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  エネルギー革新技術計画 03.16.2008
     



 経済産業省のホームページで、クール・アースのための具体的な技術開発計画が発表された。21の技術分野が特定されている。

「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」の策定について
http://www.meti.go.jp/press/20080305001/20080305001.html

また、3月14日の日経新聞に、二酸化炭素排出量の多い企業の名称が公表された。この中身もなかなか面白そうだ。


C先生:京都議定書の第一約束期間が始まった(日本ではCO2はこの4月から)が、やっとのことで多少具体的な動きが始まった。しかし、技術開発というものは、そう簡単に実効が出るものでもない。今回発表された技術のロードマップを見ても、2030年から本格的普及といったものが主力で、すぐに効く特効薬のようなものはない。さらに言えば、2030年以降の本格普及を狙った次の世代の技術の芽のようなものが取り上げられていない。

A君:経済産業省の計画というよりも、NEDOが取り扱う研究開発ですから、当然、出口が見えているものに限られる。

B君:それに加えて、これまでの経緯を引きずったキーワードが相当に出ているので、本当に実現可能なもの、消す訳には行かないからリストアップされているもの、など、レベルがまちまち、といった印象だ。

C先生:しかも、国の施策はどうしてもそうなるのだが、これらの21の技術分野がどのような優先順位なのか、ということも分かりにくい。また、開発に必要な費用もばらばらだろうから、優先順位といっても、具体的に何を意味するのか、となると、これも難しい。投資すべき金額なのか、それとも、マンパワーなのか。

A君:今回は問題にされていないのですが、新しい社会的なシステム、あるいは、インフラなどが必要なものについては、これは日本中で議論をして決めなければならない話で、DVDの方式、すなわち、HDの撤退発表でBlueRayが勝ちましたが、この問題のように、市場メカニズムに任せて終わりという話でもない。

B君:現状だと、残念ながら、広義の社会システムが、すなわち、法制度などの狭い意味に加えて、社会インフラに関係する企業群のあり方などが、実は、イノベーションが起きることを阻害している。これも本当は指摘しなければならないのだが、それは「禁句」のようなところがあって、なかなか難しい。

C先生:「禁句」などと言っていると、本当に「日本売り」が止まらない。日本全体の利益を考えると、「禁句」などがあってはいけない。

A君:今日はそれが本題ではないので、すでに指摘しているひとつの例を若干拡張して述べますか。
 それは深夜電力の価格が安すぎること。これは、
http://www.yasuienv.net/EcoLife3Kinds.htm
で具体的には検討しています。なぜ、深夜電力が安いとイノベーションが起きないか、というと、例えば給湯器の場合、深夜電力を使うエコキュートの価格的優位性が余りにも高くて、本来優先すべき太陽熱温水器のような製品開発が行われても売れない。一方で、深夜電力を使った蓄熱型ヒータのような、時代錯誤的な製品も生存してしまう。寒冷地だとエアコンが難しいので、仕方のない部分もあるけど。
 そして、これからが本題。なぜ、深夜電力が安いのか。それは原発による発電だから。なぜ原発だと安くなるのか。その一つの要素は、日本の原発の運転は出力調整がやらないのが普通だから。フランスは、70%もの電力を原子力で得ているため、いくらドイツに電気を売っているとは言っても、出力調整をしなければならない。出力調整が技術的に不可能ということではない。社会制度的にやらないことを合意しているだけ。

B君:原発の廃止を決めているドイツ、スウェーデンなどの状況をみると、どうも、原発の廃止はあまり現実的な選択とも言えなくなった。地球温暖化のリスクと原発のリスクとを比較して、どちらかを選択するという時代になったからだろう。

A君:化石燃料が300年以内に枯渇するとしたら、その後は、自然エネルギー時代になるのか、それとも、現代科学文明を延長した原子力時代になるのか、まあ、その時の人類の選択にかかるわけですが、どうも、原子力時代が来るような気がしますが。

B君:現在の化石燃料をすべて原子力発電で置き換えるとすると、最低でも5000基ぐらいの原発が必要になるだろう。IAEAの発表によれば、2006で原子力発電の全世界の電力供給に占める割合が15%だった。エネルギーの使用量は、もしも原子力シナリオを推し進めれば、2070年ごろには現在の2.5倍ぐらいにはなっている可能性が高い。現在、原子力発電は450基よりやや少ない程度だから、多少1基あたりが大型化するとしても、5000基は必要。となると、もしも軽水炉だけでやるとすると、ウランが10年程度しかもたない。ほとんど無意味。最低でも、高速増殖炉を作る必要がある。

C先生:この話、考えてみると妙な話で、二酸化炭素を排出しない太陽エネルギーのような自然エネルギーを導入するには、原発は夜間の出力調整をして、深夜電力の料金を上げる必要がある。しかし、そうすれば、自然エネルギーが普及して、全体として、二酸化炭素排出量が下がる、という話。しかし、原発推進派の立場を代弁すれば、出力調整などをしないで、その変わり揚水発電を推進して行けば、トータルには、二酸化炭素の排出量が下がる。ただし、揚水を多用するには、やはりコストがかかるから、深夜電力を上げる必要がある。すなわち、どっちのシナリオを描いても、実は、深夜電力は値上げということになるのだが、実際には、深夜電力価格は低いまま。すなわち、深夜電力が適正価格でないのは、原発か、自然エネルギーか、という争いが原因ではないことが分かる。

A君:結局のところ、電気とガスとの競合という話が重要な問題だという結論になるのでは。エコキュートでないとしたら、ガスにするという選択になるのが現実的。ドイツなどだと、電力供給とガス供給が同一企業。米国でもそんなところが多い。となると、エネルギー供給ならどちらでもよいことになって、より適切なエネルギー価格の設定ができる。

B君:日本の場合、地域限定の電力会社ではあるが、それでも広大な地域をカバーしている。しかし、ガス会社は小さいので、これを合体するのはなかなか難しい。しかし、ガス会社と電力会社が喧嘩をするような事態は、エネルギー供給会社として一体化してしまえば、問題は解決

C先生:本題ではないと言いながら、大分突っ込んだ話になったが、燃料電池、特に、メタンをそのまま燃やすことができるタイプの燃料電池を考えると、ガスと電力とはもっと相互乗り入れを行うべきだ。水素を燃やす燃料電池は、もしも可逆的な運転が可能になれば、自然エネルギーの揺らぎを吸収できる可能性を秘めている。たとえ、可逆的までいけなくても、自然エネルギーの揺らぎを吸収できるポテンシャルがある。いわゆるマイクログリッドという考え方を導入しやすくなる。となると、ガスと電力との協調関係を今後強化する必要がある。となれば、家庭でのガスコジェネの装置、燃料電池、ガスエンジンの両方ともだが、もしも余剰の発電がある場合には、電力会社は電力を買い取るべきだろう。
 この関係の話については、こんなところで議論終結としよう。

A君:さて、純粋に技術的な話に戻りますが、クールアースエネルギー革新技術では、21種のカテゴリーがあります。

(1)高効率天然ガス火力発電
(2)高効率石炭火力発電
(3)二酸化炭素回収・貯留CCS
(4)革新的太陽光発電
(5)先進的原子力発電
(6)超伝導高効率送電
(7)高度道路交通システム(ITS)
(8)燃料電池自動車(FCV)
(9)プラグインハイブリッド・電気自動車
(10)バイオマス液体燃料
(11)革新的材料
(12)革新的製鉄プロセス
(13)省エネ住宅・ビル
(14)次世代高効率照明
(15)定置用燃料電池
(16)高効率ヒートポンプ
(17)省エネ情報機器・システム
(18)HEMS/BEMS
(19)高性能電力貯蔵
(20)パワーエレクトロニクス
(21)水素製造・輸送・貯蔵



B君:もう少々説明が必要。せめてキーワードぐらいは。

(1)高効率天然ガス火力発電
 現在の発電最高効率52%を56%まで上昇させる。コア技術は、1700℃級のガスタービン。

B君:ガスタービンというとジェットエンジンの技術と同類だが、どうしても日本は遅れている。

(2)高効率石炭火力発電
 現在の42%といった発電効率を57%まで向上させる。
 燃料電池との組み合わせも目指す。

B君:基幹的技術だろう。

(3)二酸化炭素回収・貯留CCS
 強力な技術ではあるが、エネルギー使用量が増えるという副作用がある。日本だと海洋貯留が最終的に必要になるが、その受容性など大問題あり。

B君:この技術は、必須だとは思うが、本当に使うかどうか、最終判断は、まだ先か。

(4)革新的太陽光発電
 量子ナノ構造などを含む革新的な構造を目指す。最終的には変換効率40%ということで2倍。

B君:これは大変そう。これまでの発想を根本的に変える何かが必要。

(5)先進的原子力発電
 軽水炉の実用技術の改良と高速炉がターゲット。

B君:これは当然。

(6)超伝導高効率送電
 ビスマス系だけでなく、イットリウム系の線材を目指す。

B君:これも当然なのだが、何か、基幹向けの技術のように思う。いっそ、直流送電を主力として、50Hz、60Hz問題も一緒に解決するのはどうだろう。

(7)高度道路交通システム(ITS)
 渋滞をなくし自動車の平均速度を30km以上に高めることによって、CO2排出量を25%カット。

B君:むしろ、都市のロードプライシングかなにかを組み合わせて、交通量を減らすと同時に平均速度を高めたらどうだろう。

(8)燃料電池自動車(FCV)
 水素を燃料とするものを相変わらず対象とするようだ。白金使用量の大幅削減などによるコスト削減が課題。ガソリン車と同様の500km航続距離を目指す。

B君:これは過去からのしがらみで残っている課題なのではないか。

(9)プラグインハイブリッド・電気自動車 
 これは電池がカギ。40kWhといった電池を搭載する予定のようだ。現在、電池だけで800万円。

B君:この主張は、毎回やっているが、電池の搭載量を1/5に減らして、電池を公共財とするといった方法論が現実的。

(10)バイオマス輸送用液体燃料
 セルロース系バイオエタノール、クリーンディーゼル用バイオ燃料がターゲット。

B君:これは当然なのだが、適応範囲は限定的だろう。10%混合までか。

(11)革新的材料
 省エネガラス製造、非鉄金属新製造プロセス、バイオマスからの化学品、省エネ型水処理技術、輸送機器用の高強度・超軽量材料、ヒートポンプによる蒸気生成など。

B君:すべての材料の性能が2倍になると、相当話が変わってくる。

(12)革新的製鉄プロセス
 現在の7割程度のエネルギーの使用で製鉄する技術。さらに、CCSを組み合わせる技術。水素を併用する技術など。

B君:鉄の製造プロセスは重要。

(13)省エネ住宅・ビル
 断熱材。真空ガラス。

B君:新鮮味がない。真空ガラスはもう発売されているし。

(14)次世代高効率照明
 LED照明。200lm/Wを目指す。

B君:これも当然ではあるが、蛍光灯も結構高効率なので。

(15)定置用燃料電池
 現在400万円する設備を40万円で。耐久時間を4万時間から9万時間へ。

B君:これも、固体電解質型(SOFC)などへの転換をしたらどうだろう。

(16)高効率ヒートポンプ
 効率を現状よりも2030年で1.5倍。2050年で2倍。コストを半減。

B君:サイリスタの改善などはあるだろうが、かなり難しいのではないだろうか。

(17)省エネ情報機器・システム
 30%程度の省エネを目指す。2012年には、液晶バックライトの改良によって、消費電力を半減する。半導体は、11nmの線幅を目指す。

B君:2012年にはまだ液晶テレビが主力らしいな。

(18)HEMS/BEMS
 10〜15%の省エネを目指す。

B君:うまい仕組みを作ると、もっと行けるのではないか。

(19)高性能電力貯蔵
 太陽光、風力などの大規模な系統連係、電気自動車などの普及に対応。

B君:SOFCを併用するといった解決策でなんとかなるのでは。

(20)パワーエレクトロニクス
 インバータの効率を最大10%アップ。シリコン以外のパワーデバイス。

B君:これも当然なのだが、SiCの単結晶を作るのはむずかしそう。

(21)水素製造・輸送・貯蔵
 水電解などがやはり記述されている。

B君:水素については、進歩が見られない。

A君:サマリーをしてみて、なんとなく、こんな程度か、というのが残念なところ。ここに掲載されている技術は、かなり前から分かっていることばかりなので、すでにかなり進んでいる。となると革新的な改良は、なかなか起きない。そのために実用になるには、2020年までかかるといったものが多いような気がします。むしろ、本HPでも主張しているように、本当に必要なところだけにサービスするような技術とを組み合わせることによって、さらに高効率を目指すことが先決なのではないですか。それなら2015年ぐらいには実用可能になるでしょうし。

C先生:先日、日経エコロミーに書いた記事でも記述したが、
http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20080311cd000cd&page=1
最近の松下製の便座のヒータのように、人がトイレに入ってきたことを検知して、6秒間で、便座の温度を所定の温度にするといった技術が、とりあえず必要不可欠。
 2012年にバックライトを改良して、液晶テレビの消費電力を半分にするといったものが、上記(17)に含まれていたようだが、視線検知型テレビというものを開発して、人がテレビに視線を投げかけているときだけ、バックライトを点灯するような形式にすれば、しばしばよくあるナガラ族のためのなんとなくONになっているテレビの消費電力は格段に減る。
 自動車にしても、1人か2人で運転しているときに5人乗りである必要はない。トヨタが愛知万博のときにデモしたような形式、すなわち、4人が同じ方向に行くとなったら、2台の2人乗りの電気自動車をコンボイさせる形式が良いかもしれない。あるいは、物理的に接続するという方式でも十分。この2人乗りの電気自動車は当然、航続距離が30km程度しかないので、長距離を走るときには、エンジンユニットを接続して、シリーズタイプのハイブリッド車にすればよい。

A君:ただ、こんなものを国家的なプロジェクトでやるというものでもないですね。

C先生:その通り。ただし、必要なサービスだけを行うということを方針として示すことは必要なのではないか。

B君:同時に、社会システムとの併用をすることによる技術開発も可能性が高い。例えば、電気自動車であれば、バッテリーを公共財として、バッテリー交換スタンドという商売を行うことも考える必要がある。それには、自動車用のバッテリーの規格統一が必要。それは、研究開発ではないが、国が関与して標準化を行うべきなのではないだろうか。それを事業者が採用するかどうかは、もちろん自由だけど。

A君:30km程度しか走れない電気自動車なので、もしも電気が切れたとなったら、バッテリー交換スタンドでバッテリーを交換するという手法。

C先生:これを推進するには、ロードプライシングなどを組み合わせて、地域内では、電気自動車の通行料はタダ、ガソリン・ディーゼルだと相当高額といったシステムを作ることで、バッテリー交換スタンドが成立するような仕組みを作ることは、自治体の仕事だろう。

A君:バッテリーを公共財とする以外にも、電気自動車自体を公共財にする方法もありますね。それには、充電装置を備えた駐車場がかなり大量に必要。2020年まで人口が減らない東京よりは、大阪のように人口が大幅に減る大都会向きではないですか。

B君:ヨーロッパのように、市電を復活させて、パーク&ライドを実現するのも方法ですが、電気自動車のカーシェアリングといった方法の方が日本向けかもしれない。

C先生:いずれにしても、このような社会的な制度との組み合わせを前提とした技術開発を本来目指すべきなのだろう。先日、トヨタ自動車の主幹渡辺氏の講演を聞いたが、社会的な仕組みの変更なしに技術のみでの進歩したという意味では、プリウスが最後のケースなのではないか、という言葉がすごく心に響いた。

A君:だからといって、純粋技術がないということの証明にはならない。

B君:ここに示されているような技術は、出口が見えているようなもの。そうではなくて、まだ出口はくっきりとは見えないような技術の研究開発に取り組むとしたら大学

C先生:自然エネルギーに限っても、太陽熱の話が無い。海洋エネルギーも無い。海洋バイオマスのような話を含めてだ。さらに、産業として取り上げられているのは、鉄鋼が大きな項目になっているだけで、ガラスの新製法などがちょっとあるだけ。日本産業で二酸化炭素排出量の多いところとして、鉄鋼以外には、セメント、石油、化学、製紙などがあるが、そこに革新的技術を入れようという話はない。化学産業には明らかに可能性があるのだが。

A君:それでは、関連データとして、3月14日の日経に載った、二酸化炭素排出量上位30位の企業名を掲載します。 
 数値の単位は 万トンCO2
1.JFEスチール  6014
2.新日本製鉄  5928
3.住友金属工業  2214
4.神戸製鋼所  1742
5.太平洋セメント  1455
6.新日本石油精製  1053
7.住友大阪セメント  928
8.三菱マテリアル  893
9.宇部興産  877
10.日新製鋼  836
11.東ソー  768
12.三菱化学  743
13.出光興産  738
14.トクヤマ  732
15.日本製紙  715
16.王子製紙  489
17.東燃ゼネラル石油  411
18.北海製鉄  378
19.大王製紙  369
20.旭化成ケミカルズ  353
21.コスモ石油  353
22.住友金属小倉  326
23.電気化学工業  324
24.ジャパンエナジー  296
25.昭和電工  291
26.旭硝子  285
27.東京電力  279
28.Jパワー  255
29.中部電力  250
30.住友化学  238
31.三井化学  236
32.東レ  233
33.ダイキン工業  216
34.トヨタ自動車  197
35.麻生ラファージュセメント  188
36.宇部マテリアルズ  188
37.王子板紙  175
38.東北電力  173
39.東芝  173
40.新日鉄高炉セメント  166
41.新日鉄化学  165
42.関東電化工業  160
43.中国電力  157
44.昭和四日市石油  156
45.東京製鉄  155
46.宇部アンモニア工業  155
47.丸住製紙  149
48.明星セメント  147
49.大同特殊鋼  145
50.JFEミネラル  140

B君:なかなか面白いが、この数字だけで、どんな技術が必要か、といったことの判定は難しい。

A君:来週にでも、詳細をやりたいと思いますが、そもそも、東京電力のCO2排出量とは何なのでしょうね。電力以外の部分なのでしょうか。同様に、新日本石油精製のCO2発生量とは熱の発生などに使ったものだけで、できた石油製品が最終的に出すCO2の量はこれではわからない。

B君:同様に、トヨタ自動車は組み立てなどに要するCO2だけで、鉄の薄板の製造は、鉄鋼業界が、そして、走行時のCO2発生量は、この中には含まれていない。

C先生:少々情報を集めて、そのうち検討してみよう。