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  食の安全に関する意見交換会  12.08.2003



内閣府に食品安全委員会ができて、農林水産省と厚生労働省が共同戦線を張るようになった。 さらに、食品衛生法も改正されて、なんとリスクコミュニケーションを行うことになった。

そのための表題のような会がアクロス福岡にて開催され、そこで、環境と食に関して、主として化学物質のリスクに関する講演を行った。


C先生:ということだった。まず、プログラムを紹介しよう。

食の安全に関する意見交換会

1.開会 13時
2.食品の安全確保に向けた取り組み
(1)食品安全委員会の取り組み
  内閣府食品安全委員会委員 見上 彪
(2)新食品衛生法の概要
  厚生労働省大臣官房参事官 外口 崇
(3)消費・安全局設置から4ヶ月の取り組み
 農林水産省消費・安全消費者情報官 姫田 尚

3.食品添加物を考える
   千葉大学名誉教授   山崎幹夫

4.環境と食のリスク 化学物質はどのぐらい危険か
   国連大学副学長   安井 至

5.意見交換会
 「パネリスト」
   上記講演者に加え
 (社)全国消費生活相談員協会九州支部前支部長  八木美智子
 明治乳業(株)取締役技術部長             馬場良雄
 日本食品添加物協会専務理事             福江紀彦
 (独)農林水産消費技術センター 門司センター所長  坂本健一

6.閉会 17時

A君:かなり盛りだくさんですね。

B君:30分の講演というものは、結構危険。十分に話ができないために、誤解されかねない。

C先生:実際、30分はかなり苦しい。山崎先生の話は面白かったが、やはり45分掛かっている。そして、最終的に、30分時間が伸びてしまった。コミュニケーションの方法論としてもっとも重要なことが、時間をゆったり掛けることなので。

A君:これが配布資料ですか。それにしても紙の使用量が多いですね。特に、省庁のものが。

C先生:これまで様々な省庁に関連してみて、面白いことに環境省の資料がもっとも多いような気がしていたが、どうも厚生労働省も紙を配布しすぎ。省庁でもISO14001を取って欲しいものだ。

A君:しかし、厚生労働省の資料は参考になりますね。まあ、情報は本来無形のもので、紙を必要としないのですがね。

B君:さて、概要をまとめてみるか。
 新食品衛生法の概要だが、平成5月30日に公布されていて、目的としては、BSE問題や偽装表示問題などを契機とする食品安全に関する不安や不信を解消すること。

A君:要するに、食品を完全に安全することではなくて、不安や不信を解消することが目的。

B君:それには、勿論、安全性も高める必要がある。そこで、

*国・地方公共団体および食品事業者の責務を明確化。
*農薬などの残留規制をポジティブリスト化
*食品安全委員会を内閣府に設置し、厚生労働省と農林水産省の連携・協力体制

A君:農薬のポジティブリスト化というものは大きな流れですね。これまでは、ネガティブリストといって、使ってはいけないもののリストを作るという考え方。今回は使っても良いものをリストに書いて、それ以外はダメという考え方に変えるということ。

B君:農薬は、229種の農薬と26種の動物用医薬に残留基準が決められていたが、国際的には、700種もの農薬が流通しているらしい。となると、450種類もの農薬が野放しということになってしまう。

A君:食品添加物に対して、ポジティブリストの考え方を強化したようで。

B君:添加物については、平成7年に化学合成品についてだけではなく、天然添加物にも拡大して指定する制度になった。しかし、既存添加物とよぶ489品目、これは平成7年に使用されていた天然添加物なのだが、指定制度の例外として引き続き使用可ということになった。

A君:既存添加物という言葉ですが、かなり経験を積んでいるものならば、それなりの感覚はあるはずですよね。

B君:それでまあ大丈夫なのだが、安全性に問題があると判明したもの、さらに、なんらかの理由によってすでに使用されていないものについては、既存添加物の名簿から削除を可能とすることになった。

A君:勿論、削除された添加物は使用禁止になるのですよね。

B君:そういうこと。

A君:これまでの経験が活かされるのなら良いのですが、リストにあるということで、経験を無視して使用するという危険性を回避する。

C先生:この考え方は、化学物質における「既存化学物質」についても適用可能のように思える。

B君:さらに、食品という名称でありながら、被害が出てしまった健康食品については、「特殊な方法により摂取する食品」についても販売禁止ができることになった

A君:あたり前ですが。

B君:それに加え、健康の保持増進効果などについて虚偽・誇大広告の禁止が決まった

A君:使用者の経験談という形を取るやり方、さらに、バイブル本と称する本と連携を取る販売法も問題ですよね。

B君:それも対象になった。

A君:マイナスイオン、除菌イオンなどについても、法律を作って欲しい。すぐに。

B君:これはどの省庁の所管だ?

A君:難しい。

C先生:すぐには無理だが、やはり、内閣府に健康機器安全委員会を作るのではないか。

B君:話を元に戻して、仕組みの話。これは、平成14年9月7日にできた法律だが、「包括的な輸入・販売禁止制度」なるものがある。これまで、輸入食品に違反があっても、個々の食品についてのみ対処が可能だったが、それでは不十分。特定の国の特定の食品について、検査をしなくても包括的に輸入・販売を禁止できるような仕組みを導入した。

A君:使い方が難しそうな法律ですね。

B君:まず、検討を開始する条件として、違反食品が相当数発見されるか、健康被害が発生するか、あるいは、原発事故が起きて放射能汚染が生じるとかいったことが条件。

A君:まあ妥当。

B君:そして、生産地・製造地の食品衛生上の管理状態を調査・検討する。次に、人の健康を損なう恐れの程度などを総合的に勘案し、もしも、食品衛生上の危害の発生を防止するため特に必要があると認められる場合には、薬事・食品衛生審議会の意見を求め、場合によっては輸入・販売を禁止することができる。

A君:これまた妥当のように思えますが、WTOなどは何か問題にしそうな気もします。

B君:そして、法律とペアだが、罰金の強化もかなりのもの。
 有害食品の販売や指定外添加物の使用などは、これまでは、3年以下の懲役、300万円以下の罰金だった。今回の改正で、個人への懲役と罰金は同じだが、法人の場合には、1億円以下の罰金が追加された。

A君:不法投棄なみになった。

C先生:まあ、大体はそんなところだ。最後のパネルディスカッションだが、ここから参加されたパネリストが3分間程度の意見を述べることから始まった。

パネルディスカッション

八木美智子氏:行政の方向が変わってきた。かなり機敏な対応ができるようになってきた。歓迎すべき方向である。

馬場良雄氏:HACCPシステムを導入しているところで不祥事が起きて、それ以後、信頼を回復することに注力している。年間10〜15万件の問い合わせがある。農場から食卓まで、安全な食を届けられるように配慮。

福江紀彦氏:日本食品添加物協会には、1030社。天然添加物の規格化、添加物の自主基準作成その認定などをやっている。そのほかにも安全性の広報活動を行っている。

坂本健一氏:公開フォーラムを、一般向け、企業向けに行っている。指導監督が業務であり、立ち入り検査などを行う他、残留農薬や重金属の分析を行っている。今後とも生産者・流通・消費者の架け橋の役割を果たしたい。

すでに受けた質問に対する意見交換

食品添加物について、安全性に関する認識のギャップがある問題

外口:安全率などについて、分かりにくさがあるのは事実。食品添加物については、現在、1日で様々なもの全量で100mgぐらい摂取しており、ADIで換算すると、大体1.2%。その中で最大の摂取量はソルビン酸である。

質問:外国からの輸入品中の食品添加物は制御できるのか。

外口:検疫所は13箇所あるが、神戸と横浜で集中的に分析を行っている。検査体制は強化された。

安井:コミュニケーションの問題かとも思うが、安全性に関する認識のギャップは、構造的に作られているということを理解する必要がある。すなわち、無添加食品を販売するためには、添加物の有害性を強調した広告を出すことが有効である。無農薬についても同様のことが言える。
 この問題を解決するには、方法論は2つ。
(1)市民として、情報というもののもつ特性を理解すること。すなわち、新聞は衝撃的なニュースだけを選択肢、テレビはエンターテインメント性のある話題のみを取り上げ、そして、商品に関する情報は、利点のみが過大に伝達され、欠点は伝達されない(マイナスイオン・除菌イオンがその典型例)。
(2)直接的な情報伝達を重視する。省庁も、本当に重要な情報の伝達は、新聞紙面を買い取って行うべき。市民は、省庁によるインターネット情報を重視すべき。


リスクコミュニケーションについて

外口:現在試行錯誤中。アンケートをやっているのでよろしく。なかなか難しい。

姫田:全国行脚中。消費者中心のコミュニケーションを試みているが、勿論、利害関係者全員のためのものだ。

食品安全行政について

外口:改正されて5ヶ月目に入った。厚生労働省と農林水産省の連携が良くなった。牛のトレーサビリティーということを実行するとしても、農水省だけでは、焼肉屋までの情報は無い。

姫田:二週間に1回の意見交換会をやっている。

ここから、フロアーからの質問

質問者:食品を買うとき、どうもストレスが大きい。どこ産か、など注意を払っている。国として新聞広告を出すなど、コミュニケーションを図って欲しい。インターネットを見ることができないので。

姫田:「食育」=食に関する教育を担当している。賞味期限が切れたものを食べても大丈夫かなどといった質問が非常に多数来るが、それは消費者が自分で判断すべきことだ。

安井:選択するのにストレスを感じる方が、何も考えないで、食品を食べてしまうことよりも健康に悪い。

質問者:リスク分析に基づく方法になったのは良い。これまで食は安全だという神話があったように思う。食育も重要。ただ、事業者の責任は大きい。

見上:フードチェーンのあらゆる当事者が努力して、信頼性の回復に努めたい。


質問者(NPO法人):予防の方向性が出たのは良いが、いい加減な業者が多い。今回の主要な方針である自主管理では抜け落ちが出やすいが、保健所は足腰が弱い。リスクコミュニケーションは消費者と事業者が直接やるのが本来。

姫田:あらゆるレベルでのリスクコミュニケーションが重要。

外口:自主管理が抜け落ちを生むという指摘であるが、事業者が責任を持つのが最大の原則。自主管理だから何もやらないといった企業は世の中から排除されるだろう。

馬場:自主管理を徹底的にやるのが企業の義務だと認識している。

安井:自主管理という方法は、もっとも行政コストが低い。しかし、自主管理をやっているという報告の義務化ぐらいは行うべきなのではないか。

質問者:有機栽培と無農薬栽培、無化学肥料栽培では、無農薬栽培がもっとも価値があるように思われてしまっている。今後、特別栽培と呼ぶようだが、20回も農薬を使っていても特別栽培になるといったことでは意味が無いのではないか。

姫田:名称の問題。特別栽培では、地域の標準の1/2以下を言う。有機栽培にしても、特別栽培にしても、その食品が安全だという意味ではない。残留農薬があったとしても、安全なレベルというものがある。これらの名称は、消費者の好みを反映するために実施していることである。

質問者:それぞれの農薬の無害のレベルだといっても、複合的に摂取すると危ないということはあるのではないか。同じことは、食品添加物についても言えるが。

姫田:混ぜると危険という農薬があるが、それは、発火するとか、有害ガスがでるとかという意味であり、食の安全とは無関係。

安井:有害物に加算性がある場合もあるが、掛け算で利くというケースは無いと考えてよい。

質問者(生協関係):地方公共団体にも責務ができたが、対応が遅い。なんとかならんか。

外口:せめて、今年度中には監視計画を作ってもらえるものと思っている。いろいろなルートを用いて接触したい。

質問者:弱小企業が切り捨てられつつあるのは問題である。取り締まりを厳しくすると同時に補助金などを考えて欲しい。

坂本:マイナーな部分を見る目は重要。しかし、自助努力が重要。

姫田:補助金に対しては厳しい世の中になった。

パネルディスカッション終了


C先生:こんな感じだったがどう思う。

A君:現場に居た訳ではないので、感想といっても外れている可能性がありますが、まあまあの感じでは。

B君:絶対に安全な食を提供せよという感じではないことは分かる。多分、食品関係者が多くて、純粋な消費者が少なかったのではないか。

C先生:同様の感想をもった。そろそろ、完全ゼロリスクは無いということへの合意に向けて、離陸できる時期も近そう。

A君:しかし、補助金が欲しい、自主規制ではだめ、といった行政コストを無視した反応は未だにありますね。

B君:まだ、国に無限に金があると思っているのではないか。

C先生:そこが重要なところだ。狂牛病の対策費にすでに4000億円も投じられている。このような政策が行われていると、無限に金があると理解されても仕方が無いのかもしれない。

A君:これまで狂牛病については、従来の対策程度でも、日本では死者は出ない、出たとしても1名、と予測していますよね。その1名をもし救うことができたのだとしたら、1人の価値が4000億円ということになる。

B君:人の命を金で勘定するな、という批判が聞こえて来そうだが、実際、行政という立場では、そのような考え方を持たないと悪政が行われる。

C先生:輸入品のチェックにしても完璧に行えば、それは無限の経費がかかる。食に完全な安全は無い以上、やはり適切なところがどこか、市民社会全体の合意形成が必要なのだろう。