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今週の予定は、かなり破滅的。なぜなら、エコプロダクツ2013が行われるビッグサイトとその付近で、3つの講演を、しかも似たような題目で行わなければならないから。当然のことながら、全く同じ内容を話す訳にはいかない。 当然、聴衆は別なので、話として独立している必要があるが、もし、3つ連続して聴いたときには、実際にそんな人が居るとは思えないものの、一つのストーリーになっていることが理想だと思う。 ★12日の最初: まず、13時30分開始のEcoLead主催の企業向けセミナーが東京ビッグサイト会議棟 6F 607会議室で行われ、13時40分から45分間と短いが、『環境人材の知識構造 〜無限への挑戦〜』という題目で、環境人材についての講演をする。 EcoLeadは、環境人材育成コンソーシアムが正式名称の任意団体で、筆者が代表幹事を務めている。 企業向けのセミナーということなので、通常、企業人では難しい長期的な展望をどうやって持ってもらうか、これが大きな課題で、3つのポイントを語る予定。 その1−1:環境人材には新規の機能が求められるようになった。現時点、どこかにあるビジネスチャンスを見つけるだけが環境人材ではない。 その1−2:それは、未来を読むイノベータとしての機能である。 その1−3:しかし、単一の個人の能力では、問題の複雑さ故に、イノベータになるには不十分である。 その1−4:複数の個人が、どうやって協同的イノベータになるか。それは、暗黙知の共有に鍵がある。 その1−5:このようなイノベータ集団を活用できるかどうか。トップのコミットメントが無ければ、環境人材は無用の長物になるだろう。 ★12日の二番目:前の講演が終わると、階段を1階上って、エコプロダクツ2013のメインの講演会場である会議棟7階の国際会議場で、今回のエコプロダクツ2013の主題である『今つくる地球の未来』をそのまま題名にした講演を行う予定。ただし、副題があって、それが「2100年からのバックキャスト」。 この講演のポイント。 その2−1:現時点での状況を見ると、目の前の利益にのみ支配されている企業や、東日本大震災以後の状況によって自らのスタンスが明確になり、そのスタンス(=価値観)に拘束され、柔軟な発想力を失っている個人が多くなっている。 その2−2:2100年からのバックキャストを行うといった思い切った知的作業を協同して行わない限り、同意を得るのが難しくなっている。 その2−3:このような作業をバカバカしいと思わないで真剣にやれるかどうか。これが『今つくる地球の未来』が成功するかどうかの鍵である。 その2−4:この作業に取り組めるかどうか、それには、認知バイアスの回避、固定観念からの離脱がもっとも重要である。 ★13日も午前中から昼過ぎまでは、EcoLeadの「第3回アジア環境人材育成研究交流大会」の会場(ゆりかもめ「国際展示場正門」から直結のTFTビル 東館9階)で、環境省と文科省からの講演を聞くために、存在するつもりだが、自分の講演ノルマはなし。 ★14日の午前中は同上の場所で国際会議版。チョン・トウ・チョン 氏(国立シンガポール工科・デザイン大学学長)など、4名のアジア・オセアニアからの参加者による講演とパネルディスカッション。ここでの講演題目は、”Global Sustainability and Local Sustainability”で60分間の予定。同時通訳があるので、日本語で講演するか? 講演終了後に行われるチョン氏と竹本和彦氏とのパネル・ディスカッションは、まだ決まっていないが、恐らく英語でやることになるのでは。そうなると、講演も英語でやって英語脳にしておく方が良いのかもしれない。 講演のポイントは その3−1:まずは、地球レベルでの持続可能性を長期に渡って把握する。 その3−2:把握の対象はリスクの全貌とその推移。 その3−3:次に、地球レベルのリスクが、地域の産業や生活にどのように影響するかを把握。 その3−4:地域での適応策を考えつつ、地球レベルでの解決策を提案すること。 C先生:ということで、今週は大変。そのため、この記事は短めに切り上げて、準備をしたい。 A君:上に述べられている3つの講演に共通する意図ですが、どうも、それが典型的に表現された記事がすでにありますね。 『夏の夜の戯言』 08.17.2013 本Webサイトの基本的スタンス http://www.yasuienv.net/HotSummer.htm C先生:それは事実だ。環境問題に取り組むようになってから、すでに20年と言えるかもしれない。この20年間でもっとも気になってきたことが、現世代と未来世代の関係、しばしば世代間調停といった言葉で語られたことだった。しかし、このところ、未来世代に対する現世代の責任といったコンセプトが消えつつあるように思うのだ。 B君:それは、日本のビジネスマンの論理が、「いかにして、今、儲けるか」になり、自らの企業の15年後といったことを考える経営者が極めて少数になった。 C先生:これは、このサイトで紹介していないと思うが、10月18、19日に行われたGEA(地球環境行動会議)という超党派の環境関係の議員と元議員の国際会議で、「いかに今儲けるかが問題、我々は、環境にこれほど貢献している」といった米国のある産業からの単一価値論的な発表と、英国からの「企業責任とは、株主に対する金銭的な価値創出と、同時に、社会的な価値を創造することである」、という複数価値論との対比が、現時点での最大の問題点だということだと思う。 A君:社会的価値の一つは、やはり、未来世代に対する貢献、さらに言えば、未来世代の可能性を消滅させないこと。 B君:それに、トップの「無為の責任」が問われない社会になったのも、一つの問題なのかもしれない。 A君:米国GEの社長は、15年が想定されている任期です。もしも15年間何もしなければ、その企業は確実に潰れる。しかし、4年間程度の任期のサラリーマン社長であれば、何もやらず、リストラと資産売却だけでもやって形を作ることが可能。しかも、この方が、短期的な株主の評判も良い。 B君:本来、未来を読むことが現世代の大きな責任であるという主張をしたくなる。 C先生:未来を読むだけでは不十分だ。現状のような地球の限界に関係する様々な影響が出始めている現時点だと、なんらかのイノベーションを行わないと、未来は現在よりも確実に悪くなる。ということで、未来のためにイノベーションを行うことができる人材が求められている。ちなみに、イノベーションとは、技術革新ではなく、社会的な価値観の変革を意味する。 A君:それが環境人材に求められている新しい機能ということで、その1−1:環境人材には新規の機能が求められるようになった。 B君:イノベータという存在は、なんらかの共通性があると考えられているようだ。まずは、問題点に気付く能力。そして、その問題点の解決法を考える余裕。 C先生:最近、大学などの講義をするときには、「3分間に1個の疑問を持とう」、と言っている。そして、それをメモする習慣を付けよう。 A君:その質問メモに、将来のイノベーションに関するヒントが集約されている。 B君:単に疑問を持っただけでは、イノベーションは起きない。しかも、個人が持っている知識は狭い。経験も限られている。そこで、他の人の知識とか、感覚とか、経験を上手く活用することが必要になる。 A君:知識、感覚、経験といっても、通常、これを明示的に記述できる人は少ない。いわゆる暗黙知として、頭脳のどこかに隠れている。これを掘り出しつつ、解決策に有用な形式知(文字で表現されている知識)に変換しなければならない。 B君:このことは、 総合融合型環境学の知 06.16.2013 なぜ必要なのか、どう知を作るのか http://www.yasuienv.net/AdvEnvStudy.htm に書かれている。 C先生:野中郁次郎先生の方法をまるごとコピーという感じだが。 A君:このような方法論で、暗黙知を共同化、それを表出化・連結化して、次のイノベーションに有用な形式知を作る。 C先生:これが最初のEcoLeadでの講演、『環境人材の知識構造 〜無限への挑戦〜』になる予定。 A君:無限への挑戦とは? B君:多分、こんなことだ。環境関係の知識は、もしも正統的なアプローチで得ようとすると、森羅万象、すなわち、無限の知識が必要になるから。 C先生:答えは自分で考えてくれ。 A君:それでは、エコプロ2013のメインの講演会のテーマは、『今つくる地球の未来 2100年からのバックキャスト』。 B君:この話題は、東日本大震災と福島原発事故以来の日本の状況を良いと思っていない現状認識に基づくということ。 C先生:3.11以来、日本は、様々な面で二分割された社会になった。日本という国の成り立ちに深く関わるすべてのことで、そうなったとも言える。 A君:昨晩、国会で成立した特定秘密保護に関する各人の対応にしてもそうだし、昨日、総合資源エネルギー調査会に提示された「エネルギー基本計画」に対する意見も、恐らくそうでしょう。 B君:3.11以前には、新聞がこれほど右から左まで極端に序列化されるということは無かった。 A君:中立が正しいということはないですね。なぜなら中立という概念の定義が不可能だから。しかし、もっと内容に踏み込んで、細かい議論を進める必要があります。しかし、原発を明示してしまえば、反原発派は、その時点で議論に参加しなくなる。逆も真なり、です。 B君:特定秘密保護法に関しては、現時点のようにお互いの主張の間に距離がある状態だと、どちら側も強硬にならざるをえない。 A君:原発に関してもう1つのポイントは、科学的リテラシーというものが重要なことは分かっているが、その獲得には余りにもハードルが高い、と思っている人が多いことでしょう。 B君:科学的な事実で不都合なことがあるとき、嘘で塗り固めるという戦略を取る一派がいるために、まず真偽の選別をしなければならないという、もう1つのやっかいな追加作業が必要になってしまった。しかも、その選別も簡単ではなく、科学的リテラシーの高さが不可欠。 A君:こんな状態から離脱するには、それなりの方法論を採用しない限り無理ですね。 B君:その通り。自分が、あるいは、自分の企業、もしくは、団体が存続している期間を超えて、かなり遠い未来に視点を移す以外には方法がない。その時点で、あらゆる可能性を考えて、あるべき事項の可能性を議論する。 A君:それが2100年からのバックキャスト。 C先生:ちょっと非現実的だと思う人もいるだろうが、気候変動問題の解決を考えると、どうしても今世紀末までの視点が不可欠なのだ。 A君:IPCCの第5次報告書AR5の情報の中にある、過去から未来までの温室効果ガスの排出量と温度上昇の関係などが、重要な情報を与えます。 IPCCの第五次報告書 10.05.2013 もっとも重要の図はどれか http://www.yasuienv.net/AR5IPCC.htm B君:この報告書すら信用しないという人が依然として存在しているのが、不思議だとは思うものの、やはり3.11の悪影響なのかもしれない。 A君:認知バイアス、固定観念というものを克服しないと、議論すらできない。これは、確かに3.11の悪影響でしょうね。 C先生:そして、最後は、国際会議。ここはアジア環境人材に関する議論をする場なので、いかにして、グローバルスケールの事象と、地域の持続可能性を結びつけることができるか。 A君:しかも、それには、考え方をリスクベースで統一する必要がある。これが主な論点。 B君:しかし、日本ではリスクという考え方が普及しないし、そもそも理解できない。 A君:アジアの他の国は、どうなのでしょうね。シンガポールは、科学的な教育というものを目指しているようですが。 B君:そのあたりがパネルディスカッションの主な論点になるのかもしれない。日本人のリスク理解が特殊なのかどうか。 C先生:その件は、話題として入れてみよう。どのような反応が来るだろうか。 ここまで議論をしてきて、大体、プレゼン資料の内容が固まったように思う。どの講演もそれほど長くはない。45分から60分程度。PPTの枚数にして、35〜50枚程度。新たに作るものも限られているので、なんとか間に合うことだろう。 ![]() ![]() |
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