時間が長い用途では特にモッタイナイ。

B君:それは良い指摘かもしれない。さて、どうやって説明するか。

A君:もっともレベルの低い説明。
 「熱の価値は、実は、温度が決めている。高温の熱ほど、また、高温になればなるほど、価値は高い。それを理解するには、熱湯を使ってお茶を入れたが、放置すると、すぐ温度が下がってしまう。逆に言えば、温度を高くするのは、結構大変で、当然、温度が高ければ高いほど、ますます大変になる」。

B君:ということは、その1の記述では不十分で、ヒトが暖かいと感じる程度の温度を得るのに、電気をそのまま熱に変える方法、すなわち、ニクロム線を使った暖房用ヒータは、モッタイナイ

A君:ダメリストその1完成ですね。部屋を暖かくするために、すなわち、「暖房にニクロム線を使ったヒータを使うな」。その理由は、暖房程度の低い温度をヒータで作るのは最悪だから。

B君:これは冬の話だな。もう夏なのに、電気ヒータというものは、季節外れの話題だ。

A君:まあ、それなら、電気ヒータをもっと高温を得る目的で使うなら、まあ仕方ないということを説明すれば、若干季節と無関係になれますが。

B君:家庭で電気を加熱の用途に使う製品としては、トースター、電気ケトル、アイロン、C先生のところにあるワッフルメーカー。

A君:これらは、特にアイロンのように温度制御をかなり正確にやる必要がある機器では、妥当性があります。

B君:トースターは、本当はガスの方が美味しいように思う。電気ケトルはやかんで良い。ワッフルメーカーもプロは恐らくガスでやる。

A君:まあまあ。もう一度、釈明ですが、この時期に取り上げるのは、冷房用エアコンの話もあるからで、今日話す暖房の話は、すぐに忘れてもらって、冬になったらまた繰り返すことにします。ということで、ダメリストのNo.1からやはり行きましょうよ。

B君:仕方ない。具体的には、ダメリストのNo.1は、デロンギなどのオイルヒーター、そして、ホットカーペット。こたつは、暖めている範囲が狭いので、まあ、許容可能かも。

A君:デロンギのオイルヒータは安全だし、風が来ないので快適であることに間違いはないのだけれど、暖房も風が来ないような工夫をしてエアコンで、快適さを確保すべきです。

B君:どのぐらいCO排出量が違ってくるのか。デロンギのオイルヒーターだと、1200Wぐらいだから、8時間付ければ、もしも断熱の悪い部屋だと、ほとんどONになりっぱなしなので、一晩で、9600Wh≒10kWhの消費電力。250円/一晩ぐらい。

A君:消費電力は、出力Wと時間hの掛け算で、単位はWh。それに、1000倍を表すk(キロ)が付く場合もある。

B君:これをエアコンでやれば、暖房能力によって多少違うものの、消費電力は250Wぐらいでできるのでは。オイルヒーターの4〜5倍の効率だということになる。電気代は、1/4〜1/5で済むでしょう。

A君:まずカタログの性能仕様を見て貰いましょうか。



図1: あるエアコンの性能を示す表

A君:カタログにAPFという数値が出ているのですが、この例だと5.8です。この意味は、エアコンの消費電力は、外気温と室内設定温度とによって違うので、次のように条件が記述されています。
 「東京地区における木造住宅の南向きの洋室で、冷房では6月2日から9月21日、暖房では10月28日から4月14日の期間中、6時から24時の18時間に、外気温度が24℃以上の時に冷房、16℃以下の時に暖房を使用するというものです。各社メーカーでは、この条件下でエアコンを使用した場合、1年間でどれだけ電力を消費したかを「期間消費電力量」として算出。エアコンが1年間で使用するエネルギーをこの期間消費電力量で割って、APF値が導き出されることになります。
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word/2008/06/11/2417.html

B君:APFはAnnual Performance Factorの略語で、消費電力の何倍の熱というエネルギーをやりとりできるかをざっと示している数値だということだ。デロンギに代表されるオイルヒーターでは、APFは常に1であること意味するのだけれど、それが5.4といった値になっている。簡単に言えば、ヒートポンプなら1年通して使えば、消費電力の5.8倍の熱をハンドリングできるということを意味している。

A君:ヒートポンプというと、なにやら難し気に聞こえるのですが、冷蔵庫だってヒートポンプです。冷蔵庫内部の熱を外に運び出して冷やしているので。

B君:エコキュートという温水器があるけれど、これも室内の温度をヒートポンプで高温にして、それでお湯を作る装置だ。ヒートポンプは、条件が良ければ、単なるヒーターよりも効率は数倍良いものだ。

A君:しかし、問題はあって、それは、熱を移動させるときの低温と高温の温度差によって、効率が変わること。夏であれば、室内の熱を、室内より温度の高い外気に捨てるためにエネルギーが必要ということなので、外気温が高ければ高いほど、高いところに物を運ぶのと同じイメージで、多くのエネルギーを食います。

B君:冬は、これとは逆に、外気から熱を奪って、それを使って室内に熱を移動するのだけれど、外気温が0℃ぐらいまでならなんとかなるけれど、マイナス10℃となったらお手上げ状態になって、APFが1を切って単なるヒーターに負ける状況になりかねない。

A君:だから、北海道では、やはり灯油などを暖房に使う場合が普通なのですね。しかし、将来、化石燃料が燃やせないという状況になれば、北海道の暖房は、バイオマス(薪ストーブ)か、地中熱を利用したエアコンになるのではないですか。

B君:地中熱とは、地下水は1年間を通して、10℃とか15℃とかの温度を保っているので、これを熱源にして、ヒートポンプを動かそうということだ。

A君:結論は、北海道のような気候を除けば、エアコンで暖房もやるべし。

B君:しかし、真冬になるとエアコンだけでは、なんとなく冷たいという感じがしますよね。そこで、ホットカーペットなどを使いたくなる。これも熱なだけに、本来であれば、電気用品としては無駄が多いもの。

A君:確かに、ホットカーペットがあるとかなり快適感が上がるので、使うなとは言いにくい。

B君:ホットカーペットは、できるだけ小さいものを選択する。あるいは、温める範囲を選択できるものにする。

A君:そして、さらに重要なことは、ホットカーペットの下に断熱材を入れる。そうしないと、床や畳を暖めてしまう。この断熱材については、色々商品化されているようです。

C先生:大体、終わった。本日のまとめとして、省エネの観点から最悪の使い方が、電気を直接熱にするヒーターであることはまず間違いない、という結論で良いと思うが、その理由を別のロジックで説明して終わろう。

A君:こんな説明はいかがですか。そもそも電気は、エネルギーの一つの形態ではあるのですが、人類史上の発電機の発明は、実は、ハンガリー人のイェドリク・アーニョシュが1827年に実験を開始し、発電機の試作機を1852〜54年に完成したとのこと。当時の科学技術の数10年先を走っていたとのこと。

B君:有名なのは、ファラデーで、1832年にファラデーの円盤を作った。銅の円盤を磁石の間で回転させて、微弱な電位差ができるものだったが、発電機とはいえなかった。

A君:産業用に用いることができるような原理の発明は、1832年にピクシーが2つのコイルと永久磁石を用い、磁石を人力で回転させることで電気を得る装置を作ったけど、発電量から言っても、とても発電機とは言えなかった。

B君:しかも、なんとかして人力以外で回転させないと、発電機にはならない。化石燃料から得た熱でどうやって回転を実現するか。最初は、蒸気機関で、ワットが1769年に往復運動から回転運動への変換を実現した。

A君:これを組み合わせれば、一応発電機はできます。ここで何が重要かと言えば、電気を起こすには、熱エネルギーだけでは不可能で、かなり複雑な装置が必要だということ。こんなにも大変なことをして作った電気を再び熱に、特に、温度の低い熱に戻すのは、効率が非常に悪いので馬鹿げている。石油ストーブのように、直接化石燃料を燃やして熱として使った方が良い場合が多い、ということです。それを解消することができた設備がヒートポンプ。これは、直接熱を使うよりも高い効率が得られる設備です。ヒートポンプをどううまく使うか。それが家庭の省エネの最大の秘訣と言えるでしょう。

C先生:まあ、本日は、ここまで来て分かったが、実は、ヒートポンプというものが何か、その重要性とは何かなどを説明するのが、本当の目的だったということになりそうだ。
 冷房もヒートポンプなのだけど、一般家庭の場合には、冷房より暖房の方がエネルギー消費量が多い。それは、温度差で決まることだ。冷房だと室内28℃、外気35℃だとして温度差が7度。ところが、暖房だと、室内20℃として、外気は東京でも0度になるときもある。となると温度差は20℃にもなる。ポンプだけに、温度差が組み上げる高さに相当するので、その差が大きいと、その分、エネルギーが大量に必要になるのだ。夏の冷房は、比較的エネルギー消費量は少ないのだけれど、逆に、冬の暖房の方が少ないと思っている人も多いようだ。