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  2050年で温室効果ガス半減再考察 06.17.2007
     



 

前回、ハイリゲンダムサミットの合意について、検討を行ったが、その際、どのデータを使うかが問題であった。

IPCCのWG3の報告書を見ていたら、なんと、2004年までの排出実績が出ているではないか。今回は、これを基礎として、再検討を行う。


C先生:これは前回の検討への追加である。IPCCのSPM文書にある図1は、次のようなものであるが、これに基づいた解析を行ってみたい。

図1 IPCC WG3の報告書にある1970年から2004年までの温室効果ガスの排出の実績値のグラフ。小さくしているので、本物は、こちらから見てください。
http://www.gispri.or.jp/kankyo/ipcc/pdf/SPM040507.pdf の5ページ。

A君:データが違うと、やり方は同じでも、当然ながら、解析結果も違う。前回よりもかなり厳しい予測になっている。

B君:まずは、2007年の排出量の推計を行う。その手法は前回とほぼ同様。2000年から2004年までの実績を直線的に延ばして、2007年を推計する方法。および、2000年から2004年の増加率を算出し、放物線的に2007年まで増加するという仮定に基づく推計。

A君:結果的には余り違いは無いようですが。図2がそれ。



図2 2007年推定値から50%削減するといことは、1990年を基準にすれば、31.1〜32.7%削減に相当する。

C先生:31%削減にしかならない、と非難するのは簡単だが、その中身を少々検討してみると、かなり厳しいことが分かるのは、前回と同様なのだが、今回のデータを使うと、さらにさらに厳しい結果になる。

A君:2050年で26〜27Gt−CO2にするとしたら、2004年で、一酸化二窒素の排出量が4Gt、メタンの排出量が7Gt、森林などの腐敗によるCO2が5Gt、森林破壊による放出が3Gt、セメント製造などによる放出が2Gtほど。これらを合計すると、4+7+5+3+2=21Gtになってしまう。

B君:となると化石燃料起源の排出可能な二酸化炭素の上限が、6〜7Gt。これは、2007年の排出量がすでに30Gtを超していることを考えれば、1/5ということになる。すなわち、化石燃料の使用量を80%削減することが必要ということになる。

C先生:1970年のデータを見ると、これが28Gtぐらいだから、2050年の半分より多少多い程度。このとき、化石燃料起源が14Gtぐらいは出ている。すなわち、農業起源などの温室効果ガスもバランスよく減っていることを意味する。

A君:ということは、できるだけバランスよく、すべての可能性を追求しなければならない。

B君:農業、廃棄物、天然ガス採取、森林破壊、などなどすべての局面での温室効果ガスの排出を減らす必要がある。

C先生:先日来、割り箸はもったいないか、という議論があって、中国産の割り箸であっても大した量ではないから、無視できると主張する本を「不愉快」と評価したら、その本の主張を認める発言がブログの方に相次いだ。木を伐採すること自体は、再生量の範囲内であれば、問題はないのだが、その使い方は問題だ。家にでもすれば、30年から50年は、炭素を木材の中に貯蔵することになるが、割り箸では焼却されて、すぐさま大気に二酸化炭素が戻ってしまう。もっとも日本の間伐材を使う割り箸は、恐らく、森林成長を助けるため二酸化炭素の吸収に寄与している。しかし、温暖化対策は木目細かくやらないと駄目だという立場からいうと、やはり、中国産の割り箸は木の使い方として無駄である。「99%の割り箸はモッタイナイ」。