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  放射線でホルムアルデヒド   06.10.2012
         デマを見破るには?




 いささか話題としては古く、すでにデマであるという結論は出ているのだが、柏市などの水道水がホルムアルデヒドで汚染された事件が起きた際に、このホルムアルデヒドは、福島原発事故によって利根川上流のダム(なぜか矢木沢ダムだとされている)などに降下した放射性セシウムが間接的、あるいは直接の原因であるという記事がネット上に出た。

 しかし、この文章を読んだ途端に、デマだと断定した。それはなぜだったのか。その際の個人的な感覚を文章にしてみた。

 ネット上の文書だけに、そのうち消える可能性がある。まずは問題の記事の全文を掲載したい。


【引用開始】
【速報】意外に真実味も! 首都圏水道水のホルムアルデヒドに放射能原因説
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20120522/Itnetworks_tax_news_8fbkmf6ui.html

あれもこれも放射能のせい

 利根川・江戸川水系の浄水場で、相次いで有害物質のホルムアルデヒドが検出されている。原因特定が遅れる中、ネット上では「放射能の影響」とする説が拡散。放射能を過度に恐れる人たちが流した「デマ」として非難されている。

デマにみえるが……

 ホルムアルデヒドが最初に検出されたのは、17日、埼玉県の浄水場だった。その後、千葉、群馬、東京などの浄水場でも相次いで検出され、千葉県野田市や柏市などでは断水も行われた。

 上流域の群馬県でもホルムアルデヒドが確認されていることから、汚染源は同県内にあるものと疑われているが、21日現在、特定されていない。そんな中、Twitterで拡散されているのが、下記の情報だ。

【拡散希望】最近、関東の水道の水でホルムアルデヒド検出が相次いでいます。これは放射能の影響で何らかの自然環境変化により発生したものと思われます。他にも未検出の有害物質が放射能の影響で含まれている可能性があります。水道の水を飲む際には浄水器をつけるなど対策をした方がいいと思います。

原因はセシウム除染?

 ホルムアルデヒド検出を「放射能の影響」とする説には根拠が薄いため、「デマ」と断じる声が多いが、実は無視できない論文が米国で発表されている。

 セシウムの除去にホルムアルデヒド樹脂が効果を発揮する、というものだ。米の「SAVANNAH RIVER NATIONAL LAVOLATORY」が2007年に公表されたもの。

 利根川水系の上流域で除染に使われたホルムアルデヒドが流れ込んだのでは、との推測がささやかれている。


有力視される矢木沢ダムの放流説

 これとは別に、矢木沢ダムの放流を原因とする説も、一定の説得力を持つ。福島第1原発事故により、首都圏の水源である群馬県にも大量の放射性物質が降りそそいだ。放射性物質は雨水などに運ばれて低地に集まる傾向がある。

 利根川の水源である矢木沢ダム(奥利根湖)では、今年1月に発表された環境省の調査データによると、湖底の泥から2,900ベクレル/kgのセシウムが検出されている。

 湖水からは検出されていないが、大量放流などを行えば、湖底の泥がまき上げられ、高濃度のセシウムが水に混ざる可能性が高い。

 セシウム134・137はβ線とγ線を放出する。このうちγ線には有機塩素化合物を崩壊させ、クロロホルムとアルデヒドを生成する作用がある、との研究結果を財団法人・高度情報科学技術研究機構が発表している。…

 実際、ホルムアルデヒドが検出された浄水場は塩素を使用している施設のみで、浄水にオゾンを使用している施設では検出されていない。18日から矢木沢ダムが大量放流を行っていたため、この説を有力とみる人も多い。

急がれる原因究明

 ホルムアルデヒドは塩素と有機物質が反応することでも発生する。水中のプランクトンと反応して、生成されることもある。

 ダムの放流が原因だとしても、まき上げられた泥などに含まれる有機物が塩素と反応した可能性もある。いずれにしろ放射線説が一定の説得力を持つ中、望まれるのはこういった説を一掃するだけの「証拠」を持つ原因究明だ。
【引用終】



C先生:大分古くなってしまったが、このように物理的・化学的に起こり得ないことを書く人がいる。Exiteニュースに書いているのは、これで原稿料を貰っている人なのではないだろうか。要するにある種のプロであろう。これだと、科学的に妥当でない有害な記事を書くプロでしかないことが明らか。

A君:このExiteニュースの記事でも「Twitterで拡散されているのが下記の情報」などと書かれているので、誰かが最初にそれを書いた。しかし、その際、何を根拠に「放射線の影響で何らかの自然環境変化が起きた」と推定しているのか、その理由について何も述べていない。それでも、このような情報が拡散してしまう。

B君:勿論、筆者の自然科学音痴と膨大な誤解(例えば放射線の線量の理解不足など)が原因なのだが、それ以外にも、単に情報を横流しするツールとして、TwitterやBlogを使っている人が増えたのが原因。

C先生:最近、Googleなどで情報を検索しようとすると、Web上の一次情報ではなくて、情報を横流ししているだけのBlogが数多く引っかかってくる。もしもBlogを除外した検索ができるようになれば、素晴らしくうれしいのだが、Googleがそんなオプションを作ってくれないだろうか。

A君:GoogleもBloggerなるものをやっているので、無理なのでは。

B君:いや厳密にブログを除外することは不可能だろうけど、Googleの検索のオプションに「除外する記号」というものがある。半角のマイナスがそれなので、-blog と検索条件の最後にでも書けば、かなりの確率でblogからの情報が排除されるので、これで我慢できるのでは。

C先生:なるほど。使ってみよう。
 それでは、Exiteニュースの記事で、「ホルムアルデヒドが放射線に関係している」と記述していることを、もう少々詳細に分析してくれ。

A君:分析するまでもなく、次の3項目になります。
(1)原因はセシウムの除染作業?
(2)矢木沢ダムから放出されたセシウムによる有機塩素化合物の分解?
(3)セシウムは無関係で、塩素と有機物質が反応した?

(4)その他

B君:(4)その他か。ホルムアルデヒドは、極めて簡単な構造の物質なので、可能性がないとは言えないが。

A君:色々と検討しているうちに、その他が出てくるかもしれないという程度の(4)で良いのでは。

(1)原因はセシウムの除染作業だった

A君:とにかく、これから行きます。デマとしては、非常に傑作です。Exiteニュースによる記述は以下の通り。

【引用】
 「セシウムの除去にホルムアルデヒド樹脂が効果を発揮する、というものだ。米の「SAVANNAH RIVER NATIONAL LAVOLATORY」が2007年に公表されたもの。
 利根川水系の上流域で除染に使われたホルムアルデヒドが流れ込んだのでは、との推測がささやかれている」。

【引用終】

A君:ホルムアルデヒド樹脂のセシウム除去機能を研究していたのが、米国のサバンナリバーにある核施設で、だから「すごく怪しい」という雰囲気を醸し出しているあたりが「傑作」と評価する理由です。

B君:使われたのはホルムアルデヒド樹脂だから、ホルムアルデヒドが利根川に流れ込んだというのもなんという科学音痴。いや化学音痴か。

A君:単なる「ホルムアルデヒド樹脂」という樹脂は存在していません。フェノールホルム/アルデヒド樹脂、ユリア/ホルムアルデヒド樹脂、などという形で使われますが、すでに高分子になっていて、ホルムアルデヒドも樹脂の骨格に変化してしまっているので、ホルムアルデヒドがそこから出るとしても相当に微量。

B君:そもそもサバンナリバーでやられていた研究はこれ。
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.aiche-ned.org/conferences
/aiche2007spring/session_2/AICHE2007SPRING-2b-Nash.pdf

A君:何をやっていたのか、というと、こんな実験をやっていた。


【ファイルの一部を翻訳】
 Na、K、Cs(これがセシウム)、Pb、OH-を含む模擬廃液20mLに、0.2gのイオン交換樹脂(レゾルシノール樹脂)を投入し、15℃から45℃で処理し、樹脂に捕獲されたCs+の量を測定。

 その結果、このイオン交換樹脂は、セシウムを選択的に吸収することが分かった。吸着総量は6meq/g程度であった。

 模擬廃液の濃度が、ナトリウムが5M、セシウムは10−4Mであれば、大体、1meq/g程度の吸着量が期待できる。

【翻訳終】


A君:最後の吸着量ですが、イオン交換樹脂1gで10mlの模擬廃液が処理できるという程度の性能だということ。

B君:ちなみに、レゾルシノール樹脂とは、正式名称はレゾルシノール/ホルムアルデヒド樹脂で、フェノール樹脂のフェノールの代わりに、レゾルシノールを使ったもの。
フェノール:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB
レゾルシノール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%BE%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB

A君:レゾルシノールの別名がレゾルシンで、今年4月22日に、三井化学岩国大竹工場で爆発した製造装置で作ってたもの。

B君:実験に使われた模擬廃液中のセシウムの濃度が10−4Mということは、1Lの溶液中に0.0133gのセシウムを含んでいたことを意味するが、これだけのセシウムがすべてセシウム137だったとすると、1gのセシウム137が3.21兆Bqなので、0.0133g/Lは42.7億Bq/L。このぐらいの放射線を出すセシウム濃度の排水を処理するための実験だった。もしも、セシウム134が混じっていれば、その数倍のベクレル数となるが。

A君:この記事によれば、湖底の泥から2900Bq/kgの放射線が検出されたとあるが、これを高濃度だという認識のようですね。

B君:2000Bq程度だと、昆布を干したものぐらい。もちろん、カリウム40の自然放射線の量だが。

A君:もう一つの問題点が、モノの量の誤解。今回のホルムアルデヒドの濃度が規制値である0.08mg/Lの2倍程度になったということなので、仮に、0.2mg/Lだとしますと5000倍に薄まっているということを意味しますね。大体1万倍に薄まったと思っても良いのではないですか。

B君:現在分かっていることは、ヘキサメチレンテトラミンを最大60トンぐらい放出したということ。

A君:加水分解でホルムアルデヒドが発生するのは、こんな式ですから、

   C6H12N4 + 6H2O → 4NH3 + 6HCHO

60トンのヘキサメチレンテトラミンから77トンぐらいのホルムアルデヒドができて、その全量が放出された計算になる。

B君:とすると、汚染された水の総量は、77万トンぐらいということか。

A君:利根川の水量は相当多いです。その当時、利根大堰での水量は恐らく200トン/秒ぐらいではないかと思われます。

B君:そうだとすると、1時間分ぐらいの流量だということになるが、実際、どのぐらい取水がストップしたのだろうか。

A君:取水停止時間はよく分からないのですが、オーダーとしては10時間程度だったのではないでしょうか。

B君:10倍ぐらい狂っているのかな。まあ、極めて荒い計算なのだから良いとするか。いずれにしても、利根川を汚染し、水道の基準値を超すようなホルムアルデヒドとは、数10トンオーダーの量が最低でも必要だということになる。

A君:もしもレゾルシノール樹脂から僅かな量のホルムアルデヒドが放出され、それが全体として数10トンにもなったとしたら、どんなことになるのか。

B君:水1リットルに樹脂から溶け出すホルムアルデヒドの量は、常温では少ない。95℃60分で数μg/mlと言われている。95℃のお酢でも4μg/mlを超すことはないようだ。

A君:ダム湖の水であれば、その100分の1程度と見るのが妥当では。計算上は、40分の1とでもしますか。すなわち、0.1μg/ml。重さで言えば、1000万分の1ですが。

B君:数10トンのホルムアルデヒドを発生するのに必要な樹脂の量は数億トンということになる。10トン積みのトラックだと数1000万台分。

A君:これだけの量のイオン交換樹脂が矢木沢ダムで使われていたことになりますね。

B君:矢木沢ダムの貯水量は満水時で11550万トン=1億1550万トンもあるが、その除染のために数億トンの樹脂を使った。樹脂は水よりも多少重たいから当然とでも主張したいのだろうか。

A君:最後に、いくつか見つけたブログのご紹介。

追従したブログの例
http://blog.goo.ne.jp/luca401/e/ac64e53b44e160f008a31a18db821309
http://ameblo.jp/sannriku/entry-11257716267.html

その元となっているブログ(追従ブログの情報ソースとなっている?)
http://portirland.blogspot.jp/2012/05/srnl.html

さらに、元々の情報ソースではないか、と思われるのが、
http://hibi-zakkan.sblo.jp/article/55990833.html


(2)矢木沢ダムから放出されたセシウムによる有機塩素化合物の分解?

A君:この話題で非常に面白いことが、まず引用されている文書で、なんとATOMICAなので笑ってしまいます。このATOMICAは、色々と学術的データが揃っているので、しばしば参考にしていますが。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-03-03-04

B君:このATOMICAを提供しているのが、RISTという組織。高度情報科学技術研究機構で、1981年に設立された財団法人原子力データセンターを起源としている。

A君:もともと原子力推進の組織なのですが、そこを探ったら、放射線が原因だと分かった。これで謎が解けた。いくら隠しても無駄だ。ということなのでしょう。メディアが好みそうな感じ。

B君:このATOMICAで有機塩素化合物として記述されているものが何かと言えば、
 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン。

A君:これらの化合物が、もともと水道水の50項目からなる規制対象になっていることを知らないのでしょうね。

B君:もっとも問題なのが、このATOMICAの記述を定量的に把握していないことだ。

【引用】
 8000ppm程度の高濃度有機塩素化炭化水素を含む水溶液のガンマ線照射分解も報告されている(文献14)。100kGyの線量下で水中8000ppmのクロロホルムの分解率は約50%で(図2)、その他の塩素化炭化水素の分解率は90%以上である。また、照射後溶液のpHが小さくなり、HCl、蟻酸などが生成されている。さらに、照射容器の気相からメタン、エタン、CO、CO2などの生成物が測定されている。これらの生成物は線量および塩素化炭化水素の濃度とともに増加している。つまり、塩素化炭化水素分子中の炭素原子がこれらの分子に変換されたことを意味する。
【引用終】

A君:放射線量がなんと100kGy。ミリシーベルトに換算すれば、1億mSvという莫大な放射線を当てたら、こんな反応が起きたということです。ヒトの致死量の1万倍以上。

B君:なぜ、このように莫大な放射線を照射しないと、化学反応が進まないのか。それは、化学物質の結合の数を考えると、多少理解できる。

A君:このような実験をどのぐらいの規模でやるのか知識が無いのですが、コバルト60から出るγ線の水による減衰率が、10cmの水で55%減衰ぐらいなので、反応容器としては、厚さ数cmで実験しているのではないですか。水溶液の量として100ml=100gぐらいなのでは。

B君:だとすると、8000ppmということなので、クロロホルムの量が0.8g。クロロホルムの分子量が119.4なので、モル数にすると0.0067モル。アボガドロ数を掛けると、分子の数は、0.04×1023個。クロロホルム分子1個には4本の結合があるので、結合の数は、0.16×1023個。厳密な話ではなく、イメージとしてだが、これだけの結合を切断するまで弾を撃たないとならないと思えば、その量が膨大であることが分かるかもしれない。

A君:例えば、300時間照射したとして、108万秒。1Bqの放射線が毎秒1本の結合を切ったとすると、やっと100万本余の結合を切ることができる。もし、1Bqの放射線で毎秒10万本の結合を切れたとしたら、300時間で1000億本=1011本を切ることができる。

B君:セシウム137からのγ線のエネルギーは0.66MeV。一方、水からHを一つ切るのに必要なエネルギーが、493kJ/molなので、1eV=96.5kJ/molだとすれば、約5eV。0.66MeV=6600keVなので、水のO−Hの結合なら約12万本の結合を切るエネルギーはある。

A君:ということで、先ほどの数値が妥当に思えてきて、全部で1022本の結合を300時間で切るとしたら、1000億Bqレベルの放射線源が必要。

B君:Exiteニュースで出てくる放射線量が矢木沢ダムの底泥の2900Bq/kg。桁が違う。7桁以上の違いということになる。

A君:ということが結論。最後に、関連するブログをいくつかご紹介。

http://www.k2o.co.jp/blog2/2012/05/post-707.php
 きちんと訂正記事を出しているので、好感が持てる。このブログが引用しているのが、http://ameblo.jp/misininiminisi/entry-11255942401.html
であるが、自らなんら解析を行わず、単にデマを繰り返しているだけ。

C先生:単に、自分で気に入った情報だけをコピーして再発信する作業は無意味だ。こんな無駄な作業に時間を使うぐらいなら、少しでも何が事実かを追求する知的作業を行い、何か創造的なことの実現を目指して欲しい。

A君:それでは、次です。

(3)セシウムは無関係で、塩素と有機物質が反応してホルムアルデヒドができた。

B君:実は、有機物質に塩素が反応してもホルムアルデヒドはできない。塩素が水に溶けると、塩酸と次亜塩素酸になるが、この次亜塩素酸HClOが酸化作用を持っているので、有機物質がアルコール的な構造を持っていれば、ホルムアルデヒドができても不思議ではない。

A君:何をその物質だと考えるべきなのか。やはりメタノール。木材を炭化する際に出る液体を冷やして得る木酢液にはメタノールが含まれている。しかし、同時に、ホルムアルデヒドも含む。

B君:木酢液は、かつて農薬として登録されていたが、現時点では失効している。その理由は、ホルムアルデヒドやフェノール、さらには、発がん物質であるベンツピレンなどを含むために、有害性が大きいからだ。

A君:「農薬でも天然物は安全、人工物は危険」という神話があるが、これが単なる神話であることを示す例が木酢液。ただし、それほど毒性が高いという訳でもない。

B君:ちょっと話題がずれたが、どうも、ダムにある天然有機物が酸化反応を起こして大量のホルムアルデヒドが発生するとも思えない。そんな原料が無いのだ。

A君:なんといっても77トンレベルのホルムアルデヒドがでないと、今回ほどの濃度にはならないので。

C先生:これで終わりかな。(4)のその他の存在を推測させる事実は、出て来なかったようだ。
 今回、このようなデマ退治を目的とした記事を書いた訳だが、そもそも何を身につければ、デマであることの判定が可能なのだろうか。

A君:いずれも、量というものを全く考慮していないことですね。だから、量に対する感覚が有るか無いか。これがデマを打ち破ることができるかどうかということになります。

B君:現象を量を含めて考えることができるには、それなりの知識が不可欠。

C先生:最初の量は、利根川から取水している水を汚染するのに必要なホルムアルデヒドの量。これに対する感覚が全くないことだった。しかし、そんなに難しいことではないので、単に検討をサボっているとしか言いようがない。砂糖水の濃度を計算できる程度の知識でよいのだから、中学生級の考察力が無いということか。
 次のセシウムの放射線で何かが分解して、ホルムアルデヒドができたという仮説については、結構難しいかもしれない。アボガドロ数という言葉は知っているかもしれないが、その6×1023という数値のすごさを知っている人は極めて少ないのではないだろうか。

A君:そう言えば、最初のレゾルシノール樹脂のところで、吸着処理をするセシウム量が、もしもベクレル数に直すと、トンデモナイ数値になることも、アボガドロ数が関係している。

B君:ベクレルを語るには、アボガドロ数を知れ。これは事実だ。

A君:C先生の最新の著書、「化学で何がわかるか」の一つのポイントがアボガドロ数ですよね。

B君:極普通に取り扱う数値として、大きいものが国家予算や日本の借金の兆まで。兆は1012なので、23乗などは非常に遠い。

A君:実際、我々でも、直感からはかけ離れている。

B君:そのうち、このHPで、その著書の中に書かれたアボガドロ数についての部分を公開するのは。

C先生:そのうち考えておこう。

A君:もう一つ、やはり難しいのかな、と思うことが、物質に対する感覚ですね。レゾルシノール/ホルムアルデヒド樹脂というと、分解して元のホルムアルデヒドを大量に出すと思うのでしょうか。

B君:高分子あるいはプラスチックあるいは樹脂というものが何か。この知識も一般常識になっているか、と言えばそれは怪しいかもしれない。

C先生:一般常識とは何か。一般的な知識レベルとはどのようなものか、などを探るために、このところ、愛読しているサイトがあって、それが以前どこかで紹介したかもしれないが、日本保険物理学会(会長は小佐古氏)がWebに掲載しているもので、「専門家が答える暮らしの放射線Q&A」
http://radi-info.com/q-1587/
 そこに面白い質問をしている人が多数居る。その中でも気に入ったのが、これ。

【引用】
質問「回答は、中立的なことがらで事実に基づいていますか。
 回答されている方々は、東電含む電力事業者から金品を受けていませんか。たとえば、(研究名目とか謝礼とかそういった類の物すべて含みます) 。
 具体的に回答してください。   以上」

回答「このサイトは、福島原子力発電所事故数週間後に、放射線の専門家の有志(日本保健物理学会会員)で立ち上げたものです。事故を知り、何かしなければと止む止まれない気持ちで始めました。平成23年8月24日以降は、暮らしの放射線Q&A活動委員会として、日本保健物理学会の責任のもと、暮らしの放射線Q&A活動に取り組んできています。
 暮らしの放射線Q&A活動委員会に属する回答者は全員、ボランティアとして対応しておりますので、他機関より金品等をもらって活動をしていることはありません。むしろ、回答者全員はそれぞれ業務や研究等を抱えている中、自らの時間をフルに活用して、一般の方々の放射線に対する不安を少しでも軽減させるために、暮らしの放射線Q&Aの活動に全力で取り組んでいます。
 「回答は中立的なことがらで事実に基づいていますか」、についてですが、われわれは現時点で正しいとされている事実を元にして、中立的な立場から回答を作成してきています。これまでも、そしてこれからも、その回答スタンスを継続して、一般の方々の不安を少しでも払拭できるよう対応していきたいと考えています」

【引用終】

C先生:研究者という商売は、たまたま電力事業者から研究費を受け取っていた人が居たとしても(現在、研究費を出している電力会社は無いと思うが)、このようなQ&Aで嘘を付いたら、研究者としての命が終わってしまうということが分かっていない。

A君:まともな研究者なら、自らの研究者としての命を投げ捨ててまで、嘘を付くことなどはしないのだ、ということが分かっていない。

C先生:もう一つ。これは気になった質問。このような意見というか質問を通常の心理状況で書ける人が増えてしまったということは、正常の域を越して危機的なレベルにまで追い込まれている人が増えていることを意味する。このような可哀そうな人々に自らの著書を売り込んで印税を稼いでいる小出氏、武田氏の人間性の欠如をどうしても疑ってしまう。彼らは、もはやまともな研究者ではないので、当然とも言えるか。

【引用】
 サイト内を拝見させて頂きましたが、全体的に安全をごり押ししているようですが、如何なものかと思います。
 また、原発推進派の意見を多数引用していますが、電力会社、御用学者などの意見などあてにできますか?
 彼らは国民が被ばくして死んでも構わない輩です。
 原発利益は年間2兆5千億円。この莫大な利益に群がるのが推進派です。
 管理人様は、原発事故後に福島や北関東で奇形児が増えている事実、甲状腺異常を引き起こしている子供が増えている事実はご存じですか?
 もう少し見識があるのであれば、危険性を全面的に伝える事です。
 正直、勉強不足なのか知っていて騙しているのかわかりませんがサイトの質は低いです。
もし学者の意見を引用するのであれば、小出 裕章氏、武田邦彦氏などの意見を引用するべきです。
 原発推進派の意見など子供の茶番程度でしかありません。

【引用終】

 回答は省略。