エコプレミアム研究所 Eco Premium Lab.                       

 No.002 プリウスの環境負荷はどのぐらい低い 06.27.2004 
             エコミシュランではまだ取り上げていない
  プリウスの販売実績だが、2004年5月度月間売上5,806台で車種別ランキングで10位となった。
 さらに、北米でのガソリン高騰の影響か、はたまた、北米のカーオブザイヤーになったこと
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/feature/det2004/20040105ve01.htm
との相乗効果なのか、北米ではプリウスが売れているという。
http://www.jafmate.co.jp/mate-a/cvnews/report/rep200406hybn.html

C先生:この記事の意味するところだが、これまでのプリウスユーザとは違った層が購買し始めたことを意味するのだろ。それは、ガソリン代の節約を第一の理由とするユーザの新規参入だ。これまで、本体の価格差をガソリン代が埋めることは考えられないとされてきたが、ガソリン代が高騰すると、その可能性があることを示したものだろう。

A君:しかし、北米のガソリンは、そのうち下落します。そのとき、消費者がそのような反応をするか見もの。

B君:将来、またガソリン代が高騰すると読むか、あるいは、そんなことは無いと読むか。

A君:となると、プリウスは売れ続けることになりますかね。

B君:それにしても、日本での5月の月間販売台数が5800台ということは大変な驚きだ。先代のプリウスが市場に導入されたときには、月間生産量が1000台限定だった。その後、生産可能な台数は2000台まで増大したが、それ以後、生産限界を超えるプリウスが売れたということは無いのでは。

A君:先代のプリウスは、形が悪いという人が多かったですからね。

C先生:あの形は、鉄腕アトム的なところがあって、なかなか良かったと思うのだが。

A君:それにしても、本日の話題は、果たしてプリウスの環境負荷は低いのか。本当に低いとしたら、どのぐらい低いのか。

B君:それはまず比較的やさしい。トヨタのHPにも比較のLCAデータが出ているぐらいだから。

A君:ときどきそのデータが消えるような気がするので、いささか問題ながら、リンクではなくて、本HPに直接貼り付けます。もともとあった場所は、
http://www.toyota.co.jp/Showroom/All_toyota_lineup/prius/menu/ecology.html


図1: トヨタ発表のLCAデータ。

B君:この図は、LCAを実施して、4種類の環境負荷、すなわち、CO2、NOx、PM、SOxについて、対照車との比較を示している。

A君:明示されていないのですが、以前のモデルは、カローラと比較していたように見えるのですが、
http://www.toyota.co.jp/envrep99/pdf/p20.pdf
新プリウスについては、恐らく、アリオンあたりが対照車になっているのではと思われます。

B君:その比較だが、二酸化炭素以外の環境負荷の差がほとんどないのはまあ当然。しかし、二酸化炭素の排出量が、対照車と余り違わないように見える。

A君:それは、当然なんですね。なぜならば、燃費なんですよ。10・15モード燃費を使用している。

B君:ということは、プリウスでは、35.5km/Lが使用されているということか。非現実的。対照車でも恐らく18km/Lぐらいが使われているのだろう。

A君:後でもう一度議論しますが、プリウスでは素材製造と部品製造で負荷が増えているために、燃料消費の部分の寄与が少なく見積もられることになって、差が出ない。

C先生:実際のところ、今使っているのはG仕様だから、33km/Lというカタログデータだが、これでも実現は無理。余りトロトロ走っても燃費は良くない。60kmぐらいで止まらずに走ることか。それでも、33km/Lは出ないだろう。実際には、飛ばさないという条件で郊外が25km/L、もちろん使い方に大いに依存するが、都内のような状況だったら、15〜20km/Lといったところではないか。

A君:それでは、トヨタの発表データの燃費補正バージョンを作ってみましょう。

データをいろいろ変えながら、図の再現を狙う作業を続ける。。。。。。。。。

A君:どうも、35.5km/Lという値は使われていないように思いますね。やはり、それだと差が少なくなってしまうことは明らかですから。発表されている10・15モードの燃費データの中で、もっとも悪いものを使ったのではないでしょうか。

B君:Gグレードのツーリングセレクションの10・15モードが30km/Lだから、この値ではないか。

A君:ピッタリ。余りにもピッタリ合いますね。ということは、プリウスとしては30km/Lが使われた。対照車種はと。13.7〜8km/Lぐらいだとピッタリ来ますね。

B君:ちょっと調べてみよう。そんな10・15モードのカタログ値があるか。

ウェブでトヨタの諸元表を全部チェック。

B君:無いなあ。トヨタの旧コロナであるプレミオ・アリオンは、カローラ系で結構燃費が良いのだ。16.4km/LがCVT。オートマだと16.0km/L。もう化石に近いが2リットルのクラウンもあるが、さすがに効率が悪くて11.0km/L。アルテッツァは、スポーツ系なだけあって、11.6km/Lが最良。輸入車系のアベンシスは、13.0km/L。

A君:プレミオ・アリオンは5ナンバー。新プリウスは3ナンバー。だから、比較をするとしても、プレミオ・アリオンではないのでは。プリウスの優位性を示すには、できるだけ燃費が悪いのが良いはずで。

B君:それだとアルテッツァを採用すれば良いことになるが、これも5ナンバー。

A君:さて、可能性としては2つ。一つは、適当に平均した。例えば、(プレミオ+アルテッツァ)/2で、13.7km/Lぐらいの値にした。

B君:待てよ。セダンしか見てなかったが、ひょっとして。うん。もう一つの可能性は、ワゴンではあるが、カルディナの値を採用した可能性もないとも言えない。14.0km/Lという値があるから。

C先生:いずれにしても、どうも、対照車はこのセダンだということではなくて、仮想的なものである可能性が強いな。いずれにしても、5ナンバーをちょっと超えるギリギリ3ナンバー車を考えればよいということだろうか。これで、対比をしてみよう。

A君:さて、実際には、車の走行は本当に条件様々ですからね。10・15モードの値などは出ないのが常識的。

C先生:プリウスの場合、都会でないと本当の実力は出ない。都内の混雑した状況では、18km/Lといった値が平均的ではないかと推測する。これまでの他の車を運転した経験から言えば、対照車の燃費として8km/Lを適用すれば良いのではないか。

A君:了解。それでは、トヨタの燃費データであるプリウス30km/L+対照車13.7km/Lですが、燃費が2.19倍。倍率は同じものとして、都内だとプリウス18km/として、対照車は、8.2km/Lとします。まず、10・15モード燃費の場合のLCCO2の比較図です。


図2: 二酸化炭素排出量。単位トン。プリウスとガソリン対照車との比較。トヨタ発表のデータ。プリウス30km/L。対照車13.7km/Lとして計算されているようだ。車一生での走行距離は10万キロと仮定している。二酸化炭素排出量削減効果が35%、というのがトヨタの主張。

A君:続いて、実燃費に近そうなLCCO2比較図です。スケールが変わっていることに注意。


図3: 二酸化炭素排出量。単位トン。プリウスと対照車との比較。プリウス18km/L。ガソリン対照車8.2km/Lとして計算。まあ、都内運転モード。車一生での走行距離は、10万キロと仮定。二酸化炭素排出削減効果は41%とトヨタの主張よりも多い。すなわち、トヨタは自ら発表している非現実的な10・15モード燃費に自縛された状態で、プリウスの本当の実力を主張しきれていないのが現状である。

A君:ちょっと見には、余り変わっていないようですが、クリーム色の部分、すなわちガソリン使用による二酸化炭素の放出量の寄与が、格段に増えていることが分かります。

B君:それに、プリウスによる改善率もかなり違う。10・15モードでの比較だと、トヨタによれば、35%の節約になっている。ところが、燃費は同じ2.2倍の改善でありながら、燃費の絶対値が下がると、節約率が高くなる。この例だと41%の改善になっている。

C先生:実際のところ、プリウスでも、時には燃費が10km/Lを切るような条件がある。コールドスタートのときを除外しても、相当なる渋滞に入って、エアコンが動いているときだ。新プリウスのエアコンは、電動で、したがって、アイドリングは不要である。しかし、走行用に貯めた電気を使ってしまうので、燃費は落ちる。しかし、燃費の落ち方は、普通の車に比較すれば格段に少ない。だから、このような状態だと、対照車の燃費は、恐らく3km程度になっているはずだ。

B君:そんな状態だと、二酸化炭素の放出量は対照車の1/3ぐらい。それも当然で、LCAの他のステージにおける負荷が相対的に無視できる状態になってしまうから、燃費だけが利いてくることになる。すなわち、燃費が悪い状態で使えば使うほど、プリウスの効果が出る。ところが、トヨタはカタログ値の10・15モードに自縛された状態になっていて、そのような実態を上手く伝達できていない。これは損なのではないか。

C先生:燃費以外の部分の議論をするか。以前、こんな図がトヨタのHPにはあった。探したのだけど、どうしても見つからない。そこで、無断借用。


図4:トヨタ発表(?)のLCCO2。別のデータで、先代プリウスと新型プリウスの比較がでている。今は消えたか?

A君:なんと、燃料電池車との比較もあるではないですか。

C先生:それは後の話として、通常の車に比較すると、どうしても、ハイブリッド車は素材製造、部品製造、車両製造などにおける二酸化炭素放出が多くなる。

A君:大きな違いは、モーター1個。といっても超大型のもの。発電機1個。コントローラ1個。Ni−H二次電池1個。

B君:これが、先代プリウスとガソリン車との違い。

C先生:先代プリウスと新型プリウスの違いは、アルミの使用量。ボンネットフードやリアゲートにはアルミが採用されている。

A君:アルミという素材は、どうしても二酸化炭素放出量が多い。それは、アルミ電解という方法論で作られる電気の塊みたいなものがアルミだから。リサイクルを完全にできるようになれば、かなり良くなるのもアルミの特性ですが。

B君:そろそろアルミの特徴を生かした車作りが、燃費改善のために必要不可欠となるのではないだろうか。

C先生:そして、燃料電池車との比較も面白い。燃料電池車は水しか出さないはずなのだが、二酸化炭素放出量では、ガソリンを燃やして二酸化炭素を出しているプリウスの先代・新型の両方に負けている。

A君:水素を燃料とするのだが、その水素を現状だと化石燃料から作るから、どうしても二酸化炭素が出てしまう。

B君:燃料の使用効率を示すWtoW、これは、Wellすなわち石油井戸から、Wheelすなわち車輪までの総合効率も、燃料電池車はプリウスに負けている。

A君:具体的数値も
http://www.toyota.co.jp/jp/tech/environment/fchv/kouritsu.html
には出ていますが、これもいつまた消えてしまうか。そこで、採録しておきます。
       燃料効率  車両効率  総合効率
ガソリン車    88%  16%   14%
新プリウス    88%  37%   32%
燃料電池車   58%  50%   29%

C先生:現状のような高分子電解質を使った燃料電池車の技術的見通しは無い、と前々から主張しているのだが、これもその根拠の一つ。メリットの無いモノは、生き残らない。

A君:今回の議論から、環境負荷が低いのなら、今の車をすぐにでも買い換えるということが正解とは言えますかね。

B君:そのあたり、資源の劣化をきちんと評価したLCAが無いから、結局のところ結論が出ない。中古車の場合、そのまま廃車になるとは限らないので、なかなか難しい。

C先生:趣味としては、なるべく長く使うか、あるいは、適当なところで中古車価値があるうちに誰かに譲る。中途半端が駄目なような。

A君:最後に、プリウスはエコプレミアム商品と言えるのか。

B君:この程度の価格でこの商品を提供できるのがすごい。十分、候補にはなるのでは。

C先生:今のプリウスは、サイズというかクラスがちょっと中途半端な気がする。トヨタにはES3という実験車があるが、ヴィッツぐらいのサイズで、アルミを多用し徹底的に燃費を追求したもの。このように、本当にどこまで行けるかといった極限を追求した車がやはり欲しい。さらに、今日の議論からも分かったように、燃費の悪い車をハイブリッドを使って高燃費にするというアプローチが効果が大きいので、エスティマ、アルファードのハイブリッドはそれなりだ。しかし、残念ながら、新型プリウスほど徹底的に高燃費を狙ったものではない。もっと燃費向上だけを狙った車が欲しい。

A君:セルシオ、クラウンなどがハイブリッド化すべきでは。社用車としてまず売れることは確実。クラウンのマイルドハイブリッドは、効果も本当にマイルド(=ほとんど無し)だし。

C先生:セルシオがいくら静かだといっても、停車中だったらプリウスに敵わない。なんと言っても、エンジンが止まっているのだから。高級車用ハイブリッドがそろそろ開発されても良いのではないか。

A君:それ以外では。

C先生:エコプレミアム商品は、環境負荷情報を積極的に使用者に出すようなものになるべきだ。プリウスはディスプレイが標準なのだから、自宅に戻ってスイッチを切ったときに、運転に関する環境情報がディスプレイに出る。項目としては、目的地(GPSが把握しているはず)、走行距離、平均速度、ガソリン使用量、燃費、二酸化炭素発生量。さらに、ガソリン使用の内訳:走行用、冷房用、暖房用。さらに、パソコンを持ち込むと、無線LANが起動して、これらの情報がパソコンに移せる。

A君:冷房用に使ったガソリン量、暖房用に使ったガソリン量、こんなものが出ると結構面白い。

B君:普通の車だって、そんな情報を出すべきなのでは。普通の車の場合には、アイドリング(ウォームアップ)に使ったガソリン量という項目が必要になる。まあ、最近の車はウォームアップは不必要のようだが。

C先生:エコプレミアム商品は、商品自体が消費者と情報交換をする機能を持つ。これが条件の一つだろう。さて、最後の一言。プリウスは、余りにも一般的な商品に見えるが、実は、内在している意味は非常に大きい。



結論:プリウスは偉い。先代もそれなりに偉かったが、新プリウスは特に偉い。
(1)トヨタの示すLCAは、自らのカタログデータに自縛されていて、本当のハイブリッドの効果を示していない。
(2)価格的にも、高いとは思わない。もっと高ければ、エコプレミアムのコンセプトに近い商品である。ただし、エコプレミアム商品だと認定されるには、もっとエコ消費者を満足させる仕掛けが必要。例えば、スイッチを切ったときに、運転に関する環境情報がディスプレイに出る。項目としては、走行距離、平均速度、ガソリン使用量、燃費、二酸化炭素発生量。さらに、ガソリン使用の内訳:走行用、冷房用、暖房用。
(3)燃費2倍が実現。都内のタクシーを全部プリウスにするだけで、かなりの二酸化炭素発生量の削減になるのではないか。
(4)これまで使った感想。新プリウスは、エアコンが電動コンプレッサーになって、一段、完成度が上がった。
(5)今後の改善:製造エネルギーの増大を、リサイクルの技術の完成によって少しでも少なく。
(6)すぐにでも必要:バリエーションが欲しい。すべての高級モデルにハイブリッドを。
(7)新プリウスの問題点:前方視界の悪さ。フロントピラーが太すぎる。 交差点で結構気を使う。