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     EcoLeadサマースクール2019:募集開始   
   今年のテーマは院生・大学院志望の将来にとって重要です  2019.06.02

             参加大学院生・進学予定者と支援企業の方々へ 



 ここ3年、毎年、秋に開催して参りました、EcoLead主催の大学院生および大学院進学予定者のためのサマースクールを本年も開催いたします。

 2019年9月2日月曜日午後1時集合、
 2019年9月6日金曜日午後5時解散。
 場所:渋谷区 フォーラム・エイト
    渋谷駅から徒歩5分


 概要の詳細は、EcoLeadのHPを、ご参照いただき、このサイトから情報を得て、必要書類をまとめ、ご応募いただければ幸いです。まだ、準備できていないようですが、6月3日中には申込み可能になる予定です。

   http://www.eco-lead.jp/

 支援企業の募集もさせていただいております。椅子1脚の使用権をお買い上げいただき、実際にお見えいただく方は、講師の駒によってご自由に変更することが可能です。売上は、参加院生達の旅費・滞在記の補助に使われます。



 さて、今年の狙いは何か、ご説明いたします。

 その前に、このような選択をした理由ですが、次のことを重要視したからです。

 「現時点ですでに始まっている大転換時代に、環境学を学んだ強みを活かすには、『自分の専門を環境分野の中で次々と変える』という意識をもち、そのために、何かを実践することがもっとも重要である」

 それには、何が環境学の基本であるかを理解することが第一の条件。これは、これまでのサマースクールの狙いでも同様でした。

 自分の専門を次々と変えるためには、どのような準備のやり方があるか、それを実施した人の考え方と実践方法を知ることが第二の条件。実は、今回のサマースクールでは、この第二の条件をクリアーしたと言える先生方に集まっていただきました

 しかし、条件はまだまだあります。

 世界のあらゆる動きを、環境分野を超えて、常にフォローし、その方向性と自分の進んでいる方向がどのような関係にあるかを判断する能力を身につけることが第三の条件

 そのためには、外国にできるだけ長く滞在することを心がけ、少なくとも、英語のレベルをできるだけ高いものにすること。これが第四の条件

 世界で、様々な矛盾がどのような形で爆発しているか。例えば、中南米から米国を目指している難民の実態とは何か、といった変化の説明ができるように情報を集める。これが第五の条件

 情報を集めるとき、何が正しい情報であるかインターネットで正しい情報を探すにはどのようなスキルが必要か。これを獲得することが第六の条件

 情報の正しさを判断するためには、様々な情報の蓄積が不可欠で、それには、地球とは何か、人類とは何か、という基本的な疑問を常に持ち続けること第七の条件

 自分の考え方を、比較的まとまった形で社会に向かって発表することに慣れるために、ブログなどを書くことを習慣とすることで、自分の表現力と社会への発信力を磨くこと第八の条件

 何をするにしても、現実社会ではお金を稼ぐ能力が重要な要素。これが第九の条件

 高年齢になって、以前と同じことしかできない人は、やはり、社会から見放される。それを防止するには、「Always Change youself」というチャレンジ精神が必要で、引退後のために、生きがいになるかもしれない趣味のようなものを作って、趣味へのチャレンジでも頑張ることを社会(友人)にも示すことが第十の条件

 これで第十の条件まで終わりましたが、最後の項目の補遺です。若い頃の趣味に戻って、新規な趣味として再構築するのが、もっとも楽にこの第十の条件を満たす方針のように思います。そのためには、若い時から趣味を磨くことも重要です。第十の条件の補遺。



 ということで、本年の問題意識は、次のようなものです。

 日本における意識の変化は余りなかったと評価していますが、実は、2015年のパリ協定とSDGs以来、世界の環境を巡る情勢は、大幅に変化し、言わば、世界全体が「大転換時代」に突入したものと思っております。しかし、パリ協定におけるもっとも重要なコンセプトが、「気候正義」だったのですが、この言葉に対する日本人の理解は、世界の理解から相当に乖離していて、なかなか「気候正義」とは何かを理解し、語ることができる日本人は余程変人だけで、実質的にほとんどゼロである。これが実態です。

 今後も、このパリ協定に沿った形で、世界は変化していくのか、という疑問を持つかもしれません。最低限、そうでなければならないはずなのです。しかし、実際には、国によってそれぞれの事情があるために、非常に複雑な状況になり、様々な方向性をもった対応が求められることになると思います。それはなぜか。300年継続した化石燃料を基礎とする産業革命が終了するという歴史的な時点が21世紀の中頃から、2080年頃までのどこかであることから、複雑な状況になるのは、まあ当然ではあるのです。

 このような状況は、人類史的にも極めて特殊な状況でありまして、地球全体を眺めるというマインドをもった環境系の人材が必要不可欠であるはずなので、環境領域で、なんらかの専門を身につければ、それで活躍の場はある、と考えがちだと思いますが、実際、どのような専門分野であっても、なんといっても、産業革命以来の化石燃料から離脱をするということが必須であることを考えると、今後、ありとあらゆる状況が非常に激しい変化を起こす可能性が高く、したがって、ある専門領域の知識は、あっと言う間(まあ10年)に古びてしまってある特定の専門領域のみの知識をもっていた人材は、すぐに有用な人材として認めらなくなる、という状況になりそうな気配なのです。

 その一例という訳ではありませんが、最近の大学は、極めて危機的な状況にあると思います。勿論、研究費の獲得が難しいとか、様々な状況はあるのですが、もっとも危惧していること、それは、大学の(特に、幹部の)意識が、大転換時代であるという一般社会の認識から乖離していることです。

 一方、企業は金融への対応、特に、TCFDへの対応をしないと生死に関わりますから、それなりに進化しはじめました。しかし、大学では、このところ、劣化をしはじめていることに気づいていない教授連が多いように思います。

 余り適切ではない例かもしれませんが、5月28日の日本経済新聞のAnalysisという欄に掲載された記事は、東京大学教授白波瀬佐和子氏による記事で、タイトルが、”「包摂型」へ 格差に積極介入を”というものでした。この題名が理解できますか。できれば偉いです。白波瀬教授は、オックスフォード大学社会学博士ですから、有能な方であることはほぼ確実です。しかし、問題は、社会のレベルというものを恐らく正しく認識していながら、それに対応するというサービス精神が不足していることです。このようなサービス精神は、教育者にとってもっとも基本的なものであるべきだと思うのです。何を言いたいのか。「包摂型」というカッコ付きの記述をしているのですから、せめて、SDGsでは、"Noone left behind"、すなわち、「誰一人取り残さない」、という表現になっているということをちょっとだけでも解説すれば良いのです。しかし、それがどこにもありません。

 社会学という学問は、現時点での日本の社会学に限れば、かなり奇妙な学問ではありますが、その基本は(個人的解釈ですが)、「社会の実態を良く知り、それを正確に記述すること」であると思っていて、その最終的な目的は、実は、環境学とほぼ同じです。環境学の最終目的は、「地球を持続可能型にするという目的を共有できる社会の形成が必須であると同時に、持続可能な地球の上で、すべての人の持って生まれた能力がフルに開花するような社会を実現すること」、であると思っています。これが現時点での環境学の基本中の基本であり、そのような意味で、社会学も広い意味での環境学の一部でしかないのです。

 日本の環境関係を歴史的にみると、時流の変化は、ざっと次のような感じかと思います。
◯特定の物質による実被害を伴う公害時代が1970年まで。
◯その後の経済成長による大気汚染・水質汚濁の解決の時代。
◯続いて、廃棄物の違法投棄対応や循環型社会形成の時代。
◯対象物質は変わるけれど、繰り返して起きるダイオキシンや環境ホルモンなどといった、一見、恐ろしげな有害化学物質の時代(実害は無かった)。
◯気候変動問題の時代に突入したのが京都議定書合意時点である1997年ぐらい。
◯持続可能性という根本原則に対して、人間の能力を活かすことの重要性が指摘され、SDGsとパリ協定の合意が成立した2015年。
◯パリ協定は、当時の日本人の地球への認識を遥かに超えた概念、すなわち、「気候正義」が原理原則であったもので、本当の理解に至った人はほとんどいないという状況。
 そして、現時点です。


 国連的な視野で述べれば、1987年のブルントラント委員会が提示した原理原則は、「持続可能性と世代間衡平」で、地球の資源、特に、化石燃料には限界があるから、いつかは枯渇する。現世代と未来世代がどのような配分をすれば衡平なのか、というものでした。Intergenerational Equityと言われます。

 しかし、その後、アマルティア・センが1998年にノーベル経済学賞を受賞し、センの学説のなかでもっとも有名な「潜在能力アプローチ=Capability Approach」が一気に広まり、国連が現時点で採用している国のHuman Developmentを評価する基準であるHD Indexには、この考え方が採用されています。もっとも、その真意を個人的には完全には理解できておりません。

 しかし、最近の欧米における反エリート的な市民の動きを見ると、どうも、エリートが社会の富を独占していると思っている市民が多いようです。日本では、まだ、このような反エリート的(真実は、反大金持ち的)な動きは顕在化していないのですが、我々知らない内に、いつのまにか、日本でも、億万長者がどんどんと生まれているのが現実です。ほぼすべてが、ネットを駆使した投資家と思われますが。

 同じく億万長者である日産ゴーン元社長が有罪かどうか、法律的には問題があるとは言えないかもしれないですが、あの強欲さを示す実例の数々を見せられると、どうも有罪のような気がしてくるのです。ただし、その判断基準は法律ではなく、SDGsの”Transforming Our World”ではあるのですが。

 脱線しました。話を若干戻します。パリ協定の推進役となった社会的仕組みがいくつかあって、自然エネルギー100%で運用する企業連合であるRE100、自社の製品が直接的にだけでなく、間接的にCO2削減に貢献することを主張できるSBT、そして、日本を含めたすべての金融機関によるESG投資。すなわち、環境・社会・ガバナンス(=企業統治)に対するしっかりした方針を持っている企業にしか融資しない、という段階を経て、パリ協定が合意された2015年のCOP21で、各国の財務大臣や中央銀行総裁などが集まって決まったTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の設立、ということがあり、現時点での大変革が起きたのです。

 SDGsでは、いくつかの基本的な目標(本当はゴール)が述べられているので、そちらばかりに注目している企業が多いのですが、実際には、SDGsの最大の目的は、その合意文書のタイトルである"Transforming Our World"(=「地球上の人類社会をどう変えるか」)でして、しかも、5Psと呼ばれる中間的な目標もしっかりと記述されていて、People、Planet、Prosperity、Peach、Planetがその5つ。これらの5Psの状況を改善することによって、最終目的である"Transforming Our World"を実現するのが、国連で合意されたSDGs文書の本当の中身です。



 さて、そろそろ結論にします。今回のサマースクールは、これまでのサマースクールとは、成り立ちがかなり違います。すでに述べましたが、「環境学の全体像を把握しないと、自分の研究の立ち位置がはっきり見えないよ。だから勉強しに来て欲しい」、だったのですが、今回は、より現実に近い問題をテーマにしました。その問題とは次のように表現できます。

 環境学を学び、環境系の大学院を卒業すれば、パリ協定以来の社会の状況変化のお蔭で、かなり有利な就職戦争を勝ち抜くことができるものと思われる。しかし、問題は、環境分野におけるあらゆる課題は、大体15年ぐらいで解決され、社会の関心は、次の問題に移ってしまう。

 もっとも、パリ協定のお蔭で、もしも、気候変動対応が研究テーマのどこかにあれば、人類による基本的な解決への対応は、もしも1.5℃上昇までに温暖化を抑えるとして莫大な変革を行ったとしても、2050年頃まではかかるし、もし、2℃でよければ、1.5℃よりもややノンビリした対応になるので、2080年ぐらいにそれを実現することになるので、職業の重要性という観点では、それなりに有利な職業を得ることができるだろう。

 しかし、気候変動以外の分野であれば、同じ環境分野であっても、直面する問題は、今後の時代がすべての状況が大幅に変化してしまう可能性がある大転換時代だけのことはあって、その問題を解決するために許容される時間は15年程度でしかないのではないか、と予測される。となると、15年毎に、自分の専門分野を平然と変える能力が求められる。これは、現在、大学で教職の地位にある教授連が、大学・大学院を過ごした時代とは大きく違う。「専門は専門なんだよ」これが、過去の教授のスタンス。しかし、今後は、「専門はこれでしたが、現時点では、これが専門です」というスタンスの人材でないと、専門分野の寿命が極めて短いという事態への対応が不可能だと考えられる。

 そのためもあって、今回の講師は、自分の専門を新しい分野へ拡張することに抵抗せず、むしろ積極的に、新しい課題にチャレンジされた方々をお招きしています。このような方々が、どのような条件で専門を変える、あるいは、拡張することを強いられたのか。どういう対応によって、それに対処することができたのか。あるいは、何を勉強しておくことが、もっとも有効であったと思えるのか、何が役に立たない勉強の対象だったのか、などなど、他の機会では恐らく決して聴くことのできない本音を聴く機会として、今回のサマースクールは設定いたしました

 企画を作った人間としては、現在の大学院生にとって、今後の人生設計のために、絶対に役立つサマースクールだと信じていますので、是非、ご参加ください。募集人員は、今回も20名ですので、参加するかどうかについては、早めの決断が必要ではないか、と推定しておりますので、よろしく。



 最後に、本年のプログラムの講師への期待の記述でまとめとします。含む自己紹介。登壇順です。

1.安井 至(自己紹介) 2日月曜日午後2時
 環境との関わりでは、文部省(当時)の環境プロジェクトのリーダーを5年間(1993〜1998)務め、10種類からなる専門家の話す環境語を一通りマスターしたため、環境問題のほぼすべての領域をカバーするようになった。東大教授を58歳で辞めて国連大学へ。それ以後の人生は、まさに「非常に良い新しい経験」の連続したものだった。最近、もっとも気になることが、日本という国の特殊性を活かした成長とは何か。

 以下、安井個人による講師のご紹介です。ひょっとすると、間違った記述があるかもしれません。また、敬称なしで失礼します。

2.森本英香 + 森下研  3日火曜日午前10時
 森本様は、現在、環境省の事務次官で、官僚のトップです。しかし、極めて柔軟な発想の方で、過去の環境問題を基礎に、今後の環境問題がどのような形になるか、語っていただけそうに思います。やはり、環境問題の寿命は15年と思っておられるようです。
 森下研氏は、私の所属する持続性推進機構の専務理事でして、非常に変わった経歴の持ち主です。大学の専門は、確か政治学。しかし、散乱ゴミの問題から環境分野に入り、様々な新政策を提案してきたアイディアマン。

3.中根英昭   3日火曜日午後2時
 中根先生は、大阪大学・東京大学の大学院で、物理化学を専攻し、理学博士。その後、国立公害研究所(現国立環境研)では、アジア自然共生研究グループ。アジア等の国際連携担当。高知工科大学に転出して、環境プログラムを立ち上げ、ドローンを活用した大気観測などを推進。しかし、最後には、AIにおける深層学習の環境分野への応用を追求。

4.竹内純子   4日水曜日午前10時
 慶応義塾大学法学部卒。元々は、東京電力で尾瀬の自然保護部門を担当。その後、NPO法人国際環境経済研究所 理事・主席研究員に転進して、今や、日本におけるエネルギー・電力関係と関連する環境関係の知識を持つ。この領域でのトップの女性。

5.松本広重  4日水曜日午後2時
 松本先生は、もともと、無機材料化学を専門として東京大学大学院を卒業。九州大学においては、専門を変えて、水素関係のプロジェクトに従事し、様々なチャレンジをしている。学部担当は、工学部機械航空工学科などで、本来の専門外の学生に対して講義をしている。

6.古川柳蔵   5日木曜日午前10時
 古川先生は、東京大学工学部材料科学科・大学院を卒業・修了し、博士号獲得。三菱総合研究所に入社。その後、東北大学大学院環境科学研究科の助教授(その後准教授)に転身。2018年に東京都市大学環境学部大学院環境情報学研究科教授。90歳の高齢者のヒアリングで有名。

7.宇佐美誠  5日木曜日午後2時
 宇佐美先生は、名古屋大学法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は法哲学。名古屋大学、中京大学、東京工業大学を経て、京都大学地球環境学堂教授。最近、環境分野へ進出し、「気候正義」という書籍を出版された。保守的であるはずの法哲学者としては、相当な進歩派だと思っています。

8.醍醐市朗   6日金曜日午前10時
 醍醐先生は、京都大学大学院エネルギー科学研究科修了卒論では、当時の流行であった、金属人工格子が研究テーマであった。しかし、その後、方向転換してLCA(ライフサイクルアセスメント)に取り組むが、その基礎にMFA=Material Flow Analysisがないと、有用な結論がでないことに気付き、MFAに確率的過程論(マルコフ過程)を追加し、あらゆる環境負荷を定量的に評価する能力を付与した。現在、東京大学工学系の准教授。