-------

   2050年におけるエネルギー供給    11.01.2015
             あらゆる未来予測の基礎情報        



 今回の記事を書いた理由を、いささか遠いところから説明します。

 持続可能な循環型社会は、本年6月13日の記事として、記述しました。
http://www.yasuienv.net/SusRecycle.htm
 ただし、この回の議論は、Future Earth関係の話を導入部に使っていましたので、様々な金属系のリサイクルは、自然エネルギーを用いた丁寧なリサイクルが行われているだろう。なぜならば、不安定な電力でよければ、2050年頃には、ふんだんに使えるし、価格もかなり安い、という予測と、多くの金属の需要量が、供給量を上回るだろう、という2つの予測に基づいたものでした。

 しかし、もう一つ、重要なリサイクルが現存しています。それはプラスチックのリサイクルです。2050年におけるプラスチックのリサイクルがどのような状況になるか、それを考えようとすると、その時点で、原料である石油の状況がどのようになっているか、それを基礎にして考えるということが必要になります。

 そして、さらにそれよりも重要になることが、CO排出をどのように制限せざるを得なくなるのか、ということで、プラスチックで言えば、廃プラを燃やすことはできなくなるだろうということです。その意味で、COP21の状況をしっかりと見つめる必要があるのです。

 ということで、今回はその準備として、2050年におけるエネルギー供給の全体像をまとめて記述してみたいと思います。あらゆる未来予測の基礎情報になるからです。

 とはいっても、まだバージョン0.1とします。まだ考察から抜け落ちていることがあるに決っているからです。



C先生:いよいよ11月末から始まるCOP21が近くなってきた。この会議では、交渉に参加しているすべての国が参加する枠組みを作ることが第一義的な目的。すでに、各国からのINDC(約束草案)に示された削減量では、2℃というゴールに到底到達しないという結果が分かっているので、今後、各国の目標の強化を求めるのか、あるいは、現在のINDCの目標の遵守を強制化するか、といった議論が行われるとされているが、すべての国が参加するという第一義的目的を考えると、強制力を持たせる方向にはならないと思っている。

A君:しかし、エルマウサミットで再度確認された2050年の目標、世界全体で40〜70%の上部を実現するということを考えれば、先進国では、80%削減が一つの目標となること確実

B君:この値が、COP21でも、なんらかの合意を得ることは事実だろう。

A君:さて、今回のきっかけとなった課題は、2050年におけるプラスチックのリサイクルをできるだけ具体的にイメージすることなのですが、できるだけ細部に至るまで、先進国のエネルギーの状況を推定してみる必要がある、ということでした。

B君:まあ、それができれば、かなり有用だ。いずれにしても、想像力をたくましくして、考えだす以外にないので、誰が信用してくれるかが問題だが。

A君:しかし、なんらかのイノベーションが無いことには、COの排出を80%削減も削減するのは、まず、無理。

B君:COP21でも、「エネルギーに関するイノベーションが進展することが、最大の条件である」ということが合意されるはず。

A君:当然、そのようなイノベーションは、経済的な利潤を生むことは確実だけれど、途上国に対しては、かなり無償での技術提供が求められることだろう。

C先生:それでは、エネルギーの獲得から、色々な分野における利用まで、いくつかの項目に分けて、記述をしてみて欲しい。まあ、先進国を対象とすることで良いと思うが。

A君:かなり厳しいですね。でも、大体はこんなイメージなのでは。(バージョン0.1)
 最初の条件としては、エネルギーの獲得から。


[1]エネルギーの獲得は?

(1−1)どのような条件の国でも、再生可能エネルギーを可能な限り導入。化石燃料は、できるだけ使用しない方向。特に、発電の場合には、天然ガスにもCCSが義務化されている。石炭発電は、CCS処理すべきCO発生量が多いので、結果的にコストが高くなるため、使われていない。

(1−2)原子力は、フランスでもアメリカでも削減の方向。通常のビジネスとして成り立ちにくいのが理由。ドイツは完全ゼロを目指している。日本は、経済合理性から再稼働は進むが、結果的にかなりゼロに近い状況になっている可能性がある。唯一の可能性だが、第四世代に進化することで、非常時には自動停止し、現在の原子炉の使用済み燃料問題を回避できるような新型が実用化されることが条件か。

(1−3)再生可能エネルギー100%になると、再生可能エネルギーは、水力と地熱は出来る限り使用されているものの、国土の条件による限界があり、多くの国では、太陽光と風力がやはり主力。好天で、風の状況が良い場合、すなわち、太陽光と風力の発電量が多い条件下では、発電したままの揺らぎがある電力はかなり価格が下がる。場合によっては、タダになることもある。一方、安定化された電力の価格はかなり高い。そのため、各種の電力貯蔵技術が開発されている。


B君:まあ、そんなものだろう。実際、このような状況以外、考えにくい。できるだけ電力をゼロカーボン化することが、二酸化炭素排出削減のためのもっとも効率的な対策だと思う。

A君:そうですね。それを書けば、
(1−4)CO排出の80%削減を実現するには、民生・家庭用の電力はゼロカーボン化することが、必要不可欠であり、もっとも有効な対応である。
 そのため、もし化石燃料による発電の場合には、国営に近い形でCCSを行って、少なくとも、民生・家庭用の電力はゼロカーボン化が実現されている。

(1−5)実は、CCSを企業活動として行うのは、漏出や地震など、万一のリスクを考えると、かなり難しいため、国営的企業がCCSを実施している。


B君:しかし、これまでの記述では、石油と天然ガスという言葉がない。これらはどうなるのか。

A君:そうでしたね。石油も天然ガスも、2℃目標の実現を目指すと、40%以上が未使用で地下に残っている、という計算になります。

B君:しかし、中東諸国のように、石油にその国の経済が全面的に依存している場合には、石油が売れなくなれば、破綻してしまう。

A君:イスラム圏がそうなると、世界的な不安定性が高まってしまう。

B君:ということで、解は2つあると思う。一つは、砂漠地帯に太陽電池などによる大規模発電を行って、その電力を輸出することで経済を支える。もう一つは、石油を水素とCOに分離して、COは油田に戻し、EORと呼ばれる方式で石油の生産量を高める。そして、水素をなんらかの形で輸出する。

A君:ヨーロッパへの輸出とは違って、日本のような遠隔地へを考えると、電気で輸出するよりは、水素を輸出する方法の方が、現時点の経済の形態に近いのでは。水素をどうやって運ぶか、それが問題ですが、液体水素は温度が低すぎるので、すべてがこれという訳ではなさそうです。

B君:石油を他の炭化水素、普通はエチレンだが、それに変えて輸出しているプラントがすでにあるのだけれど、このような技術を活用して、しばらくは、メタンの形で輸出するというのはないだろうか。

A君:最終形が何になるかは別として、過度期としては、天然ガスの成分であるメタンがもっとも汎用の形かもしれないですね。

(1−6)石油は、現地で分解されて水素と二酸化炭素に分けられる。余分なCOは油田に戻されEOR用に使われる。

(1−7)水素をどのように運ぶかが問題。液体水素や炭化水素の形態で運ぶことも考えられる。アンモニアも候補かもしれない。


B君:さて、次に行こう。80%削減ということだが、実は、20%はCOが排出できると考えて良いのだろうか。日本などの国々が提出したINDCでは、温室効果ガスGHGの削減となっているので、CO以外も削減対象なのだが。

A君:フロン類の排出は、その時点ではいくらなんでもほぼゼロでしょう。しかし、農業起源が多いメタンと一酸化二窒素は排出があるとは思うのですが。

B君:2050年頃には、そのときでもまだ途上国である国への配慮によって、メタンと一酸化二窒素の排出は、温室効果ガスとしての削減対象から外れている可能性もある。

A君:工業的な排出に比較すれば、農業起源の排出量の削減はかなり難しいので、当然とも言えるかもしれません。

B君:となると、二酸化炭素排出量のみが対象になっていて、20%分は排出が許容されているという仮定も無いとは言えない。となると、その20%の使い方を充分に考慮する必要がある。

A君:それは重大な問題ですね。


[2]許容される20%分を何に割り振るか?

(2−1)日本のように、鉄鋼やセメントの製造が継続していると考えられている国では、排出できる20%分の排出権の大部分は、鉄鋼やセメントに売られることになる可能性が高い。なぜなら、製鉄に必要な鉄鉱石を還元するには、高温のCOがもっとも適していること、セメント製造には、原料の石灰石の分解にともなうCOの発生が必要不可欠だから。CCSの価格次第で、鉄鋼業やセメント製造業はCCSを行うかどうかを決める。

B君:鉄鋼とセメントだけを優遇するので本当に良いのだろうか。

A君:不安定な再生可能エネルギーの価格は極めて安価に入手可能だと思われるので、エネルギーが電力でよければ、あるいは、単純な熱でよければ、CO排出量はゼロで充分に行けるでしょうね。

B君:それはそうなのだが、例えば、銅の精錬とか、リサイクルとかになると、やはり、炭素というものの存在が必須になってくるということは無いのだろうか。

A君:電力だけでなく、水素で還元ができれば良いので、リサイクルされた銅スクラップの精錬であれば、水素で行けますよ。

B君:鉱石は硫化物だけれど、その酸化も電気炉で良いかもしれない。

A君:ということで、20%分は、鉄鋼業とセメント製造業に特別に排出権として配分するということにして、余ったら、それを売ることで、負担を軽減することにする、という方針で、取り敢えず良いことにします。

B君:単純な熱で良ければ、と言いながら、不安定な電力で作る熱は不安定。だから、やはり、安定化のためのコストがバカにならない可能性が高い。そうなると、やはり、工業用の熱でも、省エネが課題になるのだろう。

A君:省エネは、やはり永久の課題かもしれませんね。


[3]熱の工業用用途は?

(3−1)工業用熱、例えば、化学プラントの熱であれば、自然エネルギーからの電力で賄うことが可能。ただし、省エネ=熱効率を高めるために、高温ヒートポンプが併用されている。

B君:それでは、移動体がエネルギーとして何を使っているか、考えて見るか。


[4]移動体のエネルギーは?

A君:まず、自動車ですが、電力か水素でしょう。場合によれば、バイオ燃料(エタノール)、合成燃料ということもあり得ますが。

(4−1)自動車(乗用車・小型トラック)は、石油起源の燃料を用いたければ、カーボンプライスを払う必要があるので、基本的には電力か水素で動いている。すなわち、ゼロカーボン化が実現されている。ただし、国によっては(例えばブラジル)、エタノールのようなバイオ燃料が使われている。

B君:トラックだと部分的に電動化は行われるものの、完全なEVということはなさそう。電池を運んでいるのか、荷物を運んでいるのか、分からない状況になるから。

(4−2)トラックの全電動化は、電池による電力だけを考えると難しいかもしれないので、[5]で述べる備蓄用の炭化水素を使うか、または、水素化されているか、あるいは、高速道路に準備された架線と伝導性舗装を使って電車化されている。いずれにしても、トラック輸送からの炭素排出は最小化されている。

(4−4)大型船舶用のエネルギーは、産油国で石油が水素と二酸化炭素に分けられ、二酸化炭素はCCS(EOR)が行われているので、液体水素で動くことが普通になっている。

(4−5)飛行機のエネルギーは、やはりエネルギー密度の点から、酸素を分子中に含まない炭化水素だけが候補になるので、バイオ燃料(例えば、バイオエタノール)起源の炭化水素が用いられている。

A君:次の話題ですが、そもそも再生可能エネルギーの最大の問題点は揺らぎですよね。その揺らぎも、1秒以下の揺らぎから、季節変動まであって、そのすべての対応しない訳には行きません。


[5]電力貯蔵と平滑化

B君:民生・家庭部門はすべて電力化している。産業部門のかなりの部分も電力化されている。となると、何かを用いてその揺らぎを吸収しないと、現在の常識としては、困ることになる。

A君:1秒以下の揺らぎは、周波数の揺らぎともほぼ同じようなものでして、それには、キャパシタか電池を用いることになるでしょう。

B君:周波数の揺らぎが現時点でなんとかなっているのは、現在の発電機というものが、非常に重たいロータというものをぐるぐると回しているから、その慣性力が安定化に寄与しているからだ。

A君:重いものを回すという考え方で電力を貯めようというものがフライホイールですね。鉄道総研が、超電導マグネットで浮上させたフライホイールを試作し、実用化試験を目指しているようです。

B君:電池は結構万能で、家庭において、昼間の電力を蓄えて、それを夜間に供給するといった役割は充分果たすことができる。むしろ、すべての家庭がこのような設備を持っていると考えるべき時代になるのではないだろうか。

A君:電力網側での対策としては、あらゆる技術が使われているでしょうね。伝統的、かつ、極めて有力な方法が揚水発電ですが、これが、やはり主力になっている可能性が高いのですが、残念ながら、日本には増設の余地がないと考えられています。

B君:沖縄には、海水を汲み上げる揚水発電があるらしいが。水がないところでは、それこそ、使えない。

A君:すでに存在しているダムの近くの山の上に溜池を作って小さな発電機を回すぐらいは増設できるでしょうが、大規模な揚水発電所の増設は無理でしょうね。

B君:ということで、揚水と同様の考え方での電力備蓄が、超大規模な空気圧電力貯蔵。これは、廃鉱山のトンネルなどに圧縮空気をためる。問題は、現時点の考え方だと、この圧縮空気で発電するのではなくて、この空気を使ってガスタービンを回して発電効率を高めるという考え方だということ。そのため、化石燃料の助けを借りるという発想になっているので、2050年まで生き延びることはないかもしれない。

A君:話を電池に戻しますが、様々な電池が提案されていますが、リチウム電池は性能ではほぼ万能なのですが、いささか高価なこと、安全性に若干の危惧が残ることなどの理由で、様々な電池が組み合わせて使われるのでは。

B君:ここでは名前だけ。レドックスフロー、NaS電池。ここまでは製品化されている。今後のものとして、マグネシウム電池、ナトリウム電池、大型亜鉛空気電池、全固体型のリチウム電池、などなど。

A君:最大の問題が、これまで石炭とか石油を備蓄することが普通だったので、全く問題にならなかった季節変動への対応。夏に太陽電池で発電した電力を冬まで貯めることが具体的な目標。

B君:それには、やはり化学エネルギー、すなわち、固体燃料や液体燃料で貯めるのがやはりベスト。となるとこんなようなことになるのでは。

(5−1)太陽光からの電力は、夏に多く、冬は少ない。そのため、季節変動をカバーするために、水の電気分解によって作られる水素とバイオマス発電によって排出されるCOを原料として、ゼロカーボン炭化水素が合成され、備蓄されている。ゼロカーボンなので、移動体用にも使える。

(5−2)日変動対応として、各種電池が組み合わせて使われている。例えば、大容量だけれど放電特性の良くないマグネシウム電池と放電特性の良いキャパシターを組み合わせた電池が開発されている。

(5−3)揚水発電が増設可能な国では、かなり開発が進む。日本では、その代替技術が場面場面で活用されている。

(5−4)一般家庭としては、電気自動車用の電池を電力貯蔵用にも使うことが合理的で、自動車to家庭のエネルギー貯蔵システムが一般的になっている。

(5−5)家庭やオフィスに供給される電力は、極めて高価だけれど安定な電力と不安定だけれど安価な電力の二種類になっている。

(5−6)不安定だけれど極めて安価な電力を貯蔵するために、各家庭に10kWhの電池が必須という時代になっている。そのため、この電池への投資のために、一人あたり100万円オーダーの投資が普通になっている。電気自動車の電池は、駐車時間が長ければ、これを代替可能。


C先生:まだまだ色々と検討したいことは色々とあるのだけれど、今回は、バージョン0.1ということなので、このぐらいで止めよう。なんと言っても、技術の発展に関する物理、化学、材料の知識が基礎となり、地球の状況に加え、経済の動向、世界の安定性などを全部考慮する必要があるから、確実な答などがでる訳もないのだ。
 いずれにしても、最後に記述した「電力貯蔵」がかなり重要な技術分野になるだろう。しかし、不思議なことに、そこで提案されている各種の技術は、その起源を探ってみると、1970年代に遡ることができるものが多いのだ。
 すなわち、エネルギー関係の技術というものは、その進化はそれほど速いものではないのだ。リチウム電池はその例外に属するもので、本当なら、ノーベル賞の対象になっても良いものなのだけれど、一つ一つの発明が必須であったこと、その成立に貢献した人々が多いこと、などの理由から、ノーベル賞は難しいのだけれど、そのぐらいの大発明だったと理解しなければならない。このような大技術の進化は、そう起きるものではないので、今後が大変なのだ。