-------

       日本の原発の将来  12.06.2020
           CO
ゼロ電源の重要性



 菅首相が2050年にCO実質ゼロにする、と述べたのが10月26日の所信表明演説。となると、COゼロの電源、例えば、原発をどのように確保するか、それが非常に重大な政治的な課題になる。
 ところが、12月5日の朝刊によれば、
大阪地裁が、「審査不十分で違法」という判決を、12月4日、関西電力の大飯原発の3号機、4号機に対して出した。「安全審査基準に適合するとした、原子力規制委員会の判断は誤りだとして、福井県の住民らが国に原子力設置許可の取り消しを求めた裁判で、森健一裁判長は「審査すべき点をしておらず違法だ」として国に設置許可の取り消しを命じた。
 東京電力の福島第一原発事故を踏まえた新規制基準下で、原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてのこと。
 さて、この先、どのような展開が考えられるのだろうか。
 今晩は、NHKテレビでウィーンフィルによるベートーベンの第9を聴いていて、アップが遅くなりました。


C先生:歴史的に見れば、
しばしば起きることがまた起きた、というのが正しい認識だろう。原発に限らないけれど、安全性を確保することは、あらゆるケースで非常に重要なことだ。特に、原発の場合には、福島第一事故を教訓としなければならないので、より重要なことになる。

A君:
安全性を確保することは、どのような製品についても極めて重要ですね。例えば、自動車。事故の大部分は運転手に責任があって、車に責任があるケースは相当に少ないのですが、全くゼロという訳ではない。

B君:自動車メーカーの場合、もしも自動車に事故の責任があるとなったら、その車は全く売れなくなる。そのメーカーの車全体にも甚大な影響が出るだろう。

A君:
原発の場合には、取り扱っているエネルギーが大きいので、万一事故になってしまったら、その被害は莫大になりうるので、相当に慎重にならなければならない。

B君:今回の対象である
大飯原発は、関西電力にとって悪魔のような森山氏の事件があった例の高浜原発の近くにある。若狭湾には、東から、敦賀発電所(日本原子力発電、1970年営業運転)、美浜発電所(関電、1970年営業運転)、大飯発電所(関電)、高浜発電所(1974年営業運転)とあって、それ以外にも例の事故を起こした「もんじゅ」(高速増殖炉、2016年に廃炉が決定)もある。

A君:原発が集中しているので、原発銀座(古い!)と呼ばれたりすることもある地域。

B君:しかし、昔からあの地域の産業としては、漁業ぐらいなもので、
国道367号線から303号線は、今でも鯖街道と呼ばれていて、京都に魚を運ぶ街道だった。

C先生:そう言うけど、本当は素晴らしく良い地域だと思う。
敦賀市から始まり、海岸線を西に向かう27号線は、是非、ドライブして貰いたいと思う。すぐ、美浜町に入るが、その先には、三方五湖と呼ばれる景勝地があって、その先には、小浜市、その先には大飯原発がある大島。そして、高浜町も小さな半島で、そこには高浜原発。そして、県境を越して、京都府に入る。舞鶴市の先で27号線は南に下ってしまう。その先は178号線で、天橋立がある宮津市になって、そこから、丹後半島をぐるりと回って、途中には、これも有名な漁村である伊根町。さらに日本海側に出れば、丹後半島の付け根には、琴引浜などの海水浴場がある。この地域は、カニの季節は最高。さらに行けば、ちょっと内陸に入るけれど、豊岡市。ここは、コウノトリと玄武洞と呼ばれる玄武岩による柱状節理で有名。「玄武」という名前は、「玄武岩」にも使われているが。地質学者の小藤文次郎が命名した。京都大学の地球物理学者の松山基範博士が、この場所の玄武岩の磁気を研究して、260万年前から78万年前は、地球の磁場が反転していたという説を発表

A君:
関東地方では、地球の磁場の反転を証明する地層として、チバニアンがあるのはご存じの通り。

B君:いずれにしても、人口はかなり少ない地域ですね。

C先生:敦賀から宮津あたりまでは、海岸線が非常に複雑なのだ。ということは、人口も少ないこととほぼ同義なので、原発の建設地として良いということになったのだと思う。

A君:ということは、やはり、原発を作られたということが、住民にとっては、ネガティブな思いをもつ原因ということになりますね。

B君:それはそうだろう。やはり、身近にあると何かが起きるのではないか、と思うのが自然の発想だろうから。

A君:しかも、
放射線という人間の目には見えないものが、人体に健康被害を与える可能性があるというのだから、恐怖を感じるのが当然ですからね。

B君:しかも、原発が集中して存在している。
美浜には1〜3号機。大飯には、1〜4号機。高浜にもやはり1〜4号機、以上が、関西電力

A君:そして、
日本原子力研究開発機構(日本原電)の高速増殖炉「もんじゅ」、廃止措置のための研究炉として「ふげん」、さらに、2機の発電機を持つ敦賀発電所

B君:という訳で、若狭湾は、原発の集中地域になってしまった。再度、その理由をまとめると、
(1)固い岩盤があり、地震動が小さい。
(2)大量の海水を使える。
(3)広い建設用地がある。
(4)地元住民の理解がある。


C先生:それでは、今回の原発安全審査の内容について、もう少々細かい説明をしてもらおう。

A君:了解です。参考にするのは、日本経済新聞の12月5日の朝刊の第2面です。かなり大きく取り上げられています。また、社説の半分が、やはり、この話題になっています。

B君:まずは、
日経の社説からの引用で行くか。社説のような文書を読み解くには、多分、以下の5つの記述に分けて考えるのが良いと思う。
 
1.大阪地裁の判定=「規制基準を満たしているという原子力規制委員会の判定は誤りであるから、取り消すことを命じる」。
 
2.判定が対象としたこと=「原発付近で想定される最大の地震の揺れを示す『基準地震動』について、関電が算出した数値を規制委員会が妥当とした判断は妥当だとは言えない」。
 
3.上記の意味=「これまで基準地震動は他の原発でも大飯原発とほぼ同様の手法を用いて計算していた」が、今回の判決は、「審査の規制基準そもののに、看過しがたい過誤、欠陥がある」と妥当性に疑問を投げかけた。
 
4.過去と同じ手法で判定をすれば、その判断が許容されるのが通常。しかし、今回は、それでは不十分とした。
 5.今回用いた基準地震動は、関電が敷地周辺の活断層などの情報をもとに算出した、856ガル。
 6.
規制委員会が安全審査の際に参照する基準地震動の審査ガイドでは、地震規模を算出する経験式の「ばらつきも考慮する」とされている。
 7.
原告側は、856ガルにばらつきを考慮すると、約1.3倍にすることが必要で、1150ガルと主張した。

A君:この日経の記事が正しいとすると、どうも、
「ばらつきも考慮する」ということが記述されている、基準地震動の審査ガイドに問題があるということになってしまうのではないですか。

B君:審査ガイドは規制委員会が作ったのだろうと思う。そして、
規制委員会は、今回の裁判でも、 「複数の活断層が繋がっている可能性を考慮するなど、『十分に安全側に立った対応を関電に求めた』」と主張したとのこと。しかし、認められなかった。

A君:原発の裁判は、しばしば行われるけれど、
規制委員会の行う安全審査の信頼性がそもそも大丈夫か、と問われることは聞いたことが無いですね。

B君:今回の判決は、その意味で、極めて面白い。なぜなら、
裁判が専門である判事は、原発の安全性の専門家だとはとても思えない。しかし、今回、原発の安全性が専門である規制委員会の判断にイチャモンを付けた

A君:これまでも、いくらでも原発の差し止め請求の裁判は起きるのだけれど、多くの場合、
その判事が「自分の判事人生の最後として、目立つ判決をしたい」と思って、そのような判決をした、としか思えないようなものばかりだった。

B君:今回の裁判長は、
森健一判事が務めた。年齢を調べてみると、新日本法規のサイトには、すべての裁判官の情報が出ているので、簡単に分かる。1969年9月10日生まれ。京大卒のようだ。まだ若い。これまでのケースとは違うようだ。

A君:森判事が、どのぐらい原発のリスクというものに対して理解していたかは、極めて疑問で、
今回の判決についても、実は、手続き的に見たとき、どのような疑問点があるか、という判断によって、イチャモンを付けたと考えられますね。一方、定量的な判断に対しては、かなり疑問で、具体的には、「ばらつきも考慮する」と、なぜ、「1.3倍になる」のか、という理由が良く分からない。そこに、科学的な説明はあり得ないように見えますね。

B君:この判決を見ると、上級審に行ったとたんに、「なぜ1.3倍なのだ」という科学的根拠の説明ができないで、終わりになってしまいそうだ。

A君:規制委員会が安全よりの判断をするようにということで、付け加えたのだと思う。まあ、ある意味で当然の方向性なのだけれど、その安全よりがなぜ1.3倍なのか、それについては、誰も根拠を説明できる訳は無い。ということになってしまうのが、結論なのではないですか。

B君:という意味では、
森判事の判決は、高裁で簡単に却下されるということになる。まあ、これまでの例でも似たようなものだった。

C先生:そろそろ終わりにするか。実は、
先日、中部電力の浜岡原子力発電所を見学させてもらった。浜岡の沖には、南海トラフがあって、もしも巨大地震が起きたときに、どのようにして、浜岡原発を守るのか、どのような対策がされているのか、を知ることが一つの目的だった。そこで、理解したことは、やはり、場所としての危険性を十二分に理解して上で、何ができるのか、それをとことん議論して、あらゆる対応に対して、充分なマージンを取るのは当然として、さらに、2割増し、3割増しの安全対策を行っているということが分かった。とにかく、原子炉が冷やせなくなったら、大変なのだ。

A君:浜岡原発は、
菅首相のときには、津波への対策が不十分ということで、1、2号機は老朽化による廃炉準備へ、3号機は定期点検によって停止、そして4、5号機は、その要請のために運転を停止。そして、その後、予測される18mの津波が襲うことを想定して、21mもの防波壁を作った。これで充分かどうかは、自然を相手にしたときには、分からないとしか言えないが、とにかく、最善の努力をしない訳には行かないのです。

B君:一方、
福島第一の事故は、どう考えても、準備不良で起きた。給水車・電源車が、ほとんど無かったのではないだろうか。最近の原発には、給水車と電源車がどこにでもゴロゴロと存在している。1台いくらするか知らないけれど、東電は、福島第一で、どうしてそのぐらいのことが準備できなかったのだろうか。

A君:それは、色々な言い訳があったようです。要するに、その当時、
給水車・電源車を十分の台数準備すると、『なんだ、原発も事故を起こすんだな。だから、給水車・電源車が必要なんだ』、と言われてしまう時代だったのも事実。

B君:しかし、
安全性のために外部から2回線で来ていた電源線が、最後のところで1本にまとまっていたとか、福島については、もうあと何年も使わない原発だからということで、全く対応をする気が無かったのではないだろうか、と個人的には疑っている

C先生:いずれにしても、
原発という仕組みは、やはり非常に大きなエネルギー源なのだ。しかし、扱うエネルギー量が多くなれば、それだけ、厳密な対応をしなければならないという宿命がある。しかも、原発が事故を起こして、福島のケースのように、放射線をばら撒くようなことが起きてしまったら、居住不可という地域ができてしまう。これは、絶対に回避すべきことなのだ。となると、自然というものがどのようなことを起こしかねないか、ということを非常に厳密に考え、さらに、どのぐらいの安全係数をかければ良いのか、ということも十二分に分析した上で、対応を考える必要がある。しかも、厄介なことには、人間が作った人工物には、例えば、防護壁を作ったとしても、どうしても寿命というものがある。これらに対して、あらゆる対応をした上で、見逃した部分は無いのか、という隅々まで配慮することが必要不可欠なのだ。やはり、大エネルギーを扱う設備というものには、極限までの繊細な気使いが不可欠なのだと思う。
 
原発がそんなに面倒なら止めてしまえば良いのだ、と言う人もいるかもしれない。しかし、人間なるものは、さらに、面倒な状況に置かれていることを認識すべき。それは、地球温暖化。より正確には、化石燃料からのCO排出による気候変動。日本の場合であれば、台風が極めて強力になると同時に、日本に近づいても、勢力が落ちなくなる。さらには、太平洋の海水温度が上昇するけれど、恐らく、黄海の海水温度はそれほど上昇しないので、その温度差が広がり、その結果として、九州では、線状降雨帯のような現象が常時起きても不思議ではない状況になる。
 となると、CO
を排出しない自然エネルギーに依存すべきなのだけれど、自然エネルギーというものは極めて厄介。なぜかと言えば、風とか太陽に依存するので、お天気だのみ。ということは、どこまで頼りになるのか良く分からない。少なくとも、24時間操業をしている事業者にとって、太陽光発電だけでは夜間操業が無理なのは、極めて明確なこと。そして、風力は、無風になったら電力ゼロも明らか。
 
最終的なエネルギーは、やはり、核融合だと思う。しかし、このプロセスに行くには核分裂で十二分な経験を積んだ上でないと、かなり難しいのではないだろうか。核分裂による発電も、恐らく、今のような超大型の装置を使うのではなく、Small Modularと呼ばれる、小型の原発を10台ぐらいまとめて1台分とするような発想になるだろう。やはり、今の原発は余りにも巨大システムすぎると思うので。