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  良いリサイクル・悪いリサイクル  12.04.2005
     「地球だい好き」NHKのフォローアップ
    



 NHKの番組、地球だい好き 環境新時代の収録をやった。放送予定は、12月10日 11:00からである。関西地域は別スケジュールらしいが。

 今回のテーマは、「夢の素材がゴミになる − FRPのリサイクル」である。もちろんご存知のこととは思うが、FRPとは、Fiber Reinforced Plasticsのことであり、日本語だと繊維強化プラスチック。繊維としては、ガラス繊維を使ったもの、カーボン繊維を使ったもの、さらに、ケブラーなどの合成繊維を使ったものもある。

ビデオその1:
 広島発で、瀬戸内海には、FRP製の船の墓場のようなところがある。
 瀬戸内海に面した広島県は、マリンレジャーが盛んな場所。しかし、その裏で今、不法投棄された廃船が問題となっている。不法投棄を減らそうと、海上保安庁もパトロールを行っている。見つけた廃船の持ち主に処分を呼びかけようとするが、3年前まで登録制度のなかった小型ボートは、持ち主を特定できない。去年度、瀬戸内海で不法投棄された廃船は600隻にも及ぶ。廃船が多い原因は、その処理費用の高さ。とりわけ、破砕に費用がかかる。と言うのも、船体に使われているのが、丈夫なFRPだからである。50年ほど前にアメリカからやってきた素材、FRP。通常のプラスチックより3割ほど強く、値段も安いことから"夢の素材"ともてはやされ、急速に日本社会に普及していった。しかし、普及に伴い、そのごみの排出量も右肩上がり。頑丈ゆえ、リサイクルされにくいFRPは、その多くが埋め立て処分されているのが現状である。
 そこで、FRP製造メーカーが作る業界団体が立ち上がった。FRPの中間処理プラントを作り、特殊な刃で細かく破砕。破砕されたクズはセメントの原燃料として、セメントメーカーに引き取ってもらっている。しかし、埋め立てに比べ、処理費用は10円ほど高くなる。コストと有効利用の狭間で、頭の痛い状態が続く。しかし、廃FRP処理は決してやらなくてもいいものでもない。廃船に悩む瀬戸内海でも、ボートメーカーがセメントへの再利用ができるプラントの建設が予定している。

ビデオその2:
 ある化学企業は、FRPのケミカルリサイクルを開発しつつある。
 FRPから再生FRPを作る。この技術を開発したのは茨城県の化学総合メーカーだ。1000種類の中から選びぬいた薬品とFRPを反応機に入れる。200度の温度で12時間加熱すると、樹脂とガラス繊維に分離できる。こうしてガラス繊維のリサイクルが可能になった。しかし問題が。そのままでは、ガラス繊維に溶けた樹脂がまとわりつき、再利用に使えない。このシステムの開発を任された研究チームの北嶋さんは、頭を痛めた。「遠心分離機を使えば、分離はできる。しかし、実用化まで考慮した場合、コストが高くなる。よりリサイクルを広めるためには低コストで抑えなければ。」そんな折、北嶋さんの自宅で洗濯機を買いかえることに。北嶋さんはその脱水機能に目をつけた。さっそく実験開始。家庭用の洗濯機でも十分使えることが分かった。さらに、再生素材でバスタブも作ってみた。強度実験を繰り返し、再生素材を3割ほど加えた場合なら、純正FRPの強度と同等であることもわかった。今後、プラスチックの方も再利用のためのプロセスを開発し、再生FRPの商品を本格的に開発していく予定。


C先生:本日の問題点は、大きく分けて2点である。

(1)FRPのように経済的な理由で普及した製品で、その後の廃棄段階で問題になるものに対して、どのような対応を行うべきなのか。開発されつつあるFRPのリサイクルは、どのように評価すべきなのか。

(2)もっと一般的な見地から、プラスチックのリサイクルをどのように評価すべきなのか。

A君:(2)の問題については、これまでもかなり考えて来ているものの、なかなか本来の回答が見つからない。

B君:真面目に考えるとなかなか難しい問題だが、まあ、継続的に考え続けることが必要なのだろう。

C先生:それでは、最初の問題。(1)FRPのような廃棄段階で問題になる製品について、リサイクルを含めてどのように考えるべきか。

A君:一つは、製造者責任。使用者責任。作った人、使った人が、製品の最終段階である適正な廃棄まで責任を持つべきである。これが原理原則。

B君:FRPにも様々なサイズのものがあるが、もちろん、大型になるほど、厄介なことが起きている。夢の素材、夢の製品が、FRPだけでなく厄介者になるのは、意外と多い。それは、欠点が無いということの要素に、耐久性が高いという性能が含まれている場合が多いからだろう。耐久性がある製品は、破壊されにくいからであって、FRPはその代表例の一つ。

A君:軽量で強度が強いから使われているのだから、まあ、厄介者になるのは、最初から運命付けられていることだった。

B君:ビデオ1にもあるように、FRPの処理は、なんとか処理工場まで運搬し、そこで、数cmまで破砕して、破砕くずは、セメント原料として使う。セメント工場としては、処理費を貰えば、なんとか処理できる。

A君:粉塵がでるから、その有害性には注意を払う必要はあるのですが、アスベストに比べると、ガラス繊維の直径は10ミクロン以上あって、相当太い。肺の奥にまで到達するサイズだとは思えないけれど、やはりこの手の塵が健康に良いとは思えない。多少の注意が必要。

B君:船の不法投棄が起きること自体は、法制度の問題だ。

C先生:やっと平成14年の4月から20トン未満の小型船舶の登録制度が開始された。漁船法に基づく漁船登録船は除外されている。長さが3メートル以上、あるいは、推進機関が20馬力以上のもの。推進機関を持っていない場合でも、長さが12メートルを超しているか、12メートル未満であっても、沿海区域を超えて航行したり、人の運送用に使われるものは登録が必要。

A君:どのぐらいの船舶が登録されているのか、と調べて見たら、大体次ぎのような感じでした。余り親切な説明がないので、違うかもしれないのですが。

平成17年1月から10月の新規登録

 水上オートバイ  3230隻
 プレジャーボート 2544隻
 プレジャーヨット   76隻
 その他       597隻

B君:漁船はどのぐらいあるのだ。

A君:平成16年度の在籍船というデータが有って、例えば、こんな感じ。

 プレジャーボート 25万5153隻
 漁船          5654隻
 兼用船       6万3118隻

B君:プレジャーボートが25万隻あって、毎年3000隻しか登録されないというのは妙ではないか。100年分の在籍があることになる。

A君:一般に、船の寿命は25年ぐらいと思われ、大体FRP自体の歴史が50年程度でしかない。そのあたりは、今のところ不明。

B君:大きさ別には?

A君:同じく平成16年度のデータで、

 3m未満   6万5527隻
 3〜5m   7万3017隻
 5〜7m   11万5598隻
 7〜10m  4万3749隻
 10〜15m 1万5803隻
 15〜20m   1080隻
 20m以上     150隻

B君:小型車の規格が4.7mまでだから、大体自動車よりは大きいものが多いということになるか。

C先生:現状の制度でも問題点があるとすれば、廃棄の費用をどのように誰が負担するか、その規定が無いということだ。しかも、輸送よりも、破砕処理などに費用が掛かるということだろう。

A君:複合材料というものは、もともと壊れにくいものを作るための方法なので、壊すのは大変。しかも、ガラス繊維なので、鉄よりも硬いから鉄のはさみで切る訳にも行かない。ガラスは簡単には溶けないので、バーナーで切るのも難しい。

B君:セメント原料へ、という考え方は、まあまあ妥当なものなのだが、理想的には、スイッチを入れると自動的に小さく砕けるような材料を開発できれば、なんだけど。そうなれば、運んで、スイッチを入れて、あとはセメント製造プロセスに投げ込む。

C先生:夢の話は止めて、次の話題は、今回放映された日立化成の開発をどう評価するか、ということだ。

A君:FRPに使用される不飽和ポリエステル樹脂は、溶解しにくい。超臨界水や、グリコール類などで溶解する方法は無い訳ではなかったのだが、高圧が必要だった。しかし、今回の日立化成の方法は、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなるアルコール系の溶剤を使用して、触媒の存在下で200℃以下程度の温度で、窒素雰囲気ではあるが1気圧で溶解できる。

B君:ガラス繊維、充填剤、分解用の触媒などが回収できるようだが、現時点では、ガラス繊維の再利用に限定されていて、プラスチック部分の再利用は、まだまだ今後の課題のようだ。燃料にしてしまえば、それなりに良いのかもしれないが。

C先生:どう評価する?

A君:FRP用のガラス繊維は、本当は無限大の長さがないと駄目なのだが、回収されるものは、当然有限長なのでやはり、元に戻るという訳ではない。しかし、全く使えないという訳ではなく、FRP用として使用できる可能性は示している。

B君:やはりLCA的なデータが欲しいところだ。プラスチックの場合の、特に、カスケードリサイクルの評価は、なかなか難しい。偽木のような製品は、廃プラスチックを再生利用しなければならないから作られる製品で、もともとどうしても必要だから作る製品とは違う。それは、容器包装リサイクル法の欠陥を突いて処理費を獲得するために行うリサイクル。

A君:図1をそんなつもりで作ってみました。ここで、リサイクルの価値とは、リサイクル品の価値に最終処分の回避あるいは延期の価値の和から、投入資源・エネルギー・労働力のコストを引いたものと考えていますが。


B君:まあ、そんなものかもしれない。

A君:容器包装リサイクル法という枠組みがあるために、無用に高い処理費用が払われていて、そのために成立しているリサイクルがあるのは事実。

B君:そのような無意味なリサイクルは、止めた方が良くて、最終的には、LCA的な検討を行う必要がある。

C先生:悪いリサイクルを見分けなければならない例だ。現時点で、消費者の手を経たプラスチックフィルム類のマテリアルリサイクルは考えない方が良いだろう。食べ残しの食品残渣をリサイクルして堆肥を作ることも、かなり怪しい。食品リサイクルも、いつでも同じ原料が同じように得られる場合ならば良いのだが。例えば、廃油のように。
 ただし、毎回言うように、リサイクルそのものが悪いという訳ではない。良いリサイクルも多い。

A君:確かにプラスチックのリサイクルは難しい。その理由を様々な観点から考えたのですが、やはり、プラスチックの資源というものが石油であって、エネルギー源もこれまた石油。すなわち、単一の資源消費を考えれば良くて、しかも、最後には燃やせばよいという逃げ道がある点が、問題を簡単にしているようで、実は難しくしている、という解釈なのです。

B君:うーーん。そうかもしれない。紙のリサイクルだと、エネルギーを多少犠牲にしても、森林資源を保全するために、紙はリサイクルすべきだということが正当な理論になりうるのだが、プラスチックの場合だと、それをリサイクルするために、多くの石油を使うことは意味が無い。もともと同じものだから。

C先生:金属のリサイクル、紙のリサイクルとプラスチックのリサイクルがもっとも違うのは、そこだな。

A君:ただし、プラスチックは石油だから、といって、なんでも燃やしてしまえば良い、というのでは話にならない。

B君:プラスチックのリサイクルの場合には、価値というものを真剣に考慮しなければならない。

C先生:まあ、その通り。今回のFRPのリサイクルの意義は、と再度問われれば、これらのLCAデータと再生品の価格などのデータが出てこないと本当の意味での評価はできないということになる。
 しかし、一言だけ言いたい。水平リサイクル、すなわち、FRPがFRPに戻るのであれば、それはそれなりに意味がある。それは、同じ企業なり業界がリサイクルされた再生材料を使用する責任を持つことによって、機器とか材料の設計が変わる可能性があるからだ。

A君:よく言われていますが、家電製品は、家電業界がリサイクルをやっているので、分解のための設計が製品設計段階からなされるようになってきた。例えば、使用するプラスチック部品の組成をできるだけ同じものにして、そのプラスチックを再生するとき、不純物が混じることによる劣化をできるだけ避けるような材料選択も行われるようになった。

B君:これまでは、製品としての性能向上とコストぐらいを考えて製品設計が行われてきたのが、自分たちで分解して、再生材料も自分たちで有効活用しなければならないとなると、最初から分解過程を考慮した設計をするのが当然ということになる。現時点で、家電製品とパソコンぐらいがこのような条件を満足していて、それ以外のリサイクルはまだまだ駄目だ。

A君:家電と類似していると思われがちですが、自動車のリサイクルは、実は、自動車業界がやっている訳ではない。昔から解体業者があって、そこが解体作業をやっている。だから、自動車業界は、リサイクル設計とか言うものに対して家電業界ほどの切実さが無い。

B君:建設業界はもっと切実感がない。

C先生:もう一つ考慮が必要なことがある。自動車の場合に限らないが、現時点で、水平リサイクルが極めて重要であるということが合意を作れないことが問題。それは、「鉄」というカスケードリサイクルの見本みたいなものがあって、業界全体として水平リサイクルが重要だという合意が出来にくい現状があるのだ。

A君:自動車の主成分は鉄ですが、もしも鉄を水平リサイクルしなければ、となったらそれは大変でしょう。

B君:自動車業界が鉄を水平リサイクルして、自動車用の再生鋼板を多少でも使うことが義務化されたら、最終的な鉄に混じり込むであろう銅をできるだけ使わないような設計にするだろう。多少コストが上がっても。

C先生:このように考えてみれば、水平リサイクルの意義は大きいのだ。今回のFRPも、曲りなりにFRPに戻っている。もしもこのような水平リサイクルが多少でも義務化されたら、例えば、FRPの5%は、再度FRPとしてリサイクルしなければならない、といった法律的な枠組みができれば、材料設計・製品設計から考え方が大きく変わる可能性があるのだ。より分別しやすく、見分けやすく、効率的に回収できるように。

A君:ただし、この義務量は、材料によって変えるでしょうね。

B君:まあ当然。ペットボトルであれば、ペットボトルとして全体の20%は水平リサイクルされること。発泡スチロールで30%ぐらいでどうだ。ポリエチレンとポリプロピレン類なら、ケミカルリサイクルに回して、まずは5%ぐらいか。ガラスであれば、ビンで70%ぐらいか。板ガラスだと10%ぐらいが妥当なところだろうか。アルミ・銅も70%ぐらいで良いか。鉄だと、製品によって変える必要がある。自動車の場合で、10%ぐらいでよいのでは。スチール缶だと15%ぐらい欲しいところ。

A君:鉄屋が聞いたら目を回して怒り出しそうな数値。

C先生:リサイクル話をやっていると、どうしても鉄屋さんとは、意見が一致しない。