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  環境用語2006 その1 08.20.2006
     



恒例の今年の環境用語である。選択基準は、新聞記事に出た単語群である。そのため、ブログの方との重なりは大きい。また、本HPでは大分前に取り上げたものも含まれている。



ヒートポンプ洗濯乾燥機

 冷蔵庫の冷凍機が古くから使っている技術ではあるが、言葉としてのヒートポンプは、今年あたりから普及しつつある。その理由は、洗濯乾燥機や給湯器に、この技術を使用したものが開発されたからである。
 通常の洗濯乾燥機は、乾燥時にかなり水を使うことが知られていた。ヒーターで加熱した空気が洗濯ものを乾燥し、その熱く湿った空気を室内に出すと、梅雨時などは不快度が増す。そのため、空気を冷やし、水分を取り除くために、水を使用していた。
 この熱い部分と冷たい部分を同時に得ることができるのがヒートポンプ技術である。冷蔵庫の場合でも、冷たい空気は庫内へ、熱い空気を外部に逃がしていた。
 ヒートポンプを利用した洗濯乾燥機は、まだ高価であるが、節水、節電効果は大きい。

C先生:洗濯乾燥機だが、実は乾燥機が4年ほど前に壊れて、何か買わなければと思いつつ、未だに買っていない。理由は、何を買ったら良いのか分からないから。勿論、洗濯機は普通の全自動タイプであるが、17年間も問題なく動いているためでもある。もしも、明日壊れたとしたら、多分、全自動洗濯機+乾燥機と2台別々のものを買うだろう。


エコキュート

 ヒートポンプ技術を給湯器に応用したもの。ヒータで沸かす際の、1/4程度の電力で、お湯を得ることができる。しかも、エコキュートは、深夜電力を利用しているために、経済的な効果も相当に大きい。
 家庭におけるエネルギー消費は、43%が照明や家電製品用、次いで給湯が31%である。この給湯の省エネは、これまではガスあるいは石油湯沸かし器を用いることが普通だが、省エネ効果は、エコキュートの方が大きい。
 ヒートポンプには、冷媒と言われる動作気体が使用されるが、エコキュートの場合には、二酸化炭素が使われている。

C先生:今、新築の家の給湯を何にするか、と言われると、候補の一つはエコキュート、もう一つが、先日稼動しはじめた、太陽熱温水器である。優れた太陽熱温水器が作られることが望ましいのだが、現状、大量生産が行われていないために、比較的高価である。エコキュートは、恐らく、なんらかの補助が電力会社から出ているのではないか。携帯電話と同じで、使用料金で補填ができる機器は有利である。

スラグ溶融法で石綿無害化

 石綿は、それを構成している元素に毒性がある訳ではなく、その鋭い針状の形状に毒性があるため、溶融法がもっとも徹底的な無害化法である。
 ただ、石綿をそのまま溶融するのは、飛散しやすい粉末だけにやりにくい。銅精錬からでるスラグという廃棄物は、1300度程度以下の温度で溶融するガラス質の物質であり、これと石綿を混ぜ、溶融することによって簡単に無害化が可能である。

C先生:もともとの専門に近い題材。溶融まで行かなくても、ナトリウムなどを含む粉体と加熱するだけで無害化は簡単。わざわざ新聞に出すような話題ではないのだが。。。。


電安法(電気用品安全法・PSE法)

 2006年4月から、一部の中古電気製品としても、PSEマークと呼ばれる安全性を確認したマークを付けた製品以外を売ることができなくなった。トースター、冷蔵庫、テレビなどである。
 ところが、リサイクル品を販売している事業者は、この法改正を知らなかったために、まだ使える製品が粗大ごみになる、などの不満が出て、3月末まで、かなり混乱した。
 実際には、販売者自身が比較的簡単な方法で安全性を確認すれば良いのだが、そのためには、コストが掛かること、あるいは、ビンテージの音響製品などの場合には、テストに耐えられない可能性があることが問題にされた。
 経済産業省も、ぎりぎりになって例外規定を通知するなど、対応の遅れが問題になった。
 施行後には、レンタルという方法を利用することなどの方法も採用される。しかし、リサイクル事業者が、レンタル契約書を作っていないなど、もしも事故が起きたときの責任体制には、グレーなところが残っている。

C先生:どうも、PSE法の運用には、抜け道多様といった感じ。どうせ処罰などされない、と度胸のある事業者が多いのだろう。


漂着ごみ

 日本海沿岸を中心に漂着ごみが急増している。政府は、全国の被害実態を詳細に調査するとともに、自治体の処理費用の一部を助成する方針を固めた。
 漂着ごみの発生源と見られる中国、韓国、ロシアなどと共同で、海岸でのごみ投棄を防ぐ対策も検討する。
 ごみは、ポリ容器などのプラスチック類が中心で、増加傾向が続いている。廃棄物処理法では、海岸のごみを処理する責任は自治体にある。自治体の財政負担は増加の一途で、特に、離島では深刻である。対馬などでは、ごみ処理能力が不足して、福岡に運んで処理している。
 米科学アカデミーの試算によれば、世界中で船や廃棄物処理場などから年間640万トンのごみが生みに流入し、1平方キロあたり1万3000個のプラスチックが浮かんでいるという。

C先生:日本海側に住んでいる人にとっては、重大な問題。なんとかしないと。それにしても、プラごみはなんとかして減らさないと。


ベースロードの削減

 温暖化対策として、省エネによる温暖化ガス削減が重要である。
 02年における温暖化ガスの総排出量のうち、13%が家庭から、16%がオフィスから出ている。これら民生部門からの排出量の増加は、際立っている。
 これまでオフィスでは、冷房暖房の適正な運転、昼休みの消灯などを行うことが行われてきた。
 しかし、24時間通して使われるエネルギーは、わずかな量であっても、総計すればかなりの量になる。その対策として、△深夜の不要な照明、換気を止める△エレベーターの運転台数を減らす△自販機の運転を夜間停止△白熱電球を蛍光灯タイプに変える△高効率照明機器に変える、といった方法が有効である。

C先生:これも極めて常識的な記事で、いまさら何を言うのだ、といった感想。


エコ・プレミアム商品

 プレミアム商品と呼ばれる商品はごみになかなかならない。某高級ブランドのハンドバックは、素材は塩化ビニルを使っているが、値段は数10倍。しかし、寿命は非常にながく、一生ものとも言える。
 エコ性能が高いために愛着が沸くような商品をエコ・プレミアム商品と呼ぶことを安井至氏(国際連合大学副学長)が提案している。

C先生:やっと新聞にエコ・プレミアムなる言葉が載った。


石綿被害救済法

 2005年に発覚したアスベスト被害者の存在であるが、その救済のための法律が成立した。
 医療費の負担、療養手当て、葬祭料さらには特別遺族弔慰金なども給付される。
 費用負担は、国が370億円を負担し、地方自治体にも93億円の拠出を求める。労災保険に加入する全事業者からも徴収し、石綿関連企業からは特別拠出金を徴収する。
 しかし、アスベストを早期に使用禁止しなかった政府の責任を追求する声が上がっている。

C先生:国の責任を追及するのは簡単だが、実際には、そのお陰で経済成長ができたという側面が大きい。中国、ブラジルなどのアスベスト利用は、なかなか止まらないだろう。


フェロシルト

 大手の化学メーカーである石原産業が、工場廃液から作ったフェロシルトという物質を埋め戻し材として販売していたが、裏で同じ業者に開発費として実質上の処理費を渡していたことから大問題になった。
 例えば、フェロシルトを150円/トンで販売していたが、裏で3500円/トンもの開発費を渡していた。
 しかも、巧妙なことには、このフェロシルトを三重県の「県推奨リサイクル製品」の認定を取得したことにある。実際には、フェロシルトからは有害な六価クロムなどが含まれている。
 結果的に、フェロシルトは合計70万トンほど使用され、同社がこの行為で浮かせた処理費用は、50億円程度だと推定される。

C先生:石原産業はどうもどこかに問題がある。石原産業のHPに出ている環境憲章には立派なことが書かれているのだが。社長が環境についても責任者。社長の見解を聞きたいものだ。

リサイクル偽装

 石原産業のフェロシルト事件はリサイクル偽装の典型例である。
 全国最大の87万立方メートルの不法投棄となった岩手・青森県境事件でも、業者は、生ごみから作った不良品の固形燃料をリサイクル品だと偽って備蓄したことにして、不法投棄をしていた。
 リサイクルには、いまだに不適切な行為が付きまとう。優良な事業者を選定することが、唯一の対策法のように見える。

C先生:不法投棄の一種であるが、やはり、不法行為が経済的に見合うということが大きい。見つかったときの罰金をもっと大きくするしかないのでは。

ダーティー・リサイクル

 国境を越えて移動する電気電子製品の廃棄物が、輸出先で不適切な方法で解体され、環境汚染や健康被害も懸念される状況になっている。特に、中国を中心とするリサイクル品の流れには、その可能性が高い。
 このようなダーティー・リサイクル、あるいは、負の貿易を、正当で資源効率の高いリサイクル網に変えることは、日本にとって責務である。国際的な3R網構築のリーダーシップを取るために、昨年、3Rイニシャティブ会議が開催された。
 タイにおける富士ゼロックス社のリサイクル工場のように、日本では実現できないような高いリサイクル率と現地雇用を実現した例も出始めており、日本の役割は大きい。

C先生:現状の電機電子製品の国際的なリサイクルは、まさしくこんな状況。これを改善するには、やはり成熟が必要なのか。

下水汚泥リサイクル

 Jパワー(電源開発)は、下水汚泥を利用して自社の石炭火力発電所で代替燃料として利用する事業を始めた。下水処理場に汚泥燃料製造装置を販売し、燃料を買い取って自社で使う。二酸化炭素排出量の多い石炭の使用量を減らすのが狙い。
 汚泥は蒸し焼きにされて燃料となり、石炭と混ぜて使用される。汚泥燃料からの二酸化炭素発生量は、ゼロと計算されるため、二酸化炭素発生量が減少することになる。製造装置は、1日100トンの処理能力で30億円。

C先生:二酸化炭素排出量というもののみを重点化すると、何か起きる。これも、その一つかもしれない。


バイオマス発電

 JFEエンジニアリングが山形県村山市に木材を原料とするバイオマス(生物資源)発電プラントを建設する。
 地域で出るサクランボの枝や間伐材などの木材を使ってロで蒸し焼きにし、発生するガスを使って発電する。木材処理量は年約2万トン。
 バイオマス発電は、植物が成長する際に二酸化炭素を吸収している点が考慮されるため、二酸化炭素を発生しないとされている。

C先生:これも二酸化炭素排出重点化の結果か。


永源寺第二ダム問題(滋賀県)

 大阪高裁が住民側の主張を認め、計画は違法であると認定した。2003年の川辺川ダム(熊本県)の福岡高裁に続き二例目。
 このダムは、農業用のダムであり、判決では、国が地質調査や予定地周辺の測量をしないまま計画を策定したため、その後の設計変更で建設費が当初の476億円から1100億円になった点について、国の過失を認定した。

C先生:農業用水は、農業をどこまで再生させるか、という国の方針が決まらないと。どうみても、2050年ごろに食糧危機が来る。それ以前にも、バイオ燃料が普及すると危ない。人と車が穀物を奪い合う構図。


無洗米

 洗わなくて良い米は環境にやさしいか。無洗米の現在の使用量は、米全体の1割程度。水の節約、とぎ汁が出ないことが環境負荷の低さの理由。製造に要するエネルギーは、下水処理場でとぎ汁を処理するエネルギーの半分以下と主張。
 それに対して、暮らし全体を見直すなかで、米とぎの環境負荷は減らせるという見方をする団体もある。
 筆者は、食品の場合、環境負荷や手間の削減だけを議論するのは無意味で、むしろどちらが味が良いかで選択すべきではないか、と考える。

C先生:やはり、どこまで利便性を求めるか、といった商品のように思える。


eneloop

 三洋電機が発売した、新しいNi−H型の充電池のこと。Ni−H電池の蓄電容量面での性能の改善は目覚しいが、その一部を犠牲にして、自己放電を減らすことに目を向けたのが特徴。そのため、商品として、充電した状態で売ることができるようになった。1年後にも、85%の電気が残っているという。松下電器も同様の製品を発売した。

C先生:Eneloopは絶対お進め。松下の同様の製品も同様。現在、自宅の乾電池がどんどんとこれらの自己放電の少ないNi−H電池に置き換わっている。なんら問題はない。経済的にも見合うことは、比較的消費電力の大きい機器なら確実。ごみの減量がもっとも大きな効果か。

ESCO

 エネルギー・サービス・カンパニーのこと。企業にたいして、省エネを企画・設計・施工、設備導入・運転管理などをして、実際に改善したエネルギー効率から得られる利益の一部を対価として受け取るビジネス。

C先生:一部のESCO企業が利益を保証したために、原油価格の上昇で却って苦しくなったと聞く。基本的には、正しい方法だと思うが。

東アジアでの省エネ事業

 ESCO事業はエネルギー効率の低い東アジアで実施することが有効である。同じGDPを作り出すために必要なエネルギー消費量は、日本に比べタイで4.7倍、中国で9倍、インドでは23.3倍にも及ぶ。
 日タイ経済連携協定の交渉では、このような省エネに関する企業ベースの技術移転が協力の柱となった。

C先生:省エネ技術を中国などに単に渡すのではなく、京都議定書に参加することの約束を取り付けたら、技術移転という方針に切り替えるべきだ。CDMも現状だと、中国に足元を見透かされているようだ。


産廃税/産業廃棄物税

 三重県が2002年に導入して以来、すでに24府県が導入した。産廃税は、輩出事業者や中間処理業者に課税し、税収を最終処分場や周辺環境の整備に当てる目的税。大半が、産廃処理量1トンあたり1000円を徴収している。

C先生:北川知事の時代の三重県の仕事。


テレビ用燃料電池

 地球環境産業技術研究機構(RITE)とシャープは、家庭の生ごみを処理してできる化学物質から燃料電池の燃料になる水素を細菌を用いて安全に作る基本技術を開発した。家庭用の液晶テレビを動かす燃料電池への応用を目指す。
 生ごみを処理してできるギ酸に、大腸菌を与えて水素を生産するシステム。大腸菌に遺伝子組み換え技術を使って、大腸菌の水素生産能力を100倍以上にし、コップ大の容器でも大量の水素を作れるようにした。
 ギ酸は、生ごみなどの有機廃棄物を数100度に加熱して作る。RITEはギ酸の量産技術の確立を目指す。
 燃料電池を液晶テレビと組み合わせることによって、コンセントと無関係に配置できる用途や携帯用途に対応する。

C先生:ギ酸というものが余り安全な化合物には思えないのだが。