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  3.11後のエネルギー戦略2   05.15.2011

    



 依然として、朝日新聞の声の欄には、原発を止めるべきという意見が掲載され続けている。

 もう一つ、重大な変化が起きた。

 菅首相の要請によって、中部電力浜岡原発は、防潮堤を完成させるまでの期間、恐らく、3年間程度、運転を停止することになった。

 このニュースに対して、当初、違和感があったのだが、その後、「自分が中部電力の社長だったらどう判断しただろうか」と考えてみると、むしろ、積極的に受け入れるのが経営者の判断というものなのではないか、という結論になった。

 その理由は、本日のHPに記述する様々なリスクファクターを考慮した結果である。

 社長としてもっとも考えるべきリスクは、ビジネスリスクである。最悪のリスクシナリオが、福島第一の再現である。その可能性が全くゼロのならば、停止要請を受け入れることは無い。

 東海地震の場合、プレート型の震源が東日本大震災の場合よりも陸地に近く、したがって、活断層型の地震を誘発する可能性も否定できない。

 となると、まずは、津波対策ではあるが、地震による原発施設そのものの破壊も考慮した対策を取ることは、そろそろリスク的な発想に基づく検討に値するだろう。

 すなわち、現時点から5年以内に、経営リスク=「(起きる確率)×(被害・補償金額)が支払い限度を超す可能性」がゼロに近いとは言えない状況になっている。

 一方、現時点の様々な状況はリスク対応を行うのに追い風ではあるが、社長という立場を考えると、中部電力一社の決断として、浜岡原発の停止を発表したら、株主から相当な批判を受けること、中部経済圏の盟主としての地位を放棄せざるを得ないこと、などの重大な副作用をも覚悟せざるをえない。

 しかし、現時点という特殊な時点以外には、その決断ができるとも思えない。

 社長の心中を慮ると、こんな困惑した状態にあったのではないだろうか。そこに、「渡りに船」、菅首相の要請が来た。

 一旦は、慎重に検討をする振りをしたとは思うが、実は、待っていたのではないだろうか。



 さてさて、以下、本論である。

エネルギー供給戦略を考える基本は何か

 今回変更されたその基本原理は、やはり、「巨大・単一から分散・冗長」である。

 しかし、戦略策定時に考慮すべき境界条件もしくは目標は、決して、100%安全の達成でもないし、100%経済合理性の追求でもない。

 それは、包括的なリスクを考えた上で、妥協できる具体案を作ることである。妥協を図るのであるから、様々な状況に対する「共通の理解=リスクコミュニケーション」が必要である。

包括的リスクを考えるべき領域としては、以下のようなものがある。

1)健康リスク 
2)エネルギー不足のリスク 
3)資源枯渇リスク 
4)製造業海外移転のリスク 
5)食料供給リスク 
6)生物多様性喪失リスク
7)文明喪失リスク 


 電力供給、エネルギー供給に関しては、リスクを判定する事象、すなわち、具体的にどのような事象を考えるべきか。以下のようなリストになるだろう。

a)停電: 瞬間的、長時間、計画的、数日以上
b)事故: 放射線、天災、誤操作、誤作動
c)コスト: 価格、必要投資、電力料金、税金
d)直接雇用: 日本人、外国人
z)産業構造: 製造業依存、サービス産業、地産地消、分かち合い
e)地域: インフラ、産業、文化、教育
f)貿易: 相場、高騰、買い占め
g)安全保障: 侵略、テロ、戦争
h)技術: 可能性、進化速度、信頼性、寿命、危険性、必要な資源、コスト
i)順序: 新設、廃棄、停止、予備



 以下は、前回の続きであり、上記のリスクや事象に関連させて、具体的に記述を行う。

U.現状の技術や社会情勢などの共通理解
 以下に記述する程度の共通理解に基づいて、様々な議論が行われることが必要不可欠である。

(a)発電・送電技術に関する共通理解
 この項目は、停電、特に、長期大規模停電を引き起こしかねない、現在の電力網というものが持っている具体的な特性を記述する。

 停電のリスクは、健康リスク(=病院の機能停止、熱中症、体温喪失など)を含め、ほとんどすべてのリスクに関連をする。


1)発電量だけでなく、電力需要の年変動・日変動に対応できること

 日(時間)変動では、ピークは季節によって異なる。現在の東電の供給電力の日変動を見ると、ピークは休日だと19時ごろ、平日だと季節によって違う。真夏だと昼休み後の午後にピークになる。

 特に、昼休みの供給量の急減は、日本人の真面目さを示している。職場の電気を昼休みには必ず消すからである。

 このような急激な変動に対しては、水力発電で対応をしている。水力は、出力ゼロから5分間程度で、最大出力にまでに到達できるからである。

 水力発電所の発電コストは高いことになっているが、立ち上がりが速いという特性上、使わざるを得ない。

 このように、どこの発電所をどのように動かし、どこに供給するか。状況を刻々と把握しながら最適な判断を行うことは、かなりの業である。

 年(季節)変動への対応は、どの発電所をいつ整備するか、といったことによって対応することになる。

2)ピーク・ベースロードという考え方への共通理解

 ピークは、夏期の午後にピークが来る。その時には、すべての発電所がフル運転することになるが、それでも数%の余裕を持たせている。もしも、どこかの発電所が急にトラブルになったときには、大停電を起こす可能性があるからである。

 なぜわずかな電力不足で停電になるのか。それは、交流というものの性質である。交流には、電圧だけでなく、位相というものがある。位相とは、回り方のようなものである。

 二人のスケーターがスピンをするとき、「揃っている」ということは、単に回転速度が同じということではなく、二人の顔の向きも揃っていることを意味する。

 交流とは、この位相も揃っていることが条件である。遠く離れた発電所にあるどの発電機も、顔の向きまで揃えて回っているのである。

 ある地域で急激に需要が増えたとき、その地域の発電機の位相が狂うと、周波数が狂い、さらに行けば電圧も狂う。最悪の事態になれば、多くの発電機の位相がバラバラになって電力網全体がダウンする。

 一方、ベースロードとは、24時間供給を続ける必要がある発電量を言う。多くの国で、原発か石炭発電がその役割を果たしているが、重要なリスク対応としては、コストが十分低いこと、供給不安の無いこと、である。

 フランスは、原発の割合が73%もある。ベースロードは通常、40%台であろう。日本の原発では、ベースロードが73%という状況は作れない。なぜならば、まず、島国であること。そして、地元との協定で、出力調整を行わないことになっているからである。

 それにしても、フランスの原発の割合は高すぎる。それは、周辺国からピーク電力を輸入しているからではないか、と思われる。

 スペインは、自然エネルギーを15%導入したと言われている。これは、通常の電力網では維持しにくい量である。

 これにも、可能性はいくつかある。ピレネー山脈あたりに揚水発電所が十分あれば、太陽光・太陽熱による昼間の余った電力を揚水のために使い、不足している夜間のベースロード用に使っているという可能性が一つ。

 もう一つは、スペイン国内だけで電力網を維持することは放棄して、フランスからベースロード電力を輸入するというやり方である。

 2010年のエネルギー白書の図 第223−1−6を見ると、スペインとフランスとでは電力の輸出入を行っているので、この後者のやり方が行われているのではないか、と思われる。


図 欧州の電力輸出入
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010/2.pdf 

 もっとも、スペインでは、自然エネルギーとして、太陽熱発電も恐らく利用している。これは、ミラーで塔の上に太陽熱を集めて、火力発電と同様の方法で発電をする。

 この方法のメリットは、ある程度の蓄熱が効くので、夕方まである程度の出力があることだろうか。

3)太陽光・風力など各種技術の特性に関する共通理解

 太陽熱、地熱、小水力、地中熱、バイオマスの特性を理解することが必須。

 ちなみに、以下の技術は、まだまだ単なる未来技術であって、現時点から20年以内では、可能性があるとも断言できない。そのため、説明すら必要がない。研究開発をどうするか、という議論だけは必要だが、すでにかなり資金を投入したものは、見合わせるべきだろう。

 未来技術リスト:海流、波力、高温岩体、宇宙発電、宇宙温度差、核融合。そして、海洋温度差(すでにかなり検討されおり、日本での実用は無理に見える)。

 太陽熱、地熱、小水力、地中熱、バイオマスについて、すでに述べた1)、2)に沿って分類を行う必要がある。

太陽光:ふらつきが大きい。そのため、需要地での10%以下の導入を目指すべき方法である。そもそも、需要というものもかなりふらついている。最近であれば、IH調理器だと、3kWといった電力が急に使われたりする。しかし、1000戸程度の住宅があって、平均的に300W/戸の電気が使われていたとすれば、約1%の電力需要が増えることにすぎない。

 太陽光は、個人宅の場合、通常3kW程度の発電能力だが、これが狭い地域のすべての家庭に設置されると、これは大問題になりうる。

 それでも、太陽光には、メリットがある。それは、個人が買うということである。奇特な消費者というものは居るから、そのような人(自分を含めて)が投資できるような社会的な仕組みを整備すれば、社会全体のコストはそれほど増加しない。

 しかし、それでも、発電能力が電力全体の10%を超すことはありえない。なんらかの対策、蓄電、オフグリッド利用などの工夫が必要。過疎地における太陽光発電も同様で、なんらかの対応が必要。

 今後の技術の進歩はどこに必要か

 日本は狭いから高効率の太陽電池が必要、という表現がしばしば行われる。しかし、その気になって設置すれば、太陽光発電を設置できる場所などは相当にある。高効率が必要なのは、一部の大都会だけだろう。

 高い効率が期待できる太陽光発電素子として、量子ドット型などが言われているが、これは無理。まず、使う材料が問題になる。太陽電池のように素子の重さがkg単位で、それを何億枚と使うものは、地球に多く存在している元素を使い以外にない。しかも、寿命が半永久的に長くないと、製造プロセスのために必要なエネルギーが問題になってくる。量子ドット型がシリコンを用いて、このような条件を実現できるのか。

 量子ドット型がもし可能になれば、集光型の太陽光発電所用、ということになるのかもしれない。


風力:太陽光と比較すると、1基あたりの発電量が大きいのがさらなる問題である。太陽光だとメガソーラーなどというが、最近の風力は、1基でメガの数倍である。

 しかも、風力が設置される場所は、サイズや音などの様々な要因から、需要地ではない。そのため、太陽光よりもより一層の対策が必要である。

 米国中西部では、以前から小型の風車が用いられている。それは、井戸水の汲み上用のポンプの動力として使われてきた。汲み上げる量が瞬間的に変動しても、どうせ地上には水タンクがあるので、問題にならない。

 となると、日本の風力でもポンプを駆動して、海水を高いところに持ち上げて貯蔵し、その位置エネルギーを電力に変えるといった積分型の利用を考える可能性は無いとは言えない。

 風力駆動の揚水発電である。ところが、これには矛盾がある。高いところは、山である。山には海水が無い。山の近くは風況が良くない。

 要するに、風力は、自然エネルギーの中で、使いこなすのがもっとも難しいエネルギー源である。

 それならなぜ風力なのか。それは、欧州が風力を本命だと見ているという情報が、日本でも広まっているからではないか。

 欧州では、ほぼいつでも西風が吹いている。英国は、大陸の西端の島国だから、風況は最高である。特に、スコットランドは、もっとも風に恵まれている。

 英国の国土はほぼ平坦。それゆえに、若干洋上に出れば、風は素直に常時同じ方向に吹いている。

 設備利用率が高いから、コスト的にも見合う。ただし、これらは、欧州では、という条件付きである。

 しかし、それでも若干の疑問は残る。英国が計画中とされている32GWの風力が本当にできるのだろうか。英国民が、エネルギー自給という安全保障にどのぐらいのお金を出すかに掛かっているように思える。

 日本では、なぜダメか。まず、山がある。風の向きが常時変わっている。英国で考えられているような5MW級の風車が日本で回るのだろうか。大型の風車は、風向きが変わったときの対応が難しい。

 しかも、台風などというやっかいなものが来る。宮古島にあった風車は70mまで耐えるから大丈夫と言われていたが、実際に風車の仕様はその通りだった。70mを超した台風の風で、風車は壊れた。

 雷という厄介なものも、日本には多い。初期の風車で、雷でやられたというものも多い。それは、風車の材料が炭素繊維補強型のプラスチックであると、これは電気を通す避雷針のようなものだからである。

 洋上風力はどうか。もっとも有名なデンマークの洋上風力はなぜできたのか。それは、バルト海というものが水深が浅いからである。10m程度のところが多いようである。

 英国北部の海も、日本に比べれば、比較にならないぐらい浅い。

 それなら浮体型の風力を作れば良いではないか。その通り。しかし、コストは上がる。上がっても良い。いくらでも高い電力代を払う。こう日本国民が言えば、実現は不可能ではない。それ用の電力網を最初から作り直せば良いのだから。

 しかし、それも民生用に限られる。産業用電力は、現時点でも世界で高い国ランキングの10位以内ではないか。これ以上産業用電力を値上げしたら、グローバルな視点をもっている企業は、すべて海外に出てしまう

 風車を作ることで、新たな産業が生まれるということで風力を正当化する人もいるが、たしかに、三菱重工製の風車はできるだろうが、実際の生産は、海外でということになることだろう。

 今後の技術進歩はどこに必要か

 風力の場合、低騒音、バードストライクなどへの環境対応は要対応である。低騒音は無理かもしれないので、洋上設置が主力になるのではないか。バードストライクは、そもそもどのように考えるべきか、それが難しい。生態系の保全、生物多様性の保全とは、個体のすべてを守ることではないので。

 風力の場合、本体の進化よりも、風力に適した電力網を適正コストでいかに作るか、といった技術開発がポイントになるのではないか。


太陽熱発電:スペインなどでは、太陽熱を使った大規模発電が行われている。日本の気候ではあまり有効とは思えない。


太陽熱温水器:これは、オフグリッドタイプなので、太陽の熱利用としてもっとも妥当な方法である。もっと政策的に普及させるべき自然エネルギーである。ただし、高額な設備を導入しても、経済的なメリットを出すことは不可能かもしれない。むしろ、単純な設備の導入か、ヒートポンプ型温水器の余熱用としての位置づけが最適だろうか。

 今後の技術開発としては、大量生産に値する商品開発がもっとも重要なのではないか。


地熱:これはベースロード型の発電方式であって、原発と競合する。これまで原発のコストが安く評価されていたため、いわば意図的に除外されてきたやや高価なエネルギー源である。

 原発を置き換えるとしたら、最適の自然エネルギーであり、しかも、日本国内にはまずまずのポテンシャルがある。といっても、現実的には、原発2基分程度を開発するのだろう。

 欠点は、地下水を汲み上げるために、その中に有害元素を含むこと。特に、ヒ素か。また、地下水に含まれるシリカ分がパイプに付着して、パイプの交換が必須であること。コスト的には、それほど有利ではない。

 温泉地の宿泊施設の経営者の反対が非常に強い。水を汲み上げる深さが違うので、温泉が枯れる可能性は低いが、絶対に可能性が無いとは言い切れないところが難しいところ。もし、温泉がでなくなったら、エネルギー価格は安いので、とても、1泊2万円の温泉旅館の営業補償は不可能である。

 今後の技術開発は、地中の資源だけに、確実な探索を短期間で終わらせることが重要。その先には、高温岩体発電などの高深度地熱利用技術は考えておくべきだろう。


中小水力:日本では、大規模水力発電は、すでに、開発済みである。残るは、中小水力である。

 八ッ場ダムはどうなったのだろう。もともと発電用ではないし、また、水の酸性が強くて、中小水力にも向かないかもしれない。現時点で建設の可能性が残っているダムは、ほぼ、治水用である。

 関連事項として、水利権を調整して、水力発電への水の利用量を増やすことはありうる。これは既得権がらみの話。

 いずれにしても、中小水力を丁寧に利用することによって、原発1基分以上程度の発電量を確保すべきだろう。

 欠点は、メンテナンスコストが高くなること。小型の装置を多数使うとなると、そのメンテに人件費が掛かる。しかし、逆に言えば、雇用の確保には最適の方法なので、地域の活性化につながるという見方をすべきではないだろうか。

 技術開発よりも、既得権益などの社会的問題の解決が必要な分野である。


地中熱:これはむしろ地下水熱と表現すべきもので、年間を通じてほぼ一定の温度、15度前後、をエアコン用の冷熱、もしくは、温熱として利用する。

 現時点で開発されている技術では、100mもの深さの井戸を掘って、そこに、ポリオフェフィン系のパイプを入れ、その中に水を通して熱を汲み上げる方式。この方式では、プラスチックパイプの熱伝導が低いという限界があって、1戸で1本の井戸が必要。すなわち、コストが高い。

 ビルなどへの応用を考えると、2本の井戸を掘って、1本の井戸から地下水を組み上げ、エアコンと熱交換を行って、使い終わった地下水は、もう1本の井戸に戻すという方式が現実的。大きなビルであれば、複数×2本の井戸を掘ることになる。

 ところが、この方法は、地下水利用は地盤沈下を招くという固定観点に囚われている自治体によって、許可されない。

 現実はどうか。東京では、地下水の利用が減ったため、地下水のレベルが高くなって困っている状況。例えば、東北新幹線の上野駅は、地下水での浮力に抗するために、鉄の錘をかなり設置している。

 地中熱利用は、地下水のレベルには無関係なのだが、どうも自治体にとって、一旦取締の対象になると、その継続は既得権の一種になるのではないだろうか。

 自然エネルギーというよりも、省エネ技術に分類される地中熱利用だが、是非とも、どのような抵抗があっても、進展させたい技術の一つである。

 技術開発は、現状の技術で十分対応可能。すなわち、ほとんど不必要である。規制行政のあり方、既得権などの社会的な要素が大きい。


バイオマス:この利用を促進するのは日本の重要政策の一つだったと思うが、どうも、難しいようだ。

 バイオマス大規模発電などよりも、それこそ、超分散型のエネルギー、具体的には、薪ストーブのような考え方で使うのが良いように思える。

 もしもどうしても大規模に行うのであれば、石炭発電での混焼が良さそう。

 ちなみに、オイル産出藻類はどうなのだ、という声が聞こえてきそうだが、これは、2050年程度になって、どうしてもCO2排出量がゼロの液体燃料(主として航空機用。となると、エステル系でもアルコール系でもない炭化水素系)が必要になったときの準備のためだろう。

 大々的な技術開発は不要で、むしろ、森林をいかに管理し、林業を業として行えるような体制を作るかに掛かっている。森林の土地所有のあり方などを含め、やはり社会的な問題の改革が必須だろう。


4)現状のような広大な電力網の意味

 現状の東京電力の電力網のような巨大な電力網にはどのような意味があるのだろうか。それは、発電所の故障や定期点検などを考えると、一つの巨大電力網を構築しておいたほうが、経営効率上、都合が良いからである。今回のように、福島の原発がすべて止まったとき、東電管内を2つに分けて運用していると、福島原発を含むエリアの電力が不足する。しかし、巨大な単一の電力網にしておけば、柏崎刈羽原発の電力をすべてのエリアで共有できる。

 水力・揚水発電なども、その所在地は偏っているから、やはり、巨大な電力網のメリットがでる。水力発電は、昼休みの急激な電力需要のディップに対応するには、必須の発電方法である。

 これはユーザ側にとってもそう言えるのかもしれない。沖縄電力は、原発が無いし、ほとんどが化石燃料を燃やしている発電なので、二酸化炭素の発生量が多いだけでなく、電力価格も高い。

 しかし、リスクもある。大規模であるために生ずるこれらのメリットを確保するためには、大規模になればなるほど大きくなる停電のリスクを徹底的に排除する必要がある。電力網にとって低品位でリスキーな電力である風力や太陽光を大量に入れることは不可能である。

 さらに、このような大規模電力網を運用するには、相当の経験とスキルが必要である。しかも、発電は他の事業者が行っているという状況で、送電網のコントロールだけでは、安定な電力供給には限界がある。発電も、送電も自ら行なっているから、大規模な電力網が維持できているとも言える。すなわち、大規模電力網をもつということは、地域的な排除を行っている既得権益の確保に加え、発電と送電の両方を行う権益を、同時に確保できるというメリットがある。



以下、未完。次回へ。

5)直流送電網への転換
6)蓄電技術の現状と将来
 二次電池(リチウム、NaS)、電解水素+燃料電池、フライホイール、超電導コイル、揚水
7)揚水発電の利用について
8)燃料電池の現状と未来
9)50Hz・60Hz問題
10)100V・200V問題
11)これらを解決?スマートグリッド
12)ガス供給網の有効活用
13)究極の分散型電源=オフライン利用
14)設備製造まで考慮したLCA的、EPR的な思考

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(b)省エネでどこまで行けるのか

民生部門
15)我慢大会型省エネ
16)仙人型・自然人型省エネ
17)新こたつ文明・スーパーこたつ文明

産業部門(CO2削減を含む)
18)コジェネ発電の売電
19)CCS付加型セメント製造
20)製鉄での水素利用とCCS

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(c)既得権益などの社会的情勢

21)漁業権による海洋利用の制限
22)水利権による河川水利用の制限
23)送電業・発電業分離の議論
24)山林土地所有とバイオマス
25)環境影響の評価
−1:低周波騒音、バードストライク
−2:地熱発電の排水
−3:国立公園の景観
−4:地中熱用の井水利用制限