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   EVの充電設備の競争激化
     5分間充電や350kW 11.19.2017

               



 何回も述べていますように、EVを巡る状況が目まぐるしく変わっています。始めの頃は、「EVにすればそれだけで問題解決」、といった感じの反応や報道が多かったのですが、やっと、といっても、まだ少しだけですが、EVの使い勝手に対する話題も混じってきているという状況のようです。

 今回は、その話題に関連して、5分間で充電を可能にする技術とか、できるだけ充電時間を少なくするために、800Vで350kWといった電源を使う技術といったものを取り上げたいと思います。

 個人的には、それでもまだ違和感があるのです。それは何か、と言えば、EVというものの本当のあるべき姿は、力づくでの解決法を目指す現時点の方向性とは、やはり少々違うのではないか、ということなのです。

 すなわち、EVの基本形は、夜間に自宅で充電して、翌日の運転距離がカバーできる程度の電池を搭載する通勤対応型、その拡張系として、小さなバイオ液体燃料タンクを搭載して、長距離の旅などに適合したもの。以上、二車種が一般の消費者が買うもの。そして、3番目が、モーターの加速感を味わう新しいスポーツカーEVに加えテスラのモデルSのような車で、これは、毎日動くものではない。そして、この三種類に加えて、タクシーや業務用途のための、標準化されたバッテリースワップ型と、合計四車種で必要であると同時に、これで十分だと考えているのです。

 ところが、世の中の議論は、これらの内、3番目のジャンルが中心になるという前提で語られているので、実は、未来の普及シナリオとは、本当は相当ずれているように思うのです。確かに、最初は、新種のスポーツカー的なものが売れるでしょうが。

 もっとも、道路からの非接触充電ができるようになれば、話は変わってくるのですが、エネルギー効率が相当悪いことに加えて、道路のほとんどすべてに電線と充電ユニットを埋め込まなければならないために、恐らく、相当コスト高な電力代になるので、普及はしないと考えています。

   
C先生:今回の議論を巡る状況だけれど、これまで主張してきたこと、例えば、ガソリン車なら3分満タン。これがEVでも実現できないことには、旅用の車としては不十分。もっとも、車で旅をするということがいつまで継続するか、という議論は別の問題なのではあるけれど。いずれにしても、このところ、やっと5分間充電や、ドイツを中心とした、800V・350kWの充電設備などが提案されて、ガソリン車の3分満タンに迫ろうという話が少しづつ増えてきた。そこで、現在の状況をチェックしてみようということだ。

A君:了解。「電気自動車、5分間充電、350kW」で検索すると、最近の記事がいくつか出てきます。例えば以下のようなものです。他にも相当数あるのですが、話題は、この5件で、大体カバー出来ていると思われます。

◆1:「充電5分で150km。ポルシェ、VW、BMW、メルセデス・ベンツ、フォードが共同で超急速充電ネットワークを欧州で展開すると発表」
http://sustaina.me/?p=1905

◆2:「電気自動車が5分で充電完了! イスラエルの「ストア・ドット」が鋭意開発中」  リンクが切れました。
http://www.evjournal.jp/  このサイトにあったのですが。しかし、このサイトには新しい情報が多数あります。

◆3:「東芝、6分間の充電でEV航続距離320kmを可能にする次世代バッテリーを発表」
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2017_10/pr_j0301.htm
http://japanese.engadget.com/2017/10/30/toshiba-scib-ev-battery-breakthrough-200-miles-charge-6-minutes/

◆4:「EVの充電時間が3分の1に、CHAdeMOが急速充電器の高出力化に乗り出す」
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1704/04/news034.html

◆5:「電気自動車(EV)の充電が5分〜10分で可能になる時代がやってくる?」
http://kuruma-uru.sakura.ne.jp/post-5363

B君:現状をまず記述するか。日本での充電装置だけれど、一般的な100Vのコンセントは、15Aなので、これだと1.5kWしかない。1kWhの電力で、電気自動車がどのぐらい走れるのか、というと、まあ、5〜7km。となると、1.5kWの充電能力のコンセントからだと、1時間充電して、1.5kWhになるので、7.5〜10.5km走れることになるだけ。

A君:家庭用に設置できる充電器は、200V15Aなので、3kWしかない。それでも、2時間充電すれば、6kWhの電力が入るので、30〜42kmぐらいは走れることになる。一晩、まあ10時間充電すれば、30kWh分が充電できるけれど、新型リーフの40kWh電池でも、家庭では一晩で満タン(満電)にはできない。

C先生:現在、個人的に使っているプリウスのPHVは、電池容量がわずか4.4kWhで、充電可能量は3.5kWhぐらいなので、この充電には、200V15Aでも1時間30分ぐらいなので充分。お向かいのお宅には、日産リーフの初期モデルがあるけれど、これは、24kWhの電池を搭載していた。充電する電力量は、20kWhぐらいが普通だったのではないか。お向かいは、どうも100Vのコンセントから充電をしているようだったのだが、1.5kWで、20kWhを充電しようとすると、13時間以上掛かることになる。これは、実用上大問題。200V15Aなら、7時間以内なので、まあ、毎晩充電するという方針なら許容範囲内。
 余分な話をすれば、新型のプリウスPHVは、電池が倍の8.8kWになったのだけれど、100Vでの充電の場合には、最大電流が6Aになってしまった。発火の危険を避けたためなのだろうけれど、100Vでは、実用には無理だと思う。やはり、最低でも200Vの専用の充電器を設置しないと。

B君:100Vだとテーブルタップあたりを使って充電する人が居たりするからだろうな。

A君:話をリーフに戻すと、リーフタクシーの営業日誌なるサイトがあるので、これは面白いですよ。恨み辛みの連続。
http://www.webcg.net/category/WEBCG-essays-leaf_taxi

B君:初代リーフと、今のEVとはレベルが完全に違う。しかし、充電性能は、まだ許容範囲内ではない、と思っている。しかし、将来、欧州では、普通のガソリン車と同等ぐらいまでなら、行けるのではないか。◆1の充電5分で150kmということが欧州の一部では実現するだろうから。

C先生:我が家のPHVは、3分満タンのガソリンで、1000kmは行けるから、◆1の充電5分で150kmでは満足とは言いにくいが、まあ、普通の方なら許容範囲だろう。

A君:◆1は、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラー、フォードが欧州主要幹線に超高速高出力充電設備設置のための合弁事業計画を新設する覚書に署名したと発表したという記事。国内の急速充電器チャデモ規格は、最高50kW。テスラ専用のスーパーチャージャーは最高120kW。それを全く相手にしない350kWだというので、「恐れいった」という感想以外はないですね。しかし、これでも5分間の充電で、150km走行可能ということですが。

B君:350kWというと、電圧は800Vだと聞いているので、約440Aか。どんなケーブルを使うのだろう。

A君:◆1には写真がありますが、直径3cmぐらいのケーブルですね。重いに違いないのですが、軽々と持ち上げることができるのでしょうかね。

B君:欧州人は、腕力が強いということなのだろう。日本で女性を対象にする場合には、バネ付きで軽く動く機構が追加されることだろう。

A君:関連する◆2を説明します。実は、現在使われているリチウム電池の性能では、5分で150kmぐらいが限度で、5分で満タンは実現できないのです。すなわち電池が現在の電池ではダメなのです。この記事の言うように、イスラエルの技術のようで、StoreDot社が開発しているのこと。

B君:StoreDot社のEV関連のページには、Flash Batteryという言葉が書かれている。
https://www.store-dot.com/business-units
しかし、これは何か。記述されているキーワードを拾うと、Flash Batteryというモバイルデバイス用のバッテリーに使われている有機化合物を使っているとのこと。リチウム電池が使う有機物電解質の代わりに、水性の電解質のような説明もある。このFlash Batteryを使うと、モバイルデバイスを5分間で満充電状態にすることができる。それをEV用に設計しなおしたEV Flash Batteryが完成すれば、5分の充電で300マイル=460km走れる。

A君:待った。待った。ということは、このバッテリーを使ったとしても、EVの電費は、5〜7km/kWhで余り変わることは無いだろうから、460km走行分となると、約80kWhの電池が必要。それを5分でフルチャージとなると、350kWでは不足で、960kWの充電装置が必要となってしまう。

B君:これは無いな。この会社の言う、5分間でフルチャージできる電池が出来たとしても、この性能をフルに引き出す超々急速充電器が作れない

A君:電柱まで来ている6600V(日本)をそのまま使えば話は別ですが。ドイツだと、10000〜30000Vのようですね。

B君:この技術は、そのままは信じられない。ダイムラーは、この技術を買い込んだという噂だけれど、本気なのだろうか。イノベーションというものは、常に、可能性ゼロとは言えないのだが。

A君:良く分からないのは事実ですね。ひょっとすると、充電時間は非常に短いのだけれど、その副作用として、自然放電が多くて、丸1日経過すると、電力残量がゼロになっているとか。

B君:全く新しい考え方のEVになるけれど、走るのに必要な量だけその都度充電して、近くの充電ステーションまでは、別途装備されたリチウム電池で走るような設計になっているとか。

A君:自分で言い出してだけど、まあ、それは無いでしょう。使い勝手が悪すぎるし、電力の無駄でしかないので。

C先生:実態が見えないので◆3に行くが、東芝のSCiB電池は、チタン酸リチウムを使った初代のSCiB電池は実用化されているが、この二代目の電池の特徴は、負極を新しい材料にしたというところ。これまでの普通のリチウム電池の負極は、黒鉛(グラファイト=炭素)という物質を使っていた。グラファイトは、炭素が平面上に並んでいる薄い層からできていて、その層と層の間にリチウム原子が入り込む形になっている負極だった。東芝のこの新しい負極は、チタン・ニオブ系の酸化物の結晶構造中にリチウムイオンを溜め込むもので、急速充電にも耐えるし、低温でも充電ができるし、しかも長寿命とのこと。

A君:この電池で、東芝が甦ることを期待したいですね。

B君:ということで、◆4に。これは、日本の話題。これまで50kW級だったCHAdeMOという日本の充電の規格が、500V、400Aまでに拡大されたとのこと。これだと、理論値200kW、実質150kWまで向上させることになるので、従来の1/3の時間で充電ができる。

A君:CHAdeMOも400Aですか。どんなケーブルになるか、そのうち実物が見られそうですね。写真はありますが、よく分かりません。まあ、3cmぐらいの太さのケーブルのようです。ただ、充電しているEVがどうみてもリーフの旧型なので、400Aで充電ができるとも思えないので、デモ写真でしょうね。

C先生:それでは、最後に◆5へ。これは、個人のwebサイトのようでもあるね。

A君:そんな感じもありますが、車を売るときの注意のようなサイトで、誰が作っているのか不明。

B君:個人の割には、プロが関わっているのか、バッテリーの充電に関する最新技術について良く知っている記事になっている。この話題について、このところの全体像をつかむには、これを読むのがもっとも簡単という感じ。

C先生:ということで、全体像をまず知りたいという場合には、◆5のこのサイトからはじめて、あとは順番に◆1から◆4までお読みいただくのが良さそう。
 実は、この◆5の記事の最後の部分が、非常に重要だと思うのだ。それは、通勤用にEVを使うだけであれば、まあ、数10kmまでだろうから、自宅で夜間に充電することで充分に行ける。200Vであることが条件にはなるだろうけれど。ということは、どこかに旅にでも出なければ、EV充電スタンドは行くことはないということを意味する。となると、EV充電スタンドは、高速道路、幹線道路、観光地にはできるかもしれないけれど、いくら電気自動車の数が増えたとしても、街中では、特殊なEV以外の所有者は以外は、誰も充電しないという可能性が高い。となると、充電スタンドで商売をやろうと思っていても、実は、成立しないということになりかねない。現在、ガソリンスタンドを営業している石油系の企業が、将来、充電スタンドに商売替えをしようとしても、そのチャンスは無いかもしれない、ということを意味するように思えるのだ。2050年頃になると、自然エネルギーの発電量が余るといった状況も出現して、その場合には、充電費用がほとんどタダということもありうるのではないだろうか。特に、地域向けの再生可能エネルギーを配電する企業は、そんな対応も考えることだろう。
 ということは、今のところ、ドイツのように、自動車工業会が音頭を取って、自分たちの費用で、充電スタンドを整備してしまうことが唯一のやり方なのかもしれない。しかし、高速道路や幹線道路に限られる。
 米国でテスラがやっているやり方が、実はこれ。となると、その充電設備の負担が自動車会社にとって重荷になるということも考えられる。となると、EVの価格に、充電スタンドの費用分が転嫁されて、余り普及しない可能性もある。となると、EVが本当に将来の本命になるのだろうかを、もう一度チェックしなければならないのかもしれない。バイオ燃料やゼロカーボンの合成燃料を燃やせるエンジンを搭載した、レンジ・エクステンダーが、やはり本命ということも有り得そうだ。原則的には、夜に自宅で充電だ。そして、何日間か使わないときには、デマンド&レスポンスに電池の容量を提供する契約を電力会社と結んで、電気自動車の電池に稼いで貰う。このあたりが現実的のような気がする。
 これが正しい予測になるかどうか、あと10〜15年もすれば分かってくることだろう。