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     エコプレミアム流
   
給湯装置の選択 その1 06.25.2006
     



 もしも家を新築するとしたら、あるいは、大規模な改造を考えているのなら、どのような給湯装置を使うか、これは真剣に考えるのに値する問題である。しばらく前であれば、比較的単純に答えが出たのだが、最近は、極めて複雑怪奇で正解も良く分からない。

 エコプレミアム流で考えたらどうなるのか、それが、本日のHPの課題である。


C先生:まずは、給湯装置の位置づけから。

A君:家庭内のエネルギーの使用量の30〜35%が給湯。暖房が27%。照明と家電製品が28%。煮炊きに8%。そして、冷房が3%といったところですか。

B君:今後、伸びが予想されるものが、家庭製品。特に、テレビが大型化すること。もう一つは、冷房の増加。

C先生:ということで、給湯装置を合理化することによるメリットは大きい。相当昔だったら、給湯装置は、ガスに決まっていたようなもの。都市ガスが無いところならプロパン、あるいは、石油。
 そこに、深夜電力が加わったのが、さて、いつのことか。

A君:深夜電力利用の給湯装置の台数の統計が沖縄電力のHPに出ていますが、それによれば、1993年で500台ぐらい。現在は、どうも15000台程度のようですから、まあ、1990年ごろから普及が始まったと考えれば良いのでは。

B君:その沖縄電力のデータは、負荷平準化のページに出ている。沖縄電力には、原子力発電所が無い。深夜電力を売っても、どうしようもない部分がある。沖縄にも、原子力発電を導入したいということなのでは。

A君:これも後の議論の種ですが、深夜電力のエネルギーソースが何か、これは大きな問題です。

C先生:いずれにしても、給湯をどうやるか、このところ状況が大幅に変わりつつある。まず、深夜電力利用の普通の電気ヒータ型給湯器に加え、ヒートポンプを利用したエコキュートと呼ばれる給湯器が出現した。これは、ある意味で画期的な機器である。一方、電気ヒータを使う発熱機器は、エネルギー効率的にみると、まあ止めた方が良いものが多い。高温が必要なトースターなどは、仕方が無いのだが。

A君:エコキュートは、確かに給湯の概念を変えた。オール電化というものが本当にエネルギー消費量が少ないのか、といわれると、実は相当怪しい。特に、IHヒータのコンロ、ヒータ型給湯器による深夜電力利用だと、環境負荷は増加する。しかし、深夜電力が異様に安いもので、経済的には成立する場合が多い。給湯をヒータ型の給湯器ではなく、エコキュートにすると、エネルギー消費量としても、まあ「良い」といった程度にはなる。

B君:ということで、これまでの給湯器の勝負は、エコキュートを主戦級ピッチャーに据えた電力会社の勝利という形勢だったのだが、このところ、ガス会社が攻勢を強めている。それは、コジェネ

C先生:今回は定量的な議論しない。次の話題だけど、紹介だけはするか。原理は、ガスを使って電気を作り、同時に出る熱を給湯に使用するもの。現時点では、家庭用として2種類の方式があって、それがガスエンジン型と燃料電池型。

A君:商品名で言えば、ガスエンジン型がエコウィル。燃料電池型がライフエル。燃料電池といっても、実に多様な形式があるのですが、現在普及を図っているのは、高分子電解質を使ったもの。

B君:まだ一部の企業は、といっても荏原バラードと松下電器だが、がんばっているが、世の中のサイレンスマジョリティの見解としては、この燃料電池型は、実用にならないというのが大勢だと思う。理由は、機器の寿命が10年以上にできないのではないか、また、価格が下がらないのではないか、というこの2つ。

A君:それに比べれば、エコウィルは、枯れた技術を使っている。ガスを燃料にして、通常の4ストロークのエンジンを動かして発電機を回している。

B君:工場などのように、大型のディーゼルエンジンをガスで回すものだと、発電効率も通常の火力発電並になっている。エコウィルの弱点は、発電機というよりも、むしろ熱源になってしまっていること。発電量が余りにも少ないので。

C先生:現時点では、熱需要が相当ある場合でないと見合わないと思われるが、解析は次回以降に。

A君:マイクロガスタービンが将来使われるという話もあったのですが、どうも、効率の点で本命ではなくなった。こんな将来の話は、後ですべきなのかもしれないですが、燃料電池も現在のものは、本命ではない。本命は恐らく、集合住宅などで、50kWぐらいの固体酸化物型の燃料電池を共有して使う形式なのでは。

B君:もう一つの弱点が、分散型電源に共通なのだけど、公共電力網に繋ごうとすると、やはりON−OFFが激しい電源なので、電力網に負荷が掛かること。まあ、風力や太陽光発電よりはマシのように思いますが。

C先生:さらに、給湯だけであれば、太陽熱給湯器というものが有り得る。これも様々な形式のものがあるが、正当に評価されているかどうか、それすら問題なぐらいデータがない。

A君:結局のところ、
(1)エコキュート、電気、ヒートポンプ
(2)エコウィル、ガス、ガスエンジンコジェネ
(3)ライフエル、ガス、燃料電池コジェネ
(4)太陽熱温水器、太陽熱
以上の4種類を比較したい
ということ。

B君:最終的にはそうなのだが、それぞれがどのような主張をしているか、それをまず解析する必要がある。

C先生:厳密なのことを言えば、(1)エコキュートと(2)、(3)は同一の比較レベルにはない。エコウィルで発電した電気でエコキュートを運転するということも有り得るのだが、実は、家庭用としては、そんなにもお湯は必要とされないので現実には無いのだが。

A君:それに、エコキュートなどのお湯は飲めるのですか。調理用にはどうなんですか。

B君:余り推奨していないが、まあまあ大丈夫だろう。

C先生:それでは解析に入ろう。まず、エコキュートから。ダイキンのHPによれば、以下のような条件を考慮すると、ガスの年間69300円が11900円になって、1/6だと主張している。その条件とは、

「・試算条件:標準設定時の当社試算、外気温条件、給水温条件はJRA条件による。電化上手(東京電力)、都市ガス(東京ガス)を使用。 ・ガス基本料金に占める給湯割合は4/5、電気の基本料金に占める給湯の割合は、ダイキンエコキュート1/10としています。(上記の基本料金割合は電力会社での試算値を用いています。) ・機器容量/種別はガス給湯器24号タイプ、ダイキンエコキュート370L薄型フルオートタイプで計算しています。 ・機器効率はガス給湯機、ダイキンエコキュートで各78%、90%で計算しています。また、配管ロスとして5%を見込んでいます。 ・ダイキンエコキュートの風呂保温負荷は、1.87kWh/day、年間240日分を見込んでいます。 ・ダイキンエコキュートの風呂保温はヒータレス保温を想定しています。 ・風呂保温/追いだき運転を行うと夜間時間帯以外でもヒートポンプ運転を行うことがあります。」

A君:作業は、これを読み解くことから始まるのです。

B君:使うのはExcel。大部分はエネルギー換算の問題。
 換算に使うのは、次のデータだけ。
  1kWh(電力)
=3.6MJ(エネルギー一般)
=860kcal(熱量)
 具体的なデータが出ているのは、風呂保温(加温の間違いか?)負荷は、1.87kWh/日というものだけ。これを基本にして、このダイキンというメーカーが何を考えているかを探る。

A君:まず、お風呂ですが、多くの場合、200Lが標準値。どのぐらいの温度条件を考えているのか分からないので、水温15℃を43℃まで昇温することにして、仮の計算をしてみる。合わない。そこで、条件を変えてみると、10℃の水を42℃まで昇温していると数値が近くなるように見える。
 図1を参照してください。こんな風にして、様々な条件を変えられるようにしておいて、順番に計算する。


図1 エコキュート検討用のExcelワークシート

B君:必要熱量が出たところで、ガスを使って風呂を沸かす場合、ヒータ式の電気温水器を使う場合、などを派生的に作っていく。

A君:そして、ガス価格、電力価格をどう設定するか、これが結構問題。なぜならば、基本料金というものが絡んでいるから。ダイキンの主張では、ガスの場合、基本料金の4/5がガス価格に反映されているが、電気の場合には、家電への使用などが多いとして、1/10を給湯用だとしている。今回の計算では、そのあたりを明確には区別しないで、深夜電力の場合には、10円/kWh、通常電力で25kWhといった値にして比較している。

B君:もしも、太陽電池などを使っていれば価格は変わる。
 いずれにしても、費用の大小で環境負荷の大小を議論することは、エネルギーの場合には、ほとんど有りえない。

C先生:どんな指標を使ってシステムとしての優位性、環境負荷の大小を評価するのか。この手の問題だと、価格が最優先されている。最優先されすぎているとも言える。
 次に使われるのが、二酸化炭素排出量。ところが、これも大変難しい問題を抱えている。価格で比較するよりは勿論ましではあるが。

A君:エネルギー源が様々な電力だけあって、どんな一次エネルギーを使うか、原子力をどう考えるか、などなど複雑怪奇。

B君:植物プラを推進している米国のダウ・カーギルなる企業は、自分達は、風力発電や水力発電の電気を買って使っているから、自分達の製造する植物プラは、LCA的な二酸化炭素排出量はゼロだと主張している。ここまで極端ではないにしても、似たような状況が起きている。

C先生:自分達で風力発電装置を持っていると言われたら、まあ、そうですか、といって認めるしかないが、風力発電による電力を金を出して買ったと言われても、免罪符を買ったようなもので、とても許容しがたい。
 しかし、今のところ、世界全体がそんな調子だ。京都メカニズムの一つ、排出量取引なるものがまさしくそれだからだ。ロシアから排出量(排出権)を買ったとしても、地球全体での排出量は全く変わらない。まさに、高い免罪符を買うだけ。ただ高い免罪符が存在していることに意味が無い訳ではなく、その高い免罪符を買わないで、その同じ費用を排出量削減に真に有効な別の用途に使うこと。

A君:日本国内でも、例の排出量報告義務が出てきて以来、二酸化炭素排出量原単位の大きなエネルギー使用を回避しようという企業が増えた。

B君:沖縄で事業を展開している企業などは、電力の二酸化炭素排出原単位が大きいので、気の毒としか言いようが無い。

C先生:というような状況を考慮して、むしろ、一次エネルギー換算で評価するという提案をしたい。もっとも、この方法にも問題が多い。例えば、風力発電や太陽光・太陽熱の場合、やはり一次エネルギー換算で比較するのか、と言われると、それでは駄目のような気もする。やはりこれらのエネルギーは、一次換算エネルギーをゼロにしたい。
 原子力の評価も実に難しいところだ。加えて、バイオマスも難しい。なぜならば、最悪の行為は、バイオマスの過剰利用による生態系の破壊だからだ。これは化石燃料の使用より悪いように思う。

A君:今回、バイオマスは現時点では無関係なのですが、原子力は無関係とは言えない。

B君:どんな理念で指標を決めるか。

C先生:まあ、温暖化も重要なのだが、それと同時に起きつつあるエネルギー枯渇と自然破壊が大問題だ、という問題意識を表現したい、という思いが強い。

A君:枯渇指数、自然破壊指数のようなものを統合的に導入する、ということですか。

B君:まあそうだろう。これも正確な議論を始めれば、存在不可能という結論になる指数だが、現時点で、価格、二酸化炭素ばかりに囚われている現在の日本の環境対応にとって、一つのアンチテーゼを提示するという意味は多きいかもしれない。

C先生:今回は、原子力を若干考慮して、電力を一次エネルギーに換算するときに、効率を0.4程度ではなくて、若干優遇するということでどうだろう。

A君:例えば、0.6とする。これは甘すぎるかもしれないですが。0.4でももともと甘いように思いますが。

B君:まあ、甘すぎは承知ということで、一次エネルギーから電力を作るときの効率に2種類の値を持たせる。0.4、0.6とする。といった試みで良いのでは。

A君:深夜電力は、原子力なので、さらに変換係数を上げるべきだという理論も無い訳ではない。

B君:しかし、そのあたりは、今後の問題にしておけば良いのではないか。個人の価値観の問題だし。
 余り意識されていないだろうが、深夜電力を使っている人や、オール電化を採用している人は、決して原発に反対してはいけない原発でもっとも経済的利益を享受している張本人だからだ。すなわち、原発に足を向けて寝られない人々なのだ。

C先生:これで全体的な枠組みはできた、というよりも仮の枠組みを提案できたということにして、結果を見てみよう。

A君:最終結果は、図1の右の上の方にありますが、ここで、図2として再度。



図2 エコキュート、電気温水器、ガス湯沸かし器の最終結果。

A君:まず、ガスと電気の価格を決めなければならない。基本料金をどう考えるか、これが面倒。

B君:今回は、基本料金を細かく考慮しないで、ガスは150円/立米、電気は25円/kWh、そして、深夜電力10円/kWhとしている。これで良いかどうかは、問題だが、別の条件でやりたい人は、簡単なので、どうぞ。

A君:一次エネルギー使用量を見ると、お風呂を1回沸かすのに、ガス湯沸かし器だと34.3MJ。それをヒータ式の電気温水器でやれば2倍以上の78.3MJ。しかし、価格で比較すると、深夜電力が異常に安い戦略価格なもので、ガス湯沸し器だと112円に対して、2倍以上の一次エネルギーを使っているのに、87円でしかない。

B君:エコキュートのごリヤクは極めて明確。ガス湯沸器だと34.3MJの一次エネルギーが必要なのに、通常換算で、17.1MJ。もしも、原発の場合に、枯渇性が多少緩いとするのなら、11.4MJ程度と1/3で済んでいる。

A君:原発が枯渇性が低いということは、将来、高速増殖炉への移行を考慮してのことで、現時点では、必ずしもこのような優遇的な係数を使う必然性は無いということではありますね。

C先生:ということで、図2が結論だが、そんな結論を導けるほどの解析精度があるのか。これで本当に良いのか、という検証が必要だ。

A君:その通りです。まずは怪しいのが、COPですか。なぜならば、深夜にお湯を沸かすのですが、お風呂に入るのは、それから16時間後ぐらいでしょう。だから、お湯は冷めるに決まっている。

B君:エコキュートの装置として不思議なところは、現在存在しているモデルは、すべてタンク容量が大きすぎるのではないか、と思われるところなのだ。370リットルもある。お湯の温度は90℃になるはずなので、もしも、10℃の水でお風呂の適温にまで温度を下げた場合には、800リットルものお湯を使える状況にあるのだ。お風呂が4回分だ。こんな過大な能力を持つ装置を売りつける理由が分からない。

C先生:容量を増やすことによって、保温効率を上げているという可能性は高い。勿論、最優先されているのは、消費者のクレームだと思われる。お風呂に入ろうとしたら、冷たい水しか出なかった。追い炊きをしたらものすごく高い電力代になった、という苦情を言われないようになのだ。

A君:小型のエコキュートを設計し、お風呂などへの給湯時に、もしも温度が十分でなかったら、ガス湯沸かし器で加温するというシステムが販売されて無いからいけない。お湯が不足したからということで、エコキュートで追い炊きというのでは高い電力を使うことになってしまう。

B君:関西などでは、ガス管を撤去すると、なにやら有利な契約ができるという商売が電力系企業によって行われたようだ。これは実に論外

A君:そんな複合系の装置だとオール電化という名称にならないし。

B君:電力会社にとっては、次回以降に検討するガスを使ったコジェネが目の上のタンコブ。だから、ガス管を今のうちに撤去したい、という思いが強い。

A君:もっともガス湯沸かし器も高いので、両方設置したら、装置代もバカにならない。売れないのかもしれない。

C先生:さて、その話は別にして、折角沸かしたのに、お湯を使わないというのが最悪のパターン。もっとも、次の夜には、まだ完全に冷え切っている訳ではないから、沸かし直すことになって、多少のエネルギーの節約にはなるが。

A君:もしもという仮定で、あらゆる無駄を考慮して、実効的COPが2になったとすると、一次エネルギー消費量でも、ガス湯沸かし器に負ける。費用面での優位性は、深夜電力料金のお陰で、まだまだ健在。

B君:最低でも実効的COPが2.3は欲しいところ。さらに、ガス湯沸かし器の効率は、最近の潜熱利用のタイプだと、0.9ぐらある。これに一次エネルギー消費量で対抗しようとすると、2.7という値を実現する必要性がある。

A君:エコキュートも、学習をするらしい。しかし、ユーザの能力が肝心。本当に優れた装置として運転できるかどうかの鍵を握っている。

B君:小型のエコキュート(200リットル)ぐらいとガス湯沸かし器のコンビを作るメーカがでないだろうか。きっと、高くなるのでできないだろうか。

C先生:それでは、これで大体の議論は終わったとして、図1に戻って、太陽熱温水器の場合を最後に説明したい。現在、我が家の屋上に、太陽熱温水器を設置工事中だ。しかも、冬季対応だけを考えた設置方法にしてある。どうせ、夏は、お湯が余る。むしろ、真冬でも42℃程度の温水を供給できるのであれば、一次エネルギー消費量はゼロだと言えるからだ。ポンプを動かすのにモーターが必要なため、電気が若干必要なのだが、我が家には、太陽光発電装置がある。モーターは、太陽が照っているときに動くので、そのときには、太陽光発電装置も当然動いている。したがってゼロで良いと思う。
 この装置の最大の問題点は、他の再生可能エネルギー装置と同様だが、エネルギー的には見合うことがほぼ確実ではあるものの、価格的に見合うかどうかだ。これはかなり怪しいように思う。
 毎日お風呂に入ったとしても、ガス湯沸し器でやれば、110円×365日。=約4万円。10年間使って、やっと40万円が浮くということになる。となると、設備費などは、50万円がぎりぎりか。
 将来、もっとエネルギー代が上がることを勘定に入れれば、なんとかなるかもしれない。