エコプレミアム研究所 Eco Premium Lab.                 

 No.003 大型テレビ どのタイプがエコプレミアムか 05.08.2005 
             
 

 久々に、エコプレミアム商品の解析。その前に、お断りが一つ。これまで3年間に渡って連載してきた日経エコロジー誌上のエコミシュランは、この6月号で最終回。しばらく休止することになりました。永久に休止かもしれませんが。

 日経エコロジーのような環境の専門家が読む雑誌でのエコミシュランは、もはやインパクトが無くなって来た。これが休止理由の一つ。それに対して、一般市民が商品を選択する際、環境情報を十分に考慮するといった人は極めて希なので、むしろ、一般誌への移住をすべきかもしれない、と考えたという部分もある。

 さて、この度、DVDで映画を見るために、やや大型のテレビを購入した。これまでの古い29型で横長の画面を見ると、非常に小さくて良く見えないのがその理由。

 今回のHPでは、その商品選択の経過をご報告。結果論だが、現時点が大型テレビ購入にとって、最適の時期ではなかったかもしれない、と思っている。本当を言えば、最低でもあと1年待つべきではなかったか。ただ、個人的事情でそうも行かなかった。それは、9月に飼い猫が失踪して数ヶ月。もう帰ることもないだろうと、爪での引っかき跡だらけの壁紙の交換など、家のリフォームを行っていたからで、家具などの配置を変えてしまったら、奥行きのある10年選手の古いCRT29型テレビの置き場が無くなったのだ。

 候補とするテレビの境界条件は、液晶のもっとも大型のものまで。この境界条件の範囲内で、資金を考え、環境を考え、置き場所を考え、最適のものを選択することであった。


C先生:検討を開始したのが、2005年の1月。この段階での、候補になりそうな商品のリストは、こんな風だった。

液晶37インチ シャープ、東芝、三菱
液晶40インチ ソニー、ビクター
液晶45インチ シャープ
液晶46インチ ソニー、サムソン

プラズマ42,43インチ パイオニア、パナソニック、日立

A君:現状でのスペックを調べて、表1、表2、表3、表4にまとめました。価格は、東芝の液晶など、モデル末期のものは大幅に下がっているようです。









C先生:ご苦労。自分でも調べたのだが、最大の関心事である設置面積などのデータが分からない。メーカーのHPを作る人間は、自分の家に置くことを考えていないのではないか、と思った。

A君:選択の方法は?

C先生:まず価格だったのが実情だ。やはり設置する台込みで、税込み50万円を超すことは考えられなかった。しかし、そう言ってしまっては面白くない。

B君:まずは、消費電力と製造エネルギーなどを考慮したことにしよう。

C先生:となると、現在使用中のテレビが150Wぐらいだったので、多少増えても200Wぐらいまでにしたかった。余程理由があれば、300Wぐらいまでは選択対象として考慮し、もしもそれを買ってしまった場合には、見る時間を減らすことで対応する、と第一次選択条件をセット。液晶とプラズマタイプでは、消費電力は大体のところ画面面積に比例するので、それを考慮して、表1−4に示すように、37インチサイズに換算した消費電力を産出し、以下のように評価した。

液晶37インチ △シャープ、△東芝、×三菱
液晶40インチ ×ソニー、×××ソニークオリア、△ビクター
液晶45インチ △シャープ
液晶46インチ ×××ソニークオリア、△サムソン

プラズマ42,43インチ △パイオニア、×パナソニック、×日立

A君:○が無いのが情けないところですが、こうしてみると、プラズマの消費電力もそれほど悪いという訳でもないですね。パイオニアの健闘は光ります。×××が付いたのは、ソニーのクオリアの液晶モデル。LEDを照明用に使用していて、このようなモデルは、まあ特殊品なので、一般消費者は買わないからまあ良いかもしれませんが。

C先生:こうしてみて、先ほどの値段のことを考えると、37インチのシャープと東芝、40インチのビクターの3機種が候補になった。

B君:シャープは、除菌イオン製品の販売を止めない限り買わないのでは。

C先生:小泉さんが靖国神社詣を止めない限り、日本は駄目だといった対応に近いものがあるので、除菌イオン製品を作ってるからといって、シャープ製品を全面的に買わないということではない。勿論シャープを優先的に買うことは無いし、評価をして同等の製品があったら、恐らくシャープ製品は買わないだけだ。ただし、このテレビに関しては、全く別の意味で買う気がしない。その理由は、電源コードから塩ビを排斥したこと。これも、全く意味がないどころか、テレビのように、コンセントの抜き差しをしない機器では、却って危険。メーカーとしていかにも環境配慮をしているという格好を付けるために、ユーザにリスクを押し付けるのは納得できない。

B君:一部の環境活動家は、塩ビを目の敵にしたが、電源コードで塩ビほど優れた素材はない。リサイクル時にメーカーが多少の配慮をすることで、ユーザ側のリスクも環境負荷も低い。

C先生:最近、塩ビはリサイクルの阻害要因だという話も出るのだが、それはメーカーがリサイクルについてもコスト削減だけを考慮しているからだ。

A君:となると、ビクターか東芝。

C先生:そこで、色々と調べたが、どうも東芝は比較的価格がこなれ始めていて良いのだが、どうも評判が良くない。画像が汚いというのだ。そこで、かなり予算オーバーだが、ビクターにしようかな、と思った。

A君:ビクターは卓上型なので、テレビ台を別途買わないと。これがさらに価格を吊り上げて問題。良いテレビ台は結構高いので。10万円以上するものもざらにある。

C先生:その通り。そんな状態で3月中旬頃までぐずぐずとしていた。要するに、決められない状態が続いたのだ。そうこうしているうちに、エプソンの新聞広告が出た。Living Stationという商品で、昔からあるリアプロジェクションタイプのテレビだ。

A君:ある人にリアプロジェクションタイプという話をしたら、「あの幻灯機のようなぼんやりとした絵」という反応が返ってきた。幻灯機という言葉が、レトロな感覚で、リアプロジェクションタイプの評判が悪かったことを証明しているような表現でした。

B君:米国ではリアプロジェクションが相変わらず主流。

C先生:その最大の理由は、価格だろう。日本のように、高いテレビが売れるような国ではないのだ。それに、ややかさばるタイプではあるのだが、広いアメリカの住居では問題にならない。

A君:未だに米国ではCRTのテレビが主流のようですし。

C先生:先日、グアム島のスーパーを覗いたら、やはりCRTのテレビとリアプロジェクションが並んでいて、20インチぐらいの小型の液晶もあるには有ったのだが、鍵の掛かるガラスケースの中に置かれていた。リアプロジェクションテレビはRCA製で、本当に幻灯機なみの画像が出ていた。価格は、40インチだったのだが、$1200ぐらいとかなり安価。

A君:グアム島のテレビは、まだ通常の放送で、ハイビジョンではないですよね。

C先生:そのようだった。だから、余り大きなテレビで見ると、アラばかりが目立つ。

B君:日本では、第三の大型テレビとして、リアプロジェクション型が見直されている。このところ、続々と商品化されて販売される方向のようだ。

C先生:その理由だが、液晶PCプロジェクターが一般化すると同時に、あの光学系が格段に良くなった。以前、大型のものでも1500ルーメン程度だったものが、最近では、5200ルーメンなどといった高輝度のものが比較的安価に販売されるようになった。

A君:格段に良くなったということですが、光の利用効率が改善されたからです。液晶というものは、全面が光を通す訳ではないので、光を通す部分だけに光を集中させるマイクロレンズというものを使うとか、液晶というものは、もともと偏光を使うもので、どうしても、光の半分しか使えなかったのですが、液晶プロジェクターでは、ローテータという偏光回転素子を利用して、薄型偏光変換素子なるものが組み込まれて、すべての光を利用可能にしたりする技術が開発・利用されました。画面の明るさを均一にするためのインテグレータレンズなるものも使われています。このあたりの技術的な解説は、次のWebサイトが面白い。
http://www.3lcd.com/jp/ftr_ps_2_j.html#il

B君:液晶プロジェクターを箱に入れたようなものが、リアプロジェクション型テレビ。勿論、スクリーンの工夫も重要。

A君:最近のリアプロジェクションタイプのテレビの比較表を表5に載せます。

B君:しかし、実際の画質は見るまで信用できない。

C先生:それが問題だったのだが、たまたま、表参道に、EPSONがショールームを開設したのだ。そこにちょっと行って見たら、想像をはるかに超えた絵が出ていた。これなら普通の液晶と同程度。場合によっては、応答速度などを含めれば、それよりも良いかもしれない、と思わせるものだった。

A君:大型液晶テレビの弱点は、動きの激しい画像。そうなると、明るさもコントラストも下がるとのこと。これは、液晶の応答速度が間に合わないから。液晶テレビで見るには、静止画がもっともキレイ。

B君:確かにプラズマ軍団は、そんな主張をしている。

C先生:表5のリアプロジェクションテレビは、どれもが、たった0.7インチというかなり小型の液晶ユニットを利用している。そのため、応答速度に特に問題はない。しかし、やはり静止画がキレイなことに変わりはない。

A君:細かいことを言い出せばキリはないですが、もともと、テレビの画像などは、一過性のものですから、瞬間的に違和感がなければ、充分ですよね。

C先生:ということだが、実際、リアプロの最大の美点が消費電力の少なさ。このエプソンだと、100Wの投影用のランプを使っていて、テレビとして180W。しかも、このリアプロは構造的に消費電力がサイズに依存しない。だから、57インチモデルでも同じ消費電力。

A君:37インチのサイズ当たりの消費電力だと、57インチモデルだと、なんと76W。100Wを大幅に切っている。ビクターは、110Wのランプを使っているので、61インチの機種の37インチ換算の消費電力はさらに低い。

C先生:これが最大の決め手になった。もう一つの決め手は、チューナーが別売りだったこと。普通の地上波などのチューナーは付いているが、地上波デジタルなどは別売りなのだ。自宅は、東急ケーブルテレビなので、その分お徳。この機種は、一般量販店などでは、売っていない。直販なので、3月末にEPSONダイレクトに発注した。

A君:価格的にはまずまず。専用のスタンドも3.8万円と妥当なところですね。

C先生:3月末までに発注すると、そのスタンドが無料だったのだ。

A君:ビクターの40インチ液晶を買うことに比べると、テレビ台を別に買わなければならないことを考えると、相当違いますね。

C先生:どうも、合計金額で20万円ぐらいは違ったのではないか。35.8万円と56万円ぐらいか。実は、この価格の差が、最大の決め手だった。しかし、そう言ってしまっては、身も蓋もないが。

A君:使ってみて、すごく違和感が無ければ、それでOKですね。

C先生:全く違和感がない訳ではない。その一つが、スイッチをONにしたとしても、輝度が徐々に上がってくること。1分間ぐらい掛かる。

A君:リアプロの弱点は、視野角。液晶の弱点でもあったのですが、このところ液晶は改善が著しくて解決済み。リアプロは、スクリーンの構造を変えなければならない。この開発はまだまだ発展途上だと思いますね。

C先生:視野角は広くない。真正面から左右40度まではOK。上下は、下からは比較的広いが、上から見下ろしたときの視野角は狭い。映画のスクリーンみたいに、下から見上げる形が自然。

A君:真正面から見たときには明るくて、斜めから見ると暗いとか。

C先生:その傾向がないとは言わないが、気にはならない。

A君:昔のリアプロは、画面が凹面状に見えたのですが、それはどうですか。

C先生:見る位置による。かなり斜めから見ると、例えば、70度ぐらいのところから見ると、そんな風にも見える。

A君:あとは、直線が直線に見えるか。画面の周囲で、歪むことが良くありますが。

C先生:それは気にならない。厳密に言えば、多少その傾向があるが、

A君:となると、結論は。

C先生:画面の質では、問題にすべき重大なところがあるとも思えない。ハイビジョン画面以外では、テレビの画面はもともと余りキレイでない。DVDの画面も同様で、それほどキレイではない。このテレビの画面は、確実にテレビの画質を上回っている。ハイビジョンでは、本来は、1080本の垂直分解能があるのが理想だが、これらのリアプロの機種は、720本しかない。だから、変換か間引きをやっているのだと思うのだが、全く気にならない。PCのXGAの画面(768本)を写すと、いささか汚いのがバレるが、そんな用途には使わない。

A君:画像的には、まあ充分という結論ですね。

C先生:画面以外で問題になりうるのがサイズ。やはり奥行き。本体の奥行きは38センチと充分に薄いのだが、テレビ台に載せると奥行きが47センチになる。この台の設計が悪いと思う。やはり、ただ、台にDVDなどを載せるには、このぐらいの奥行きが必要ではある。台の前面とテレビの前面が同一平面になるようなデザインなのだが、テレビ台から、画面が多少でも後ろに位置するようなデザインの方が良い。ただし、それを実現するには、コネクター類の配置をかなり考えないとならないのだが。

A君:コーナーに設置するのであれば、余り問題にはならないのでは。

C先生:その通り。

A君:それ以外は。

C先生:もしも問題になるとしたら、冷却ファンの音。まあ静かなのだが、夜に耳をそばだててれば音がしない訳ではない。そして、一旦聞こえてしまうと、結構気になる。通常の視聴位置まで遠ざかれば、そんなこともないのだが、もう少々音に気を使ってくれることが望ましい。最近、液晶もプラズマも冷却ファンなしのものが増えている。NECのパソコン並に水冷方式を考慮すべきだろう。

A君:それで、DVDでの映画は見やすくなったのですか。

C先生:DVDの固有の画質に比べると、このテレビの画質は充分すぎる。むしろ、良すぎてDVDの欠点が目立つぐらい。DVDで使っているMPEG2という方式だと、720×480の分解能で充分。実は、そんな文句を言うまでもなくて、充分以上の性能をもっている。映画によっては、16:9のこのテレビでも、上下が切れるが、かなり見やすくなった。

A君:地上波デジタルは?

C先生:一言で言えば、極めてキレイだ。ただし、ハイビジョンカメラで撮影したものは、という限定付きだ。通常のニュースなどだと、カメラがハイビジョン対応のものばかりとも限らない。カメラの品質がしっかりと分かってしまう。

A君:現状では、リアプロがもっともお奨め。

C先生:まだ、確実なお奨め品があるとも言えない。大型テレビそのものが、まだまだ発展途上だと思う。現時点では液晶とプラズマの対決の時代だと理解されているが、この時代は比較的早く終わるのではないか。1年後には、リアプロ、液晶、プラズマに加えて、キャノン・東芝が開発中のSED(Surface-conduction Electron-emitter Display)なる平板テレビが戦線に加わっているだろう。最初の製品が何インチで出てくるかにもよるが、このSED方式は、小型のブラウン管を多数並べたような構造で、消費電力が少ないのが最大の特徴。しかも、原理的には、これまでのCRTと同じような画質が得られるはず。これらに加えて数年後には、有機EL方式も出てくるかもしれない。現状だと、寿命の問題が解決できていない。

A君:要するに混戦状態。未来予測は?

C先生:7〜8年後の勝手な予想をすれば、大型では、SEDが性能、特に、寿命と値段次第だが本命か。それにリアプロが絡んでいる。32インチまでの中型・小型では液晶がやはり強い。CRTの復活はさすがに無いだろう。

A君:プラズマは? 

C先生:なにか超大型の用途などで生き残る。家庭用以外の用途なのではないか。

A君:1年後には、SEDが普及を始めている可能性は。

C先生:まだではないか。1年後に「買い」になるのは、恐らくリアプロで、現行の次のモデルのような気がする。そして、2〜3年後ぐらいに、SEDを買う時期が来るのでは。

A君:だとすると、今回のEPSONのリアプロの購入は、やはり冒険だった。

C先生:そうも言える。パソコン用液晶プロジェクターの進歩の状況からみて、まあ大丈夫だと踏んだ。細かいところでは、まだまだ進歩するだろうが。特に、家庭内利用用としては、冷却ファンの騒音への対処を強く要望したい。