エコプレミアム研究所 Eco Premium Lab.                 

 No.005 ニッケル水素電池はエコプレミアムか 10.10.2005 
             
 

 これまで、No.000:太陽電池、No.001:エコキュート(ヒートポンプ型給湯器)、No.002:プリウス(ハイブリッド車)、No.003:リアプロジェクションテレビ、No.004:電球型蛍光灯、以上の5品目をエコプレミアム商品であると認定してきた。
 今回、ニッケル水素電池(Ni−H型充電池)を検討したい。


C先生:エコプレミアム商品の検討だ。今回は、ニッケル水素電池(Ni−H型充電池)。かなり地味な商品なだけに、その中身が余り知られていない。今回、この商品を強く推薦したのは、恐るべき改善が行われてきたことを知ったからだ。

A君:ニッケル水素充電池、あるいは、メタハイ型充電池などと呼ばれます。メタハイは、Metal Hydride、すなわち金属水素化物の意味です。以前、ニッケル−カドミウム充電池が多くの機器に使われていましたが、カドミウムの毒性が問題になり、また、いくつかの欠点もあって、現時点では、国内向けには保守部品以外の生産は終了している(表現を若干変更10.12)。

B君:ニッケル−カドミウム型電池、あるいはニカド型と呼ばれるこの電池は、大電流を取るのに適していて、充電型の工具などにはよく使われていた。しかし、ニッケルの特性として、充電に関して気難しいところがあった。メモリー効果と呼ばれて、十分に放電させないで充電すると、新たに充電した電気だけしか放電できないという特性。

C先生:ニッケル水素電池にも同様の気難しさがあった。メモリー効果については、最近のニッケル水素電池では考えなくても良いという状態になったようなのだが、未だに、新品は多少鍛えないと十分な容量を持たないという昔からあるもう一つの気難しい特性は残っているようだ。

A君:何回か使って、そして充電すると本当の実力を発揮するようになるということですよね。

B君:そんな人間的なことが工業製品でおきるのはおかしいと思われるだろうが、実際に起きる。

C先生:その理由が何か、実はよく知らないのだが、想像すれば、電池というものを作るときに、粉体間の接触状態というものが問題になるからではないだろうか。以前、アルカリ乾電池にも同様の問題があったようで、充電池ではないから、特性上の問題点として捉えられていたようだ。

A君:いずれにしても、ニッケル水素電池がかなり急速に進歩し、以前のような使いにくさも克服されつつあって、用途によっては、というより、ほぼすべての用途で、今や普通のアルカリ電池よりも性能的に上回っている。

B君:大電流を取り出す場合にはまさに最適。デジカメ用がその典型。ニッケル水素型電池が使われているデジカメは余り多くは無いが、デジカメの性能競争が電池の性能競争を招いたという見方もできない訳ではないぐらいだ。

C先生:デジカメも最近のような超薄型の競争をすると、やはりリチウム電池を採用せざるを得ない。しかし、海外に出かけることなどを考えると、単三型が使えるということは大変に便利なのだ。先日10月1日の私個人の東大退官記念会では、ビンゴ大会を行って商品を差し上げたが、いつも使っている日常的デジタル小物ということで、(1)LumixのデジカメLS−1、(2)CreativeのデジタルオーディオZenNanoPlus1Gモデル、(3)Sonyの電子辞書EBR−S8MS、を選択した。これらはいずれも単三あるいは単四型のニッケル水素型電池が使用可能。

A君:(3)の電子辞書は、メーカーサイドでは、ニッケル水素型の充電池を使うのは余りお奨めではないようだ。むしろ、アルカリ電池の方が使用時間が長い場合もあるからだろう。しかし、(1)、(2)のデジカメ、デジタルオーディオだったら、アルカリ電池では使用可能時間が短い。最新のニッケル水素を使うのがベスト。しかも、もしも途中で電池が切れてしまったら、その付近で単三、単四の電池を買うことが可能。これは、エコ的にはお奨めできないことですが。

C先生:これまでいくつかデジタルオーディオを使ってみたが、結局のところ、電池の寿命が結構短いのが問題だ、という結論なのだ。携帯電話でも同様に電池の寿命が問題。毎日充電するような機器は、むしろ、ニッケル水素型の充電池を使うのがベストではないか、ということなのだ。同じCreativeのMuvo2なる機器も電池のモチが悪くなって新たに買ったら、専用のリチウム電池がなんと5000円以上。

A君:毎日持ち歩く機器の場合、どうしても、充電をしてしまうことになりますね。電池寿命としては、大体、500回程度の充放電が可能なのですが、もしも毎日持ち歩くと、2年で駄目。携帯電話がその好例。

C先生:ニッケル水素型だと、予備セットを持ち歩くことが可能なので、完全に放電が行われるまで、電池を使うことになる。となると、ZenNanoの場合だと、14時間程度は持つので、よほど特殊な状況でないかぎり、4日間に1回電池を変えれば良い。となると、2本の単四型電池を交代で使用すれば、計算上4000日は使えることになる。充電器が必要にはなるけど、電池本体だけの価格だと、2本で700円程度か。

B君:「エコプレミアムとは、環境性能が高いために、価値の高いもの」、という本来の定義から考えると、ニッケル水素型電池は、エコロジカル商品ではあるが、価格的な価値は低くて、エコプレミアムだとは言えないことになる。

C先生:リチウム電池との比較だとそうなる。リチウム電池が性能が不十分な割りに高い商品だからだ。まだまだ寿命が短すぎるのがリチウム電池の欠陥だ。エコプレミアムかどうかを判定するためのニッケル水素型の比較対象は、やはりアルカリ電池ということになるだろう。それに、本来の定義の「価値」が高いものかどうかは、価格が低くても、他の価値とのバランスで評価すべきだろう。

A君:定量的な比較は、後でまとめてやります。

B君:まず、比較以前の定量的なデータを示すことにするか。それは、容量の進歩。これが恐らくこの商品がエコプレミアムだと認定される最大のポイント。

A君:ニッケル水素電池のメーカーとしては、三洋電機http://www.e-life-sanyo.com/list/hrs10.html、松下電池工業http://national.jp/product/conveni/battery/suiso/の2社が激烈な競争をしています。ソニーなど他のメーカーの製品も、多くは、三洋電機のOEM商品です。

B君:昨年、三洋が2500mAhという容量の製品を出したら、今年、松下が2600mAhの世界最高容量の製品を出した。松下は、これまでこんな製品を出してきた。

2600シリーズ(HHR-3XPS)
2400シリーズ(HHR-3SPS)
2100シリーズ(HHR-3PPS)
2000シリーズ(HHR-3EPS)
1700シリーズ(HHR-3GPS)
1600シリーズ(HHR-3UPS)
1500シリーズ(HHR-3HPS)

名称は、容量を示している。1500シリーズが発売になったのが、1998年の3月1日。2600シリーズが発売になったのが2005年7月。7年間余で、容量が1000mAhも増えた。1.7倍以上だ。

A君:充電池のような地味な商品がここまで進歩するとは思わなかった。

手持ちのNi−H電池を調べてみたら、同じような形なのに、4種類ありました。ここに出ている数値は、保証する最小容量で、2600シリーズでも2400mAhという数値です。



写真1:ニッケル水素電池の容量表示の比較。
左から、三洋99年1月製ミニマム1400mAh型、ソニー03年7月製(三洋OEM同2000型)、三洋03年12月製同2150型、松下05年6月製2400型

C先生:お奨め商品はどれだ。

A君:やはり、最高容量の松下2600シリーズでしょうかね。メモリー効果もほとんど克服したとしているので。

B君:ニッケル水素電池の問題点は、充電器だと思う。家庭内で使用しているときにはOKなのだけど、海外などに行く場合には、やはり無駄に重いし嵩張る。単三2本と単四1本が同時に充電できるもので、電圧100〜240V対応で超小型のものを作って欲しいのだが、まだ存在していない。

A君:USBから電源が取れるようなニッチ製品はありまして、ただし、やはり2本用と4本用しか無いのですが。

C先生:サンワサプライの製品だな。
http://www.sanwa.co.jp/seihin_joho/usbtoy/index.html
実は2本用のUSB-TOY6 は持っている。しかし、ケーブルが少々重たいのか重量が68g。四本用のUSB-TOY17は、以前調べたときには無かった。最近できたのだろう。これもケーブルが重たいのが難点。本体114g、ケーブル32g。このような製品は、どうせ携帯用なのだから、重量軽減をとことん詰めて欲しい。惜しい。

A君:このサンワサプライの製品番号がTOYになっていることからも分かるように、これらはUSB活用のおもちゃ。充電器は本来おもちゃだとは思えないのですが。アヒル型クリーナーや扇風機のようなおもちゃもあります。

B君:現時点だと、もっとも高容量の電池を使うとしたら、松下のK−KJP5MChttp://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=K-KJP5MCが単四、単三の両方を使う人のためのキットとしてお奨めか。充電器も90gと比較的軽いし、電圧も240VOKなので、もしも海外に持ち出すとしたとしても、まあまあ。

C先生:そろそろニッケル水素型電池については、終わりか。もしも何もなければ、他の電池との使い分けの話に行きたい。

A君:ニッケル水素電池の特性として、自己放電が比較的多いという問題点があります。1ヶ月放置すると、まず、50%ぐらいは電気が無くなっていると思った方が良いでしょう。ということは、ときどき使うといった機器の場合、例えば、非常用の懐中電灯とかには不適当。さらに、大電流を取り出す用途以外には、不適当。例えば、時計とかには不適当。

C先生:上述のSonyの8ヶ国語の電子辞書の仕様書にも、ニッケル水素電池が使えるとは書いてない。しかし、実際に使ってみると、結構持つのだ。1ヶ月ぐらいは平気。以前のような低容量のニッケル水素電池だと、駄目という結論を出してしまうところだが、最近の電池だと、十分使えるという結論なのだ。

A君:その辞書ですが、アルカリ電池で55時間駆動という仕様です。そのぐらいだと、ニッケル水素が有効だということでしょう。

B君:ということは、ニッケル水素型電池の使用をお奨めしないのは、非常用の機器。それに、アルカリ電池で寿命が1年といった機器。

A君:具体的には、時計、リモコン、自動点火装置、体重計など。他には余り考え付かない。

B君:それ以外にも、ニッケル水素電池の電圧が低いために、動作しない可能性のある製品もある。例えば、LEDを使ったライトなど。

A君:最近オキシライド乾電池という電池があるけど、これは、アルカリ電池の改良版で、起電力もやや大きいタイプ。通常のアルカリ電池よりはましではあるけど、デジカメ用を考えて作られた割には、やはり最新のニッケル水素には適わない。

C先生:上述のデジカメLS−1をオキシライドとニッケル水素で使ったときに撮影可能な枚数は以下のようなことになっている。

電池寿命:CIPA規格:約215枚(付属オキシライド乾電池)、約370枚(ニッケル水素電池[HHR-3SPS]での測定)

 このニッケル水素電池は、2400タイプなので、最新の2600タイプを使えば、400枚ということになるかもしれない。

B君:ちなみに、そのCIPA規格というものだが、http://www.cipa.jp/hyoujunka/kikaku/pdf/DC-002_j.pdf にその本物がある。

概要は、「電池寿命は、未使用の1次電池または満充電の2次電池を使用し、30秒毎に撮影することで測定する。その際、ストロボを2回に1回フル発光させ、撮影毎に光学電動ズームを望遠端と広角端に移動させる。さらに、ユーザーがこまめに電源をON/OFFすることを考慮し、10枚撮影する毎に電源をOFFする」

A君:400枚撮影するには、200分かかることになる。ということは、3時間程度の撮影なら、バシャバシャ撮影しても、十分にいけるということ。

C先生:それでは、コスト比較を。

A君:使用条件によって様々なので、かなり難しいのですが、丁度、デジカメの例がでてきたので、これでやりますか。
 まず、10000枚撮影することにします。
 ニッケル水素電池なら、予備を入れて4本購入。充電器付きのキットを購入。K-KJP5XCを購入するとして、3900円。
 撮影可能枚数は、1回の充電で400枚がカタログ値だけど、1ヶ月ぐらいは写真を撮らないこともあるとして、1回の充電で200枚の撮影が可能とする。2本一組で使うとして、充電回数は50回。予備があるので、それぞれの電池について、25回で、これは、寿命500回からみれば、十分に少ない。2本を50回の充電に要する費用は、1本1回0.6円(メーカー公称値)として、60円。合計は、色々考えても、4000円を超さない。
 オキシライド電池だと、カタログ値で215枚撮影可能。多少、割り引いても200枚は取れるとする。となると、50組100本が必要となる。ZR6Y/20VSWという20本パックを1750円で買うとして、8750円。
 結論は、ニッケル水素4000円:オキシライド8750円。2倍は違う。

B君:もしも通常のアルカリ電池でやったらどうなる。

A君:アルカリ電池で何枚取れるか。これが問題ですね。データが無いので。

C先生:いやあるのだ。LS−1の取り扱い説明書に。25℃という条件だと、オキシライド215枚の条件で、アルカリ電池で140枚だそうだ。ただし、0℃という低温だと、オキシライドで35枚、アルカリだと30枚、ニッケル水素で340枚(2400タイプ)。通常の乾電池は、低温では使えないと思った方が良い。

A君:実際に撮影する条件の平均は25℃なんでしょうかね。それよりも低いような。まあ、良いでしょう。アルカリ電池では、多少割り引いて、130枚取れることにします。12個パックが500円ぐらいで計算しますか。80組、160本ぐらいが必要になって、大体6400円ぐらいですか。

 コスト比較の最終結果は
  ニッケル水素型充電池  3960円
  オキシライド電池      8750円
  アルカリ電池        6400円

B君:ここで重要なのは、ニッケル水素電池は、まだ25回程度しか充電されていない。だから、10000枚撮影した後にさらに10000枚撮影する場合には、ほとんどただだということ。さらに、それまでに4年ぐらい掛かるだろうから、そこでデジカメが壊れたとしても、電池はまだまだ使えるということ。

A君:リチウム電池を使ったデジカメだと、電池の形が違ってしまうので、それは無駄になりますね。確かに使い始めるときに余分なコストは無いのですが。

B君:デジカメの1台は、是非とも、単三が使えるタイプをお使い下さい、と薦める意味があるかもしれない。

 コスト比較に追加
  ニッケル水素の電池や充電器に、まだ10倍の寿命があるとしたら 450円

C先生:さて、環境負荷を最後に。

A君:コスト計算のところで大体終わっていますね。乾電池や充電池の環境負荷が何か、ということになると、データが余り無いので、良く分からない。

B君:こんな情報が見つかった。

【総  説】
資源・エネルギーからみた乾電池の問題点
村 田 徳 治*

【要 旨】 乾電池は,環境汚染や資源枯渇が問題視されている重金属やその化合物から構成されており,持続可能な社会を構築する上でエネルギー効率や資源的な視点から,乾電池のエネルギー収支を試算した。その結果,マンガン乾電池は,その原料である金属亜鉛・電解二酸化マンガン・鉄を製造するために消費したエネルギーのたった0.3%以下しか利用することができず,残りの99.7%はエネルギーの無駄使いになっていた。また,効率が良いとされているアルカリマンガン乾電池ですら,エネルギー効率はわずか0.6%以下であった。製造に関する基礎的なデータはメーカー側に握られており,試算のための基礎資料の入手は困難であった。産業側が秘匿している基礎データの開示とデータベースの充実により,科学的なデータに立脚したLCAが実施される必要がある。

キーワード: 乾電池,資源,エネルギー効率,亜鉛,マンガン

廃棄物学会誌,Vol. 6, No.3, pp.242-250, 1995

A君:なるほど。エネルギー効率は最大でも1%と考えれば良いですか。

B君:単三の乾電池に蓄えられている電気量が分からないのだが、まあ、1300〜2000mAhとでもするか。1.5Vを掛ければ、2から3Wh。その製造エネルギーが100倍とすれば、0.2〜0.3kWh。これだけの製造エネルギーが掛かっていることとして、これを二酸化炭素排出量に換算する。1kWhを860kcalで換算するか?

A君:さて。それでよいのでは。とすると、ざっくりと200kcal分。二酸化炭素で、0.05kg見当なのでは。100本の単三型電池を使ったとして、5kgぐらいの二酸化炭素放出。

B君:一方、ニッケル水素だと、1本あたりの二酸化炭素排出量が単三の倍であったとして、0.1kg。4本だと0.4kg。ただし、寿命分を使い切っていないので、もし1/20しか使っていないとしたら、4本でも、0.02kg。これは無視可能。充電器は、かなり長期間使えるので、こちらも無視可能。電力は、1本1回の充電で0.6円というメーカーのデータで、60円と計算してある。これは、国内電力では3kWh程度以下と換算し、約1kgの二酸化炭素排出だと思えばよい。

A君:まとめますか。

二酸化炭素排出量の比較 10000枚撮影
 ○単三型電池を使用   5kg
 ◎ニッケル水素       1kg

C先生:固形廃棄物の排出も。

A君:これはほぼできている。単三型の電池の重さですが、測ってみると、

オキシライド 23.5g (アルカリも同様)
ニッケル水素 29.5g

B君:排出される廃棄物は、
オキシライドの場合だと100本
アルカリ電池だと160本
ニッケル水素だと0.25本

廃棄物量の比較
 オキシライド電池     2.35kg
 アルカリ電池       3.75kg
 ニッケル水素       0.008kg

C先生:そろそろ結論にする。
 ニッケル水素電池は、以前は、使い勝手が悪かった。しかし、状況は2000年代になってかなり変わり、そして、昨年あたりからまた大きく変わった。かなり信頼性の高い製品になった。しかも、容量が大きくなったために、これまで使えなかった電子辞書のような製品にも使えるようになった。
 環境負荷面での優位性、特に、廃棄物の排出量の削減効果は非常に大きい。使用エネルギーあるいは二酸化炭素の排出にしても、大幅な削減が可能。
 したがって、コストが多少高いとしても、使用を強くお奨めすることになるのだが、この商品、コスト的にも、かなり割安。全く文句は無い。ということで、エコプレミアム商品No.005に認定したい。
 注文は、充電器の選択肢をもっと増やして欲しい。とりあえず、単三2本、単四1本の同時充電可能で、重量・サイズを極小にしたものが欲しい。もっと価値の高い充電器を単独商品として開発して欲しい。電池とのキットでないと買えないのは大問題だ。