| No.004 電球型蛍光灯はエコプレミアムか 07.17.2005 誰もが認めるエコではあるが | |
電球型蛍光灯がエコ商品であることについては、実のところ、全く問題は無い。先日、質問をいただいたが、自信をもってエコ商品であると言える数少ない商品である。しかし、こんな簡単な情報も普及していないのは、それなりに問題だと思う。メーカーの努力が足らないのではないか。 さて、それでは電球型蛍光灯が完全なエコプレミアム商品か、と言われると、それにはまだ多少疑問が残る。まだまだ白熱電球にかなわない部分があること、さらに、品揃えなどにしても、不十分な点があることなどがその理由である。 今回は、電球型蛍光灯の新旧比較などを含めて、この商品を考えてみたい。 C先生:蛍光灯とは何か。ここからやる必要があるか。 A君:蛍光灯とは、ガラスの内側に蛍光体を塗った放電管です。放電とは何か。放電とは、気体に電圧を掛けたときに、気体が電気を伝えることです。 B君:固体の中を電気が伝わるには、電子なり正孔と呼ばれる電気を帯びた粒子(荷電粒子)が動ける形で存在していることが必要。ガラスなどのような絶縁体では、電子は存在しているのだが、自由に動ける形になっていない。同様に、気体が電気を伝えるには、電気を運ぶなんらかの荷電粒子がその気体の中に存在していることが必要。空気の圧力を徐々に下げていくと、そのうち、気体を構成している原子が電子を放出してイオンとして存在できるようになる。圧力が高い間は、放出した電子が、すぐ別の原子にくっつくし、イオンも他の気体原子と衝突してすぐ消えるので、電子とイオンが安定して存在できないのだ。 A君:原子としては、アルゴンやネオンのような不活性元素が良くて、ネオンはもともと元素の名前なのに、放電管の代表的な名称にもなっている。キセノンも同様に元素名だけど、電球の名前だと思っている人もいるかもしれない。 B君:放電をすると、その中に含まれている原子から電子が出て、その電子が原子に戻るときに、特有の色を出す。ネオンだと赤色。どんな色を出すのか。それは、原子の特性による。 A君:蛍光灯の中に入っていて放電をする役割を果たしているのが、水銀。なぜ水銀なのか。それは水銀が放出する光は紫外線で無色。殺菌灯とか、ブラックライトと呼ばれるものがあるけれど、これは、普通の蛍光灯のガラスの代わりに、紫外線を良く通す組成のガラスを使ったもので、水銀ガス中での放電で発生する紫外線を効果的に外に出すような放電管。 A君:これも当然で、低いエネルギーでたたいて、高いエネルギーの何かを出すことは普通はできない。ボクシングでも強いエネルギーでたたかれるとダメージが大きくが、ダメージとは、たたかれたエネルギーが、機械的な振動のエネルギーなどになってを脳などに影響を与えること。蛍光体の場合には、それ自身へのダメージにもなることはなるのだが、別の光を出す。 C先生:長くなった。再度まとめると、以下の通り。 A君:しかし、残念ながら、いささかの工夫が必要です。なぜならば、水銀は普通は液体。圧力が低いときには、多少気体にはなっているのだけれど、放電管の場合、気体として存在していないと、電気を通すイオンにならないので、役に立たない。そこで、水銀を気体に変える必要がある。簡単には、温度を上げる。そのため、蛍光灯の両端には、ヒーターが入っていて、点灯時にはこのヒーターが加熱されて、水銀を蒸発させる。そして、その後、ヒーターを切ると同時に、放電を開始する。 B君:これが普通の蛍光灯。点灯管というものが付いていて、パッパッパッとなってから本当に光るようになっている。 A君:あの点灯管というものの良くできていて、バイメタルというものが入っていて、それがヒーターへの電流のスイッチにもなっている。すなわち、点灯管に電流が流れると、その部分の温度が上がって、1〜2秒程度で、ヒーターへの電流が切れる。蛍光灯の方に電流が流れ始めると、点灯管の方には電圧が掛からないようになっている。こんな複雑な装置を、半導体などのコンピュータ的頭脳を全く使わないで実現していたのが、昔の蛍光灯。そのような昔の蛍光灯には、点灯管、安定器という名称のコイル(電線を巻いた物)などが主要部品としてあるだけ。 B君:その安定器の絶縁油に、PCBが使われていた時代がある。PCBというものは、絶縁油としては最高の性能を持つものだったから。いまだに小・中学校などに、そんな古い蛍光灯機器が残っている場合がある。まあ、PCBはそれ自身、触って即死といった猛毒とは全く違うものなので、それほどの心配は無い。もちろん、環境に放出すべきではない物質ではある。難分解性で蓄積性が高く、食物連鎖で濃縮されるから。 A君:昔は、手が機械油などで真っ黒になると、PCBで手を洗ったなどという話があるぐらい。だからといって、アスベストのように、後で中皮腫になったりするという物質でもない。口に入れば、様々な障害を起こすので、それは問題ですが。 C先生:昔から「蛍光灯」はなかなか点灯しないので、ある人を「蛍光灯」と呼ぶことは、ある種の悪口だった。しかし、現在の蛍光灯は、瞬間的に点灯するものが多くなった。それは、50Hzあるいは60Hzの周波数を、高周波に変換してから蛍光灯を点灯するようになったから。 A君:Hf点灯と呼ばれる方式で、この方は効率も高い。さらに、昔は蛍光体が広い周波数に渡る光を発光するタイプのものだった。しかし、最近では、3波長タイプといって、赤、緑、青の三色を発光する2種類の蛍光体を混ぜて使うようになった。これによって、発光効率が高くなった。 B君:発光効率と言えば、LED(発光ダイオード)の方が高いと思っている人も居るだろうが、指向性の無い光を得ようと思ったら、蛍光灯が未だにベスト。 C先生:いわゆる白熱電球は、エネルギー効率が極めて悪いものだ。それは、熱を光に変換する効率が悪いからだ。それこそ二重コイル型とか、色々な工夫がされてはいるし、60W型の電球の消費電力も、54Wぐらいには改善されてきた。しかし、原理的にこれ以上の効率の改善は無理だ。 A君:各家庭におけるエネルギー消費量では、照明は一つの大きなジャンルになっている。平成13年度の電気事業便覧によれば、15.4%。テレビの大型化、エアコンの台数のさらなる増加などで、徐々に割合は減りそうだが、照明の効率を高めることは、一つの重要なエコ行動だ。 B君:エコ行動と思えても、良く良く考えてみると、必ずしもエコではないということが数多く存在する。しかし、白熱電球を電球型蛍光灯に変えることは、エコロジーの観点からみても、エコノミカルに見てもエコなのだ。 C先生:これまで電球型蛍光灯をエコプレミアムだと正式に認定しなかったのは、エコノミカルな方法であるし、エコロジカルでもあるのだが、多少、多少の我慢が必要だったからだ。多くは、起動時の輝度が低いことが最大の欠陥だったのだが、それ以外にも欠点があった。 A君:本当に「蛍光灯」で、最初はぼんやりと点灯し、そして徐々に明るくなる。5分間もすれば、まあまあの明るさになる。 B君:それにもう一つの問題点が、点けたり消したりすることとによって、寿命が大幅に短くなること。実際に確認した訳ではないが、そう言われていた。 A君:さらにもう一つの欠点があって、それは、温度が上昇すると、明るさが下がるものだから、密閉型の器具には使えなかった。 B君:その対策として、どうも電球型蛍光灯の水銀は、アマルガムと呼ばれる合金として入っていたようだ。 A君:それが、昨年松下が出したスパイラル形は、アマルガムを使っていない。水銀がそのまま入っているようです。 B君:それに加えて、電球型とはいっても、大型で、とても電球だとは思えないサイズだった。 C先生:少々古い型があるので、実際に比べてみたい。写真1がその比較だ。 A君:随分と小さくなっていますね。最近のねじり型のものは、すでに電球よりも小さい。これは驚くべきこと。東芝も、電球サイズというものを売り出しています。ほぼ完全に電球と同じサイズ。 B君:それに最近もののは、繰り返し点灯でも劣化しなくなった。耐熱性も向上して、密閉型の機器にも使えるようになった。ということで、現時点では、欠点はほとんど解消。 C先生:現時点で残る唯一の欠点が、改善されたとは言え、まだ点灯直後の輝度が、50%ぐらいしかないことだ。我が家には、白熱電球が1個だけ残っているが、それは洗面所で、やはり蛍光灯にすると、点灯直後に薄暗い。2個の電球のうち、1つは白熱電球のまま残してある。それ以外の電球は、すべて電球型蛍光灯に変えた。第一世代のぼんやり薄暗いタイプには引退してもらって、ねじり型を中心に新しいものが主力。こんな状態になったのが、ここ1年ぐらいのこと。 A君:エコロジーの点でエコだという計算をやってみますか。 B君:LCAデータを探してみるか。余りまじめにやらなくても、使用時の環境負荷が大きいことは確実なのだが。 A君:脇さんという人が発表していて、製造時の二酸化炭素の排出量は、どうも1%ぐらい、すなわち、使用時の二酸化炭素排出量が99%というデータのようです。 B君:やはりLCAをまじめにやるまでも無いというのが結果か。 A君:脇さんの結果を図1に示しますが、水銀を考慮しているのが面白いところ。 B君:なるほど、石炭発電から出る水銀を考慮しているのだ。 A君:廃棄時に出る水銀は、放電用の水銀で、使用量は一つの蛍光灯で10mg以下です。 B君:欧州のRoHS規制でも、水銀は使用禁止の対象になった元素だ。しかし、RoHS規制でも、水銀を使っているからといって水銀を使用禁止にしてはいない。 A君:水銀が環境中に出たとき、問題になるのは、やはり水俣病のような人体影響がでるかどうか。 B君:物質名としては、メチル水銀という物質になって、これが高級魚には蓄積される。特に、われわれが食べている、マグロ、カジキ、キンメダイなどではその濃度が高い。 C先生:この話は、すでに何べんも出ている。マグロなどに含まれている水銀は、天然起源が大部分。地球には海底火山が大量にあって、そこから年間2〜5万トンぐらいの水銀が海水に供給されていると考えられている。蛍光灯を1億本生産したとして、1本あたり10mgだとすると、丁度1トンの水銀が必要になる。要するに量が4桁ぐらい違う。現在の蛍光灯の日本での生産量は、恐らく4億本ぐらい。世界中でも50億本ぐらいではないか。となると、世界中で蛍光灯に使用されている水銀は、もしも1本あたり10mgだとすれば、数10トン。 A君:昔は、1本あたり400mgといった量が入っているものもあった。途上国などでは、未だにそんな蛍光灯が使われているかどうか。 B君:極端な話、もしも1本1グラムだとしても水銀使用量は数1000トン。まだ、天然起源の水銀量よりも少ない。 A君:それでは、エコノミカルかどうか、という話に行きますか。これは簡単で、松下の蛍光灯のページでも見ることができます。簡単に言えば、これに変えない理由が無いぐらいエコノミカル。 B君:松下や東芝ライテック、あるいは、三菱オスラムのページを見てもらえば充分。 C先生:一時的に多少の投資を必要とする。例えば、10本いっぺんに蛍光灯に変えようとすると、やはり、1万円以上の投資が必要になる。しかし、その元は、割合と早く取ることができる。 A君:ということでお奨め。 B君:どれを奨めるかとなると、やはり、丸いものではなくて、むき出しタイプ。なぜならば寿命が長いから。恐らく、冷却性能が高いからだろうと思う。普通のものだと6000時間だが、むき出し型だと、8000時間。 A君:松下の無電極放電タイプは? B君:まだちょっと高すぎる。公称寿命が30000時間もあるので、天井が非常に高くて、交換に相当の作業を要するような場合には、選択肢として考えても良い。 C先生:最後に電球型蛍光灯への注文だが、一つは、電球色とは言いながら、やはり、目への刺激がちょっと違う。特に、100W型のものは、ギラギラした感じがする。これは、三波長型の限界なのではないか。そこで、技術的に可能なら、通常の蛍光体を使ったタイプも欲しい。多少効率は下がっても仕方が無い。それに、このギラギラ感のためか、明るさを微調整したいと感じることが多い。そこで、60Wの次が100Wというのが、多少飛びすぎだと思う。75Wか80W型が欲しい。 A君:注文が付きましたが。一応、エコプレミアム商品No.004として登録することにします。 C先生:まあ、そろそろ時期だろう。全く関係無いが、知床が世界遺産になったことだし。 |