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  環境と経済、環境経営の有り方  11.09.2003



 環境省の中央環境審議会は、この秋、2つの専門委員会を立ち上げた。一つは、「環境に配慮した事業活動の促進」で、もう一つは、「環境と経済の好循環」である。

 環境問題は大きく変質してきており、今、何を研究すべきか、と問われれば、その研究の題材はかなり限定されている。しかも、場としては、どうも日本以外になる課題が多いように思える。

 日本国内の環境問題は、ヨハネスブルグサミットで先進国に対する課題として指摘された、「非持続型製造と非持続型消費からの変更」がやはり最大のの問題になってきているのではないだろうか。


C先生:地球レベルの環境問題は、なかなか解決が難しい。ヨハネスブルグサミットで指摘された最大の環境問題が「貧困」であることは、これまでも述べてきたが、この問題を解決することはかなり難しい。

A君:貧困問題の解決とは、安定した社会の実現、初等中等教育の充実、さらには、様々なレベルでの実務能力を付けた人材の育成、などなど長期的な課題ですから。

B君:京都議定書のような「非持続型の製造と消費」を回避するための国際的枠組みですら、米国は離脱、ロシアも態度が明確でなくなってしまった。

C先生:そこで使われる言葉が、経済発展にとって足かせになるというものだ。米国がそう言って、ロシアもどうもそのような理解のようだ。

A君:環境と経済は両立するのか。これは、しばしば問われる問題なのですが、解は明らかですよね。

B君:解は一通りではない。ある場合に両立することは明らか。ある場合には不明。

A君:いわゆる環境クズネッツ曲線のことであれば、事実と言えるでしょう。
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/EKuznetsCurve.htm

B君:環境負荷が下がり、経済が発展するのか、そうではなくて、経済が発展するから環境負荷が下がるのか。それは問題ではある。

A君:10月から始まった東京都のディーゼル車規制にしても、このために相当のトラックが売れたようですから。規制で経済規模が拡大するのは事実なのでは。

B君:ただし、零細運輸業者にとっては、この規制によって事業の持続が不可能になるといったこともあるから、必ずしも単純な関係ではないが、全体的規模としては恐らくイエスなのだろう。

C先生:環境クズネッツ曲線に合う環境負荷の代表例が、大気中のSOx。これは、経済的な発展があると、処理装置も付く上に、燃料中の硫黄分を少なくするからだ。NOxは、SOxほど直接的ではないものの、それでも後処理装置は付くので、まずまず。水道水中の汚染物質は、経済規模の拡大に並行して、減らされる傾向がある。これも処理装置が付くからだ。

A君:排出基準を厳しくすれば、それとともに、処理装置の商売が発展することは事実のようですね。しかし、経済的なインパクトがそんなにも大きくはないようにも思いますが。

B君:それはそうだが、排気と排水に関する環境負荷に関しては、経済と環境の双方向の効果があると断定しても良いだろう。

C先生:環境負荷は排気と排水だけではない。例えば固形廃棄物はどうだ。

A君:豊島、岩手青森県境と大規模な不法投棄が行なわれましたが、これは、規制が遅れたからでしょうね。

B君:排気・排水に比べると健康被害が余り直接的ではないから、対応が遅れたとも言える。

A君:その後、各種リサイクル法の制定もあって、最終処分量は減っています。1991年がピークで、2003年にはすでに半分です。

B君:日本の経済の場合に、91年から03年というと、バブルピークから下り坂なので、データとしてはいささかだ。

C先生:循環型基本計画では、平成22年までの10年間で、最終処分量を半分にするとしているが、これは可能なのではないだろうか。となると、結論的には、排気・排水に遅れるものの、固形廃棄物による環境負荷も経済的な発展によって減ることになるだろう。

A君:となると、次が二酸化炭素排出量。

B君:すでに北欧諸国では、二酸化炭素の排出量を削減しながら、経済的な発展が行なわれている。

A君:ただし、それには、何か仕組みが必要。排気・排水だって、厳しい排出基準があってのもので、固形廃棄物にしても、やはりリサイクル法の整備と不法投棄の厳しい規制があってのこと。

B君:環境税ということになるのだが、これには、経団連は基本的に反対。

C先生:環境税といっても何種類かの考え方がある。かなり高額な税額にして、使用量を削減させて排出削減を狙う。例えば、ガソリンの価格が50%ぐらい上がれば、やはり走る距離が減るか、燃費の良い車に変えるか、ということになるだろう。しかし、今、環境省が提案しているものは、とても税額で削減が実現できるようなものではない。

A君:低額の環境税は使い道が重要。

B君:環境税の上がりで、省エネ商品の普及をする、といった環境省シナリオに対して、鉄鋼連盟はそんなのでは駄目だと反対している。

C先生:環境と経済の好循環を目指すには、このあたりのシナリオをきちんと作る必要がある。

A君:もう一つの環境負荷がありますね。それは、最近EUが決めたRoHSのような有害物の使用禁止関連。製品に有害物を使わないようにしよう、というこの仕組みが、本当に環境対策なのか、ということです。

C先生:その話は、今後重要になる。しばらく検討をした上で結論を出したい。

A君:結局、二酸化炭素排出については、環境税が必要。しかし、有害物質の使用禁止は慎重に検討を、が個人的見解ということですか。

B君:色々と議論はあるだろう。しかし、一つの方向性ではある。

C先生:もう一つの要検討事項が、企業の環境経営。日本のISO14001の取得件数は、世界の22%にもなっている。

A君:第二位がドイツで9%、続いて英国で7%、スウェーデン6%、スペイン6%。

B君:環境報告書なるものの出版をしている企業が、現在650社。これは上場企業の34%。非上場企業では、12.2%が発行中。

C先生:環境報告書を作るのにも相当な人と金が掛かる。どうも見掛けを良好にするためにも、また、第三者レビューを受ける報告書も増えてきて、その費用も馬鹿にならない。

A君:そのためかどうか。環境報告書を出版する企業数の伸びがどうも飽和傾向にある。

B君:上場企業の34%程度程度では、余り誉められたものではない。

C先生:諸外国では、デンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンが報告書の作成が義務化されていて、フランスは財務報告書での報告義務はあるが、環境報告書を作る義務は無い。イギリスは、法案が通らなかった。

A君:第三者レビューは?

C先生:オランダでは、レビューを受けることを規定されているが、施行はされていない。

A君:第三者で何が分かるか、問題ですよね。

B君:環境報告書に掲載される事項としては、それこそ色々なものが有る。世界の様々な環境報告書ガイドラインに記載されている項目を整理すると、
(1)経営者の序文
(2)業務内容と環境リスクの記述
(3)環境マネジメントシステムの記述
(4)全社的な方針・目的・目標の声明
(5)環境リスクに注意を喚起する活動と結果
 *資源
 *生態系変更
 *汚染
 *廃棄物
 *エネルギー
 *リスク(有害物・危険物・事故)
 *土壌、地下水
 *製品(リサイクルの可能性、包装)
(6)財務データ
(7)法的遵守
(8)監査と報告書
(9)安全と健康
(10)ステークホルダーとの関係

これらのすべてをしっかりと監査するとしたら、公害防止の専門家であって、しかも、財務内容が分かり、法務の業務にも明るく、しかも、ヒトの安全などの医学などの知識も必要。さらには、世界的な環境の動向などについても、知識が不可欠。

C先生:資源・エネルギー関係のデータなどは、LCAの専門家であっても把握するのは困難かもしれない。

A君:そんなことが一人でできる訳も無いとなると、監査チームを作って監査をするのでしょうか。

B君:それは余りにも費用が掛かる。

C先生:今年3月に初公開されたPRTRのデータにしても、それぞれの部署が自主的に集めたデータを公表している。そのために、初年度のものはかなり誤りが多かったようだ。しかし、このような報告書にある数字の精度が非常に高いことが必要というものでもなく、それなりに数年間以上に渡った時間的推移が分かれば、周辺住民なども、その企業が努力していることが分かる。

A君:第三者レビューを強制するのは、どうも世界的な状況を見ても難しい。

B君:環境報告書をすべての上場企業が作ることになれば、環境ファンドなどの対象として情報提供ができることになる。

C先生:それはその通りで、格付け機関などは喜ぶだろうが、そのような状態を望まない企業がまだ多いのも事実。

A君:銀行とか証券会社だと、他社の情報は欲しい。しかし、自社が作ったとしても業態から言って、電気、紙、ごみぐらいしか環境負荷を掛けていない、という感じでしょうか。

B君:銀行の場合だと、確かに他の情報の方が知りたい。どのぐらい貸し剥がしをしているかとか。

C先生:しかし、どのぐらいグリーン購入をやっているか、といった情報は知りたい。

A君:保険会社は、環境への取組みを紹介しているところがあります。

B君:日本生命は14001を取得しているようだが、明治生命はまだのような感じ。

A君:商社だったら、最小限輸送の負荷とか、工夫のしどころは多いから、環境報告書を作る意味はあると思いますね。

B君:だから商社は環境報告書やサステイナビリティーレポートを作っている。三菱商事、三井物産、住友商事は作っている。

A君:トーメンは、風力発電などの環境事業で有名なので、当然環境報告書がある。

B君:2002年版だと、ニチメン、日商岩井の環境報告書もある。

C先生:どの企業も立派な環境報告書を作れということでは決して無い。しかし、自主製作の報告書でも良いから、作ることによって、企業全体の考え方に影響を与えることができるだろう。

A君:そもそも環境報告書は誰のために作るのだろうか、という議論がありますね。

B君:まあ、特定の読者は無いというのが恐らく合意で、様々な読者に平均的に読んでもらいたい、ということ。しかし、実際のところは、自社の社員に読んでもらうという効果が最大のものではないか。

C先生:そして、今後の持続可能性に向けた環境経営をしているということを表明する指標としては、やはり、この3月に閣議決定された循環型社会基本計画の資源生産性、循環利用率、最終処分量ぐらいは、それなりに定義して、表明するといった経営方針が望ましい。

A君:20世紀型の無毒化方針の企業がまだ多いですね。

B君:特に、一部の組み立て産業に。

A君:スウェーデンが2020年までの目標にしているぐらいだから、これが正しいと思い込むのも無理は無いですが。

B君:少なくとも科学的目標ではない。

C先生:何が有害物か、この議論だけでも極めて困難。誰かがこの材料は有害だと言ったからといって使用を止めれば環境負荷が下がるというものではない。

A君:環境と経営は、どうも政治問題でもありますね。

C先生:本日は総選挙。まだ最終的な結果は出ない段階でこれを書いている状態。今回、マニュフェストなるものが話題になったが、環境税に関しては、一部の党を除き、反対の党が多かった。やはり、短期的な視点を重視しているということだろう。どこの党が何を言ったか、これは読者ご自身で確認していただきたいが、環境税は、日本の改革と競争力強化にとって必要不可欠のように思える。このような重要課題が、政策レベルで議論されること、すなわち、全政党の同意事項にならないことを遺憾に思う。

B君:選挙は、やはり色々な階層の利害のための闘いでしかない。

A君:本当は、そのレベルを超さないと。

C先生:それには、市民レベルの選択が、国を動かすという実例を積上げる必要がありそうだ。