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      自動車もすべて電動車に 12.27.2020
        政府目標2030年代半までに

               



 このところ、2050年COネットゼロ宣言に対する、具体的な方策の情報が多く出ている。当然のことが言われているだけではあるけれど、一般的に普及している知識ではないので、消費者である市民にとっても、非常に重要な情報だと思う。
 12月23日には自動車に関する情報が発表され、12月25日には、ほぼ全領域をカバーした情報が発表された。
 しかし、情報量が余りにも多いので、
今回は、自動車の未来像に関する情報のみを取り上げることにする。

自動車未来像
 政府は、
2030年代半ばまでに新車販売を電動車にする目標について、軽自動車もすべて対象に含める方針であることが、日経の12月23日朝刊の一面と五面に掲載された。この決定も、2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする実行計画の柱の一つ。軽自動車を対象とするとなると、一つは、コストの問題、さらに、蓄電池が重いことも問題となる。そのためには、小型蓄電池の開発や生産の支援にも取り組む。
 
電動車にする目標では、将来、ガソリンエンジンだけで走行する車はゼロとなり、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)に限定する。
 バスや大型トラックなど商用車は扱いを引き続き検討する。


C先生:
2050年に温室効果ガス実質ゼロを目指すのであれば、当然、自動車は重要な対象となる。だから、自動車のCO排出規制は厳しくなる方向性であることは確実。完全に電動化すれば、充電に使う電力がCOゼロであれば、自動車の排出量もCOゼロになる。燃料電池車の燃料は水素だろうから、この水素を製造する段階でCOが発生しなければ、COゼロ車ということになる。問題は、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車で、その規格をキッチリと抑えて、いわゆる「ハイブリッド車もどき」の存在を否定できないと、肝心のCOゼロには繋がるような排出量削減にはならない。なぜなら、ハイブリッド車とは、電気モータとガソリンエンジンの2つの動力をそれぞれの弱点を補う形で高効率を実現しているため、電気モータの出力が小さければ、高効率とCO大幅削減は難しい。このような車をハイブリッド車と呼ぶことは不可能ではないが、どこかに、ハイブリッド車の定義、例えば、エンジンと電気モータの出力比を明示すべきだと思う。電気モータの小さなハイブリッドを、マイルドハイブリッドシステムという呼び方もあるようだけれど、良さそうに思えるのは、まあ名前だけで、CO削減にそれほどの効果がある訳ではない。

A君:
軽自動車をハイブリッド化したとした例を見れば、その効果は、まあ、発進が若干スムースになるぐらい。現行のモデルでの一例を挙げると、エンジンが52PSの出力がある場合、電動機の出力は2.7PS

B君:このぐらいだと、ハイブリッドによる燃費向上はほとんど無い。ハイブリッド車の代表例である
プリウスの場合だと、エンジンが98PSに対して、モーターが72PSとエンジン出力よりやや低いぐらいの出力。

A君:日本の自動車は、世界全体がマーケットなので、当然、世界全体の動きである「脱ガソリン車」を目指すしかないのですが、
欧州車と比べると、ハイブリッド車があることで、随分と有利なポジションにあります。ただし、COゼロも2030年代後半には規制化されるべきと思われるので、やや短期的な優位性で終わるとは思うのですが。

B君:海外の状況もハイブリッドに関しては、不十分な状況。しかし、プリウスのように、運転条件によって、
ガソリンエンジンとモーターの駆動力を自動的に最適化して、最高燃費を目指すという車は海外には無いように見える。要するに、ハイブリッド車という定義が、国によって違うのが、現実ではないだろうか。

A君:さらに言えば、
プリウスのようなフルハイブリッド車は、モータの駆動に使う電圧は600Vと高い。一方、欧州では、48Vの電圧を使うマイルドハイブリッドシステムが注目されている。日本での軽自動車のハイブリッドのようなもの。これは、欧州が近未来車として考えてきたディーゼルエンジン車が、近年、強い逆風下に置かれていることを反映しているのだと思う。

B君:
マイルドハイブリッドシステムは、エンジンが苦手としている低回転数域でモーターを使って、必要なトルクを多少アシストするもの。フルハイブリッドのような大幅の燃費改善は無理で、まあ、15〜20%程度の燃費向上が見込まれる程度

A君:欧州の場合、48Vのハイブリッドは、LV148という標準規格があって、それに準拠したシステムになっているので、複数のサプライヤーが生産しているとのこと。自動車メーカーは、好きなサプライヤーのシステムを選択できる。

B君:どんな技術かというと、
エンジンのスタータと発電機をかねる装置、まあ、モーター兼発電機といった方がイメージが湧く。48Vのリチウム電池、そして、電圧を変化させるDC/DCコンバーターからなる。

A君:簡易型のシステムであることは確実なので、EVモードで走行できるだけのパワーはない。それでは
メリットは、というと、共通システムだけに、とにかく低コストであることぐらい。

B君:当然のことながら、この簡易型の最大のデメリットは、大幅な燃費向上が期待できないこと。

C先生:このあたりの話になると、2015年ぐらいまで、
ドイツを中心に、燃費が問題ならディーゼルで対応できると思ってしまった自動車企業の判断が大間違いだったのだ。ディーゼルに対する世界的な逆風が起きることが予測できなかったのだから。

A君:ネットをチェックすると、「ディーゼルに逆風」という記事が書かれているのが、2018年6月ぐらいまで。

B君:より正確に言えば、
ディーゼルに逆風が吹いたのは、フォルクスワーゲン(VW)が不正問題を起こしたから。具体的には、2015年9月18日にアメリカの環境保護局(EPA)が記者会見を行い、VWが排ガス検査時に不正を行っていたと発表。これがちょうどフランクフルトモーターショーの開始時点と重なって、世界に衝撃が走った。

A君:問題となったのは、ゴルフ・パサート・アウディなどに搭載されていたEA189と呼ばれるディーゼルエンジンで、
国際クリーン交通委員会の調査で、走行時に基準値の10〜40倍ものNOxが排出されていることが判明

B君:さらにVWの信頼を失ったのが、
「それはソフトウェアの誤動作が原因」として、リコールを行ったのだ。しかし、ソフトを書き変えても、排ガスには改善が見られなかった。そして、最終的には、VWは検査時に不正を行っていたことを認めるざるを得ないことになった

A君:車が検査されるときには、シャーシー・ダイナモと呼ばれる装置の上に置かれて実施されます。鉄製のローラーの2本に動力側の車輪が置かれて、排ガスを検査する。
VWがやったことは、検査中であるかどうかを判定するソフトを仕込んで、検査中だと思われる場合には、排ガスを最大限にクリーンにするモードに切り替わるようになっていた。実際の走行時には、それは解除されて、燃費やパワーを重視したモードになっていて、大量のNOxを排出していた。

B君:
滅茶苦茶だな。極めて悪質な対応。そのディーゼルエンジンは、アウディA3にも搭載されていた。これで、CEOも退任に追い込まれたけれど、当たり前だ。

A君:
それ以後、RDE=Real Driving Emissionという試験方法になりました。可搬型の装置を車に載せて、路上での通常走行時に排ガスを計測することになったので、不正は非常にやりにくくなった。

C先生:自動車の排ガスに対する規制には、こんな歴史も有ったけれど、最初に規制化されたのは、
有害性のある排ガス成分(NOxなど)に対する規制であっても、COの排出量が対象になることは無かったのだ。それが、パリ協定以後、大幅に変わった。COによる地球の温暖化が大問題であるという認識になって、自動車は2030年代半ばで、すべて電動車になるという時代になった訳だ。やはり、パリ協定の影響は非常に大きいね。

A君:さて、日本での対応に戻りますが、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)に限定されることですが、どの技術も少なくとも日本では、ほぼ完成形になっていますから、ほとんど問題はないですね。

B君:例外が軽のハイブリッドぐらい。ところで、世界全体の動向から未来像を考えると、
燃料電池車が長距離用の主流になり、EVは町中などの比較的走行距離が短い用途に使われるのではないか。すべてが燃料電池車になるまでには、水素ステーションの整備などが不可欠で、充電ステーションとは比較にならないぐらい時間が掛かるだろうから。

A君:その充電ステーションでも、色々な状況ですからね。
ドイツでは、直流高速充電器の電圧上限は、EVの充電時間を短くするために1000Vのようで、900Vの給電のステーションを増やそうとしているようです。最大の電流値は、なんと400A。

B君:
日本の規格CHAdeMOは、どんどん規格が進化していて、2018年の仕様書2.0によれば、350〜400A×1kVまで行ける。それが、中国と共同開発を予定している仕様書3.0だと、600A×1.5kVになるらしい

A君:最終的には、国際標準と互換性を確保するのでしょうね。東洋標準に留まることはあり得ないのですが。島国だけにかなり心配。

B君:中国と規格を共有することは、自動車の使用台数を考えれば、確かに、一つの強みにはなる。
日本の保有台数は、乗用車(含む軽)で600万台。中国はさて。。。

A君:
中国の乗用車の保有台数ですね。このデータかな。19年末時点になりますが、2億2千万台。なんという数だ。過去5年では、年平均で約2千万台が増加している。

B君:どのぐらい運転免許を持っている国民がいるのか、ちょっと調べたら
2019年で機動車両の免許保持者が4億3500万人。そのうち、自動車の運転免許保有者数は3億9700万人だって。ちなみに、機動車両とは、自動車に加え、二輪車などエンジン付きの車両を意味するとのこと。

A君:やはり、人口が多いということは、市場がそれに比例して大きいということですね。日本車のCO
ゼロ車も、中国向け車種を開発しないと。

C先生:
北京に行くと、もっとも今年は行けなかったが、メルセデスやアウディとかに加えて、テスラがかなり走っているのだ。中国人の金持ちは、日本人の金持ちの人数より確実に多いと思う。特に、日本より、アウディとテスラの数が多かったように思う。

A君:テスラについては、これが先進的だと思う中国人が多いのでしょうね。

C先生:それに
中国の自動車の使い方は、日本とはちょっと違う。まず、高級車には、かならず運転手が付いている。だから、電気自動車の充電のために時間待ちをするオーナーは居ない。それよりもっと重要なことは、中国は広すぎて、国内をカバーする交通網となると、飛行機が標準。新幹線でも近いところにしか行けない。なぜなら時間が掛かりすぎるから。

B君:中国の国土は、東西5000km、南北5500kmと思えばよいようだ。もっとも、日本も国土は細いけど、東西も南北も3000kmぐらいあるのだけれど。

C先生:そろそろ終わりにするか。
比較的早い時期に化石燃料はほぼ使えない状況になるだろうから、車と電力、この2つをいかにゼロカーボン化するか、これが重大な鍵となることは事実だ。
 日本政府の方針は、
2030年代半ばでの新車販売を電動化ということだが、電動車の定義にマイルドハイブリッド含むようなものであれば、いささか遅すぎるのではないだろうか。COを排出する中古車をいつまで許容するかによって、話は多少変わってくるので、その限界点を2040年とでもすれば、他の国々から非難されることもないかもしれないが、最近の車の寿命は非常に長いので、明確に何年以降は純ガソリン車・純ディーゼル車は禁止ということを早めに明らかにすることを期待したい
 世界的な情勢としては、単に、CO
の排出量だけで規制をするという方向性ではない。まだ、詳細が決まっている訳ではないが、ライフサイクルアセスメント(=LCA)の考え方を組み込んで、生産、走行、廃棄の全ライフサイクルでのCO排出量を定義することが、地球環境を考えたときには、より正統的なアプローチであることが確実だ。