|
|
|
概要をコピペでまとめたものです。 お読みいただく必要はないかと思いますが、記録のために掲載します。 ついでに、目についた優れたブログ・WebSiteも図を除いてコピペしました。 http://sankei.jp.msn.com/life/news/120518/trd12051821330020-n1.htm 千葉でも水道水にホルムアルデヒド 2012.5.18 21:23 千葉県北西部を中心に水道を供給している北千葉広域水道企業団は18日、同県流山市の浄水場で、水1リットル当たり0・062ミリグラムのホルムアルデヒドが検出されたと発表した。水質基準の同0・08ミリグラムを下回っているが、午後7時15分に水源の利根川水系の江戸川からの取水を止めた。 同日午前9時に同0・024ミリグラムを検出し、その後濃度が高くなった。同企業団は、浄水場で粉末活性炭を投入して濃度の変化を監視している。配水先は松戸市、野田市など7市と県水道局。県水道局は千葉市の一部などに配水している。 同企業団は、調整池にある分で午後11時ごろまでは各市、県に配水可能としている。 http://sankei.jp.msn.com/life/news/120520/trd12052012420008-n1.htm 東京都の浄水場でも送水停止 断水の影響なし 2012.5.20 12:41 [公害・汚染] 利根川水系の浄水場の水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、東京都水道局は20日、同じ水系を使う三郷浄水場(埼玉県三郷市)で国の水質基準を超えたとして、同日午前から送水を停止したと発表した。都の浄水場で基準値超えが確認されたのは初めて。送水系統を金町浄水場(東京都葛飾区)などに変更したため、断水などの影響はないという。 水道局によると、同日午前5時、三郷浄水場で採取した水から基準値の1リットルあたり0・08ミリグラムを超える0・099ミリグラムのホルムアルデヒドを検出した。 各家庭に到達されるまでに他の浄水場の水と混合されるため、「水道水は基準値を下回り安全」と判断。ただ、排出源が特定されていないことなどから、念のため午前9時半に送水を停止した。 三郷浄水場の給水地域は足立、葛飾、江戸川、江東、墨田、台東、荒川の各区と北区の一部。 http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001205260002 ホルムアルデヒド問題「排出元、告知せず」2012年05月26日 産廃処理業者が中和処理した廃水が流入した烏川=高崎市岩鼻町の写真 利根川水系の浄水場から化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題は25日、新たな展開を見せた。埼玉、群馬の両県、高崎市は廃棄物処理法に基づき、原因物質「ヘキサメチレンテトラミン」を大量に扱う埼玉県の事業所と、処理を請け負った高崎市の産業廃棄物処理業者の調査を始めた。 埼玉県が25日、廃棄物処理法に基づいて報告を求めた電子材料メーカー「DOWAハイテック」(同県本庄市)から、アルカリ廃液の処理を請け負っていた高崎市内の産業廃棄物処理業者は、朝日新聞の取材にこう話した。 DOWA側から約60トンの廃液処理の委託を受けた。24項目の化学物質の成分を調べ、国の基準に従って適正に処理したという。 「それ以外の物質が含まれる時は、排出者が告知しないといけない」 今回、処理しきれなかったヘキサメチレンテトラミンが利根川水系に流出したとみられているが、処理業者は、その責任はDOWA側にあると主張している。 また、埼玉県は19日に調査に来て、残っていた廃液を持ち帰ったが、翌20日には高崎市を通じ、「操業を続けて問題はない」という連絡があったとした。念のため、自分たちでも検査を依頼したが、高濃度のホルムアルデヒドは検出されなかったという。 廃棄物処理法では、委託された処理業者が処理方法を判断できるように、排出元の企業などが廃棄物の詳細な中身を明示するよう義務づけている。ただ、ヘキサメチレンテトラミンは同法の有害物質にあたらず、水質汚濁防止法の排水規制も対象外。この物質を明示しなかった場合にどこまで非難されるべきなのかも、定まらない面がある。 このため、DOWAハイテックも「これまで特記していなくても問題は発生してこなかった」(経営企画室)と説明している。 ■ 埼玉県が廃棄物処理法に基づいて排出元のDOWAハイテックの調査に入ったことを受け、高崎市は25日、県と連携して、処理を請け負った高崎市の産業廃棄物処理業者に対し、同法に基づく調査を始めた。委託契約書などについて29日までの報告を求め、立ち入り調査も随時行う方針だ。 高崎市と県は、埼玉県の調査に同席する形で、19、21の両日にもこの業者に立ち入り調査しており、再調査の位置づけになる。 両日の調査では処理能力に問題はないか、設備の管に穴はないか、排水の濃度は適切かなどを調べたが、問題はなかったという。 再調査では、DOWA側が委託したホルムアルデヒド換算で37%の高濃度の廃液を処理する能力がこの業者の施設にあるかを検証。また、ヘキサメチレンテトラミンが委託契約の中でどのように扱われていたかなども明らかにする方針だ。 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20120526/CK2012052602000144.html> 高崎市、書類提出求める ホルムアルデヒド検出問題 原因物質の流出業者に (東京新聞>群馬 2012年5月26日) 【群馬】 利根川水系の浄水場で有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題は二十五日、廃液処理を委託された高崎市の産業廃棄物処理業者に波及した。業者は化学反応して有害物質となる原因物質ヘキサメチレンテトラミンが廃液に混入していた事実を「知らなかった」と説明。市は同日、廃棄物処理法に基づき関係書類を提出させる「報告徴収」を業者に求めた。▼業者は高崎市倉賀野町の高崎金属工業。約二年前に設立され、周辺の金属関連企業や市内外の他の業種からも廃液処理を引き受けているという。▼廃液の処理を委託したDOWAハイテック(埼玉県本庄市)とは今月、取引先企業の紹介で初めて仕事を受けた。十日ごろから廃液約六十トンが六回ほどに分けて運び込まれ、半日程度で中和処理し、随時近くの烏川に流したという。▼しかし、問題が発覚し、流出を中止。廃液は他の業者に委託し、損失が出た。高崎金属工業の赤穂好男社長は「損失はDOWAに請求したい」、茂木博保会長は「当社は被害者。発覚後にDOWAから説明はなく、不正義な会社との印象だ」と述べた。▼高崎市は県や埼玉県と共同で十九、二十一両日に高崎金属工業に任意で訪問調査。既に同社の説明は把握し、問題の重大性から契約書や産廃管理票などを二十九日までに提出させる。市環境部幹部は「原因物質などの規制はなく、今後は何らかの対応が必要だ」と話している。▼県環境森林部の山口栄一部長は「国に規制を求めていくが時間がかかる。それを待たずに水源県としてできることをやりたい」と話し、再発防止策に取り組む意向を示した。 < http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120526-OYT1T00033.htm ホルムアルデヒド、化学会社9年前も同物質排出 (2012年5月26日09時20分 読売新聞) 利根川水系の浄水場で、国の基準値を上回る化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉県が25日に排出源をほぼ断定できたのは、政府が数百ある中から原因物質を特定できたからだ。 化学メーカー「DOWAハイテック」(本庄市)は9年前にも同じ物質を排出しており、責任が問われそうだ。 ◆過去にも◆ 「過去にも排出しており、処理しなければ(水質に)障害を生むことはわかっていたと思う。道義的な責任はある」。 半田順春・県水環境課長は声を強めた。ホルムアルデヒドを生成するヘキサメチレンテトラミンは健康に深刻な影響を与える物質ではなく、排出の規制も緩い。しかし、結果として約35万世帯の断水を引き起こした。 DOWAハイテックは、非鉄金属大手「DOWAホールディングス」傘下の関連会社で、携帯電話の液晶の材料製造や自動車のめっき加工を手がける。同社は2003年11月にも同じような問題を起こし、行田浄水場(行田市)で国の基準値を上回るホルムアルデヒドが検出された。今回は「(群馬県内の産廃業者が)わかってくれるだろう」と判断し、廃液の内容を告げずに委託した。 ◆県の検査◆ 一方、県もDOWAハイテックが疑わしいと思いながらも、ほぼ断定するまで1週間かかった。ホルムアルデヒドを生成する物質が数百種類あり、原因が特定できなかったためだ。 18日と19日に立ち入り検査を行い、「工場排水は基準の範囲内。この程度なら毎日出ている」(半田課長)として、工場からの排出はないと判断した。群馬県の烏川で流出した可能性は強いとしながらも、排出源は特定できなかった。群馬県の産廃業者は25日、「(原因物質が含まれていたのは)承知していない。全く認識していない」と話した。排出源の特定が遅れれば、産廃業者が知らずに排出を続けた可能性もある。 ◆見通し◆ 県は25日、DOWAハイテックに対し、廃棄物処理法に基づいて30日までに産廃業者への委託内容や廃液データを提出するよう求めた。報告を受けて、同社が産廃業者に告知しなかったことが、同法違反にあたるかどうかの検討を行う。 この物質は危険性が低く、排出事業者が処分業者に委託する契約書で「注意すべき事項」の対象ではない。県が刑事告発などを検討する上で、この物質の扱いがカギを握りそうだ。(栗原健、堀合英峰) <http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001205280003> 運搬業者からも聴取へ/利根川水系汚染 (朝日>埼玉 2012年05月28日) 【埼玉】 ◇県、委託内容を調査◇利根川水系の汚染問題で、県は原因物質とされるヘキサメチレンテトラミン(HMT)を含んだ廃液を、排出元から処理業者に運搬した横浜市に本拠を置く業者が詳しい事情を知っているとみて、廃棄物処理法に基づき委託内容の報告を求める方針を固めた。▼県は、排出元を本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」と特定。同社から工場廃液の処理を依頼された群馬県高崎市内の産廃業者が処理を十分しないまま、利根川支流に流したとみている。▼これまでの県などの調べに、DOWAは「原因物質が廃液に含まれていることは産廃業者に伝えなかった。告知しなくても、業界の常識で当然知っていると考えていた」と主張。これに対し、産廃業者は「HMTが含まれていると事前に聞かされていれば、処理は断った」としている。▼県は、DOWAに廃棄物処理法で定めた告知義務違反がなかったかどうかを調べる一方で、実際に廃液を運んだ業者が何らかの事情を知っているとみて、本格調査に乗り出す。▼DOWAは流出元とされた産廃業者と同時期に、同じ高崎市内の別の産廃業者にも廃液処理を依頼した。だが、こちらは問題が起きていない。この別の産廃業者は朝日新聞の取材に「運搬業者からは廃液処理に関し、河川には放流せず、最終処理には焼却が必要と言われ、そう対処した」と説明している。一方、こうした手順について、流出元とされた産廃業者は県などの調べに「DOWAだけでなく運搬業者からも聞かされていない」と話している。▼二つの産廃業者に廃液を運んだ業者は同じ。このため県は、運搬業者が異なる対応を取った可能性もあるとみて理由を聞いた上で、排出元からの委託内容のくわしい報告を求め、全容解明を目指す。▼県から排出元と名指しされたDOWAは、25日に社名を公表されてから「社内調査中」として27日夕までに社としての正式な見解を示していない。◇DOWAハイテック◇非鉄金属大手「DOWAホールディングス」(東京都千代田区)のグループ企業。電子部品に使う銀粉製造やめっき加工を手がけ、従業員は約200人。工場周辺の環境美化活動が評価され、2010年度には県「さいたま環境賞」を受賞している。 ブログ・WebSiteで優れたもの その1: http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20120520/1337528384 2012-05-20 ホルムアルデヒドとヘキサメチレンテトラミンについてのまとめ ■[化学]ホルムアルデヒドとヘキサメチレンテトラミンについてのまとめ 00:39 ついに東京都の浄水場でもホルムアルデヒドが検出されたようです。 ホルムアルデヒド問題 都の浄水場でも送水停止、断水の影響なし 2012.5.20 17:20 http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120520/ecb1205201752004-n1.htm うむ、利根川水系の浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出されている問題ですが、これで関東1都3県で取水停止措置が相次ぎ、千葉県では断水になる地域も出るなど生活への影響が広がっています。 これだけ広範囲で検出されるのは珍しく、関係自治体は汚染源の特定を急いでいるようですが、現段階で特定には至っていないようです。 ホルムアルデヒド自体は浄水場で検出されることは決してめずらしいことではありませんが、しかし、「基準値を超えるホルムアルデヒドが広域で長期間検出されるのは初めてではないか」(厚生労働省職員)とのことです。 埼玉県では平成15年11月、行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出されたことがあり、このときは利根川支流にある県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていることが判明した経緯があるそうです。 今回も化学系の工場からヘキサメチレンテトラミンが流出していると推測、19日には利根川水系での水質調査で群馬県内を流れる烏川沿いの工場の排水が疑われています。 まず原因の特定が急がれますが、今回の報道内容の数値を見る限り、1リットル当たり0・08ミリグラムの国の基準を上回ったとはいえ1.数倍から4、5倍程度の値ならば、直ちに人体に悪影響を及ぼす可能性はまずありませんから、過剰に心配する必要はありませんでしょう。 とはいえホルムアルデヒドは毒物であることには変わりないので、今回の行政の取った措置と情報公開は、市民に安心を与えるといった意味合いでは私は評価したいです。 ・・・ 私は某製薬会社の国内工場の検査システムのIT化を担当をしたことがあるのですが、その工場では大量のホルムアルデヒドを扱っていまして、敷地内を歩いていましても独特の臭気が漂っていたことを思い出します。 その工場ではヘキサメチレンテトラミンも扱っていました。 そこで今回はホルムアルデヒドやヘキサメチレンテトラミンについて、有機化学的に分かりやすくまとめてみたいと思います。 ホルムアルデヒドは炭素(C)1個と水素(H)2個と酸素(O)1個の4個の原子から構成された分子からなる有機化合物です。 有機化合物は、炭素を中心に、水素、酸素、窒素など原子番号の若い(従って軽い)、非金属原子が中心に結びついてできた化合物です。 ■図1:元素の周期表と炭素、水素、酸素、窒素、の各位置 ベース画像:化学の迷路オリジナル周期表より http://chem.chu.jp/topic/perio.html 周期表の一番左に位置する水素は他の原子と結合する腕を1本持っており、酸素は2本、窒素は3本、炭素は4本持っています。 周期表の各列はそれぞれの原子の腕の数でグループ化されています。例えば表の炭素の列のすぐ下のケイ素(Si)は炭素と同様4本の腕を持つグループです、ですから自然界ではその多くが、腕2本の酸素2つと結びついて二酸化ケイ素(SiO2)の状態で存在しています。 さて、例えば酸素の2本、窒素の3本、炭素の4本の腕にそれぞれ水素が付けば、水、アンモニア、メタンの分子になります。 ■図2:水分子、アンモニア分子、メタン分子の構造 このメタンに注目します。 メタンなど有機ガスに酸素を一つ付け足すとアルコールになります。さらにアルコールから水素を2つ奪うとアルデヒドに、さらにアルデヒドに酸素を1つ加えると酸(カルボン酸)になります。 メタンからはメタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸となっていきます。 ■図3:メタン−>メタノール−>ホルムアルデヒド−>ギ酸 有機化合物の性質を決める特定の原子の集まりを官能基といいますが、アルコールにはヒドロキシ基、アルデヒドにはアルデヒド基、カルボン酸にはカルボキシル基が官能基です。 ちなみにメタンより一つ炭素が多い有機ガスであるエタンでも、エタノール、アセトアルデヒド、酢酸とそれぞれ同じ官能基を持っています。 ■図4:エタン−>エタノール−>アセトアルデヒド−>酢酸 飲料用のアルコールはこのエタノールが主成分ですが、肝臓では、アルコール脱水素酵素がエタノールを酸化してアセトアルデヒドを生じ、これがアセトアルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸へと代謝されます。 このように酸素がくっついたり水素が取れたりする反応を酸化反応といいますが、この体内でのアセトアルデヒドの代謝は、人種・体質によって生まれつき差異がありまして、アルコールに弱い人がひどい二日酔いになるのは、酵素の働きが十分でなく、エタノールやアセトアルデヒドが体内に長時間残留してしまうためです。 さて話をホルムアルデヒドに戻しますと、図3にも示しましたが、ホルムアルデヒドはすぐに酸化(自分に酸素を取り込んで)してギ酸に変化する性質があります。 ホルムアルデヒドの水溶液をホルマリンといいますが、したがってホルマリンは強力な還元剤(周りから酸素を奪う薬品)となっています。 動物の標本などをホルマリンに漬ければ長期間保存できるのは、このホルマリンの還元剤として性質により防腐(酸化しにくい)剤として使用されているわけです。 ホルマリンは、人体へは、粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こし、皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、激しい刺激を受け、炎症を生じます。 また、ホルムアルデヒドは、ホルマリンのほかに、接着剤、塗料、防腐剤などの成分であり、安価なため建材に広く用いられています。 建材から空気中に放出されることがあり、その場合は低濃度でも人体に悪影響を及ぼします、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質のうちの一つとして知られています。 このような毒性を持つ、ホルムアルデヒドはWHOや厚生労働省により 0.08 ppm の指針値が設けられているわけですが、今回水道水がこの基準を超えたわけですが、今の報道されている数値ならば直接すぐに人体に影響を及ぼす可能性はまずゼロでしょう。 行政もしっかり対応していますので、神経質に構えることはないでしょう。 最後にヘキサメチレンテトラミンについてまとめておきます。 ヘキサメチレンテトラミンは炭素6個水素12個窒素4個から成る有機化合物(C6H12N4)です。 ■図5:ヘキサメチレンテトラミンの分子構造 ヘキサメチレンテトラミンは産業面では化学工業において樹脂や合成ゴムなどを製造する際の硬化剤として用いられています。 また、医療においては、膀胱炎、尿路感染症、腎盂腎炎の治療に用いられています。 今回このヘキサメチレンテトラミンがホルムアルデヒドの発生の原因として疑われているのは、ヘキサメチレンテトラミンがもし工場排水として河川に流れ出ると大量のホルムアルデヒドが発生する可能性があるからです。 ヘキサメチレンテトラミンは水中でアンモニアとホルムアルデヒドに分解されます。 ■図6:ヘキサメチレンテトラミンの加水分解 さきほどヘキサメチレンテトラミンが膀胱炎や尿路感染症の治療に用いられていると述べましたが、尿内でホルムアルデヒドが大量に発生することで尿が防腐性(還元性)を持つことを利用しています。 さて、現段階では原因が特定されていませんが、利根川上流でヘキサメチレンテトラミンを扱う工場が複数確認されているとのことから、行政当局としてもそれら工場の排水を可能性のひとつとして精査しているものと思われます。 いずれにせよ、この問題は原因が判明すれば必ず技術的な対策を打つことが可能な範疇にあります。 TVのワイドショーの一部などで市民の不安を煽るような過剰気味の報道が散見されますが、過度に神経質になる必要はありません。 必ず収束するはずですから、冷静に行政当局の対策を見守りましょう。 ・・・ このエントリーが本件に関して読者の参考になれば幸いです。 (木走まさみず) その2: http://ameblo.jp/tomamx/entry-11261603684.html 利根川水系でのホルムアルデヒド問題、一気に進展がありました。 さて、ヘキサメチレンテトラミンからホルムアルデヒドができる機構については、ほとんどのニュースで「塩素と反応して」と書かれています。 http://mainichi.jp/select/news/20120525k0000m040117000c.html (引用開始) ヘキサメチレンテトラミンはアミン類の化学物質。無色の固体で水に溶けやすく、水中で塩素と反応すると分解され、ホルムアルデヒドとアンモニアになる。 (引用終わり) しかし、反応式で書くと、 (CH2)6N4 + 6 H2O → 6 H2C=O + 4 NH3 のはずであり、「塩素」がどう関与するのかどうにも納得できなくて、色々調べましたが、なかなか理解ができませんでした。 結論としては、塩素と反応するのではなく、塩素消毒で用いられる次亜塩素酸により水が酸性になって、その酸の触媒作用で上記の反応が起きるのだろうと考えます。すなわち、「塩素」そのものは無関係でしょう。 一般の人にはどうでもいいことかもしれませんが、ニュース記事を書く人は科学的に裏を取ってから書いてほしいものです。 その3: http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/topics/2010/09/05.html http://blog.livedoor.jp/route408/ 2012年05月26日 ヘキサメチレンテトラミンとは何か まず少々お知らせ。CASでは、化学関連の注目コンテンツを、動画やポッドキャストなどで配信しています。一部は日本語訳もされており、聞きやすい構成になっておりますので、ぜひお訪ねいただければと思います。発音のよい英語ですので、ヒアリングのなかなかよい練習にもなります。 CASメディアライブラリー * * * * * さて先日来騒ぎになっているホルムアルデヒド汚染の件、ヘキサメチレンテトラミンが流されたものと確定したようですね(ニュース)。廃液にヘキサメチレンテトラミンが入っていることを、委託された業者が知らされていたとかいなかったとかもめているようですが、いずれにせよ何十トンもの廃液を処理するには、認識が甘かったといわれても仕方ないところでしょう。なおホルムアルデヒドの性質については、以前本館に書いた記事をご覧ください。 ホルムアルデヒド(左)とヘキサメチレンテトラミン(右) さてこのヘキサメチレンテトラミンという、舌をかみそうな物質の正体はどんなものでしょうか。この名は、ヘキサ+メチレン+テトラ+アミンと分解されます。ヘキサはギリシャ語で「6」、メチレンは-CH2-という単位、テトラはギリシャ語で「4」、そしてアミンは窒素化合物を指します。上右図をよく見ていただければ、メチレン(灰色と白)が6つと、窒素(青)が4つから成る分子であることがおわかりいただけると思います。 ホルムアルデヒド(H2C=O)という化合物は、いろいろな化合物と結びつきたがる性質があり、その際に水分子が抜けていきます(脱水縮合)。で、ホルムアルデヒド6分子とアンモニア(NH3)4分子を脱水縮合させたものが、問題のヘキサメチレンテトラミンということになります。 6 H2C=O + 4 NH3 → (CH2)6N4 + 6 H2O ヘキサメチレンテトラミン自体はかなり安全な物質で、尿路感染症の治療薬に使われるほどです。しかし酸などの存在下ではわりに簡単に分解し、もとのホルムアルデヒドとアンモニアに戻っていきます。今回の事故では、消毒の塩素などと反応して分解したものと考えられます。実は先の尿路感染症治療薬というのは、体内でヘキサメチレンテトラミンが分解してできる、ホルムアルデヒドによって殺菌を行うというメカニズムです。 折り紙でモデルを作ってみました(筆者は決してヒマを持て余しているわけではありません)。 布施知子氏の作品(「生長する立体」に収録)をアレンジしたもの。 ヘキサメチレンテトラミンは、フェノール樹脂の原料、ゴムなどの硬化剤として用いられます。これらも、分解してできるホルムアルデヒドが分子と分子の間をつなぎ、固定してしまうために起こる現象です。要は、ヘキサメチレンテトラミンとは、本来は気体であるホルムアルデヒドを扱いやすく固めたものと思えばまずよいでしょう。 ホルムアルデヒドには発がん性なども報告されていますが、今回の濃度程度であればまず心配する必要はないでしょう。一時基準値を多少超える濃度が検出されましたが、基準値というものは大幅に安全域をとってあり、一度や二度基準値を超えたものを摂取しても問題ないように設定されているからです(このあたりに関しては、拙著「化学物質はなぜ嫌われるのか〜「化学物質」のニュースを読み解く 」などご参照いただければ幸いです)。むしろ今回に関しては、断水したことによるパニックや、感染症リスクの方が高かったかもしれません。毎度のことながら、このあたりは難しい判断になります。 また例によって、放射能がらみのデマなども流布したようです。いちいち説明するのも面倒なくらいのものですが、放射能とホルムアルデヒドの生成は何の関連もないし、今まで何ともなかったのに1年経って急にこんな現象が起きる理由も考えられません。専門家から見ればバカバカしいの一言で終わってしまう話ですが、こういうことにも丁寧に説明・対応していく人材が、やはり今後必要になっていくのかなという気はしています。 |
|