-------


     省エネの歴史と拾エネへ その1 
  12.20.2014
                省エネの実態とその限界



 COP20が終わって、いよいよ各国が削減案を検討し、提出に備える段階に入りました。その削減草案は、準備の良い国では、来年の3月末までに提出されることでしょう。しかし、日本は、どうも3月末には出せそうもないようです。

 考慮すべき年限も2020年からの仕組みなので、まあ、2030年過ぎまでの状況を想定して議論をしなければならないでしょう。しかし、今から15年以上先のことを確実に述べることはなかなか困難です。

 歴史を振り返るとエネルギー効率を2倍を上げることは大変なことですが、日本はこれを繰り返し成功させてきました。

 この輝かしい歴史のため、さらに省エネを推進すれば、まだまだCO削減量を稼ぐことができると主張する人がいますが、それは、単なる誤解というか、事実誤認です。

 まず、オフィスや製造業が省エネを進めるかどうかですが、これは省エネによって回収できるエネルギーコストだけによって決まってしまうので、最近のように原油価格が下がっている状況では、まずは進みません。これを強制的にでも進めようとすれば、かなり炭素税を高くする必要があるということになります。

 となると、やはり、個人の努力に依存する以外になさそうだということになります。ところが、家庭製品の省エネは、もう限界が近いのです。

 自家用の自動車の省エネもかなり限界点にまで到達しました。水素燃料電池車は、水素をどのように作るか次第であって、ハイブリッド車のCO2排出量を抜くことはできるかもしれないけれど、プラグイン車には勝てそうもないといったレベルです。

 ということなどを色々と考えました。そして、具体的な省エネ策の提案は次回の記事で述べますが、家庭での「拾エネ」の奨めです。拾エネとは僅かな自然エネルギーでも拾って活用するという意味です。



C先生:今回は「その1」。ここでは、家庭での省エネというものの歴史的な考察を進めることから始めよう。最初は、自動車の燃費で、省エネの本質がもっともよく分かる事例だと思うので。


自動車の燃費

A君:省エネには、限界が明確にあります。それには、まず、効率指標というものの特性を考えてみる必要があります。効率指標で性能が示されているものとして、自動車の燃費がありますが、○○km/Lという表示は、性能/投入エネルギーなので、これは、効率指標だと言えます。

B君:燃費ねえ。まあ、このWebサイトでも何回も取り上げてきた。もう一度、歴史を振り返る必要があるということか。

C先生:今にして思えば、最初に乗った車は、兄から譲り受けたスバル450(スバル360のエンジン拡大バージョン)だった。燃費は、10km〜15km/L程度だったと思う。その後、車はリッターカーに進化したが、都内の運転では、10km/Lを超えることは無かったような記憶だなあ。

A君:カタログ的に見ても、革命的進化といえば、やはり初代プリウスまで無かったように思いますね。1997年に発売されたプリウスのカタログ燃費は、28km/Lでした。

C先生:その初代プリウスなんだけど、実燃費は、特に、冬季のコールドスタートの燃費は、自慢できるようなものではなかったね。冷却水温が正常値になるまでに15分ぐらい掛かったが、その間の燃費は、12km/Lぐらいのものだった。それ以外の条件ではまあまあの好燃費で、郊外を走っているとき、20km/Lを超えることは非常に難しかったが、18km/Lぐらいであれば、なんとかなった。都内の燃費は、ここまで行かないものの、それでも普通のエンジン車に比べて、確実に1.5〜1.8倍ぐらいの値であった。

A君:二代目になって、市街地でも20km/L、郊外で24km/Lぐらいであれば、なんとでもなるようになったようです。ただし、高速道路での100km/h以上の速度になると、燃費は下がるのだが、これはあたり前の話でして、トヨタ型のハイブリッド車は特になのですが、低速での燃費を改善する技術ですから。

C先生:三代目と三代目のPHEVでは、市街地でも25km/Lを実現することも不可能とは言えないようだ。郊外なら、速度を70km以下に抑えるのなら、30km/Lは行けるといった感じか。

B君:四代目はこれからだが、仮定として郊外で40km/Lが実現できるという噂。まあ、本題に入ろう。

A君:ということで、次のような燃費を仮定をしてみました。

ガソリン車 12km/L
初代    18km/L
二代目   24km/L
三代目   30km/L
四代目   36km/L


表1 歴代プリウスの郊外での燃費の仮定

B君:なるほど。新型になると、郊外燃費が6km/Lずつ向上したということだ。まあ、非常に単純化した仮定ではあるけれど。

B君:燃費が重要な点は何か、と言えば、誰でも認めることは、1kmあたりの走行費用が変わるからですね。ガソリン価格はかなり変わるので、まあ、仮に150円/Lと一定だったとして、10kmを走るのに必要な金額で比較してみました。

ガソリン車 125円/10km
初代     83円/10km 42円お得
二代目    63円/10km 20円お得
三代目    50円/10km 13円お得
四代目    42円/10km  8円お得


A君:ガソリン車の燃費が12km/Lと仮定してあるので、初代プリウスに買い替えたとき、10kmあたり42円お得になっている、という意味です。 

B君:ところが初代から二代目に買い替えたとして、10kmあたりのコストが20円減っている。三代目から四代目では、同じ6km/Lも燃費が伸びたのに、10kmあたりの走行コストにしてみると、わずかに8円しか徳になっていない。

A君:そうなんですね。費用で考えるということは、エネルギー消費量で考えることと同じである。

B君:効率指標で考えていると、それが2倍になれば、確かに費用は半分になるのだが。それを繰り返したことを考えると次のようになる。
 最初、128円だった。
効率が2倍になったので、64円になった。
また、効率が2倍になったので32円になった。
また、効率が2倍になったので16円になった。
また、効率が2倍になってので、8円になった。

A君:どんどんと費用効果が減っている。要するに、結論として、次のように言えます。

 ある機器の効率を2倍にすることは、なんとかできるかもしれない。次にまた2倍することも、かなり苦労すればできるかもしれない。次の次にまた2倍にすることは、かなり不可能に近いが無理やり実現した。そして、さらにまた2倍にすることは、不可能へのチャレンジみたいなものだったが、その最後のチャレンジに成功したとしても、得する金額は8円にすぎない、ということを上の表は示している。

B君:ということで、経済的な得をすることが、省エネを進める動機である場合には、省エネを進めるほど、省エネ自動車を買うという意欲は薄れるということだ。

A君:それでは、最後に、これまでの車の燃費の推移のデータ、車重などの関連データを載せておきましょう。

自動車燃費推移 両方とも興味深い図なので、是非御覧ください。それぞれ、図だけなので。
http://www.mlit.go.jp/common/001031510.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001031306.pdf

自動車車両重量と燃費の関係 こちらも興味深い図。図が3枚。
http://www.mlit.go.jp/common/001031308.pdf

自動車の重量 
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g01101fj.pdf
 これはかなり長い報告書なので、そこから1枚だけ選択。次の図が面白いので。


図1 今後の自動車重量の予測 軽い車が今後増えるという予測になっているが、重い車も今より増える。すなわち、中間が無くなる傾向を予測している。

B君:自動車で拾エネの可能性について、ちょっとだけ述べておくべきではないか。

A君:そうかもしれませんね。効果が少ないので、次回には、話題になりそうもないので。

C先生:そう言えば、今でも息子夫婦が使っている三代目プリウスは、太陽電池が乗っているモデルだ。たった50Wという太陽電池が何に使われていたのか、ということを知っている人は少ないだろう。

A君:話は聞いているので、説明しますが、駐車時に換気用のファンを回し続けるための電源として使われています。

B君:その心は、真夏など駐車中に室内の黒い部分の温度は70℃になったりするが、当然、エアコンのために使用エネルギーが多くなる。それを緩和するために換気を継続して行うことが可能になっていた。

C先生:実際、結構有効だった。乗り込んだときの暑さが全く無いわけではないが、まあ、耐えられる。エアコンもすぐに効く。さらに、良い副作用なのかもしれないけれど、新車臭が非常に早く消えた。どうもあの臭いは苦手なので、すごく助かった。

A君:50Wというエネルギーでは、それほどの拾いエネルギーにはならないですが、それなりという効果は出るようです。

B君:それ以外に何か無いかということで考えると、車の場合には拾エネの最大の鍵は、冷却水の温度のような気がする。初代プリウスの話を聞くと、だけれど。

C先生:アラスカに行ったとき、駐車場のとなりに電源プラグが設置されていた。これは、エンジンの温度を保つために、夜間にはヒーターをエンジンルームに入れるためのものだ。

A君:日本だとそこまでは不要かもしれませんが、冬季には、冷却水を車の設置された魔法瓶に移して保温をするということはあり得るでしょうか。あるいは、50Wしかないエネルギーですが、これを冬季の昼間には冷却水用のヒーターに使うという考えはあり得ないでしょうか。

B君:冷却水が冷えているうちは、ハイブリッドも燃費が悪いから、あり得るかもしれない。

A君:そうですよね。ここまで燃費が良くなってくると、落ちこぼれているような燃費改善技術を実用化する以外に方法が無くなるので。勿論、コストが大問題ですが。


家電製品の省エネ

C先生:車はこの程度にして、次に行こう。個人としての購買を考えると、車の進化よりも極端な例かもしれない家電製品。

A君:そうですね。まずは、この図を示します。


図2 1973年から1994年までの3種類の家電の消費電力の改善

B君:この図には出典が書いてないが。

A君:そうなんですね。最新データが1994年ですから、大分前から使っている図でして、出展が分からなくなっているのです。
 どなたかご存知でしたら、ご連絡をいただきたいと思いますので、よろしく。

C先生:この図を見ていると、1994年以降、現時点までにどのぐらい改善されたか、グラフを繋げてみたいと思うよね。

A君:そう思いますね。

B君:1994年からだと、あそこにデータが眠っている。

A君:あそことは。

B君:環境省の家電を買い換えると消費電力がどのぐらい下がるかというデータが得られるサイト。名前は??

A君:「しんきゅうさん」。1994年以降現在に至るまでの家電の消費電力が分かるはずですね。かなり面倒だけれど、調べてみましょう。
http://shinkyusan.com/index.html#/index/top

B君:3種類の家電について、1994年から2013年までの約20年。合計60回条件を変えて、データを引っ張りだした。

A君:作業を分担したのですが、具体的に例えば、1995年の冷蔵庫の年間消費電力を知りたいとしたら、サイズなどを入れて、旧モデルの欄に1995年を入力。新しく買うモデルは、適当に入れて、比較をすると1995年のデータがでます。これをすべての年代についてやるという作業です。

B君:それをエクセルでグラフ化し、後は、Photoshopを最大限活用して、1994年までのグラフに追加するという作業。

A君:こんな図になりましたが、前の図の延長として合成する作業は、Photoshopとの格闘を1時間ぐらいやってできました。


図3 1973年から2013年までの家電製品、40年間での消費電力の相対値を1973年の値をグラフとしたもの。

A君:若干、説明します。一番上に、テレビが、そして、エアコン、もっとも下に冷蔵庫が、1973年を100とした相対値で示されています。
 一番消費エネルギーが低下したものが、冷蔵庫でして、1973年の1/10以下になっています。
 図には、省エネのために使われた技術は記入されていませんが、モーターのインバーター化、真空断熱の普及、などによって、消費電力が下がったものと思われます。

B君:次はエアコン。エアコンは、モーターのインバーター化が省エネが実現された技術要素の大部分か。

A君:それ以外の技術が無かったということからかもしれませんが、エアコンの省エネ度はもっとも低いです。

B君:そして、最後がテレビ。冷蔵庫、エアコンに比べると、テレビは、方式自体が大幅に変更になっている。

A君:詳しいことは省略しますが、図の上の方に、テレビの進化を項目だけ挙げてみました。この年代ですと、ブラウン管からワイド型のブラウン管。そして、フラット型である液晶・プラズマへの進化をしていますが、消費電力を下げた技術としては、多種多様。

B君:しかし、最近の技術として使われるようになった画面のエッジからLEDで光を入れて、それを前面方向に拡散させるプラスチック板の技術が、省エネに大きく利いていると考えられる。

C先生:この図を眺めてすぐに分かることは、とにかく、大幅の省エネが実現できていたということだ。ということは、今後のさらなる省エネによって、電力代を節約するということがどこまでできるかを検証して終わろう。

A君:それには、2014年モデルの年間消費電力で良さそうな例を出してみましょう。「しんきゅうさん」を使って。
 もっとも省エネ度が高いものかどうかは疑問ですが、テレビについては、パナソニックTH050A305を代表選手にしますと、年間の消費電力が58kWh。1kWhを25円としても、1450円。これを半分にすることができたとしても、700円ぐらいしか得になりません。まあこれ以上の省エネ効果はあったとしても微々たるもの

C先生:ただし、BDレコーダなどをつなぐと、お互いに通信をやり出して、かなり待機電力が上がることは要改善だけど。http://www.yasuienv.net/TV2014.htm

B君:冷蔵庫については、東芝のGR-G51FXVを代表選手にすると、年間消費電力量が180kWh。ほぼ4500円。これが半分になれば、多少嬉しいが、なんといっても、1973年の消費電力の1/10以下になっているので、もう技術的に難しいかもしれない。

A君:それではエアコン。エアコンは、価格帯によって、消費電力が違いますから、どこかのメーカーで調べてみましょう。パナ、東芝と来たので、日立にしますか。

RAS-AJ28D 価格.com最低価格 ¥46300
 期間消費電力量 913kWh
RAS-E28D 価格.com最低価格 ¥102980
 期間消費電力量 841kWh
RAS-X28E 価格.com最低価格 ¥242534
 期間消費電力量 779kWh

B君:価格が5倍も違う。しかし消費電力量が134kWh/年の違いでしかない。電力価格差にすれば3350円/年。10年使っても、33500円しか節約できない。これだと、消費電力の多少の違いを無視して、もっとも安価なモデルが売れることになる。

A君:その通りで、価格.comでのベストセラーは、もっとも安価なモデルです。

B君:高価なモデルは、どうも機能を精一杯付けて売ろうとしている感じだ。むしろ、外装などは全く同じで、消費電力差だけで勝負することはできないのだろうか。

A君:恐らく難しいのでしょうね。しかし、そんなモデルの出現を願いたいと思います。

C先生:家電の場合には、エアコンの省エネ効果の高い機種の価格が下がることに期待という結論だろうか。
 家電での拾エネという可能性は極めて低いので、残念ながら、次回の話題には出てこないものと思われる。
 今回の最大の成果は、やはり図3が出来たことだ。この図は、当分使えるような気がするし、今後、この図を継続的にアップデートできるだろう。手間は掛かるけど。
 次回は、個人の努力で改善ができる省エネがもはや限界だとしたら、何ができるのか。それは、「拾エネ」というものなのではないか、という話をしよう。ついでに、非常事態における停電などへの対応も考えてみよう。