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  再生紙に総合評価を導入 グリーン購入法   12.21.2008
     



 環境負荷をどうやって評価するのか。これは、ある意味で永遠のテーマである。ライフサイクルアセスメント=LCAという手法は、これを目指してきたようにも思える。

 今日は、総合評価がグリーン購入法に導入されたことを検討をしてみたい。ある意味で画期的な状況になったとも言えるだろう。



C先生:2008年は、いろいろな意味で悪いことが多数起きた年だったと思う。大不況への突入開始、中国ギョーザ事件、妙な殺人事件、などなどがあったが、エコ商品にとっては、古紙偽装事件が最悪の事件だった。

A君:これで、環境行動のようなものの信頼性ががっくりと落ちました。

B君:環境優良企業などというものは、存在しないのではないか、という思いを持っている人も増えてしまった。

C先生:古紙偽装事件を誘引したものとして、古紙パルプを100%配合したいわゆるR100という規格があったことがある。法律的には、グリーン購入法の特定調達品目にそのように記述されている。

A君:グリーン購入法は国などの公的機関しか束縛しない法律。しかし、環境優良企業は、グリーン購入法に準拠したグリーン購入を行うようになって、結果的には、企業の購買行動にかなりの影響を与えた。

B君:それが逆目に出たのが、今回の古紙偽装。本来であれば、国などの公的機関が購買するだけのR100を作ればよかったのが、一般企業のグリーン購入活動によって、R100の需要がきわめて高くなった。

A君:そのために、製紙企業としても、これに対応できないようだと、商売が成りゆかなくなるという恐怖心からか、実際には、製造する能力が無かったにもかかわらず、R100を大量に販売した。

B君:さらに悪いことには、一般企業の購買担当者が、R100という商品の特殊性を理解しないで、白色度などの品質を求めたこともあって、品質を確保したR100を出さなければならかくなった。

A君:当時、デフレ社会だったもので、価格は抑えなければならなかった。ところが、原料になる古紙が中国に大量に輸出されており、古紙の市場価格が高騰して、R100を安価に作る状況が難しくなった。

C先生:こんな訳で、古紙偽装が起きたことは、すでに何回も書いてきた。加えて、R100を単独の商品として見ると、その環境性能が良いかどうかやや疑問という商品であった。その詳細などは、
http://www.yasuienv.net/R100PaperLCA.htm
(この記事は、古紙偽装が明るみに出る前に書いたもの)
http://www.yasuienv.net/DIPFraudFinal.htm
(この記事は、古紙偽装事件の総括)
をお読みいただきたい。

A君:ということで、グリーン購入法における特定調達品目としてのR100の基準は、変更されることになっていた。長期間検討をした結果なんでしょうね。新しい総合評価という基準が導入されて、現在、パブコメ中。
C先生:本日の主題は、その総合評価。といっても、その内容を詳細に説明することが目的という訳ではない。

B君:ざっと説明して、その背景や意味を議論する。

A君:まず、全文や説明などは、
本文
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=12605&hou_id=10513
参考資料
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=12608&hou_id=10513

 ただし、そのうち、このURLも無効になる可能性があるので、付録としてこのHPの下に保存しておきたい。
http://www.yasuienv.net/EvalCondR.htm
 要するに、使われたのは以下の5種類の項目。これらについて総合評価値を求め、80点以上(暫定的に当面70点以上)を合格とすることになった。

1.古紙パルプ配合率が最高80点
2.森林認証パルプ、間伐材パルプが最高30点
3.その他の持続可能性を目指したパルプ配合割合が最高15点
4.白色度を低くすることが最高15点
5.坪量(紙の重さ)が最高15点


B君:単純に足し算をすると、155点になるが、当然のことながら、パルプ配合率の合計は100%を超すことはないので、1〜3の合計は、最高で80点にしかならない。

 最高点を取る可能性がある組み合わせが、古紙パルプ100%配合で80点、白色度を低くして15点、そして、坪量を少なくして15点、合計、110点というものである。

A君:100点満点にしないのはおかしい、という考え方もあるでしょう。しかし、古紙パルプを本当に100%使うと、坪量を下げることがかなり難しいことになる。そのため、実質上100点を超すことは難しいのではないか、と思われますね。
 そして、合格ラインが80点(暫定的に70点)となっている。この意味は、古紙パルプ100%の製品は、自動的に合格するという意味になります。

C先生:そして製造者は、コピー用紙には、この点数と5項目の内容を記述したラベルを貼ることが要求される。

A君:そろそろ総合指標というものの議論ですか。

B君:もともと環境負荷は、単一指標では表現不能で、多くの要素を考慮した総合指標を用いることが当たり前なのであるが、LCAでそれを試みると、恣意的であるとか、根拠がないとか言われがちで、これまでどうしても踏み込めなかった領域であった。

C先生:まあ、そんなものだ。とうとう、そこに踏み込んだことを画期的だと評価したい。

A君:とはいっても、これに踏み込むことが可能だったのは、国や公的機関が自分たちの行動を自分達できめる、というグリーン購入法の枠組みだったからだ、と思えるのです。

B君:一般企業などを対象とした法律だったら、なかなか総合指標などというものを導入するのも難しい。うちの会社は考え方が違うといった反応になることが想定されるので。

C先生:まず、最大の問題は、この総合指標が受け入れられるか。本来的に言えば、国と公的機関だけが受け入れればよいとも言えるのだけれど、やはり一般市民からの受容性というバックアップは必要だから。

A君:確かに、考えようによっては、極めて複雑なことになってしまった。考慮すべき要素としては、再生パルプの使用量だけだったのに、その他に、森林認証材パルプかどうか、間伐材パルプかどうか。白色度、それに、紙の厚さである坪量を考慮することにした。

B君:そして、それぞれの要素について、点数化して、総合点を求めるようにすると、入学試験で、国語、英語、数学、理科、社会の複数科目の点を合計して求めるようなものだ。入学試験の場合でも、大学の特性に応じて、どの科目にウェイトを掛けるか、といった判断が必要だ。今回もそれが妥当だという主張はなかなか難しいのだが、まあ、国と公的機関をしばるだけなので、これで行くということになったのだ。

C先生:まず理解されるか、これが問題だ。それに加えて、他にも、問題がないとは言えない。

A君:それは、基準が定量的になったもので、その認証が必要となる場合もあると考えられるのですが、分析法としては、大変難しいものと思われる。

B君:最初にバレタ偽装年賀はがきで、40%再生パルプをいれなければならないのに、ほんのわずかしか入れていなかった。そのために、東京農工大の岡山先生の蛍光を見る方法でなんとか判定できた。しかし、今後は、数値が細かくなってくる。実証はほとんど困難。

C先生:なんらかのテスト法を開発するにしても、やはり本当に細かいところが分かる方法があるとも思えない。

A君:そんなときどうするか。

C先生:現在考えられているのが、第三者認証を取ることを奨める、という方法。第三者認証がある場合にどのようにその商品を優遇するか、これは別の問題になる。

B君:第三者認証なら、いろいろな方式が考えられる。製造プロセスを第三者に公開して、監査を受けるといった方法を取ることもありうるし。

C先生:このあたりがどのように進展するか、まだまだ知恵の出し所が多数あるような気がする。化学工業と違って、外からパルプを投入することなどが、比較的簡単にできるので。

A君:第三者認証をやる機関を育てる必要があって、それには、標準的なテスト法などを開発する必要もありますね。

B君:話が、手数料社会を狙うEU見たいな感じになってきた。先進国というのは、徐々にそうなるのがどうやら既定ルートのような気がする。

C先生:問題はまだある。以下の問題点は実はさらに深刻だ。製造事業者が、100%再生パルプを用いたと主張したとして、その紙に含まれている再生パルプの量が10%であったとしても、実は、それが許容される仕組みが残っていることなのだ。いくらテストを厳密にやれたとしても、この枠組みのために、なんともならないケースが出てくることも想定されるのだ。

A君:普通ならあり得ないですよね。

C先生:それは損紙という概念だ。要するに、コピー用紙以外の抄紙機からでた、商品にならないような本当の損紙や、一旦、製品になったものの、なんらかの理由で商品にならなかったものを含めて、これらが損紙であって、それを原料に使うことが当然行われる。そのような場合に、再生パルプ含有率の定義には、実に、損紙を計算に含めないものになっているため、古紙からの再生パルプを場合によっては10%しか使っていなくても、損紙という新品の紙から作ったパルプを90%配合すれば、古紙パルプ利用率は100%になりうるのだ。

B君:再生紙の基準という観点からだけ見ればとんでもない仕組みではあるが、その紙は、商品にならないのだから、ある意味で有効活用しているということには変わりはない、とも言える。

A君:印刷もなにもされていないマッサラの紙だから、普通に水に溶かせば、再度パルプとして使えるようになって、そのパルプの性質はバージンパルプと変わらない。確かに、古紙パルプとは違って、むしろ、バージンパルプに近い性能を持っている。

C先生:もっとも、本当の損紙は歩留まりの低下になるので、できるだけ少なくしたい。売れなかった商品からの損紙だが、そこまで折角作った製品なのだから、製紙事業者としては当然のことながら、売りたい訳だ。だから、本当に損紙ならば、それを大量に混ぜ込むということは、コスト的には不利なので、あまり大量に行われるというものでもない。
 しかし、しばらく前のように、古紙の価格が非常に高くて、さらに、バージンパルプの方が安価に製造あるいは入手できるという条件が満たされてしまうと、損紙を混ぜたことにして、そのバージンパルプを90%使って、本当の再生パルプは10%しか使わない紙が、コスト的にも有利になりうる。この紙ならば、損紙の配合量は計算式に入らないので、古紙パルプ配合率は100%だと言い張れる。

A君:やはり、抜け道になるうる。その意味では、止めてしまいたいところではあるのでしょうが、本当の損紙ならば、B君の指摘のように、その再利用は資源の有効活用の方法だから、認めない訳にはいかない。

B君:結局のところ、これも、第三者認証のような仕組みができないと、何が本当なのか、良く分からない。第三者認証を取ることを前提として、今回の総合評価は出されていると思うべきなのだろう。

C先生:損紙の利用実態については、報告義務を課すという方向性になるのではないだろうか。
 いずれにしても、そんな状況ゆえに、今回の総合評価を導入したために、結果的に、基準に適合するコピー用紙の価格は高くなるだろう。しかも、複雑なシステムを運用するためには、テスト法を検討したり、あるいは、第三者認証システムを立ち上げたりするために、行政コストもかさむことになる。
 製紙業界は、自らの利益を追求した偽装行為によって、国や公的機関を裏切っただけではなく、性悪説に基づいたグリーン購入法の運用を行わなければならない状況を生み出し、実は、税金の有効活用という観点から言って、国民にも損害を及ぼしたことになる。そんな意識を持っているだろうか。
 いずれにしても、総合評価が今後どうなるか、見守るしかない。