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  エコアジア会議報告 於米子市 06.19-20.2004



エコアジアという会議があることは、名前だけは知っていたが、今回、初めて出ることとなり、その報告をしたい。

C先生:このエコアジアは、日本の環境省が費用のほとんどを出している。したがって、日本の環境大臣が議長を勤めることになっている。しかし、議長が決まる前に、小池百合子環境大臣、続いて、片山鳥取県知事のキーノートスピーチがあった。

小池環境相のキーノートの内容

いくつかの状況の説明を中心に。
1.WSSDタイプ2プロジェクト
   APFED、APEIS(午後に説明あり)
2.持続可能な開発のための教育の10年
  環境・開発・人権・平和・ジェンダー・
  多文化共生・福祉
  日本では、環境保全活動・環境教育推進法ができた。
3.3R閣僚会議
  G8で、日本流の3Rの重要性が認識されたらしい。
4.日本の環境技術の広告
 *浄化槽技術
 *省エネルギー
 *新エネルギー:太陽電池、定置型燃料電池、燃料電池自動車
5.愛・地球博 テーマは自然の叡智
6.ライトダウンイベント 6月19、20、21日

片山鳥取県知事によるキーノート

鳥取県における環境立県の状況
 大山におけるブナ林、鳥取砂丘(石油は出ない)、鳥取大学乾燥地研究センター、
課題
 資源のリサイクル率を高める 
 水質の確保と高度化
 森林の荒廃を防止すること
ISO14001を県庁が取得し、推奨中。
鳥取環境大学の設置
環境立県のための第2ステージ
 行政と県民との共生
 循環型の確立
 地球環境への取組み

 個人の家庭が草の根から環境に取り組む仕組みを設けている。一定の基準を認定し、独自の環境対策に取り組んでいる。米子南高校の生徒達の取組み。
 産業廃棄物処分場税を設けた。この税収を利用して、良好な処分場設置を支援。
 グリーン購入も勧めている。間伐材などの有効利用を推進。資源の循環を産業面で支援。
 自然エネルギーの開発。エネルギー自給率を高めるために、太陽光、風力、木質バイオマス。
 環境と「歴史と文化」との調和。
 希少野生生物の保護に努めている。
 森林環境自然税を設けた。広く県民全体で負担。環境立県を目指すことでもっとも重要なのは、行政と住民、大学などの様々な主体が叡智を出して協働して取り組むモデルを作りたい。

C先生:ここで小池大臣がチェアに任命された。最初のセッションは環境教育である。

セッション1: 環境教育

加藤尚武鳥取環境大学学長

 サステイナビリティーについて発表をする。潮干狩りをすることを思い浮かべて欲しい。自然の環境の中で、食品としての貝を採る。このような体験をかつてしてきた。この潮干狩りが長続きすることの条件は、(1)汚染されていない、(2)生活の場と採取の場が一致、(3)採りすぎによる絶滅から守られている。

 乱獲によって絶滅にさらされているのが歴史的教訓。貝の生命を支えるための環境が条件。再生可能な資源の採取は、再生率を超してはならない。これが持続可能の条件である。海に入れば、汚染が避けられない。全く環境を汚染しないで、ということは不可能。自然の浄化力の範囲内でなければならない。デイリー氏の条件である。

 海水浴に行くのに、車で行くとしたら、ガソリンが無いと海水浴にいけない。ガソリンは自然には増えない。枯渇型の資源である。となると、デイリー氏の条件を満たさない。枯渇型資源については、持続的に使うことは多分不可能。

 人間の2つの態度。ソフトな持続可能性。枯渇型の資源を別の枯渇型資源に転換していく。なるべくゆっくりと転換をしていく。オイルシェールはほとんど無限に存在するという仮定かもしれない。

 ハードな持続可能性とは、再生型に大急ぎで切り替える。遅かれ早かれ必ず行わなければならないことである。資源が完全に枯渇してから、次の世代にバトンタッチを行うと、きわめて不安定な形で引き継ぐことになる。結論として、デイリー氏の第三の条件、石油を有る程度使ってもよいが、その分、再生可能エネルギーで貯蓄する。

 持続可能を未来世代に渡すこと。それには、エネルギーなどの資源、廃棄物のような出口側も重要。再生可能資源を中心に考える。

 このような国際会議で次のようなところで合意して欲しい。まず1番として、再生可能資源への予定表を示して欲しい。50年なのか、5000年なのか。石油についての代替性をまず考える。その2として、すべての生物を絶滅から守ること。これをあらゆるところ。最後に、廃棄物を分解したり、処理する仕組みについて国際的合意が必要。核廃棄物の場合、1000年間掛かる。自分の得意分野を作る。


C先生:加藤尚武先生のお話は、いつでも面白い。

C先生:次に、加藤修一環境副大臣から、昨日行われた環境教育シンポジウムの報告があった。


環境教育シンポジウム(6月19日米子)に関する報告:加藤修一副大臣

 加藤学長と兄弟ではないが、全く賛同できる。昨日の午後に開催した環境教育シンポジウムについての報告をしたい。来年1月から始まる、「持続可能のための教育10年」=EESDについて、新しい教育をどう実践するか議論した。シンポジウムのテーマは、日本がヨハネスブルグサミットで提言を行い2005年からUNESCOがリードして国際実施計画を推進しているところである。各国は、その実施計画を作ることになっている。日本は、UNESCOと緊密な連携を採ること。

昨日の環境教育シンポジウムの内容のサマリー

 阿部治立教大学教授:環境教育とは、新たな人間関係の構築。開発教育、平和教育などを含む総合的な教育活動を含む。地域社会の視点から様々な活動を総合化することが重要。

 ザクリ国連大学高等研究所所長:初等中等教育から高等教育にいたるすべての教育者が協力することを記述したウブント宣言。特別のプログラムを推進すること、特に、持続可能な開発のための地域の拠点を作ること。

 鳥取県から事例紹介:米子南高校。鳥取県版環境管理システムを導入している。環境宣言、ゴミ分別、電力消費削減。地球市民としての人格形成。若葉台小学校の例は、鳥取環境大学が協力している。NPOグリーンスポーツ鳥取:芝生のグラウンドを整備し、環境に配慮した運動を行っている。

 その後パネルディスカッションが行われた。知事からは、誰でも挑戦できる環境管理システムがあること。ザクリ氏は、経済的側面や社会的側面を含めての協働が必要。加藤尚武学長から、環境と情報技術を車の両輪としていること。単なる知識の習得ではなくて、自然人、未来人としての教育。アリアラトネ氏から、人々の覚醒を意味する言葉が紹介。日本での環境教育推進法の紹介。持続可能の教育のためには、地球益を推進すべきこと。国連大学のRTC/Pを実例。

 最後に、1500名の出席者とともに成功裏に終わることができた。

C先生:環境教育の重要性が最近どこでも言われる。しかし、その実態は? さらに、日本の場合、教育内容が先生任せであるところに問題が多いと聞いている。

C先生:これまでエコアジアは、東京近辺で行われることが多かったが、今回、米子という場所で行われた。そのために、地域の紹介が3件。

鳥取県における3つの実例

1.中海子供海辺サミット
 中海には白鳥や鴨が来る。昔は海水浴もできたが、最近は汚染が激しい。サミットでは、島根県と鳥取県の子供が集まって、水質改善のための調査を行った。ヘドロは卵が腐ったような臭いがした。川からの汚染が原因と思われた。 中海を汚しているのは自分達であり、確実にできることを行うことが重要。
 海外の環境問題について学習した。カンボジアとニジェールについて。ゴミの問題が大きな問題である。地球温暖化によってツバルが水没してしまう。廃油でろうそくを作った。電気の大切さと安全に暮らせるありがたさを学んだ。世界の環境問題を解決していくこと。エコアジアへのメッセージを採択した。
 かけがえのない湖が汚れている。一旦汚れた湖を元に戻すのは大変。多くのエネルギーを使って便利な生活をしている。環境問題は繋がっている。いつまでも美しい地球であって欲しい。

C先生:環境教育の実践が効果的であることが分かるが、その割には、この会場の冷房が効きすぎで寒いぐらいだし、配られている水がペットボトル入り。このあたりに気配りが無いなあ。

2.鳥取ネットNGO
 地域作りと環境保全を目指している。どんぐりを活かした特産品。水源林の環境保全。どんぐりを飼料とするブタの飼育とハムの生産。植樹によるどんぐりの持続的な供給。収益の確保と地域振興。バックデータが必要。どんぐりがどうして有効なのか。植樹の特性、ひまわりの環境への効果。客観的なデータが欲しい。米子市には商業と地域特性を組み合わせることを試みる団体が多い。炭作り、しいたけ栽培、わら細工などを実施。農山村におけるグリーンツーリズム。地域産物による安全なレストラン。童謡に歌われる世界を次の世代に。

C先生:本当の環境問題を抱えている諸外国の大臣・幹部達が、この発表をどう捉えただろうか。環境をネタにした地域振興話も、日本国内向けには良いが、外国に与える印象を考えると、どうなのか。大体、そんな議論が行われてから、この話を出すことを決めたのだろうか。

3.石田エコマ商事社長
 ビオトープで夢を見る。昔、山や川には多くの動植物が住んでいた。ペットボトルのキャップのリサイクルに取り組んでいる。キャップのリサイクル率はほとんどゼロである。地元企業から多くのキャップが集まって、エコマウッドになっている。特許技術をもっている。ベンチ1基は、2万個のキャップからできる。しかも、何度でも再生できる。

C先生:なるほど。ペットボトルで水が配布されている理由が分かった。

C先生:ここから、各国からのコメント

マレーシア:自然資源環境大臣。環境教育のスタートのために、このエコアジアの会議は重要。地球環境保全、地域環境、水問題などが重要。環境的に適切な技術の普及。まだ初期的段階。しかし、教育システムへの組み込みを模索。各セクターのパートナーシップが重要である。
ベトナム:環境教育は、ベトナムにおいても重要な課題。

ミヤンマー:自然保護のタスクフォースもできている。ミヤンマーの象を森林地帯では使っている。森林事業に使っているが環境的には持続可能型である。

中国:中国語で発表。環境保全は重大かつ困難な課題。環境コンシャスな市民が増えている。

ラオス:MDGの達成を目的として動いている。京都議定書の締結国として、CDMを実施したい。しかし、財政的な人材的な制約が大きい。

カンボジア:教育が基本的なツールである。EE戦略が多くの人々を巻き込む。しかし、多くの障害がある。

バングラデシュ:エコアジアを1991年以来開催している日本政府。環境教育。MDGの達成のために。レジ袋を止めた。古い輸送システムの撤退、大気汚染防止、革なめしの産業も対策をした。植樹も。

韓国:大気汚染対策。グリーンGDP。拡大生産者責任。環境教育にも積極的。

ネパール:環境教育は90年代の半ばに始まった。NPOセクターなどとの連携を目指している。国家保全計画を作成。

インド:環境森林大臣が来ることができなかったころをお詫びを申し上げたい。環境教育が学校のカリキュラムに組み込まれている。

タイ:持続型の経済と社会の実現。環境教育を根底から見直し、指標の開発を行っている。教育者の再教育などを実施。エココンシャスな意識を高めることが最終の目標である。

C先生:そして、小池大臣のサマリー:

環境教育は、単に教育セクターだけではなく、NPOなどの参画も重要。教師のための教育も重要。
環境教育を実践することは、多くの限界にも直面している。
情報を交換すること。環境教育の技術を開発し共有すること。
国家環境戦略を設定し、環境教育を実施する。

C先生:この手の会議でもっとも重要なことは、それぞれの国の代表が何か新しいことを言いたいと思って、国の政策をリードすることだろうか。大臣がそう思えば、それはそれなりに解決策の一つになるかもしれない。

エコアジア 1日目の午後の部

C先生:続いて午後。これから、午前中に名前だけが出てくるAPFEDと、APSIEについての説明があった。これらの2つはいずれも、プロジェクトというか研究プログラムというか。
 予算は、大部分がやはり日本政府から出ている。日本政府は、アジアの環境問題の解決のために、かなりの予算を投入しているのだ。
 しかし、それを知っている日本人はほとんどいないだろう。

発表1:森島昭夫氏(IGES理事長):
 APFED(Asia-Pacific Forum for Environment and Development)の報告。APFEDは、日本が主導しているプロジェクトであり、2001年に設立された。新しい長期間に渡る環境対応のプランを作成することが目的である。マルチステークホルダー。26名が参画した。UNEP、UNSECAP、UNUなども参画。議長は、橋本龍太郎氏。これまで、5回の会議が開催されている。6回目は日本で開催予定。
 様々なアイディア、新しいもの、伝統的なものを含めて検討している。
 最終レポートが、今年中に作成され、6回目の東京会議で報告される予定。この報告書は、ESCAPに提出される。
 レポートの最終品は、以下のようなものを含む。優良事例のデータベース、能力開発プログラム。200ページ。28ページのエクゼクティブサマリー。アジアの環境記述。提言は、地域のアクションに関するもの。アジア太平洋地域の多くの国で重要と考えられるもの。行動提案に関するものは、(1)環境民主主義のための組織、(2)パートナーシップのためのシステム。これらが、持続可能な貿易、技術開発、能力開発、資金メカニズムに関与するというもの。
(1)淡水資源、(2)海洋・沿岸、(3)エネルギー・大気、(4)土地利用、(5)化学の5種の領域について提言を行う。
 革新をもたらす動力は、持続可能な発展に関する知識イニシャティブ、革新的な試みのショーケースの2種だろう。


発表2:インドネシア生物多様性財団 サリム理事長 元の環境大臣
   マルチステークホルダーパートナーシップ型の解決が重要。淡水、エネルギー、大気汚染、生物多様性が重要。これらの問題に対する提案は、アクションプランとして提出される。
 エコアジアのサポートが重要。アジアは、今後の世界の発展の機関車になる。

発表3:スリランカ アリヤラトネ事務局長 サルボダヤシュラマダーナ運動
 APFEDには、革新的な知識と伝統的な知識とのコンビを使おうという試みがある。草の根活動だけでも、トップレベルだけでも駄目。もっと先進的な内なる言葉。覚醒が重要。


C先生:次は、APEISの説明。このAPEIS エコアジア2001で提言されたもの。日本主導の研究プロジェクトであると考えれ良いだろう。

環境省からのAPEISの概要の説明

 Asia Pacia Environmental Innovation Strategy. ここで鍵になるのは、イノベーションである。やはりタイプ2型のパートナーシップにリストされている。

 どのようにイノベーションを行うか。科学的なツールや政策オプション、さらに、人材開発やアウトリーチを提案する。

IEM(Intergrated Environmental Monitoring)統合環境モニタリング
IEA(Integrated Environmental Assessment)統合環境アセスメント、経済統合モデルの開発を行っている
RISPO(Research on Innovative & Strategic Option)新しい戦略的選択肢の研究、良い実施例、戦略的な選択肢
 これらのプロジェクトの最終年である。APEISは、研究者のネットワークを進めることができた。IEM:中国、オーストラリア、シンガポール、IEA:インド、中国、タイ、韓国、RISPO:タイ、インド、中国、フィリピン

APEISの第二フェーズ
*モデルの改善し、農業を入れる。100年後。
*政策分析が必要だろう。
*APFEDとの協力も重要。

中国の分担者Liu所長:IMEのサブプロジェクト。国立環境研など。衛星からのモニターによって、様々な災害、砂嵐や山林火災などが起きていることを検知する。これらのモデルを統合する。同時に、人材開発活動も行った。

Shulka教授:国際AIMプロジェクト
 経済モデル。故森田恒幸氏の仕事。二酸化炭素だけではなく、他の大気汚染、あるいは、水もモデルに含める。経済成長を含む環境モデルによって、イノベーションを導入すれば、環境と経済は両立可能。

森秀之氏(IGES):
 RISPOについて。科学的知識に基づく、政策決定支援ツール。優良事例データベース。戦略的政策オプション。
 政策手法をどのように選択するか。
  経済的手法
  社会的手法
  物理的手法
戦略的政策オプションというものを作るもの。
RISPOの次のプランは、国レベルでの政策オプションを見つけること。それには、モデルが必要と思われる。600ページの報告書を用意した。

C先生:この後、各国からコメントがあった。いずれも基本的なトーンは「賞賛」だった。やはりスポンサー国内での会議であることを考えると、どこまで真意か、本音か、それを見極めることは難しい。

C先生:そして、小池大臣による結論。

APFEDのプログラムはサポートされた。また、APEISにおけるイニシャティブは、この会議で強くサポートされた。持続可能なポリシーのために、このような研究が必要であることが認識された。日本の環境大臣として、私が、これにコミットすることを宣言したい。

C先生:これで、1日の会議が終了。夜の部であるレセプションは、鳥取県立鳥取花回廊なるところで行われる。環境省が行っているライトダウン(電気を消す)も同時に行われる予定。

レセプション

C先生:台風が近いからか、雷鳴がときに轟く状況であったが、なんとか雨もパラパラ落ちることもある、といった状況で、無事に終了。古代食のメニューがなかなか美味しかった。

第2日目:11時まで、昨日の議論をまとめたサマリーが提案され、若干の修正を加えることで了承。

午後からは、見学会の予定。天気は大変に良いのだが、台風がどうも米子を向けて進んできているようなので、方針を変更して、見学会には出ないことにした。13:00の便で東京に帰ってきた。小池大臣も同じ飛行機のようであった。