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 書評「エネルギー問題入門」 
02.07.2015
    将来のエネルギーを考える上で必須(!?)




 まずは、書誌データから。
「エネルギー問題入門」 Energy for Future President
著者 リチャード・ムラー Richard A. Muller、 二階堂行彦訳
楽工社  初版2014年7月10日

 この本を買ったのは、随分と前のことで、Amazonを調べたら、9月初めのことだったようです。そのときに読みたかったのは、第3章でした。その第3章の内容ですが、ムラー教授が、地球温暖化の歴史、より正確には、地球の温度変化を2011年から1735年まで遡ることによって詳細に評価をして、恐らく過去最良の温度変化を提示した結果の詳細を知りたかったからでした。この本のお陰で、英語のWebサイトがあることが分かり、詳細なデータを見ることができました。
http://berkeleyearth.org/summary-of-findings

 リチャード・ムラー教授は、カリフォルニア大学バークレー校の物理学の教授で、手元にも彼の著書を何冊か持っています(サイエンス1、2など)。学生の投票によって「ベスト講義」の栄冠を得たことで有名です。最近の米国の講義は、あらかじめビデオが公開されていて、学生はそれを見てから教室に集まり、教授が学生に色々と質問をだしながら、議論を進めるという方法なので、日本のように、簡単に単位をくれる教授が人気が高いという訳ではありません。しかも、講義で新しい事実を知ったということだけでは評価は高くなりません。当然、新しい情報なり解釈なりが無い講義は魅力が全く無いに違いないありませんが、新しいことを知ったという満足度よりも、「自分で考えた」という満足度の方が、高い講義の評価に繋がったはずです。

 この本は、総ページが400ページに近い大作です。昨年の10月ぐらいからこれまで時間不足の状況が深刻で、とてもゆっくりと読める状況ではなかったのですが、今回、パリで開催される第2回のICEFの運営委員会のために、往復12時間×2の暇があることになったため、かなり重く嵩張るのを我慢して、持ち出して来ました。この原稿も、大部分は、飛行機の中で書きました。

 この本の印象ですが、随所に鋭い指摘が多数あって、最初に読んだ第3章だけを紹介すればそれでよい、といった本をではないということです。何回連続になるか分かりませんが、できるだけポイントを絞って、できれば連載形式でご紹介してみようかと思います。


C先生: という訳で、今回、ムラー教授の「エネルギー問題入門」を取り上げることにしたい。
 いきなりだけど、この本の日本語の題名は間違っているね。その第一の理由は、魅力的でないからだ。この題名では、それほど売れないだろう。そこから行こう。

A君:同感です。そもそも原題は、Energy for Future Presidentというもので、極めて特徴的です。Presidentといっても一般名詞ではなくて、”米国の”大統領の意味ですが、このぐらいの知識がないと、国のエネルギー政策を決めることはできない、という本なのです。
 しかも、だからといって、専門性が無ければ読めないという本ではないのです。ただし、ちょっとチャレンジが必要かもしれません。実用的、かつ、ややマニアックなエネルギー知識の最低限を提供することを狙っていて、しかも「エネルギーの未来を考えるという」目的がはっきりした本で、名著に分類すべきだと思います。

B君:その通りだ。そもそも「エネルギー問題入門」と名称がもたらすイメージほど記述の程度は低くはない。むしろ、もしも、バークレー校の学生がこれをすべて理解しているとしたら、それは、「恐るべきことだ」、という程度のレベルだが、だからと言ってとっつきが悪いことはないので、チャレンジ用として最適。

A君:想像ですが、読んだだけでは分からないという部分をわざわざいくつか作ってあって、そこを講義の場で推測をさせて議論をするという目論見があるようにも見えますね。それがこの本の中にも残っているのでは。例えば、最後の第5部などですが。

B君:そうかもしれない。懇切丁寧という訳ではないかもしれない。いずれにしても、入門書だとして読むと理解できないのではないか、と思われる記述が多い。確かに、周囲に適切な解説をしてくれる人材ないと、すべてを理解するのは難しいかもしれない。学生ならば、何人かグループを作って、この本の輪講をやるといったことが丁度良いのではないだろうか。

C先生:ここでの取り上げ方としても、まず、今回の1回ではとても終わらない。ある特定の部分を比較的丁寧にほぼすべてを解説して、分かりにくい部分の理解が進むように努力をしてみたい。まずは目次の紹介から頼む。

A君:第1部から第5部という構成なのですが、その分量はかなりばらついています。実は、本書の大部分が第3部なのです。しかも、第4部、第5部には章が有りません。ということをまず言いたかったのですが、以下、目次です。

第1部 エネルギー災害 p19−p104
第1章 福島原発事故
第2章 メキシコ湾原油流出事故
第3章 地球温暖化と気候変動

第2部 エネルギー景観 p105−p180
第4章 天然ガス・思わぬ儲けもの
第5章 液体エネルギー安全保障
第6章 シェールオイル
第7章 エネルギー生産性

第3部 代替エネルギー p181−p354
第8章 太陽電池の急成長
第9章 風力
第10章 エネルギー貯蔵
第11章 原子力開発の急発展
第12章 核融合
第13章 バイオ燃料
第14章 合成燃料とハイテク化石燃料
第15章 代替エネルギーのそのまた代替案
第16章 電気自動車
第17章 天然ガス自動車
第18章 燃料電池
第19章 クリーンな石炭

第4部 エネルギーとは何か p354−p368

第5部 未来の指導者へのアドバイス p369−389


B君:内容を見ると、その第4部はかなり物理学寄りだ。多分、化学を学んだ学生では記述の内容が分からない程度に物理学なのではないか。

A君:そう思います。そして、第5部は、本書の結論のような部分でして、未来の大統領に対して、こんなことが結論だよ、と提示しているのですが、実は、その対象は明らかに米国の大統領であって、日本ではないのです。エネルギーの供給の状況は、自給率の大小や、自然条件によって全く違います。だから、日本用に書かれた第5章でないと無意味だと思います。むしろここを真剣には読まないで、項目だけをピックアップし、自分で日本用の結論を作ることが必要かと思います。

C先生:その通り。いずれチャレンジしたい課題でもある。ということではあるが、今回はどこから紹介しようか。

A君:それは、今という時点をどう解釈するかに依存するのでは。

C先生:現時点ということなら、次回のベストミックスの審議会が、省エネから取り扱うということなので、第7章のエネルギー生産性から行こう。この章のような議論は、日本ではほとんど行われていないので、新しい提案があるから。言わば、ムラー教授流というか、もっと正確に表現しようとすれば、カリフォルニア州というもっとも先進的で、かつ、もっとも特殊な州において実施されている様々な施策の元になっている新しい発想法を解説しているページだとも言える。

A君:それでは始めます。
 いきなりムラー教授流の解釈がでてくるので、非常に大きな驚きです。いささか違和感が残るでしょうから、まあ記述の通りご紹介します。しかし、その前に、一般的な考え方をご紹介します。
 省エネに関して、日本をはじめとする各国で、しばしば言われる指標が、投資回収期間、あるいは、投資回収年数です。エネルギー生産性を高めるために例えば10万円分の省エネ投資をしたとします。運用に入れば、当然エネルギーコストは下がります。そのため、1年間で1万円分節約になったとすると、金利は最近だと低すぎるので考えなくてよくて、回収にはほぼ10年掛かります。

B君:そうなんだ。現時点のように将来の成長が保証しにくい時代では、企業などでは、最初に投資した金額の回収に10年も掛かるような投資はしない、という考え方が普通だ。しかし、本当にそれが常に正しい考え方なのか、というのが、ムラー教授が提起している問題だ。

A君:例えば、個人が家を建てる時を考えると、10万円余分に投資して、断熱材を屋根裏に入れるとする。あるいは、窓を二重サッシに変えることでも同じですが、この投資分は、実は、家の資産価値が高まったのであって、どこかに消えた訳ではない、とムラー教授は主張するのです。もし、家をすぐ売るつもりになって、見積を取ると、その分、価値が高まっているはずだ。しかも、その良い効果のお陰で、毎年1万円ずつ返ってくる、と考えるとべきだ。これは、利子のようなもので、利率で考えると、10%もある。しかも、確定申告が必要な通常の利率ではないので、無税である。断熱材の性能を決める寿命は家の寿命と同じだから、10年経過しても、利子は返り続ける。家を使い続ける限り、ほぼ未来永劫、利率10%が確保できる。

B君:もう一つ例を挙げよう。ムラー教授は、電球型蛍光灯を例に使っているのだが、もうそんな時代でもないので、LEDに変えることにする。未だに60Wの白熱電球を使っていたとする。それを12WのLED電球に変える。1日に4時間使うと仮定する。その他のデータは次の通りであるとする。

白熱電球 60W 100円 1日あたりの電気料金 5円
LED電球 12W(いささか低効率すぎる仮定だが計算上の都合で) 1800円 1日あたりの電気代 1円
初期費用の差 1700円 1日あたりの節約額 4円
回収期間 1700/4=425日=1.16年
金利 100%/1.16=86.2%
 ということで、86.2%というすごい金利に相当するということになる。

 しかも、本当は、これだけではない。寿命が違う。電球の寿命は1500時間、LEDはカタログの4万時間を計算上は3万時間にするとして、20倍。電球を20個買う金額が、LED電球1個を買う金額とほぼ等しい。これだけで初期投資の元が取れる計算なので、投資金額は0、すなわち、利率は無限大という解釈も不可能ではない。しかも、交換の手間や、廃棄物もすくない。

A君:それはそれとして、上の計算の通り、金利が86.2%もあれば、投資しない方がおかしい、という結論になります。

B君:日本でも、多くの企業が照明をLEDに変える投資をしているようだ。実は、企業が使っているHf型の高効率蛍光灯の効率は、LEDと比較してもまずまずなのだけれど、寿命を考えると、別の言葉で言えばメンテナンスを考えると、LEDの長寿命によるメリットが大きい。特に、非常に高い天井に設置されている場合などは、そのコストがバカにならないので、LEDへの積極的な転換が行われている。

A君:以上二つの例は、基本的な考え方を変えれば、確かにその通り、という例です。
 しかし、もう一つの例が、カリフォルニア州の電力の話。これは、日本の政府が出資してこれまでやってきたエコポイントのような考え方を根底から覆すような発想だと思います。実施主体が全然違うのです。
 予備知識としては、米国が電力の自由化をやった直後、大停電を起こしたこと。要するに、発電所に投資が行われなくなった。そのため、電力消費のピークをカットする方策が重要になった、と言えるでしょう。

B君:そんな言い方をすると、かなりネガティブに聞こえるけれど、実際には、結構ポジティブ。なぜならば、米国の他州では、過去40年ぐらいで、電力供給量が1.5倍程度に増えているのに、カリフォルニア州では、同じ電力供給量でなんとか足りているという実績がある。

A君:それではムラー教授流のご紹介。カリフォルニア州は成長を続けており、現時点で30GWの電力を供給量しているけれど、来年には、電力需要が1GW増えて、31GWになりそう。この1GW分の電力を発電所を増設して補うとします。燃料費などの運転費を考えるのが面倒なので、原子力発電所とします。運転のコストはウラン燃料だけではなく、最終処分まで考えても、わずかなのが現実です。建設費を100億ドルとして、電気代を15セントとすれば、年間の収益は13億ドルになります。電力会社の投資に対する利益は、年間13%となります。これは、かなり良い収益率です。しかし、実際には、この収益は電力会社ではなく、新しい発電所に資金を提供した投資会社の懐に入ります。
 ここで州政府が介入して、代替案を提示します。省エネにお金を使った方がもっと儲かるから、と提案するのです。
 具体的には、電力会社が、エネルギー効率の良い冷蔵庫や、エアコン、LED電球、家の断熱などに奨励金を出すことにするのです。
 すでに、LED電球のケースで説明したように、この利益は、消費者の懐に入るのですが、カリフォルニアの経験を元に、詳しい計算をすると、奨励金を出すことによって、電力会社に帰ってくる利益は、新しい発電所を作る場合の2.5倍になることが分かっています。

B君:長くなったので、交代するか。
 例えば、電力供給量増大のために10億ドルを投資する代わりに、その2.5分の1の4億ドルをエネルギー効率の良い冷蔵庫などへの奨励金として投資することする。これが上手く行けば、約10億ドル分の電力需要減り、結果的に、新しい発電所を建設する必要がないことになる。しかし、これだけでは、電力会社は損をすることになるだけ。そこで、カリフォルニア州は、電力料金を現行の1kWあたり15セントから15.05セントに上げることを認めることにする。これがミソなのだ。この値上げで、電力会社の収入は、年間300億ドルから301億ドルに増加するので、4億ドルを投資して1億ドルの増収なので、25%の実効利率になる。これは、新しい発電所を建設する投資の場合に帰ってくる13%の利益を上回るので、電力会社にとっても、大きなメリットがある。

A君:電力料金を値上げをすれば、消費者は支払いが増加することになるので、ちょっと考えると、消費者は反対をしそうに思えます。ところが、元々31GWと予測された電力消費量が、省エネのお陰で30GWのままなので、省エネ対策によって、電気代は平均的に3.3%節約になっているはずなのです。値上げは、15セントが15.05セントへと0.3%強の値上げに過ぎないので、消費者全体を考えると、電気料金はざっと3%下がったことになります。

B君:したがって、消費者は文句を言わない。この方法アーサー・ローゼンフェルトによって考案されたとのこと。カリフォルニア大学の物理学の教授だが、この発明で、エンリコ・フェルミ賞を受賞している。

A君:ちなにみ、エンリコ・フェルミはもともとはイタリア人の物理学者ですが、妻がユダヤ人だったので1938年にノーベル物理学賞を受賞して、そのままアメリカに亡命。そして、1942年にシカゴ大学で世界最初の原子炉を完成。核物理学だけが専門ではなく、統計力学、特に、フェルミ統計の元祖として有名。
 エンリコ・フェルミ賞は、米国のエネルギー章が主催しているもので、エネルギーの開発、使用、または生産に関する業績を対象とするもの

B君:元に戻って、アーサー・ローゼンフェルトの方法の難点は、と言えば電気料金の支払いの低減を大きく享受できるのは、冷蔵庫を新しいものに変えた消費者だということ。金持ちほど多くのメリットがある、ということなので、格差の拡大繋がるということぐらいか。米国では問題にならない種類の問題だけれど。

A君:カリフォルニア州と言えば、すでにご報告した、昨年秋に行われたICEFの記事でご報告した、Opowerというベンチャー企業によるスマートメーターの活用によるピークカット。
http://www.yasuienv.net/ICEF1st.htm
要するに、明日は気温が上昇して、消費電力量が増えそうだから、例えば、11時から15時の間の電力消費 この値以下に抑えてくれたら、8ドルプレゼント、といったことであれば、新しい冷蔵庫に変えなかった人でも、メリットを享受できるので、なんとか受け入れられるということでしょうか。

B君:ムラー教授は、これ以外のエネルギー生産性を高める方法として、屋根の反射率の向上、ハイブリッドによる自動車の燃費の改善などを推奨している。しかし、プラグインハイブリッドや、電気自動車はダメだと主張している。これは、電池には寿命があって、その交換を考えると、とても合わないということが理由だ。

A君:確かにリチウム電池の場合には、安全性をかなり考慮しないと自動車に搭載するのは難しく、そのため高くなるのですが、次世代蓄電池で、本質安全を考えたものになれば、値段も下がるのではないでしょうか。

B君:金属をそのまま電極に使える電池の方が、容量的にも有利なので、そんな方向を目指すべきなのかもしれない。まだまだ開発に長時間かかるとは思うが。

A君:アーサー・ローゼンフェルト教授の方法には名前があることをご紹介していなかった。デカプリング・プラスと言います。

B君:デカプリングとは何かと何かの関係を切るということだけれど、この場合には何だろう。

C先生:デカプリングという言葉は、資源経済学の言葉で、経済成長と資源消費量との関係を切ることを意味する。具体的に何を問題にするかは、経済の発展段階によって異なる。
 現時点で最大の問題は、エネルギー資源として化石燃料と経済の関係、すなわちCO排出量と経済成長との関係を切るという意味が大きい。その他、水資源の使用量と経済の関係とかを議論する場合もあるし、1972年のローマ・クラブの「成長の限界」の時代には、資源利用量の増加に伴う環境汚染と経済成長の関係を切ることが主要な問題だった。

A君:この本のムラー教授の記述だと「電力会社の利益がもはや新しい発電所建設と結びついていない」ことを意味する、となっています。

B君:原文をチェックしていないから、何とも言えないけれど、誤訳か誤解ではないか。この文脈だと、「経済成長とエネルギー消費量の関係を切る」という解釈するのが妥当だと思うが。

C先生:そろそろ終わりにしたいが、以上の説明以外に、本章に重要な記述は何かあるだろうか。

A君:自動車の燃費向上や冷蔵庫の省エネの話もでていますが、これは、むしろ日本の方がすごいので、無視して良いでしょう。

B君:実は、ムラー教授は取り上げていないのだけれど、社会的な制度ということになると、自動車の場合でも、米国の方が進んでることもある。CAFEという仕組みは、その例かもしれないので、ちょっと記述しよう。

A君:CAFEとはCorporate Average Fuel Efficiencyの略語ですが、車ごとの規制ではなくて、車を販売した企業全体としての平均燃費に規制を掛けようというものです。1975年に出来た法律で、1985年までに車の燃費を2倍にするという目標が設定され、1978年モデルの新車からCAFEがスタートしました。1985年までは基準値が引き上げられていたのですが、1990年代以降、この規制はほぼ寝ていました。

B君:ところが、オバマ政権になって2012年から2015年まで毎年5%ずつ段階的にCAFE規制を強化することになった。企業平均で、15.1km/Lが目標値。現在に比べると42%の引き上げになる。

A君:カナダ、ヨーロッパ、中国、韓国でも自主規制を含めて実施もしくは実施予定。

B君:日本自動車工業会も欧州の規制には自主規制で対応。EUの排出目標値は、CO基準で、140g/km。これを燃費に変換すると、ガソリン車だと16.6km/L、ディーゼル車だと18.8km/L。
 カリフォルニア州が決めた2016年以降の規制値が127g/kmなので、ヨーロッパよりも米国の方が厳しくなるはずだけれど。

C先生:他には何かある?

A君:ムラー教授は、我々の名称では、限界削減費用、英語の世界では、マッキンゼーチャートと呼ばれるチャートの有用性を示しています。

B君:日本の同様のチャートは、国立環境研のAIM(Asia-Pacific Intergated Model)チームがしばしば整理したのだけれど、このところ、新しいものがでていないような気がする。古いものだが、一例として、ここに引用してみたい。もう一度注意しておきたいのだけれど、これは古いものなので、データはもはや時代遅れになっている。
http://www-iam.nies.go.jp/aim/prov/20090415AIMv1.pdf のp27より。

A君:細かくて見えないですが、上で取り上げた住宅の断熱化をこのチャートで評価すると、実施するのは馬鹿げているという結論になることは、すでに説明した通りです。日本でも、ムラー教授的なものの見方に変える必要があるのです。

B君:他の記述ですが、エイモリ・ロビンスが彼の著書”Natural Capitalism”の中で紹介している1981年にダウ・ケミカルで行った省エネの提案コンテストの結果などを示している。やる気になれば、色々とネタがあるということで、締めくくられている。

C先生:ということで、我々も結論としよう。
 エネルギー生産性という第7章は、考え方を変えることで、ものの見え方が変わってくるということを強く主張している章だと言える。
 日本の場合、「もったいない」精神が非常に強いものだから、どうも枝ぶりなどの細部に囚われすぎて、大樹の姿を見失うという典型がリサイクルの分野と省エネの分野だと言われてきた。ムラー教授の指摘は、非日本型の発想の典型例なので、ここをじっくりと読み込み、別の考え方もあって、その方が実は有効に機能すると理解することが、今後の日本での排出量削減を目指す上で、非常に重要なのだろうという強い印象を得ることができた
 ムラー教授のこの本の存在意義は、勿論、この第7章ばかりではない。すでに述べた第3章の「地球温暖化と気候変動」のデータも非常にインパクトが強いし、そもそも第1章の福島原発事故の記述は、その事故の本質を理解する上で必須の情報が詰まっている。それ以外にもそれぞれのエネルギー源について、重要な基本知識に関する記述が非常に豊富なので、是非とも、カリフォルニア大学バークレー校の学生並の知識を身につけるという意味からも、是非ともお買いいただき、座右の銘ではなく、座右の図書の一冊としていただきたい。
 久々に出会った「読み通して良かった」と思われる書籍であった。
 どなたでも結構ですから、日本の「未来の政治家」のために、こんな本を書いてくれませんか。