-------


  原発比率の選択肢決定
   06.30.2012



 エネルギー・環境会議(メンバーは閣僚)が開催されて、2030年の電力をどうするかを定めるために、原発比率をどうするかを中心として3つの選択肢を決めた。

 0%シナリオ、15%シナリオ、20〜25%シナリオの3種になった。いずれも、2030年における原発による発電量の比率である。

 前回の本Webサイトでの記事が取り上げたように、資源エネ庁の基本問題委員会、中央環境審議会地球環境部会、原子力委員会が独立で検討してきた様々な選択肢候補から、3つの案が作られた。

 朝日新聞は一面でも取り上げているが、なぜか、日本経済新聞では記事が見つからなかったが、Webサイトにはある(後出)。

 読売は購読していないので、YOMIURI ONLINEをチェックしたが、30日の10時現在、Top Pageの最新ニュースには、掲載されていない。

 新聞・放送のWebサイトでは
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL290KR_Z20C12A6000000/

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120630/mca1206300502003-n1.htm

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120629/k10013224541000.html

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTJE85S00A20120629

すべて同じなので、一つ読めば十分。速やかに消えるので、記録としては無意味なのだが、一応掲載。



C先生:選択肢が決まった。基礎データを作った2つの委員会、基本問題委員会と地球環境部会からの選択肢がそのまま選択されるのではなくて、0%シナリオ=ゼロシナリオには、基本問題委員会のものをベースに「追加対策」が行われたものになっている。

A君:これが会議の決定。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf
 この図が、ゼロシナリオに変更が行われたことを示しています。



図 2030年における3つのシナリオ

B君:要するに、化石燃料依存度を5%下げた。その分を再生可能エネルギーの比率を5%上げることで補った。

C先生:もう一つ変わったところがある。それは、最終消費エネルギーの値が、他の2つのシナリオが3.1億kLなのだが、ゼロシナリオだけは、3.0億kLなのだ。これは、3.3%だけ省エネを強化しなければならない。

A君:具体的には「経済的負担が重くなっても、省エネ性能の劣る製品の販売制限・禁止を含む規制を広範な分野に課す」、とされています。

B君:それでも、1kWhあたりの発電単価は、他の二つのシナリオが+5.5円であるのに対し、+6.5円と1円高いだけ。

A君:このような変更を行った意図は、恐らく2点。一つは、化石燃料の入手が困難になるというエネルギー安全保障上の問題を回避するため。それでも、15シナリオでの化石燃料依存比率55%と比べると、ゼロシナリオでは65%依存していて、現状よりも化石燃料依存率が高い。
 もう一つは、これに付随する温室効果ガス削減量。もともとのゼロシナリオだと、2030年に16%削減という値だったが、これでは、2020年に25%削減するとした鳩山国連演説との解離が余りにも激しい。国際社会でも戦えそうもない。そこで、23%削減という値にして、15%シナリオに揃えた。

B君:事実はそうなのだが、より深い意図ということは、多くの国民にゼロシナリオを選択させようということなのだろうか。

A君:いや。政府は恐らく15%シナリオを選択させたい。これが細野大臣がいつも主張している古くなった原発を40年で廃炉するシナリオに近いので、それからの判断ですが、15%に落とす気だろうと思われますよね。

B君:ということは、「ゼロシナリオを非現実的なものにして、実質的な選択肢から外した」、という反原発派からの非難を避けるために、できるだけ見かけを同じにした、というところが本音か。

A君:核燃料サイクル政策の選択肢では、ゼロシナリオだけが、「使用済み核燃料を直接処分する政策を採用」と断定されていて、その他の2つのシナリオでは、国民的議論の中で、「核燃料サイクル政策については、再処理・直接処分がありうる」としていることは、それと矛盾するのではないですか。

B君:国民感情としては、今更、再処理をするのは危険だと思っているのではないか。実際には、直接処分の方が色々と厄介だが。

C先生:まあ、意図を探っても余り生産的ではないので、ここでは、簡単に終わろう。

A君:それでは、あと2枚、図を示して終わります。もともとは同じ表なのですが、余りにも縦長で見難いもので、面倒な細工をして2つに分けました。


図 2030年の姿(総括) 


図 2030年の姿(コスト)

B君:これだけ見ても、なかなか分からないかもしれない。やはり報告書の本文を読んで貰う以外にない。

C先生:いくつか疑問点があれば、それだけは列挙しておこう。

A君:ゼロシナリオだと、発電容量ではなくて、発電電力量で再生可能エネルギーが35%になりますが、その内訳が問題。特に、風力とメガソーラーの割合によっては、電力網の強化がもっと必要になるのでは

B君:それは大きなポイント。系統強化のための出費がゼロシナリオは5.2兆円、他では3.4兆円と多少大きいのだけど、本当にこの程度の差で十分なのか。

A君:ゼロシナリオでの省エネ投資が100兆円。国民一人あたり約100万円。4人家族なら400万円になっていますが、その実態が分かりにくい。他のシナリオでも80兆円ですから、余り変わらないとも言えるのですが、省エネによる節約額で回収できない費用が、ゼロシナリオが30兆円で、その他が20兆円。この差額10兆円は、国民のお財布からの純粋な持ち出しになる分で、それが1.5倍。見返りは、省エネに貢献したという満足感だけで、それ以外に何もない。これが分かっていても国民は出費してくれるか。

B君:その部分をどのように国民的議論の中に埋め込むか、そこに掛かっている。

A君:化石燃料の輸入に要する金額がゼロシナリオだと16兆円、他のシナリオだと15兆円。現在、17兆円。たった1兆円の違いがどのような意味を持つか。

B君:それよりも、ゼロシナリオは天然ガス依存シナリオなので、これを国民がどう見るか。

A君:そして、これがもっとも大きいかもしれないのですが、電力料金が値上がりしたときに、製造業が海外移転して、実質GDPが下がり、雇用が失われること。これをどう考えるか。

B君:国立環境研、伴教授、の経済モデルでは、GDPの低下は少ないが、野村准教授、RITEのモデルでは低下が大きい。

A君:雇用の確保というものは、極めて重要だと思うのですが、そこがどのぐらい意識されているのか、よく分からない。

B君:要するに、原発を早めにゼロにすることを選択すれば、安全性の向上が得られるが、その代償として、出費の増大とGDPの低下による雇用の喪失が起きる。このような全く異なることを比較して貰える可能性あるのか。それとも無いのか。

A君:安全性の向上については、今後、いくらなんでも、福島事故以前の対策がそのまま継承される訳ではない。少なくとも、1000〜2000年に一度程度の天災が起きても、福島事故は再現されないという対策が取られるだろう。そうだとしたら、安全性が向上したことが、どのぐらいメリットだと言えるのか

B君:いくら安全性を向上させても、1万年に一度の天災があれば、やはりダメだろう。しかし、1万年に一度の天災のために、対策をどこまでやるのか。

C先生:1万年に一度の天災でも、福島事故の再現は起きないという原発も、実際のところあり得ない訳ではない。しかし、まだ完成した技術ではない。しかも、核燃料の最終処分をどうするか、という最大の問題は、どのような技術的進化があっても、解決するのがほとんど無理のように思える。核燃料の最終処分が不要な原発というものはあり得るのだろうか。難しいのではないか。

A君:確かに。今回の選択肢でも、むしろ、核燃料再処理のチョイスの方が大きいかもしれない。ゼロシナリオを選択すると直接処分だということだが、直接処分すれば、安全だと言えるようになるまで10万年掛かる。

B君:それ以外のシナリオだと一部は直接処分だろうが、ある割合は再処理して、高レベル廃棄物だけを最終処分すれば、再処理した分は1000年で安全だと言える。ただし、副作用として、プルトニウムが回収されるので、これを原子炉で燃やさなければ、核兵器に使われる可能性がある。決定的な方法は無い。

C先生:いずれにしても、1000年から10万年という長い期間を考慮した安全とリスク18年後の経済と雇用とを考えた生活の安定とリスク、これらを天秤に掛けて、国民的な議論が行われることになるが、果たしてそのキチンとした選択はできるのだろうか。

A君:リスクの大小は個人の価値観に依存します。すなわち、主観的なものですが、個人として、こんな図を作ってみました。各人、このようなものを作って、「なんとなく」でも「絶対これ」でもなく、科学的・論理的な判断していただきたい。

B君:説明が必要かもしれないのは、1000年に一度の天災への対応。これができなかったら、福島の経験をどう活かすのだ、ということ。実際、大飯の3、4号機がどのような対策を取ったかを調べてみると、1000年に1度程度の天災には耐えられるように改善が行われていることが分かった。20〜25シナリオが多少イエローなのは、2030年以降の安全政策がどうなるかに関して、若干の不確定要素があるから。さて、この図で、どれを選択するのか。

C先生:1000年に一度の天災への対応について、この図のグリーンの評価は「疑問だ」という方もいるだろう。そこで、その検討結果については、次週にでも議論してみたい。