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  環境技術イノベーション 07.01.2007
     



 今回から、htmlのエディターが変わりました。これまでMacroMediaのDreamWeaverだったのですが、Vista用が高いので、IBMのホームページビルダー11を使い始めました。何か妙でしたら、ご連絡を。

 廃プラ圧縮施設のリスクの続きは、事情により、恐らく8月になりそう。

 今回は、昨日の報告。6月30日、土曜日であるにもかかわらず、GIES=Global Inovation Ecosystem 2007の国際会議が、六本木(乃木坂)の元東大生産技術研究所の跡地にある政策大学院大学で行われた。隣の新国立美術館の人気は相当なもので、なかなかの人出だった。


C先生:GIES=Global Inovation Ecosystemという言葉は、元東大教授、元日本TI社長の生駒俊明先生が中心となって作り上げた言葉で、イノベーションを継続的に生み出すことが可能になるようなシステムをグローバルなスケールで作ろう、というようなもの。

A君:エコシステムにかかわるGlobalなイノベーションを追求するというように読めないこともないが、それは本質ではない。

B君:GIESのHPを見ると、最終的なアウトプットとして「利益」と「福利」、「QOL」、「持続可能性」とある。最後の「持続可能性」を企業の持続可能性とは読まず、地球の持続可能性と読めば、それこそなんでもあり。



図1 GIESの定義図

C先生:まあ、環境技術などに対してもイノベーションを起こさなければならない、ということでもあるので、どんな方法が効率的なのだろうか、といった問題意識で会議に参加している。
 本日の問題意識は、環境技術というもので日本という国が国際的に貢献しようとするとき、どのような方法あるいは態度をとることが望ましいのか、ということ。

A君:やはりCDMあたりが気になる。技術開発とその知的財産権、それと国際貢献とのバランス

B君:環境技術で立国をするということは、それで金を稼ぐということ。貢献をするということは、場合によると金を稼ぐという意識ではやれない場合もある。

C先生:そんなところだが、環境技術といっても、ひとくくりで議論すべきではないと言うのがまず基本的な考え方だ。

A君:例によって、環境には、発展段階があるということ。それによって貢献というものの意味が違うということ。

B君:具体的には、日本という国がどのような状況を経験してきていて、例えば中国が、例えばインドが、例えばミヤンマーがどのような状態にあるか。2国間での交流を考えるときには、明らかに両国の状況を両者が認識する必要がある。

C先生:最近、図を多少作り変えた。それをご紹介したい。これがステージ4までの図。これまでは、第一デカップリング、第二デカップリング、というように考えていたが、第一デカップリングを経て、ステージ1に入り、第二デカップリングを経て、ステージ2にはいるという形にした。すなわち、第四デカップリングを経て入るのが、ステージ4に入る。



図 デカップリングとステージ図

A君:二酸化炭素排出量の削減が始まった国がステージ4。

B君:しかし、過去のウクライナのように、経済的規模が縮小することによって、二酸化炭素の排出量が減るという経験をしている国はあるが、それは、デカップリングではない。

C先生:さて、第四デカップリングは、第一から第三のデカップリングとは違う。これがいつでも述べていること。昨日の議論でも、第四デカップリングは特別なのだということを共通概念にしないと。

A君:なぜか。これも繰り返しになるけれど、第一デカップリングは、エネルギーを森林などの自然依存から化石燃料などに転換する段階。これは、住民にとっては、はるかに便利さを得ることができるという現世的メリットがあるから、経済力が付けば、当然、化石燃料に移行することになる。要するに、自然におきる。

B君:次の段階が、第二デカップリングがいわゆる公害系。これは、住民の健康への被害が起きること。水質と大気が大きいが、水質の改善が先行することが多い。大気は、どちらかと言うと遅れる。特に、交通公害は難しい。しかし、これも自然と起きる。

C先生:昨日、中国から2名の参加者があって、午後のこのセッションだけは、他は英語だったのだが、日本語で議論が行われた。といっても、一人は、日本在住。
 話題になったのは、2つあって、まず第一にSOx公害。これは、石炭由来のもの。もうひとつが、自動車。これも、燃料にイオウが含まれていると、SOx公害にもなるし、排ガス処理用の触媒を被毒するので、燃料からイオウ分は除かなければならない。

A君:中国の自動車は、かなりの伸びが予想されますね。現時点では、まだまだですが、一説では、2050年までに17倍になるとか。

B君:規制の状況を調べると、中国はヨーロッパの基準に準拠しているが、北京だと来年からEuro4。全国レベルではEuro3。しかし、この全国のEuro3が、本当は、この7月1日から施行するはずだったのが、国内のメーカーでは未達のところが多いということで、延期になったようだ。

A君:世界的には、大メーカーが支配する自動車市場ですが、中国では、民族系の自動車メーカーが作る安価な大衆車が人気。例えば、ホンダのフィットでも、150万円ぐらいするが、奇瑞汽車製のA1だと半額で買えるために、大人気。

B君:自動車製造というものは、結構広範囲な技術を必要とするのだが、なかなかエンジンまでは自製できない。技術も金も無いから。そこで、エンジンの設計・製造を海外の請負会社などに外注している場合が多い。

A君:排気ガスの処理だけど、まずはイオウ分が多いと触媒の被毒が大変。それがなんとかなれば、触媒の活性物質である白金系の金属の量を増やせばよいのだけど、それには金がかかる。また、触媒担体も世界で二社の寡占状態だから、あまり安くはならない。そこで、触媒などはケチることになるのでしょう。

B君:いずれにしても、Euro3の実施が遅れるようだと、それは「まだまだ中国は経済優先だ」ということになる。

C先生:日本も、ディーゼルの排ガス対策は遅れに遅れた。現在、国、東京都、自動車メーカーが患者に対する補償金を払う方向だが、中国は、経済を最優先しつつ、健康問題が起きるか起きないか、ぎりぎりのところを狙っているような感じだ。だからちょっと間違えば、健康被害がでる。

A君:中国に技術的イノベーションが必要という訳ではなく、技術はすでに存在している。若干コストが掛かってもそれを使うか、使わないで儲けを優先するかという状態

B君:もっと安くて、かつ、効果的な技術はないか、というのが中国の本音だろう。

C先生:世界最高水準の技術は確かに高価ともいえるが、自動車排ガス対策だと、すでに述べたように、白金類の量が性能を決める。だから、中国が希望するような画期的な技術はたぶん存在しないのではないか。

A君:性能はそこそこだけど、安価な技術をアプロプライエト技術と呼ぶが、これは、技術開発の過程で生まれる可能性も無い訳ではないが、多分、全く別の発想でアプローチをやり直さないと生まれないのではないか。だから、中国向きの技術は中国が開発する以外にないと思うのだけど。

C先生:自動車は、中国の狙う基幹産業のひとつだから、有望企業の育成が重要だろう。現時点では三菱製などのエンジンを積んだ車が多いようだが、もう少々規模が大きくなれば、自主開発もできるだろう。韓国のメーカーがだどった道でもあるが。

A君:そろそろ石炭からのSOxの問題に行きますか。

B君:当然石炭発電での脱硫問題だろう。

C先生:現在、中国では、SOxを排出すると、1トンあたりいくらかの課徴金を払うシステムが存在する。現時点では630元ぐらいのようだ。これだと、脱硫装置を付けるよりも安上がりなので、装着率がまだまだ低い

A君:現時、SOxの発生量は、2600万トンにもおよび、日本の20数倍。

B君:中国の今が、日本のいつに相当するか、という話がよく出るが、日本では、1970年に経済優先的な発想が消え始めている。もっとも公害系に限っての話。となると、中国ではまだ5年ぐらいかかりそうなので、1965年程度の発想だろうか。

A君:中国には、国家計画がある。第10次五ヵ年計画で、SOxの削減目標を掲げたが、達成できなかった。やはり、経済優先の思想が中央政府にもまだまだ強いために、SOxの課徴金を2倍にすることができない。

B君:1トンのSOxに対する課徴金を現時点の2倍の1300元にすれば、対策は一気に進むだろう。そこまで経済が成長するのを待つか、そうではなくて、成長率を1%落としてでも、大気汚染対策を進めるか、これは、中国の国家的問題だ。

A君:どちらをおススメか。これには正解はなさそう。

C先生:第二デカップリングは、国家が国民の命をどのぐらい重視するか、ということの証明のようなものだ。現在の中国だと、まだまだ経済優先主義がまかり通っている。食品などへの有害物の混入事件がこのところ頻繁に起きているが、それが証拠だ。

A君:しかし、繰り返しますが、どちらが良いか、正解は無い。

B君:日本だって、もっともミートホープ社のひき肉偽装事件もあるので、なんとも言いがたい。もっともあのひき肉で命にリスクがあるという訳ではないが。

C先生:以上が、第二デカップリングの話。そして、第三は省略して、第四デカップリングの話に行く。日本は、第三、第四と進んできたが、第三の廃棄物の実質ゼロ化は、オランダのような国では、どうやら放棄されて感じなのだ。オランダは極めて現実的な国なので、ごみ処理は簡単でかつ経済的に成立する方法がベストと考えている。そして、これまで市民に分別を求めていたのが、分別をやめる方向だという。

A君:ヨーロッパの家電リサイクルのやり方も、どちらかというといい加減。適当に粉砕して、鉄ぐらいを回収するだけ。

B君:ヨーロッパは生産者としての意識が低いのだ。日本は、資源を使っている立場だから、より高度なリサイクルを目指さないと。

C先生:それで第四デカップリングだが、日本における一人当たりのGDPと一人当たりのエネルギー使用量の関係を図2に示す。こんな感じになる。このデータは、1960年から2004年までの45年分。



図 一人当たりのエネルギー使用量と一人当たりのGDP関係。

A君:1960年から1972年まではエネルギーの使用量が増えて、GDPも平行して成長しているのですが、1973年にちょっと落ちるのが第一次石油ショック。その後、1987年までは、エネルギーの使用量を増やすことなく、GDPだけが増えるという珍しい成長をして、そして、バブル経済に突入。当然のごとくエネルギー消費量を増やし、バブルが1992年にはじけたのに、1994年ぐらいまでは、またエネルギー消費量が増え続ける。

B君:それ以後は、あまりエネルギー消費量も増えなかったが、経済的にも成長をしなかった。

C先生:もしも、もっと経済運営を上手にやっていれば、1987年のレベルからエネルギー消費量を増やさないで経済成長ができたかもしれない。

A君:確かに。1973年ごろから1983年ぐらいまでで効率を2倍にしたエアコンも、その後、ほとんど変化がなかった。企業が努力をしなかった。しかし、1996年ごろからトップランナー方式というものが経済産業省によって導入されて、エアコンの効率は再度上昇をし始めた。これが連続的に行われるような経済システムが導入されていれば、日本のエネルギー消費量は、3000kg台に留まっていた可能性もある。



図 エアコンのCOPの増加率。

B君:そんな技術が無かったから、増えてしまった。多分その通りだろう。問題は、それをドライブするための駆動力があったかどうかだ。

C先生:今、われわれはステージ4のすぐ手前まで来ている。この次のステージに入るためには、やはり駆動力が必要。現時点では、駆動力として考えられるものは、3種類。
(1)規制的手法
(2)経済的インセンティブ
(3)倫理論、責任論


A君:(1)規制的手法とは、例えば、京都議定書のようなもの。これだけでは罰則も何もないとやはり動かない。第二デカップリングの場合と違って、現世代の命に直接かかわるものではなく、将来世代の命に関するものだけに、割引率が高い。

B君:現時点、中国でも罰則があるような無いような状況もあって、ガバナンスがうまく行かないとこれまた無意味。

A君:(2)経済的インセンティブももちろん利くのですが、中国のSOxが1トン630元という程度だと、思うほどには減らない。

B君:ドイツが太陽電池による電力を固定価格で長期間購入するという仕組みを作ったが、それだって、価格次第。今の日本だって、25円/kWhではあまり普及しないが、50円/kWhになれば、これは相当違う。

C先生:この半年間、世界に起きたことは、どうも、こんな解釈のように思える。
 「二酸化炭素の排出には金が掛かる。大体、1トンのCO2が$20〜50ぐらいになりそうだ。これは、排出に金が掛かると思えばそれはその通りだが、逆に、そのために新しいビジネスができる、と思えばそのような発想をして先手を打った方が勝ち」。
 EUも米国もこんな感じ。ところが、日本の産業界は、まだ、このような考え方には成れない。

A君:先日発表されたイノベーション25にしても、どうも、割り切れない日本という印象が残っている。

B君:それはそれで日本の良さなのかもしれない。それでも結構稼ぐことができるのならば。

C先生:(3)倫理観、未来世代に対する責任論などをきちんと理解した上で、現世代だけでなく、未来世代のために、やはり、イノベーションを目指すべきなのだろう。

A君:もしも、かなり早い時期に、日本におけるエネルギー消費量を半分に減らすことができれば、それは世の中変わりますよね。

B君:でもあまり技術が無い。

C先生:エネルギー効率を2倍にする技術、"Eco Tech 2.0"を実現すべきだ。現時点でもいくつかはあるし、候補も無い訳ではない。
古くからあるEcoTech2.0
(0)蛍光灯、ニッケル水素電池、プロジェクションTV(60インチ以上)

既存のEcoTech2.0
(1)プリウス
(2)ヒートポンプテクノロジー
(3)LEDヘッドライト

まもなく出現するEcoTech2.0
(4)有機EL型TV
(5)レーザーTV
(6)プラグインハイブリッド車
(7)電気自動車

A君:あらゆる状況で、EcoTech2.0を開発すること。これが今必要なイノベーション。

B君:それには、なんらかの社会的駆動力が必要だ。

C先生:もしもEcoTech2.0ができないとどうなるのか。それが怖い。中国、インドがどうなるかという意味だが。

A君:なるほど。次の図を見てもらいますか。これが中国が日本のエネルギー消費とGDPを追いかけている図。もしも、中国が日本と同じ経路を通ると、あるいは、場合によってはアメリカ的な経路を通ると、一人当たりのエネルギー使用量は5000kgを超すかもしれない。



図 中国の経済成長をトンネルルートで。

B君:なるほど。もしも、EcoTech2.0ができれば、自然にトンネル経路(赤い矢印)を通って、経済成長ができる。

C先生:まあそういうことだ。やはり、先駆者がいると中国もやりやすい。図は、GDP$1を稼ぐのに必要なエネルギーの使用量の推移を示している。日本のデータは、1960年から2004年だが、他の4ヶ国は1975年から2004年だ。中国のエネルギー効率は悪い悪いと言われるが、現時点だとそれほどでもない。それには、やはり良い見本があったからだと言えるのではないだろうか。



図 エネルギーインテンシティー

A君:ということは、結論としては、すべての国が、EcoTech2.0を目指したイノベーションを行うべきだ、ということ。

B君:まあその通りだろう。しかし、それには、やはり駆動力が必要だ。しかも、相当な駆動力が必要だ。日本のエネルギーインテンシティーを見ると、第一次石油ショックまでは上がり傾向。それから下がるのだが、第一次石油ショックでは、エネルギー価格が10倍近くになっているのに、10年間で、効率の改善は3割程度にしかならない。もっとインパクトのあるイノベーションが必要なのだろう。

C先生:その通りだ。エネルギー消費量を下げる技術は、すべての国でイノベーションを起こす努力をすべきだ。そして、それには、競争が行われることが望ましい。各国で全く同じ枠組みである必要は無いと思うものの、やはり、トップランナーを目指して公平な競争ができて、その新しい技術を開発した企業や人には、それなりの対価と名誉が与えられるべきだろう。