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   一般的な未来を読む方法論 予告編 
       「びんリユース」での講演から  03.11.2018

               



 これまで、環境省の資料作りをかなり経験させて貰ったお陰で、未来を読む(≒予測する)ために、どのような方法論を採用すべきか、定型的な方法論があるような気になっています。

 その方法論の記述は後ほど行うとして、やはり、その準備のために色々な仮定を設定するといった準備が不可避であることが分かります。未来を読むための一般的な方法論というものはあるのか、あるとしたら、どのようなものなのか、といったまとめを行ってみることにしました。今回は、予告編です。

 しかし、間違えないでいただきたいことは、正確な未来などは決して読めないということです。なぜならば、日本の場合であれば、大震災のようなものが発生したら、経済予測は一瞬にして崩れます。政治的状況も同じで、トランプ大統領が当選するかどうか、その影響は極めて大きな影響要因であったことは、言うまでも無いことでして、このような事件が起きると、未来予測は、基本的に要再検討になります。

 このように完全な未来予測は、偶発的な事象が起きれば、不可能です。だからといって、未来予測をしないで良いということではありません。自分自身の生活を防衛するためにも、自分自身の未来予想図は、書いてみる必要があると思います。

 様々な未来技術、例えば、人工知能などに対して、同様の予測をするぞ、という感覚を持っていることが、自分自身の防衛行動の一種にもなると信じております。

 IoT(Internet of Things)、要するに、なんでもネットに繋がっているという状況を意味しますが、これによって、どのようなことが可能になるのか、やはり、不可能なことが残るのか、そのような判断をすることは、もしも企業戦略を立てる場合にも非常に重要なことです。

 未来が多少なりとも読めれば、会社の経営体制、例えば、どのような専門家を育成すべきか、企業内教育はどのようなものをやるべきか、などなどが若干分かりやすくなります。

 毎回述べておりますように、2015年に世界は大転換時代に入りました。しかし、日本という国は、まだまだ以前の継続状態を維持しています。ということは、未来を読まなければならない、個人、企業、団体などが多数存在していることを意味していると思います。

 という訳で、中身は相当いい加減であることは否定しませんが、未来を読むとはどのような知的作業であるのか、その大枠を記述をしみたいと思います。

    
C先生:これまで、環境省の地球温暖化に関わる将来予測には、毎回、関わらせて貰ってきた。その作業のやり方は、大体、理解している積りではあるけれど、その大雑把な枠組がどのようなものであるのか、という記述をしたことが無かった。日本人にとっては、割合と苦手な作業であるというようにも思うので、その一部を記述することで、なんらかのヒントを得ていただければと思う次第。

A君:これまでも排出量の将来シナリオは、いくつもありましたが、大体同じような方法論によって作られてきています。いわゆるマクロフレームと呼ばれるものを設定して、場合によっては、いくつかの異なるパラメータ、例えば、人口が何人になっているか、一人あたりのGDPがどのぐらいになっているか、などの仮定をして、最終的には、製造業、エネルギー、商業、個人生活などからどのぐらいのCOが放出されるか、予測するという方法になりますね。

B君:C先生が関与したのは、もっと昔からかもしれないけれど、未だに記録に残っているのは、この「2013年以降の対策・施策について」というものではないか。

C先生:一番、記憶に残っているのは、確かに、これだった。この内、マクロフレームWGというものの座長を確かにやっていた。全体像としては、このWebサイトに記録が残っている。発表は2012年だけれど、多分、2010年ぐらいから検討していたのではないか、と思う。
https://funtoshare.env.go.jp/roadmap/from2013.html

A君:このとき面白かったのは、未来社会を5つに分けたことでしたね。最初の未来予測は2005年に行われていて、そこで描かれた社会は、2つの社会。一つは、ドラえもん、もう一つが、サツキとメイの世界(隣のトトロ)。このイメージ戦略がすごかったですが。

B君:それが、この2013年以降の対策・施策についてときには、かなりまともな未来社会像の分類になっている。社会を5つの類型に分類している。
 それは、
 (1)ものづくり統括拠点社会
 (2)メイドインジャパン社会
 (3)サービスブランド社会
 (4)資源自立社会
 (5)分かり合い社会


A君:内容は比較的単純な発想からできていて、日本のように、資源を輸入しなければならない国にはある程度の外貨が不可欠。その外貨をどのように稼ぐかで分類されています。
 (1)ものづくり統括拠点社会(R&D社会)では、日本のものづくりそのものは、実は海外で実施。しかし、その統括拠点が日本国内にあるというイメージ。
 (2)メイドインジャパン社会(Made in Japan=MiJ社会)は、当然、海外生産もするものの、現時点の自動車のように、日本国内に下請けのサプライチェーンが存在している社会。
 (3)サービスブランド社会(Service Brand=SB社会)は、日本ブランドを打ち立てて、そのサービスの良さで、海外から旅行客や海外への日本製品の輸出で生きるという社会。
 (4)資源自立社会(Resource Independent=RI社会)は、できるだけ日本にある資源だけで産業を動かす。かなり限定的な社会。
 (5)分かち合い社会(Share社会)。文字通りシェアー社会。
 これらのうちの1種類になるという話ではなくて、ある割合での混合型になるという話。

B君:そのとき、一所懸命に考えてこの5類型を作ったのだと思うけれど、(1)R&D、(2)MiJ、(3)SBは、現時点でも並立状態。その中で急速に伸びたのが(3)ということ。(4)RIはこれまで、ほとんど意識されていない。しかし、パリ協定のために自然エネルギーの重要性が高まって、必然的に、(4)RIの発想が重要であることは、認識され始めた。(5)Share社会は、カーシェアリングのようなことが段々と普通になっていて、今後、自動運転が普通になると、自家用車を持つ人は減るだろう、とまで言われている。要するに、余り妙な分類では無かったということなのでは、と思う。

A君:しかし、この検討の時点でも、移民の数の推定を行っているところは、しっかりとモノゴトを考えていたということみたいですね。MiJ社会だと2050年時点で250万人の移民、SB社会だと500万人の移民が仮定されている。

B君:それぞれの社会に対して、それぞれのマクロフレームが別々に設定されていて、なかなか面白い解析が行われていたと思う。Share社会にすると、国内総生産の総額が、MiJの場合の半分になってしまうとか。

C先生:本日の本題は、実は、この過去の未来予測を議論することではない。そのうち、新しい未来予測がでたら、再度、細かく議論したいと思っているのだ。しばらく保留ということにしたい。それなら本日は何を議論するのか。それは、このような解析を行う以前の議論が必要な状況になっているということなのだ。それもこれもパリ協定の影響なんだ。

A君:なるほど、パリ協定が定めた未来シナリオが、新しい検討課題を提示しているということですね。当然、それは再生可能エネルギーの大量導入という、ほぼ唯一とも思われる解が全体に影響している。

B君:そういうことだろう。このパリ協定の影響は、非常に大きくて、人類が今後目指すべきイノベーションがどのようなものか、それを可能にするような資源などが地球上にあるのだろうか、といった問題になる。ということは、これまでの未来予測とは違って、単に、経済がどのような形態になっているか、とか、未来時点での人口とその構成がどうなっているか、とか言った人間社会だけの要素では、未来は語れなくなったということを意味するのだ。

A君:待ってくださいよ。となると、地球だけの問題でもないとも言える。例えばあるイノベーションを行おうとしたとき、資源限界は地球だけで決まるものの、エネルギーというものは、そもそも何なのか、それは地球だけの問題なのか、それとも、より大きなもの、多分、宇宙のようなものがエネルギーの利用可能性などについては、制約している、ということは無いのかまで考える必要があるということですか。恐らくは、実際、その通りなんですが。

B君:まあ、そういうことなのではないか。なぜ、地球上には、元素がこれしかないのか、そして、その量はどうやって決まっているのか。そして、我々が地球上で利用可能なエネルギーというものは、実は、宇宙限界で決っているのではないか。こんなところから議論を始めることが不可欠であって、大言壮語をすれば、「そもそも、人類の存在とは、宇宙レベルで見たときに何なのだ。その活動の限界はどこにあるのか」、こんな認識を議論し、共有することが大前提になりうるということなのではないか。

C先生:まあ、そんなところだろう。しかし、このような認識は、現時点で未来予測をしなければならない人々の間ではすでに共有されているのだけれど、それなら一般社会ではそのような発想があるのか、と言えば、それは全く無い。非常に重要なことだとは思うのだけれど、現実に囚われすぎている世界、例えば、国会議員などに、このようなことを議論して欲しい、といっても、「超現実的で、とても無理だ」と拒否されることだろう。当然、企業経営者の大部分も「無理だ!」だろう。しかし、日本人全体が、「無理だ!!」と言うのではなくて、極一部の人々で良いから、このようなレベルから物事を考えている、という状況を作り出しておくことが、必須に近いことなのではないか、と思うのだ。なぜならば、現時点だけだと、経済的な成長を行うことが最大の目標になっているが、残念ながら、地球というものに限界があることは、ほとんど意識されない。したがって、「パリ協定」も理解されないし、「惑星限界=Planetary Boundary」といったことを認識すべきだ、という意見がでてとしても、現経済界で理解しようとする人は極めて希少なのだ。まあ、なんとかなるだろう、といういう信念に基いて、経済最優先を主張している。それは、現在の経営者が経営者である時間は短いので、その範囲内では確かにその通り。しかし、それ良いのか。

A君:最近、SDGsがやっと企業経営者の関心事項になりつつありますが、それも実は、現実的な利益との関係が主な動機ですね。SDGsを無視していると思われると、投資もしてくれない、融資すら無理、さらには、保険料が高くなるという金融系の動きがあって、そのために、すなわち、経営のために、止むを得ずSDGsに取り組む、あるいは、取り組んだ振りをすることの重要性に気付いた。

B君:まあ、残念ながら、それが日本の経営層の意識レベルだ。SDGsは2030年ゴールだから、取り組むことが可能だという解釈なのだろうが。

C先生:実は、昨晩のことになるのだけれど、「びんリユース」に取り組んでいる関係者約20名を聴衆として、議論の時間を入れて全部で2時間ほどの講演をやった。そこでは、宇宙、太陽系といったところが人間の活動にどのような限界を与えているか、というところから、説明をした。なぜならば、ガラスという素材が一体どのようなものか、これを製造するには、どのようなプロセスが必須なのか、などは、元素としての特性によって決っている。まあ、材料学の基礎中の基礎だけれど。こんなことを知らないと、現在のような化石燃料への依存を回避したとき、果たして、ガラスびんは作ることができるのか、もし作れたとしたとしても、どのぐらいの貴重品となるのか、などの相場観を持つことが不可欠だからなのだ。その結論は、そのうちにご紹介したい。

A君:ということは、ここでの話題は、なぜ、宇宙レベルの話から理解して貰わないと、未来社会は語れなくなった。これは、正しく「パリ協定」が引き起こした事態だということ。

B君:「パリ協定」は本当にトンデモナイ影響力というか、破壊力を持った国際協定だと本当に思うよ。

A君:これまでの常識がすべて非常識になる。これが「パリ協定」。これは大変だ。これは、一般教養を一から構築し直さなければならないのかもしれないですね。

B君:しかも、これまで文系の教養しか持っていなかった人々にも、宇宙起源といった理系的な新しい教養を持って貰わなければならない。

C先生:まあ、そういうことで、今回はイントロだけれど、なぜ、「パリ協定」が新しい教養を要求しているのか、といった詳しい説明を次回から行ってみたいと思う。その予告編が今回の記事になったということだ。題して、「パリ協定をあらゆるレベルから考える−宇宙レベルから地域レベルまで」シリーズの第0回目が今回だった。