________________

 東京都の排出量取引開始迫る      03.28.2010
     



 国の地球温暖化対策基本法が閣議決定されたのが3月12日。今国会で成立する見込み。

 その概要は、2020年の中期目標が25%削減(条件付き)、2050年の長期目標が80%削減、再生可能エネルギーの供給量を全供給量の10%にする。

 そのための基本施策として、(1)国内排出量取引制度の創設に向けた成案を1年以内、(2)地球温暖化対策税の実施に向けた検討、(3)再生可能エネルギーを電力会社が一定価格で買い取る全量固定買入制度、(4)原子力にかかる施策の推進、である。

 排出量取引、あるいは、排出権取引は、様々な方式がある。どの方式も欠点がある。しかも、本質的に、排出量削減に掛かる費用負担を削減することが目的であって、強制的な削減によるインパクトを緩和する方策である。

 すなわち、妙なシステムを導入すれば、排出量の削減は進まなくなる。

 国内排出量取引制度のさきがけとして、東京都版が、4月1日から開始する。この仕組みは、かなり特殊な形式ではあるが、色々と可能性がある排出量取引制度の中では、もっとも問題点が少ない方式ではないだろうか。



排出量取引嫌い

C先生:このHPは、「排出量取引が嫌い」である。

A君:そう言ったって、排出量取引には様々な形式があって、そのすべてが駄目という訳では無いですよね。しかし、欠点の無い方法は無い。

B君:嫌いだという最大の理由は、様々な方式のうち、京都議定書の附属書1に書かれている国、すなわち、排出量の削減の義務量を負っている国と国との取引はどう考えても、おかしい。

C先生:その取引を、しばしばホットエアと呼ぶ。ホットエアとは直訳すれば、熱い空気だが、その裏には、「くだらない話、ナンセンス、大言壮語、空手形」などの意味がある。

A君:環境情報センターのHPが極めて直接的な記述をしていますね。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=3257

B君:その記述の通りで、旧ソ連圏などの国で、経済活動が低迷している理由で、二酸化炭素の排出量が減っている国から、排出権を買う行為は、地球上から二酸化炭素排出量を減らしたことにはならない。なぜなら、それらの国で、なんら削減の努力がなされた訳では無いから。

A君:ここに異論がある場合もある。とにかく減った国から買えば、減ったことになるのではないか。しかし、我々は、そうは考えない。努力して減らした国から買うのでなければ、「怠惰を高く評価すること」と変わりはない。

B君:実際、日本は、NEDO、環境省に排出量取引の予算が計上されていて、これまでにも、ウクライナやチェコから排出権を購入している。
 チェコに関しては、4000万トンを500億円で購入したようだ。
http://jp.reuters.com/article/jpEnvtNews/idJPJAPAN-37154020090325
 ウクライナに関しては、3000万トン。価格は不明。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-37051420090318

A君:4000万トンで500億円。1トンにすると1250円。まあ、相場としては妥当なところでしょう。

B君:相場は動いている。市場によっても違う。日経・JBICによれば3月23日の価格、といっても参考気配という記述だが、1445.3円/トン。

C先生:もうひとつ排出量取引で嫌なのは、ロンドン市場などをこれで活性化させたい、というイギリスやEUの意向が余りにも見え透いているからだ。

A君:何が目的で排出量取引をやるのか、ということですね。金融市場の活性化が第一の目的になってしまったら、本末転倒。

B君:実際、本末転倒になりかかっているとも言える。もともと、排出量に制限を課すこと、これをCapと言うが、それに本当の意味がある。それだけだと対策にコストが掛かる、あるいは掛かりすぎるから、取引を認めるというところに排出量取引制度の真の意味がある。

C先生:しかも、排出量に制限を課すとき、成長過程にある企業だと、当然のことながら、排出量は増えてしまう。衰退過程にある企業は、チェコやウクライナのケースと同様に、何もしなくても排出量は減る。そして、余剰分が売れる。それが正当な削減か、という問題がある。

A君:もともと、本HPは、削減努力に対して、それを正当な評価をした上で、排出量の制限を設定すべきだ、と主張している。そうでなければ、努力をしない世の中になる。

原単位も合理的

B君:製造業であれば、原単位を基準にするものがやはり優れている。同じ鉄を作る場合であって、日本のように効率が高い国と、ロシアや米国、さらに中国のように効率がそれほど高くない国とでは、負担金額に差異があってしかるべき。

C先生:何が公平かという議論を推し進めれば、そうなるのだが、制度が複雑になるなどの理由で、拒否をする国が多い。制度など、工夫次第でどうにでもなる。ただ、金融市場の活性化には、できるだけ単純な仕組みが望ましいという主張だと思えば良い。

A君:日本がこれまでも主張してきたセクター別(同業種といった程度の意味)アプローチというものは、例えば、世界の鉄鋼業は、その中で効率指標に則った排出量取引をすべきだ、というもの。そうすれば、世界全体の鉄鋼の生産量が、効率の高い企業に移行することによって、あるいは、効率の悪い企業が効率改善を行うことによって、地球全体での排出量が削減される。

B君:理論的にはこれが正しいことは、各国とも認めるのだが、これをやると、日本以外の国がすべて不利になるもので、他の国は、この議論を意図的に避けるための屁理屈を展開する。

C先生:日本でも、この手の原単位を使った効率指標による取引には反対する人がいる。それは、排出絶対量に上限を設けなければ、結局排出量は増えてしまうのでは、ということのようだが、地球全体の排出量は、しばらく増やさざるを得ないのだ。それは、途上国の経済発展をある程度加速して、地球上の人口の増加率を抑えることが絶対的に必要不可欠だからだ。

A君:何が公平かという議論を突き詰めれば、排出量取引を行うことよりも、国際環境税がベストであることも事実。宇沢弘文先生のような考え方ですが、個人的には、それまでその国が排出した1人あたりの二酸化炭素量基準で税率を決めるのではなくて、使ってきた総エネルギー量で税率を決めるというもの。

B君:二酸化炭素排出量だと、確かに可哀想な国もある。それは、寒冷地にありながら、自然エネルギーに恵まれない国。生存に必要なエネルギー量というものは、気候によってかなり違う。寒いと凍死するから、暖房がどうしても必要だ。

A君:ただし、それには大きな反論があって、アイスランドのように、世界でもっともエネルギーを消費している国でありながら、二酸化炭素排出量は極めて少ないという国は、エネルギー量を基準にする方法は不公平だと言う。なぜなら、問題になっているのは、気候変動、あるいは、化石燃料の枯渇である。アイスランドは、水力発電で80%以上、多少の地熱発電で、電力のすべてをまかなっている。化石燃料を燃やしているのは、自動車と漁船だけだ。

B君:日本のような国だと、二酸化炭素発生量だと厳しい。中国も同様の状況なので、自国の石炭を使ってなぜ悪い、という主張になるだろう。


東京都の排出量取引

C先生:余りにも前提となる議論が長いが、いずれにしても、排出量取引を国際間で行うのは、なかなか難しいことが分かれば良いと思う。
 それに対して、国内でのシステムは、比較的なんとかなるのだ。それは、監視が利くからだ。そろそろ、東京都の排出量取引の説明に行こう。

A君:東京都のHPを見ると、大量の文書があります。
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sgw/jorei-kaisei20080625.htm
 昨年の6月7月に説明会を開催しているのですが、そこでの配付資料だけでも、膨大ですね。
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sgw/daikibo/seidosetsumeikai01_kaisai.htm

B君:これを全部読むのは不可能だな。

A君:したがって、ここからの記述も必ずしも正しいとは限らないのをご了解いただきたい。

B君:まず、企業として何をやることになるのだ。

A君:すでに、昨年の10月末で、対象事業所というものの届け出が行われ、確定しているはずですね。「指定地球温暖化対策事業所」という名称のようですが。

B君:どんなところが指定されているのだろうか。

A君:条件は簡単で、「前年度の燃料、熱、電気の使用量が、原油換算で1500kL以上の事業所」ですね。

B君:しかし、事業所といっても、どのような定義なのだ。複数の建物からなっているような場合には、何が基準なのだ。

A君:基本的には、建物、施設単位で考えるのですが、「エネルギー管理に連動性がある」、すなわち、エネルギー供給事業者からの受電点やガス供給点が同一であるような場合には、複数の建物などをまとめて一事業所とする、とのこと。もう一つの条件が、共通の所有者が存在する建物・施設が隣接した場合も、同様とのこと。

B君:若干難しい。例えば、東京大学のように、本郷地域のキャンパスが本郷キャンパス、弥生キャンパス(農学部)、浅野キャンパス(計算機センター)と分かれている場合にはどうなるのだろう。

A君:共通の所有者が居ると判定されて、本郷キャンパス全体で一事業所なのでは。

B君:リストが見たいが、あるのだろうか。
A君:探せませんね。霞ヶ関の政府関係のビルは、絶対的に対象になっているはずですね。

B君:数だけはすでに分かっている。それは、これまでも報告義務はあったからだ。

A君:東京都の場合でも、地球温暖化対策計画書制度というものがあって、その報告義務に対応して表彰まで行っています。
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/ondanka/data/h17tyukannhoukokusyo/tiji-hyousyou-press-release(4.23).pdf

B君:工場としては、次の5事業所が表彰されている。
 東芝の府中事業所、共同印刷の本社事業所、月島食品工業の東京工場、カシオマイクロニクスの青梅事業所、日本水産の八王子総合工場。
 自社ビルなどでは、三菱東京UFJ銀行大手町ビル、野村證券日本橋本社ビル、さくら情報システムのさくら目黒ビル、日本電気の大東田町ビル、CMTBファシリティーズの中央三井信託銀行調布センター。
 テナントビルとしては、三菱地所の日比谷国際ビル、黒龍堂の黒龍芝公園ビル、三菱地所の新大手町ビル。
 その他として、帝人ファーマ株式会社の東京研究センター、カシオ計算機株式会社の八王子技術センター。

A君:今後、こんな努力をする事業所が増えることでしょう。

B君:今回の東京都の排出量取引の対象になる事業者は、全部で、オフィス系が1100事業所、製造業が300事業所程度らしい。

C先生:まず、排出基準をどうやって決めるか。

A君:原則として、2002年度から2007年度のいずれか連続する3ヶ年度の排出量の平均値が排出基準になります。

B君:2002年か。この年の6月4日に京都議定書の批准が閣議決定された。当時は小泉首相の時代だが、小泉首相は環境嫌いで、批准はしたものの、対策を一切やらないことを産業界と合意していたものと思われる。それが今日の苦しい状況を招いたとも言える。

A君:だから基準年を選択する範囲が2002年からなんですね。このとき、企業は、まだまだ排出量削減などをほとんど考えていなかったから。しかも、このころ、エネルギー価格はまだまだ低かったので、省エネマインドも余りなかった。

B君:京都議定書が批准されたことを認識して、自社の二酸化炭素排出削減を始めたとしたら、それは超先進的企業。それでも、まずはこの頃がスタート年ということ。

C先生:確かにその通りで、2002年から2007年の任意の3年間の実績というところが、かなり公平な基準になっていると思う。
 それでは、削減義務量は?

A君:第一期間は、2010〜2014年度の5年間です。毎年ではなくて、この5年間の総排出量が対象で、オフィスビルなどと地域冷暖房施設が8%、オフィスビルのうち、地域冷暖房などを多く利用している事業所が6%、工場などの事業所が6%。

B君:2002年がスタート年だとすると、6〜8%削減というのは良いところかもしれない。京都議定書のように、1990年が基準年だということだと、その後の経済成長をした国にとっては非常に不利。ヨーロッパのように、東ドイツと合体したドイツ、石炭を北海油田からの天然ガスに置き換えることができたイギリス、などは有利。スペインなどは不利だ。

A君:しかし、EU全体としては削減義務量は−8%ですが、それぞれの国によって大幅に違います。ドイツ−21%、デンマークも−21%、イギリス−12.5%。一方、スペインは+15%、ギリシャは+25%、ポルトガルは+27%ですから。

B君:そして、その実績は、となると、
http://unfccc.int/files/ghg_data/ghg_data_unfccc/image/pjpeg/changes_in_ghg_excluding_lulucf.jpg
にあるように、スペインは+50%以上。そして、日本にHotAirを売ったウクライナが、なんと大幅減少の−50%以上。

A君:話を戻して、6〜8%の削減が可能か、ということですが、すでに対策をかなりやってしまった事業所では、削減が難しいところもあり得るので、「対策の推進の程度が優れた事業所として、知事が定める基準に適合」すれば、削減義務率を1/2あるいは3/4に減少させるという措置もあります。といっても、その対象にするのは、2012年以降の3年間だけのようですが。

B君:それなら、具体的に何をやって削減をするのか。


排出量取引の対象

A君:当然なのですが、「自らで削減」と「排出量取引」がある。自らで削減は良いですよね。「排出量取引」の対象になるものとして、4種類があります。
(1)超過削減量:これは、対象事業所が義務量を超えて削減した量。これも当然です。
(2)都内中小クレジット:これは、都内中小規模事業所の省エネ対策による削減量を取引で取得することも可能。
(3)再エネクレジット:これは、再生可能エネルギー環境価値と呼ばれ、グリーンエネルギー証書、生グリーン電力などを含むものですので、これを買い込んでも良い。
(4)都外クレジット:これは、都外の大規模事業所の省エネ対策による削減量を買い込んでも良い。

B君:生グリーン電力という言葉は、説明が必要かもしれない。電力証書だと、まさに、買ったことにするという行為だが、生グリーン電力は、実際に買うことと等しい行為だ。どうやって実現するのか。それは、「同時・同量」という原則を適応する。すなわち、実際に青森県六カ所村の風力で発電された電力の一部を、ある事業所で使った電力とする。要するに、その時間に使ったことにするということ。実際、青森県で電力網に供給されている訳で、その電力が東京都まで来たとして、勘定をする。

A君:実際には、青森県で発生した電力を東京まで送ると、30%近く熱になってしまうのでは。しかし、それを無視して、「同時・同量」の条件を満たせば、そんなことが現実にできたとする。

B君:話を戻して、(1)の超過削減量だが、ちょっとでも余れば売れるのか。

A君:ちょっと複雑です。基準排出量×削減義務率×削減計画期間の経過年数で算定される量を超過して削減すれば、削減量を売ることができるのです。

B君:分かりにくい。

A君:例えば、基準排出量1万トンの事業所があって、8%の削減義務があったとすると、毎年800トンを削減しなければならない。初年度であれば、実際の削減量が900トンあれば100トンを売れるので、これは単純。ところが、初年度500トンしか削減できなくて、2年度目に頑張って1500トン削減したとすれば、1500−800=700トンが売れるのか、というとそうではなくて、2年間で2000トン削減した。しかし、削減義務量は、800×2=1600トンだから、正味400トンは売ることができる。

B君:その説明なら、当たり前だ。

A君:しかし、まだあるのです。基準排出量の1/2までしか売れないのです。ウクライナみたいに50%以上も削減しても、それは、経済的な減速が原因だとして売れなくするのが妥当。これと同じ発想ですね。事業が旨くいかなくなって、削減量が50%を超しても、それは売れない。

B君:これも当然。やはり、国の場合には、GDPあたりの原単位などを勘案して削減量を決めるのが、妥当のようにも思える。
 東京都の場合、事業所だけに、倒産ということが現実にはありうるので、50%は多すぎるのではないだろうか。

A君:(2)都内中小クレジットですが、地球温暖化対策報告書を提出している中小規模事業所が都が決めた削減対策を実施して、削減を実現したら、その分は売れる。例えば、高効率コジェネなどを導入すれば。

B君:これはおもしろい。

A君:しかも、購入側も努力をしていないと駄目で、これを買うには、自ら削減をある程度実施していないと、という条件です。

B君:それは当然。やはり「努力をする」が大原則だ。

A君:(3)再エネクレジットはいくらでもお買い下さい、という仕組み。生グリーン電力を含めて、どうぞ。そして、太陽光、風力、地熱、中小水力は1.5倍換算ができる。

B君:この1.5倍は、先進的かもしれない。

A君:(4)都外クレジットですが、これも面白い。都外であっても、東京都内の仕組みと同様の仕組みがあったと仮定して、そして削減量が目標以上であったら、それを都内の事業所が買い込むことが可能。しかし、削減義務量の1/3が上限。

B君:これは、東京都の仕組みが全国に波及するということで、面白い。

A君:テナントビルなどへの対応も結構合理的ですよ。
(1)すべてのテナント事業者に、オーナーの削減対策に協力することを義務化。
(2)特定のテナント事業者は、これは大型のビルを意味しますが、独自の対策の計画書を作成・提出して推進することを義務化。

B君:なるほど。ところで、今後、ビルを新築して、都内に進出してくる事業者はどうするの。

A君:それは都が定める単位あたり標準排出量などを考慮して、削減義務量を決めるということのようです。

B君:ということは、ある程度の設備を導入しなければならない。

A君:しかも、運用が開始されたら、他のビルと同様に、連続した3年間を基準年に設定し、次の削減をしなければならない。

B君:なかなか厳しい。もしも削減義務が未達だったらどうするの。

A君:これも厳しいのですよ。義務不足量は、計画期間終了後1年間で削減しなければならない。これは排出量取引によることになります。それでも、もしも削減が未達だと義務不足量の1.3倍を実現するように措置命令がでて、それを履行期限内に実施しなければ、罰金50万円と違反事実の公表が行われ、さらに、知事が命令不足量をどこかから調達して、請求書を突きつける。しかも、そのときの価格が二酸化炭素1トンあたりで1.5万円を考えているとのこと。

B君:これは石原流かもしれない。

C先生:この東京都の枠組は、なかなか厳しいが、公平性がかなり担保されているように思える。実際に動かしてみないと、なんとも言えないが、東京都の場合には、オフィスが多くて、工場が比較的少ないので、なんとかなるのかもしれない。

A君:工場ですと、生産品目を変えたり、取扱量を変えたりすることによって、相当の変動があり得ますから、そう簡単ではないですね。

B君:オフィスだって、これまでかなり対策をやってきたところでは、実現不可能な削減目標になるところもありうる。それが、どこまで正当に評価されるか、ここの検証制度が難しい。

C先生:EUの排出権市場にしても、相当無茶な実験だった。相当な不公平が生じるとともに、Capが緩すぎて、市場が機能しないぐらい排出権価格が低落した。
 この東京都の制度設計は、すでにかなり多くのデータを手元にもっていての検討なだけに、少なくとも、2014年までの6〜8%削減については、特に、基準年が2002年なだけに、なんとかなるのではないか。問題は、それから先の第二期間だ。どのような削減率を義務化するかだろう。

A君:さらに、今回まだよく分かっていないのですが、具体的にどうやって排出量を買い込むことができるのか、どうやって売ることができるのか、その市場などをどうやって作るのか。といった問題があるように思います。

B君:2015年を目指して、グリーン電力用の発電設備をどこか地方に作るという事業者が増加するかもしれない。

A君:ところで、国が再生可能エネルギーの全量買い入れ制度を作ったら、そのときには、クレジットは発生するのだろうか。各電力会社に購入の義務化が発生するので、各電力会社からグリーン電力を買うことになるのだろうか。

B君:まあ、FITで高価に売ってしまったら、それでクレジットも移行すると考えるのが妥当なのかもしれない。

A君:さらに、国内で排出権市場ができたら、そこから買うということは認められるのか、それとも認められないのか。すべて相対交渉で価格を決めるのも大変なので。

B君:一般家庭の太陽熱などにもクレジットを付けると面白い。しかし、やはり市場がきちんとできないと難しいし、そもそも、検証制度が必要だ。インチキがいくらでもできそうなので。

C先生:色々と課題は多いのは事実。未達の事業所に対する罰則として都知事が代行して調達する排出量取引の価格として、すでにに説明されたように、東京都は、トンあたり1万5千円程度を想定しているようだ。これは、現在の市場価格の10倍以上だが、それでも、実際に省エネ機器を設置する費用に比較すれば安い。となると、やはりお金で買った方が安上がりで有利だ、ということで排出総量が減らないという状況にならないだろうか。もしも排出量取引を全く認めないで、削減義務を課すことが可能なら、その方が削減が進むのは事実なのだ。なぜなら、現時点での限界削減費用は、すでに、かなり高いのだ。
 また、東京都による排出量のCapに嫌気がさして、地方への移転を計る工場が出てくる可能性も強い。今後、都内に、工場を造る企業は確実に減るだろう。それは、それで、日本全体が平均化して良いことなのかもしれないが。
 しかし、現時点でブツブツ言うだけでは、何も生まれない。この厳しい制度を最初に作ることができるのも、まずは東京都だけだろう。現時点で、国よりも、明らかに突破力がある。今後、首都圏の各県は、東京都にフォローすることが可能かもしれない。確かに、埼玉県は具体的に考えているようだ。しかし、神奈川、千葉となると、工場が多いので、反対が多くて、大変かもしれない。
 いずれにしても、今後、どのような動きになるか、しっかりと見ていきたい。