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   FIT制度導入のメリットは非常に大きかった!
     
日本のエネルギー未来図が見えたから 05.14.2017
               



 大量のFITの申請が失効したという日経の5月13日の一面トップ記事に引きずられて、太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)をもう一度考え直してみたい、そして、できれば、将来の方向性も同時に明確にしたい、と思い、本日の記事を書くことにしました。

 まずは問題意識。次に日経の記事の要約から取り掛かりますが、その裏に存在する状況を推定してみたいと思います。絶対に確実という記述では訳ではないことを、予めご了解いただきたいと思います。

 結論は、「FITという劇薬を導入することによって、日本のエネルギーの現状と、そのあるべき未来図がかなりクリヤーに見えた。これがFIT導入の最大のメリットであった」。


C先生:この問題にコメントすることは、様々な要素が有りすぎて、しかも、どれが正しい対応なのか、しかも、「正しい」ということが考え方によるものだから、なかなか難しい。しかも、かなり長期的な視点を持つか、持たないかによって、恐らく何が「正しい」かということについての意見が全く違う。まず、この話題にからむ様々な問題点をざっと振り返ることから始めよう。

A君:今回の話題を拡張したとき、表面化してくる問題としては、以下のようなものが考えられます。
☆考えるべき問題リスト:
(1)FIT(固定価格買取制度)という制度による、再生可能エネルギーの推進が正しいのか、あるいは、正しかったのか。
(2)そもそも太陽光というもっとも厄介な性能をもった発電をこれほど優遇したことが、正しかったのか。
(3)電力会社は、不安定な自然エネルギーにもっと寛容になるべく、電力網を強化すべきなのか。
(4)太陽光発電を推進してきた発電事業者側の本来の責任は何だったのか。
(5)エネルギー自給率が非常に低い日本という国だが、将来、エネルギー供給は大丈夫なのか。
(6)パリ協定で背負っている日本の約束との関係をどのように考えるべきなのか。
(7)パリ協定の日本からの貢献(2030年)のどの部分がもっともキツイのか。
(8)2050年のCO2の排出を80%削減などという目標をどうやって達成するのか。
(9)そもそもエネルギーという現代生活に絶対的な必需品であるものに対して、一般社会の理解は充分なのか。
(10)エネルギーとは何か、と、その必要性をもっと学校教育に取り入れるべきではないか。


B君:まあ、このような問題の答は最後にまとめるとして、日経の記事をフォローしてみよう。

A君:この記事のイントロは、FITの盲点を付いた事業者が持っていた権利、すなわち、高額で売電できる権利を無効にする法改正が4月に施行されたこと。これで、合計2800万キロワットの発電計画が失効した。

B君:これは結構大変な量で、一般家庭の約1割、具体的には560万世帯の消費電力に相当するとのこと。

A君:原発の1機分をざっと100万キロワットとすれば、28機分ですからね。しかし、これを一方的に電力事業者側の責任にするのは間違いでしょうね。勿論、完成した時点でFITの価格が決まるという枠組みにしかなった責任は国側にありますし、とにかく、金儲け最優先の事業者の本音をあらかじめ予測できなかったのは、甘すぎた。

B君:しかも、事業者の悪知恵は相当なもので、メガソーラーの場合であっても、形式上あるサイズ以下に分割して申請をすれば、有利になること(低圧分割)を悪用しようとした。itmedea記事によれば、「分割案件とは、特段の理由なく発電所を出力50kW(キロワット)未満の低圧に分割して申請を行っているケースのこと。高圧系の発電所の場合、電気主任技術者の選任や、認定後6カ月以内に土地と設備を確保する必要がある。一方、低圧系ではこうした義務や規制はない。」
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1609/02/news037.html

A君:50kWと言えば、家庭用としては、あり得ない程度の大型ではあるけれど、200Wのパネルで言えば、250枚だから、まあまあ大型で、ちょっとした工場の屋根程度。破産したゴルフ場をメガソーラーにするといった規模とは、全く違う。しかし、そのゴルフ場跡地のメガソーラーを名目上いくつかに分割して、それぞれを50kW以下にすれば、低圧系だと主張できることになる。このような事業者の悪知恵を見抜けなかった。

B君:悪知恵がはびこってしまう、ということは、すなわち、FITの制度的な欠陥だった。しかし、真面目に取り組んだ場合でも、かなりの利益を挙げることができる枠組みだったことは、事実で、FITバブルを作ってしまった。

A君:ドイツの例がしばしば紹介されていますが、ドイツでは、一旦建設してしまえば、発電コストがゼロに近い再生可能エネルギーが、自由な市場で最初に取引される電力になるのが当然です。となると、既存の電力会社は、自分達のビジネスが継続できないことに危機感を当然持つわけです。

B君:日本の場合だと、メガソーラーの好適地であるのは九州だけれど、最初に音を上げたのが当然、九州電力だった。

A君:ということで、最初のポイント(1)FIT(固定価格買取制度)という制度による、再生可能エネルギーの推進が正しかったのか。これに対する答えは、「ほぼYes」再エネ導入は、とにかく太陽光から始まることは、外国の事例からも当然だと言えるので、正当な取り組みであったが、国が思っていたより、事業者の悪知恵が上回っていた。

B君:ただ、日本の太陽光発電のコストは、他の国に比べるとどうにも高止まりをしている。これが変わらないのが失敗だったか。しかし、国産のパネルは価格競争力が無いことが明らかになってしまったので、パネルが外国から入ってくる製品だけになると、かなり下がるのでは。このところ、日本の太陽電池メーカーは生産量を落としていて、日本製が完全にゼロになる日も近い。もう太陽電池のように簡単な製品は、中国製で良いという時代になっている。しかし、日本ではなぜか、日本製を売っている販売店が多いのだ。しかも、日本には、パナソニック、シャープ、京セラ、などなど、未だに太陽電池メーカーの数が、それも伝統と格式のあるメーカーが多いのだ。

A君:パネルだけではダメで、インバーターが必要なのですが、これがまた国内だと高い。最終的には、マイクロインバーターという形式になるべきだと思っているのだけれど、いつになったら、新しい形式になるのでしょうね。

B君:日本の太陽光の市場は、まあ、日本での全般的な特徴だとも言えるけれど、やはり保守的・高品位で高価格維持指向

A君:日本のような国だと、というか、全世界で同じなのですが、再生可能エネルギーと言えば、まずは太陽光なので、FITがそれを優遇したのは、間違っていはいなかった。しかし、そろそろ、次のステップに転換しなければならない、ということだと思います。

C先生:まさにそうだろう。その次のステップがどのようなものなのか。それを共通認識にしなければならないだろう。まず、電力会社、発電会社と送電会社に別れることになるが、「再生可能エネルギーの大量導入の推進」は、どこまで電力会社の責務なのか。

A君:その責務は、ある程度明らかで、電力の二酸化炭素排出原単位を0.370kg-CO2/kWhまで下げること。これが、2030年のノルマですね。

B君:そのノルマ実現のための、もう一つのノルマが原発の再稼働で20〜22%の電力を供給すること。再生可能エネルギーで、22〜24%の電力を供給することと二つのノルマがあり、これなしには、0.370という数値は達成不可能。キーワードは、毎回言うように「44%がゼロ炭素電源」

A君:コストばかり考えて、石炭発電所を新規に大量に作る方向だと、その44%は達成不能になりますね。

B君:電力コストは、それほど大きな問題なのか、ということだ。そのあたりの国民感情がどうなのか、エネルギーというものの重要性は、東日本大震災の後の計画停電を経験して、充分に理解したはずなのに、今や、忘れてしまっている。

A君:エネルギーが無いと、”命の次に重要なスマホ”の充電すらできない。災害時の非常時用に、中古の太陽電池パネル一枚にマイクロインバーターを付けた簡単な設備を、マンション居住の場合であっても一家に一台持つことが不可欠なのでは。それで、100V100Wぐらいの出力が出れば、スマホなら充分に充電できるし、小さな蓄電池を持っていれば、夜にも役に立つ。

B君:災害対応は、今後のエネルギー供給シナリオにとっても、重要な要素だ。特に、日本のように、災害の発生を考慮することが最低の条件である国では。

A君:太陽電池+蓄電池を、次世代の再生可能エネルギーの主力にしなければならないのでしょう。電力会社に、蓄電池なしの太陽電池を前提とした電力網の整備を義務化したら、電力会社が潰れて逆効果。

B君:そもそも現時点でも、夏の全発電量のピークは、真っ昼間になった。そして、電力会社からの電力供給のピークは、夏の夕方になった。電力会社としては、夕方から夜間の電力料金を高くするのが当然の対応になっている。

A君:となれば、太陽電池で昼間に発電をして、それを電池に貯めて、夜にはそれを使って、夜の高い電力料金を避けるということが賢いことになる。

B君:電池を蓄電だけの目的で買うのは、結構もったいない。今後、すべての車は電動系になって、最低でも20kWhぐらいの電池を積むことになるだろう。すでに、テスラの最大の電池は、なんと100kWh。もしもこれを日本で買って、200Vの家庭用電源から充電すると、満電になるのに35時間ぐらい掛かるが。いずれにしても、車は、95%は止まっているものなので、そのバッテリーを活用するのは悪くない。

A君:となると、V2H(Vehicle to Home)を早急に普及させることが、2030年までの対策だということになりますかね。

B君:かなり時間が掛かるだろうな。標準化がどのような枠組みで進むかによるけれど、合意形成には時間が掛かるのがこの国なので

A君:太陽電池の設置場所が無いという話が、日経の記事には出ていて、もはや条件の良いほとんどの土地には、太陽電池が設置されてしまったとのこと。すでに、有望スペースは少ないとのこと。

B君:それはそうなのだけれど、これからは、メガソーラー専業という考え方よりも、地域になんらかの形で溶け込むという方法によって、太陽電池の設置を増やすことになるのではないだろうか。まずは、条件の良い家屋の屋根に100%載せ、電池と組み合わせる。それに加えて、例えば、農地に太陽電池と言えば、太陽光を遮ってどうするのだ、と言われるものの、作物によっては、共存が可能ではないか。例えば、土地の面積の30%分の太陽電池を設置するといった方法で、生態系・農業との共存を目指すとか。

A君:現実的には農作業用の機械との両立が不可欠なので、大規模な普及は難しいとは思いますが、まあ絶対に不可能という訳ではない。農家の自家用の作物を生産する農地であれば、言い換えれば、簡単な手押しの耕運機でなんとかなる程度の面積なら。充分に実現可能なのでは。自宅の屋根とそのような農地に設置すると、まずまずの稼ぎになりうるのでは。

B君:ということは、大規模ではなくて、それこそ、30kW程度以下の太陽電池について、電池との併設を条件にかなり高いFIT価格を設定し、電池としては、自家用EVの電池で良いとでもすれば。

A君:こんな方法で、電力網との共存を考えるのが、今後の方向性でしょうね。ヨーロッパの送電網の充実度をみれば、勿論、直流幹線網を含めた送電網の格段の強化が不可欠であることは間違いないでしょうけど。

B君:2050年にエネルギーの自給率を50%に高めるぐらいの思い切った目標を掲げても良いと思う。化石燃料を輸入すると、自国でCCSということになって、日本では余り現実的でないということになれば、ロシアのサハリンからのCOゼロ電力を輸入といったことも考えなければならない。また、北海道と東北西海岸の風力発電は、大きなポテンシャルがあるので、北海道と東北の風力による電力を、太陽光以外の自然エネルギーに余り恵まれていない西日本に送るためには、本州を縦断する、場合によっては、高速道路上の電気自動車に電力を供給するためも兼ねて、高速道路に設置される直流幹線網を設置することが必要かもしれない。

A君:そのあたりは、送電会社がそれなりに儲からないとやれない。こんなことを考えると、なにがなんでも電力自由化というのが正しいシナリオだとは思えなくなるのです。まずは、もっと戦略をしっかり構築して、それに必要な費用は、しっかりと儲けることができる電力会社にすることが、優先順位のまず第一なのかもしれません。

B君:少なくとも、通信網の充実と確実なエネルギー供給とどちらが重要なのか、と言えば、圧倒的にエネルギー供給なのだけど、日本の電力企業は、消費者が全く意識しないぐらい高品位の「停電をしない電力の供給」を目指しているものだから、これが逆効果になっていると思う。

C先生:まさにその通り。日本の電力系統の安定性は、ヨーロッパよりもアメリカよりも良いだろう。しかし、自然エネルギーで電力の大部分を供給するということになると、日本の国土の狭さと山岳地帯の多さ、さらには、急に深くなる海が圧倒的なネガティブファクターになる。地熱は、世界第三位のポテンシャルであるが、やはりそれほど頼りにはなりそうもない。先程すでに話題になったけれど、日本人としては、エネルギーの自家供給ができない国に住んでいること、エネルギーはしたがってほとんど輸入で、自給率は6%ぐらいしかないこと、そして、東日本大震災の後の計画停電がどれほど大変だったかを思い出す必要がある。エネルギーをほぼ自給すれば、どれほど安定した国になるか。世界で、日本、台湾、フィリピンなど、そして、東南アジア全般といった国がエネルギー自給の難しい国だ。ドイツばかりみて、エネルギー供給の議論をするのではなく、この国の状況をまずはしっかりと把握して、自然エネルギーの導入が世界でももっとも難しい国の一つであることを認識して、今後の方向性をしっかりと考えるとことを習慣にするぐらいのマインドを持たないと、日本のエネルギー問題は解決に向かわないと思う。その意味で、毎月1回、30分間程度の意図的な停電がある国を作ることが、最大の教育効果を持っているように思えるのだ。当然、絶対的に停電不可なところには、自家発電・蓄電池を設置してからだけれど。実際に非常事態が必ず来ることを考えると、このような自家発電設備のチェックのためにも、定期的な停電があることは有用なのだ。福島第一原発にはICという非常用装置があったが、運転訓練が全く行われなかったために、充分に活用できなかったという教訓を活かすべきなのだ。

A君:それでは、かなり異例ですが、最後の最後に自分で述べたポイントの復習し、個人的答を出します。
(1)FIT(固定価格買取制度)という制度による、再生可能エネルギーの推進が正しいのか、あるいは、正しかったのか。
 答:太陽光以外に、実現可能な再生可能エネルギーが無いという学習をするためのツールとして、極めて有用であった。
(2)そもそも太陽光というもっとも厄介な性能をもった発電をこれほど優遇したことが、正しかったのか。
 答:実現にもっとも近い太陽光の厄介さを実感するために、極めて正しいアプローチであった
(3)電力会社は、不安定な自然エネルギーにもっと寛容になるべく、電力網を強化すべきなのか。
 答:自然エネルギー単独では、問題は解決しないので、電力のロシアからの輸入などを視野に入れて、適切なレベルで強化を続けるべきといった全く別の観点からは多分イエス。
(4)太陽光発電を推進してきた発電事業者側の責任は何だったのか。
 答:強欲さを世間に印象付けることが最大の役割で、それを果たすことが責任だったとすれば、実によくやった!!
(5)エネルギー自給率が非常に低いこの国だが、将来、エネルギー供給は大丈夫なのか。
 答:化石燃料を水素にし、そしてアンモニアなどの形で輸入する方法は、必要であるが、かなり副作用も考慮しなければならない。電力輸入も非常に大きな問題。となると、自給率をまずは太陽光+蓄電池で高めることが必須か。
(6)この問題を考えるときに、パリ協定で背負っている日本の約束との関係をどのように考えるべきなのか。
 答:結局は、再生可能エネルギーをどう考えるか。太陽光発電以外に強力な再生可能エネルギーは、昔からある水力ぐらい。最近、バイオマスも増えているけれど、熱利用までしっかりやり、かつ、カーボンニュートラルのCO2利用まで考えないと無駄遣い。地熱、風力、海洋エネルギーなどはある量が可能というレベルに留まる。となると、太陽光発電と、その欠点を補う電池とのコンビをトコトン追求することになる。これが実体。
(7)このままで、パリ協定の日本からの貢献(2030年)の目標のどの部分がもっともキツイのか。
 答;再生可能エネルギー+原子力で44%という数字がキツイ。各個人がいくら太陽光+蓄電池に払うか。その覚悟次第だが、それがキツイ。原発の再稼働で、その経済的負担を下げることを合理的だと思えるかどうか、これがキツイ。
(8)2050年のCO2の排出を80%削減などという目標をどうやって達成するのか。
 答:2030年と同じ方針に加え、電力輸入とアンモニア輸入を目指すことか。
(9)そもそもエネルギーという現代生活に絶対的な必需品であるものに対して、一般社会の理解は充分なのか。
 答:全く不十分。ときどき予告付き停電をするという義務を課すべき。
(10)エネルギーとは何か、と、その必要性をもっと学校教育に取り入れるべきではないか。
 答:その通りだが、予告付き停電の実践が最良の学習法だろう。
B君:今日のこの答は、A君の個人的見解だが、A君が本気で書いたものではないことを祈る。

C先生:最後に一言。本Webサイトの本年2月26日の記事も、是非参照していただきたい。
http://www.yasuienv.net/RENikkei.htm