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 食料自給率をめぐって   08.08.2010
     



 食料の話。このところ、地球温暖化のせいだと確証があるわけではないが、異常気象が増えている。ロシアの干ばつで、小麦の収穫量が激減するようで、プーチン首相は、小麦の輸出禁止措置を発表した。期間は、今年の12月まで。

 結果として穀物相場は高騰したが、その後、世界に備蓄が十分であることが分かり、速やかに落ち着いた。

 このようなことが起きると、日本の食料(本当は食糧か?)自給率が低いということが問題になる。

 もう一つ大きな問題は、日本は「何で」食べるかという問題。すなわち、日本が寄ってたつ産業は何か、という問題がある。日本という国は、最低限、エネルギーは買い込まないとならない国である。となると、何かを売らなければならない。

 この話題は、2050年までに温室効果ガス80%削減の可能性を検討する委員会や研究会でしばしば議論されることである。未来のことゆえ、良く分からない。

 しかし、多くの委員は、2050年でも、日本はなんらかの製造業がかなりの役割を果たしているという考え方である。今後、中国はどうも自国産業だけでも行けそうだが、インドなどの途上国市場が立ち上がれば、日本流の心配りのある製品を求める層が広がるかもしれない。

 もしも製造業が日本という国の食い扶持を稼ぐというシナリオであれば、できるだけ早く、FTAを多くの国々と交わす必要があるということになる。

 FTAに対して、どうしても抵抗を感じる理由が、やはり食料自給率なのではないだろうか。要するに「何を」食っているか、である。国産品なのか、輸入品なのか。

 要するに、「何を」食うか。「何で」食うか。これらの話は、極めて関連が深い。

 これまで環境関係では、余り見解がブレていないつもりではあるが、自らの考え方を振り返ると、もっとも考え方がブレているのが、実は、この食料自給関係である。

 唯一ブレていないことは、「食料自給率を確保しようとしたら、エネルギー自給率をある程度確保する必要がある。現在の食料は、石油を食べているようなものだから」、である。それ以外は、どうもブレている。

 本来、FTAを実現するために作られたと考えられている農家の所得補償制度であるが、どうも、農水省は、このリンクを切ろうとしているようにも見える。

 そもそも、所得補償制度は、農家の生産性を落とすことを推奨している制度であるので、食料自給率から見ると逆の、単なる選挙対策のようにも見える。

 しかし、民主党は、食料自給率の向上を謳っている。

 ということで何が何だかよく分からない。

 このところ、何冊かの食料自給率関係の本を買い込んで、読み始めた。そして、インパクトの強い本から、このページでご紹介しようと思う。

 食料自給率に関しては、どうやら5種類ぐらいの立場があるようだ。まだ、確定できるほど勉強が進んでいないので、そのうち分類法も変わるかもしれない。
(1)農業最優先主義的=農業右翼的な考え方=食料自給率100%が理想。
(2)「食糧・農業・農村基本法」の存在を大前提とする考え方=食料自給率を徐々に高める=農水省関係者の生存策として重要。
(3)農業もやりようによっては、強いビジネスになるという考え方=自給率は意味が無い=ビジネスになる農業を行えば良い=野菜・果実などに集中し、コメ以外の穀物からは撤退すべき。
(4)農地などの管理を今とは別の方法で進めるという考え方=優良農地を決めて、そこでは農業をやる=農家が使いもしない農地にに固執しすぎるのは、農地高値買い上げを待っているからだ。
(5)食料自給率は政治的ツールである=政治家。



C先生:そんな問題意識で、農業関係、特に、自給率関係の本を何冊か読むことにしよう。紹介する順番は、やはりインパクトの強い順になる。最初のうちは、毎回1冊ということになるだろう。
 今回、取り上げたのは、

「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」、
浅川芳裕著、講談社+α新書、¥838、2010年2月20日第1刷


A君:この手元の本は5月10日発行の第6刷。結構売れているようです。8月2日には和書全体で100位以内に入ったのですが、7日現在、261位。いずれにしても、かなり売れている本であることは確実。

B君:そうなれば、アマゾンの読者評も多数あるはず、と思って調べたら、50件以上がアップされている。星5つが60%もあるが、やはり、ある一面からの解析であることに間違いは無いので、そこまで評価することはできない。

A君:この本の反農水省のスタンスがすごいですから、それに共感して星5つが多いのではと推量できますね。「官僚の悪行」などというコメントが多いですから。

B君:最低は星1つ。良く読めば、その人のコメントは、なかなかプロのものと思われる。

A君:評価をするのは確かに困難ですから、できるだけ、事実として書かれていることだけをまとめます。

B君:他の本と突き合わせを行って、正しいデータがどれかを判定する作業が必要なのかもしれない。

A君:最低限、FAOのデータあたりはチェックしてみたいところですね。

B君:日本の農業にどれだけの補助金が入っているのか、そんなデータは調べられるのだろうか。

C先生:まあ、内容をざっと紹介してほしい。

A君:目次です。
第一章 農業大国日本の真実
第二章 国民を不幸にする自給率向上政策
第三章 すべては農水省の利益のために
第四章 こんなに強い日本農業
第五章 こうすればもっと強くなる日本農業第六章 本当の食料安全保障とは何か


B君:著者、浅川芳裕氏は、月刊「農業経営者」の副編集長。大学での専門は農業ではなくて、カイロ大学では文学部東洋言語学科セム語専科に在学。しかし、中退。その後、ドバイでソニーガルフに勤務して、2000年から農業技術通信社に入社。

C先生:農業経営者という雑誌は、まさに農業をビジネスにすることを目指している人の本のようで、兼業農家が買う雑誌だとは思えない。しばらく前、この雑誌で環境科学の解説記事を書いていたことがある。

A君:気候変動などは、農業への影響が大きな話題ですからね。

B君:いずれにしても、真剣にビジネス拡大を目指す農業者が読む雑誌の副編集長。ということは、情報はかなり確度が高いと推定できる。

A君:第一章「農業大国日本の真実」ですが、事実を羅列したいと思います。

自給率を巡る国内の状況
*日本国民の9割以上が将来の食料事情に不安をいだき、食料自給率を高めるべきだと考えている(2008年11月内閣府世論調査)
*2008年、農水省は17億円もの予算を使って、自給率広報戦略を展開した。
*2009年、農水省は、自給率向上を目的とした3025億円の農業対策費を獲得。
*多くのメディアは、この動きを歓迎するコメントを出した。
*自民党福田内閣、麻生内閣も、自給率を50%まで引き上げる方針を発表。
*民主党のマニュフェスト(2009年版)でも「10年後に50%、20年後に60%、最終的には完全自給」を掲げた。
*メディアはその実効性を確認しなかった。

B君:次。
統計的な数値
*日米英仏独の食料輸入量の比較2007年
 1位米 747億ドル、2位独 703億ドル、3位英 535億ドル、4位日 460億ドル、5位 仏 445億ドル
*一人当たりの輸入量(日米英仏独)2007年
 1位英 880ドル、2位独 851ドル、3位 仏 722ドル、4位日 360ドル、5位米 244ドル。
*輸入食料の対GDP比
 1位独 2.6%、2位英 2.4%、3位仏 2.2%、4位日 0.8%、5位米 0.6%。

A君:この数値はその通りだと思うのですが、米仏は、食料輸出国ですから、本当は差し引きで議論をしなければならない。

B君:FAOのデータベースをちょっと調べるか。
http://faostat.fao.org/site/535/DesktopDefault.aspx?PageID=535#ancor

2007年の食料すべての輸出額
日  2273442千ドル  23億ドル
米 92679457千ドル 927億ドル
英 22877347千ドル 229億ドル
仏 58812128千ドル 588億ドル
独 57512181千ドル 575億ドル

どうみても、日本の食料輸出量は一桁低い。
輸出入の差し引きは
1位 米  179億ドル
2位 仏  145億ドル
3位 独 −128億ドル
4位 英 −306億ドル
5位 日 −438億ドル

やはり日本の入超が明らか。こんなデータは、この本には出ていない。

A君:ベストセラーを目指すような本では、やはり、自らの論旨に反するようなデータは出さないのが最近の傾向。

B君:ところで、ドイツは食料の輸出が多いみたいだけど、そもそもどんな食料輸出が何があるのか、と言えば、
*チーズ、タバコ、お菓子、チョコレートなどの加工食品。
 要するに、食品加工業があるということのようだ。

A君:日本だって、もっと高級加工食品を輸出するという考え方があっても良いはず。お菓子など、かなり高級な商品として売れるのではないですか。

B君:それは、農水省にとっては関心がない。やはり普通の農家の面倒をみることが仕事で、自らの仕事をいかに確保するか、これが最大の関心事。

A君:これらの事実は事実として、この本の言いたいことは、食料自給率というものが余り意味を持たないということ。特に、カロリーベースの食料自給率は、特に、無意味ではないか、という主張。

B君:金額ベースにしただけで、食料自給率は66%になるという。

A君:金額ベースで日本の生産額をFAOのデータベースで調べると、ベスト20がこんな状況です。ベスト20までの生産額の合計を$1=¥100とすると、1兆円程度にしかならない。


表1:日本の農業生産 FAOの統計

A君:浅川氏の著書によれば、日本の2007年での生産量が10兆37億円。

B君:農水省の基本統計によれば、
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/index.html
によれば、農業総生産が平成19年度で、4.4兆円。

A君:どうもデータが一致しない。定義あたりをきちんとチェックすることから始めるのですかね。

B君:コメの産出額が平成20年度概算で1兆9014億円。FAOのデータでは、2310億円にしかならないから、どうも1桁違うのではないか。
 もっと農林水産業基本データのようなものをきちんと理解する必要があるのではないか。

C先生:そのあたり、もう少々時間を掛けて検討することにして、FAOのデータで面白そうなものはないだろうか。

A君:もう一つFAOのデータを。個別の農産物の生産額で、世界ランキングの表。ネギタマネギに関しては、世界一の生産額を誇ることが分かる。



表2 FAOによる日本の個別農産物ランキング 生産額順 ネギの生産額は世界一、鶏卵の4位は結構すごいことではないだろうか。キウイが6位というのも意外。



表3 FAOによる日本の個別農産物ランキング 生産量順 

B君:やはり日本の農業は生産額で比べればそれほど弱くはないことが分かる。

A君:とは言え、いろいろな数値が使われていてよく分からない。どうも、第一章の論理にしたがって、食料自給率は、それそのものが農水省の陰謀だと決め付けるのは、いささか危険のようです。

B君:第一章がそのまま鵜呑みできないとなると、それ以後はどうなるのだろうか。

A君:第二章に行きます。
「国民を不幸にする自給率向上政策」
 
B君:ここでのポイントは、食料自給率が1%上がったの、下がったのといって一喜一憂するような問題ではない、ということか。

A君:加えて、余り意味のない補助金が多いという指摘でしょうか。コメ余りを解決するために、飼料米や米粉を作らなければならない。水田で飼料用コメを作った農家には、10アールあたり、八万円の補助金を支給しているが、これを使って和牛を飼育すると、牛肉1kgあたり1600円高になる。100gあたり160円高くなる。これが日本のエンゲル係数の高さの一つの原因だ、という主張。

B君:それはそうだ。そこに自給率の定義の謎がある。日本で生産された牛肉でも、その牛が何を食べていたかどうかで、自給率への算入されるかどうかが決まる。もしも100%輸入飼料を食べていれば、自給率には全く算入されない。国産飼料米を10%食べていれば、この牛は、10%が国産だということになる。

A君:自給率を高めるという理由で、飼料米への補助金を増やすことを正当化する。これで、国民の税負担は増える。これが十分に説明されていれば、それはそれで良いのでは。

B君:そういうことだ。恐らく、多くの国民は知らないで高い税金を払っている。

A君:もっとひどいことが小麦や大豆では起きている。コメを作ることを止めて、小麦や大豆に転作すると、転作奨励金という補助金が支給される。単に、作るだけで収入になるので、単収や品質の向上に真剣に取り組まない農家が増加している。

B君:この本に言わせれば、国産小麦はパスタにはならない、讃岐うどんにもならない。外国産の半値でも買いたくない。

A君:多く作っても無意味なので、単収を上げようという努力をしない。そのため、日本の小麦は3.2トン/haと生産性が悪い。

B君:農家が真面目にやろうという気を出さない方が儲かるという仕組みが補助金ではやはりまずい。

A君:「戸別所得補償制度」のモデル事業が始まったのですが、これも農業衰退計画だと一蹴していますね。
 2011年から年間1兆4000億円の税金を投入するという。「コメや麦、大豆など自給率向上に寄与し、販売価格が生産費を下回る農作物を作っている農家に、その差額を補償する」という制度。

B君:これだとできるだけ赤字の農業をやったものが勝ち。楽をして多額の補助金を貰えるという仕組みになる。

A君:黒字を出してしまったら、補償がないのですから、その仕組み自体が問題。

B君:浅川氏は、やはり黒字を出すために頑張っている農家が消えると危機感を募らせている。

A君:2010年には5618億円が計上されていて、「戸別所得補償モデル対策」が行われる。対象農家数は、コメで180万戸だそうだ。

B君:浅川氏によれば、その半数以上の100万戸は、1ヘクタール未満の農家で、農業所得は数万円からマイナス10万円程度。そんな赤字では大変だというのはとんでもないミスリードで、これらの農家の総所得は数100万円ある。役所や農協、一般企業で働いている地方の金持ちサラリーマンであり、赤字農家というよりも、週末を利用してもっとも生産コストの高いコメや野菜を、自家用やおすそ分け用に耕作するのが趣味の「擬似農家」である、という。

A君:民主党の主張は、「自民党は大規模農家を優遇して農業をダメにした。民主党の所得補償は、自給率を高め、零細農家を救うための農家限定「定額給付金」だ」と主張する。1ヘクタールで最大95万円が補償される。しかし、1ヘクタールで生産できるコメはわずか20世帯分の消費量。農作業時間も、1年のうち1、2週間。
 もしも、10日間で80時間実働したとすると、1日の所得が9.5万円。時給にすると、1.2万円になって超高給アルバイト。

B君:浅川氏は、農地の貸しはがしが起きると指摘。すなわち、これまで専業農家は擬似農家から農地を借りて規模を拡大してきた。しかし、擬似農家にとって、農業を復活させて、赤字を垂れ流せば、1ヘクタールあたり95万円の補助金を受けることができて、時給1.2万円になるとなれば、農地を返せと言い出すだろう。

A君:実際に、そんなことが起きているようですよ。証拠は見いだせないのですが。

B君:民主党の戦略は、「日本の農業をどうしたいのか」、というイメージも出さないで、戸別所得補償をすることによって、票を獲得するという戦法のように思える。というのが浅川氏の論理だ。

A君:日本の農業は、穀物関係は、生産額2兆円で衰退に向かっている。野菜・果樹・花卉などが合計4兆円でこちらは成長産業。2兆円の穀物に対して、1兆4000億円を投入すると、下駄を履かされた擬似農家によって、野菜価格のダンピングに拍車が掛かるという主張もしていますね。

B君:擬似農家が面倒な野菜を作るのだろうか。しかし、戸別所得補償が実現すれば、農水省の農政事務所の職員が、擬似農家を回って、本当に赤字かどうかのチェックをやるという無限とも言える仕事を作り出すことは確実。すなわち、農政事務所の雇用戦略なんだ。これも浅川氏の鋭い指摘の一部だ。

A君:これが本当だとすると、公務員制度改革を行う上で、どのような影響がでるのか。真剣に考える必要がある。

B君:浅川氏は、とにかく、自由に農業をやらせるということが日本農業復活の鍵だという考え方。それに対して、できるだけ非効率な農業を行わせて、二重の意味=農家プラス農政事務所の両方で、票田を確保するのが戸別所得補償制度だということ。

A君:浅川氏の提案は、「黒字化優遇制度」。明確な黒字化の計画を提出した農家を支援。本当に黒字化すれば、返済免除というもの。

B君:むしろ、政府が何もやらないという制度を作っても良いのではないだろうか。これは余り根拠のない個人的な意見。

A君:これが第二章の中身。
さて、第三章、
「すべては農水省の利益のために」


B君:この章はさらに厳しくて、なぜ耕作放棄地が問題にされるか、小麦の国家貿易でボロ儲け、事故米問題で見えた農水省の陰謀、消費者不在のバター利権、豚肉業界を圧迫する差額関税、農水職員を活用すると、などなどの指摘がなされている。

A君:ここはご自分で読んでいただきたいですね。

C先生:余りにも長い。短く行きたい。

A君:第四章、
「こんなに強い日本農業」


B君:ここで出てくるのが、先の図2、図3で示した世界の農産物のランキング。日本のネギは世界一という話。しかし、まあ、それも当たり前かもしれない。海外では、日本のネギと同じものを見たことが無いので。

A君:ネギは別としても、ホウレンソウが3位、カキ(柿)が3位。しかし、カキ(柿)も世界では余り見ない果物。

B君:でも4位に、鶏卵が来るのはちょっとすごいのかもしれない。

A君:浅川氏がやはり同様の指摘をしていて、農業人口の減少=日本農業の衰退という思い込みが間違いで、まだまだ日本の農業人口は減らすべきだと述べています。日本は人口の1.6%が農家。しかし、英国0.8%、米国0.9%、ドイツ1.0%。

B君:しかも、日本には擬似農家が多い。約200万戸の販売農家(面積30アール以上、または年間農産物販売金額が50万円以上の農家)のうち、売上が1000万円以上の農家はわずか7%の14万戸。しかし、彼らが全農業生産額の6割を算出している。

A君:浅川氏は、すべての支援をこの14万戸に限定しても良いのではないか、という主張のようだ。

B君:自民党政権は、大規模農家に支援を絞った。それが正解だということか。

A君:うーん。分からない。さきほどの個人的提案のように、政府が関与を全く止めるとどうなるのだろう。

B君:アマゾンのコメントでこの本に星1つを付けていた人は、この本で引用されている優良事業者は、外国人研修生を使って人件費を節約している。何もしないと、海外からの資本が日本農業を支配し、結果として、日本人による農業は壊滅する、という意見だった。

A君:まあ、そうなるかもしれない。しかし、農業というものは、そういうものなのかもしれない。何か、昔ながらの農業をやっていると美しいという感覚で見ている日本人が多いが、その感覚自体が間違っていると迫るのが、世界の農業のように思えます。

B君:第五章、
「こうすればもっと強くなる日本農業」

 この章で、浅川氏は、日本農業成長八策を提案している。
第一:もっとも需要のある「民間版・市民(レンタル)農園の整備」
第二:農家による作物別全国組合の設立
第三:科学技術に立脚した農業ビジネス振興
第四:輸出の促進
第五:検疫体制の強化
第六:なぜかみつからない。記述漏れか?
第七:若手農家の海外研修制度
第八:海外農場への進出支援

A君:まあ、よく判断できないですが、有りそうな話ではありますね。

B君:第六章
「本当の食料安全保障とは何か」

 この章は、イギリスが食料自給率について何を考えているか、が主な部分になっている。簡単に言えば、自給率と食料安全保障とは関係がないというイギリスの主張が主たるところかもしれない。

A君:一言で言えば、食料安全保障とはリスク管理の問題であって、食料自給率の問題ではない

B君:現時点、世界的にみて平均的には、食料は余っている。分配に問題があるために、一部で飢餓があるのは当然のこと。しかし、平均値としては余っている。したがって、突然不作があったらどうしよう。そんなことも5年に1回ぐらいはあるかもしれない。そのために食料自給率を高めるというのは賢くない。もともと余っているのだから、ますます食料の価格が下がって、農業そのものが衰退してしまう。だから、備蓄などをすることによって、対応すれば良い。

A君:実際のところ、コメの備蓄は多い。コメの高関税を維持するために、ミニマムアクセス米=MA米を買わされている。浅川氏によれば、80万トン弱。

B君:コメの生産量は、平成21年産が846.6万トン。これは当然余っている。

A君:備蓄量は100万トン程度で、MA米とは別のようですね。農水省のHPを調べてもよく分からないですが。

B君:アセアンにコメ備蓄を増やしたとか言ったニュースがときどき見られる。本来であれば、モミ(籾)のままコメを備蓄すれば、相当長期間貯めこむことも可能だと思うが。

A君:しかし、備蓄は、なぜか玄米の状態で行われているようです。

B君:籾の状態だとコメの品質が分からないからではないだろうか。買い上げるときに、評価ができることが必須。

C先生:この本のお陰で、今後、日本の農業を考えるときに、必須のことがいくつかわかったような気がする。
 しかし、農水省を猛烈に攻撃することで本を売ろうとしすぎていて、中立的な記述になっていないのではないか、という懸念を抱かせてしまうところが、問題かもしれない。
 なにはともあれ公務員攻撃という戦略は、メディアならではの記述だとも言える。現時点で、それがもっとも人気を取れる方法だからだ。
 しかし、真面目に中身を読んで、将来のあるべき姿を考えようという人にとっては、そのような記述はかえって邪魔で、真実をすべて洗いざらい出した上で、何が公平な議論なのか、というスタンスの本が欲しいところだ。
 まあ、そうは言っても、この本を読んでみて、損をすることは無い。しっかりとしたスタンスをとりながら、中身を検討するということができれば、有用な記述がいくつも見つかることだろう。
 今後、どのようなことになるか分からないが、順次、読めた順番で、農業関係の本をご紹介していきたい。