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  GMは何をやらないから破綻したのか   03.08.2009
     



 今回も、最悪の条件でこのHPを書いている。6週間に一度起きるのだが、アラタニスへの原稿、日経エロコミーへの原稿、そして、このHPの原稿、さらには、その他の業務上の締切が同時に来ている。

 そんなときには、複数の話題を書くことは不可能なので、大体、一つの話題を多少違った目で見て書くことにしている。それは、場所によって書けることが違うからである。

 日経エコロミーは、やはり「日経にとっての責任」という考えがあり、彼らの観点から不適切な表現は書けない。特に、企業を直接的に避難するのは難しい。

 アラタニスは、読売、朝日、日経の3社が運営しているWebページだから、あまり直接的な制限は無いと思うのだが、それでも、やはり多少遠慮気味な表現になってしまう。
 それに対して、当然のことながら、このHPがもっとも自由に何でも書ける。まさに、個人的な責任で書いているだけだからである。

 今回、取り上げるのはGMの破綻である。

 GMが何をやって破綻したか。その議論はすでに各所で様々な観点からされている。しかし、今回は、何をやらないで破綻したのか、という議論をしたい。

 しかし、日本でも、歴史を振り返れば、ほぼ同罪とも言えることが行われた。幸いにして、まだどこかの自動車企業が破綻するという状況には無いのだが。


C先生:GMをどうやってソフトランディングさせて、次の自動車産業を育成するのか、これは米国にとって非常に大きな問題である。GMを実質上解体することが、長期的にはメリットが大きいと思うので、それを雇用状況の悪化をできるだけ回避しつつ、どのように実行するのか。これがオバマ大統領が現在頭をひねっている中身だろう。

A君:GMだけなんでしょうか。クライスラーはどうやらフィアットと提携というか、吸収されることになるのか。

B君:フォードの噂があまり出てこない。しかし、フォードにこれから売れる車を作る力があるとも思えない。

A君:こんな状況みたいですよ。
http://www.ford.co.jp/servlet/ContentServer?cid=1178863746837&pagename=FJP%2FDFYArticle%2FFord-Standalone&pageid=1178863209805&site=FJP&c=DFYArticle
フォード・モーター・カンパニー、米国における09年1月の販売実績。 2009年2月13日
フォード・モーター・カンパニーの2009年1月の米国の販売は90,596台で前年同月比39%の減少となりました。しかしながらマーケット・シェアは12.7%となり前年同月に対し0.3ポイントの上昇、4ヶ月連続でシェアを伸ばすこととなりました。


個人のお客様向けの小売台数は27%の減少でしたが、フリート(法人向け)の販売が65%の減少となっています。

フォードは引き続き需要に応じた生産、在庫の適正化を進めており、1月末時点での在庫は42万台で、前年同月に対して15万6千台の減少となりました。昨年1年間の在庫圧縮(減少)は27%となり、同期間の販売減少22%にほぼ見合った形となっています。

B君:GMよりは良いと言っているような気がするな。

C先生:さて本論だ。結論的には、アメリカの自動車工業はそのうち無くなる。「アメリカの工業の歴史は自動車にあり」だった。アメリカがいつかの時点で自動車産業から撤退することになるのは、歴史的に見ても当然のことなのだろう。

A君:工業の発展の歴史は、大体、どの国でも同じ。まずは、繊維産業から入る。要するに、縫製という作業が労働集約的だから、人件費の安い国でやらないと、合わない。

B君:ウォルマートのようなアメリカの大スーパーマーケットで売られる衣料品は、今やバングラデシュあたりで作られている。

C先生:バングラデシュは、現時点で労働力をもっとも容易に得ることができる国の一つだろう。

A君:それもそのはず。人口は世界で7位の1億5800万人。日本は9位。面積は、世界で93位の14万4千平方キロ。日本は61位で37万7千平方キロ。

B君:もっとも、バングラデシュの地形は、インドのガンジス川、ブラマプトラ川がこの国に入って作ったデルタ地帯だということが大体の表現で、もっとも標高の高い山でも1230mなので、人口密度は高いものの、日本のように山ばかりの国ともちょっと違う。

A君:しかし、洪水と干ばつの両方に脆弱だから、毎年それを心配しなければならない。

B君:首都ダッカの周辺には、縫製業が盛んで、米国に輸出されている。ということは、現在、景気は悪いということを意味するのだろう。

A君:車や住宅は売れないけれど、ウォルマートは逆に売り上げが増えたらしいので、そうでもないのでは。

C先生:調べようとは思ったのだが、Jetroあたりが出しているレポートにも、
http://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/reports/05001621
バングラデシュの記述は無い。

A君:まあ、話をもとに戻しますが、日本の場合には、絹糸を中心とする繊維産業が最初でしょうかね。その後、縫製業を中心とする業態に転換するとしても、いずれにしても、繊維産業が比較的入りやすい。

B君:その後、日本の場合だと造船業などが世界トップになって、同じような道筋を韓国も歩んできた。

A君:その後、重工業、鉄鋼業とか重化学工業になっていく。

B君:その先あたりが、自動車産業。現在の中国の状況をみれば、何社あるか分からないぐらいの自動車関係企業が存在している。どの国もそんな状態で自動車産業は始まる。

C先生:日本の自動車産業は、いまでも極めて多数の企業が存在している不思議な形態。世界的にみて、先進国で、多くの自動車産業が存在できているのは、日本を除くと、ドイツのみ。フランスは2社、他の国は、1社あれば良いといった状況。フェラーリみたいな企業は除くが。

A君:中国は現在自動車産業の黎明期であり、かつ今後の急成長は中国。なんといっても、2009年1月の自動車販売数は、米国を抜いて、中国が世界一。中国の1月の自動車販売台数は79万台だったのに対し、米国の販売台数は66万8000台。

B君:人口が13億人の国は強い。米国は3億人。中国の1億人はすでに、平均的日本人よりも金持ち。サブプライム後の経済をけん引するのは、中国とインドだろうということでは、皆さん大体合意している。

C先生:自動車産業といっても、やはり進化をする。最近だと4段階に分ける必要があると思う。
(1)スバル360の段階
(2)カローラの段階
(3)レクサスの段階
(4)エコカーの段階

A君:インドのタタ自動車が売り出す(?)ナノが(1)のレベルだろうか。
こんな仕様らしいが。
 サイズは全長3100mm、全幅1500mm、全高1600mm。車重は600kg弱程度。
 エンジンは623ccのオールアルミ製2気筒で、電子制御式燃料噴射装置を備え最高出力は33ps。

 ちなみに、スバル360は、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%AB360
1958年に発売開始。1970年まで売られていた。仕様は
エンジン 強制空冷2サイクル2気筒 自然吸気 356cc
全長 2995mm 全幅 1300mm 全高 1335mm 車両重量 385kg

B君:ドイツ車は、(3)の段階をかなり前からやっていて、メルセデスは、むしろ、(2)、(1)へと降りてきた。(2)はAクラス、Bクラスであり、(1)はスマートだが。

A君:中国は、今、(2)のレベルになったのだろうか。

C先生:いずれにしても、自動車産業というのは、非常に裾野が広い産業なので、これが国の産業の根幹を占めるということは、絶対的な事実なのだろう。

A君:そして、今回のGMが失敗したのは、(3)の段階の先に(4)のエコカーの段階が来るということを無視したこと。

B君:原油価格の高騰も、予想を超えていたという点はある。これもビジネスの基本で、車などというエネルギー大消費型の製品を作る者として決して忘れてはいけないエネルギー供給の未来像を持っていなかった。

C先生:そういうと怒る人が多い。なぜならば、GMは水素こそ次世代のエネルギーだと見ていたのだ。事実、水素は次世代のエネルギーなのだと。

A君:それが化学屋はそうは思っていない。水素というエネルギーはかなり気難しい。まず、液体と気体というものは決定的に違う。水素を液体することももちろんできるのだが、それには、超低温が必要。

B君:液体燃料のすごさというものをもっとも身に染みて分からなければならないのが、自動車屋なのに、そこは余り本質的な問題だと思わかなった。

C先生:ヨーロッパは、(4)の主力がバイオディーゼルになると思っていたようだ。しかしどうやらそれもハズレのようだ。一つは、大量のバイオディーゼルを得ることが難しい。どうしても、自然保護や食糧との競合がある。そして、ディーゼルエンジンも高くて、しかも、厳しい排出ガス規制ができると対応ができそうもない。

A君:さて、産業構造の転換の話に戻りますと、自動車産業の次あたりにコンピュータなどの産業ができて、そのため、ソフト産業が繁栄する。

B君:そして、それがきっかけになって、産業がどんどんとソフト化する。

C先生:ハード産業の最高が、実は軍事産業にあって、その進歩は、米国とかイスラエルのようなところが推進力になる。

A君:人の命は高いですからね。一人の戦死者を減らすことが可能な技術であれば、億円単位でコストが上がっても、経済的に見合う。

B君:軍事産業の技術が支えているのが、旅客機のエンジン。不思議なことに、英国のロールスロイスがまだまだ健在。もちろん米国の有力企業があるが。

C先生:軍事産業に関係のない産業として、金融業が注目され、実際、かなりの金持ちを作りだした。しかし、多少の金持ちができたところで、その国の経済が潤う訳では無いのだ。年収1億円の人が、年収10億円になったからといって、それほど支出が市場に向かう訳では無い。特異な市場は有りうるかもしれない。大体、不動産関係と宝飾品、さらには、美術品程度にしかお金は動かない。

A君:食べるものなど限界がある。時間だって1日に24時間以上は無い。ということで、金融を産業の中心に置くことは、恐らくもろくも夢破れた。

B君:となると次が何か、という問題になる。現時点では、グリーン・ニューディールが話題になったおかげで、環境エネルギー産業ではないか、と囁かれている。

A君:しかし、必ずしもそうではないという考え方もある。

C先生:ただし、それも環境エネルギー産業というものをどのように定義するかによって違う。純粋に風力発電とか太陽光発電などをそう定義するのであれば、先は見えている。しかし、例えば、細かい省エネ技術をサポートするようなデバイスの開発とか、裾野はある程度広いことも事実だ。自動車、電器、電力、化学、その他なんでも省エネというものは関連があるからだ。

A君:日本の場合だと、どうも環境エネルギー産業というと、何か新しいデバイス、例えば燃料電池の開発といったことがイメージされてしまうのですが、実際には、省エネのようなものであれば、あらゆるところにタネがある。

C先生:しかし、どれほどの広がりを持ちうるものなのか、それは、社会のマインドセットが決めるという要素が強い。

A君:どんな製品を良いと思って買うのか。エコ製品は、エコノミー製品なのか、エコロジカルな製品なのか。

B君:そろそろ本題に行きたいところだ。GMは、(4)のエコカーが次世代技術になるという意識、すなわち、環境エネルギー技術を産業のタネにしようという意図が無かった。すなわち、エコロジカルな自動車というものを作る気は無かった。

C先生:その通りだ。GMは、エネルギーの供給動向というものを読み切れなかったので、「燃費などというものは、大した問題ではない。やはり車は大きくて力強くて快適なものが車だ」と思っていた。大きくてはGMC、力強くてはHammer、快適なものはキャデラック。

A君:Hammerはさすがにやめるようですよ。

B君:日本でもHammerに乗っていて、追放処分になった力士が居た。

A君:朝青龍もハマーに乗っているというblogがあるけど、本当だろうか。

C先生:ところが、米国でも一部の日本製エコロジカルな車がもてはやされていた。それがGMの怒りを招いた。

A君:その車は、プリウスとシビックハイブリッド。

B君:日本ではシビックハイブリッドの評価は低いが、米国ではそこそこ以上の評価。それに、日本でほとんど売れなかった初代インサイトも、米国では、気の利いた高給取りの女性が通勤用に使っていた。

C先生:ハイブリッド車というものを米国人が正しく評価しないということを認識したのが、1998年ぐらいのことだと思う。スイスで国際ワークショップがあって、そのときにフォードから人が来ていた。休み時間に、日本ではプリウスというハイブリッド車が売り出されて、これは燃費が素晴らしい。フォードは何か開発をするのか、と聞いたところ、その返事がこれだった。「アメリカ人は、燃費など考えない。燃費が倍になったら倍の距離をドライブするから効果が無いのだ」。

A君:初代プリウスですよね。発売されたのが1997年の暮れ。その翌年ぐらいの話ですか。

B君:もっとも、日本のメディアもその段階でプリウスのすごさを理解していなかったし、日本にも外国人社長でハイブリッドをニッチ技術と評価していた人もいた。

C先生:これを聞いて、アメリカという国はガソリン代も非常に安く抑えられているからだろうが、すでに京都議定書もあったので、なんという国なのだ、と思ったのだ。結局、アメリカは京都議定書を批准しなかった。

B君:しかし、今にして思えば、それも当然ということだ。

C先生:現在、そのフォードは、アイシン製のトランスミッションを使って、フォード・エスケープ・ハイブリッドを作っている。やはり自力では最終的な段階まで開発できなかったのだろう。トヨタの特許が邪魔になったという可能性もあるが。

A君:2004年モデルは、自力開発だったという噂ですが、どうもトヨタに特許で文句を付けられ、その後合意して現在のようになったのではと思います。

B君:一方のGMだが、ニュースによれば、「2008年9月16日、米デトロイトで創立100周年記念式典を行い、新型プラグインハイブリッドカー、シボレー『ボルト』を初公開した」、とあるのだが、このボルトは、シリーズ型のハイブリッド車で、電池が切れてくると、エンジンが動き出して充電をする。
 当初の発表だと、ボルトは2010年後半から生産が始まり、アメリカに2011年モデルとして投入される予定だったが、GMが破綻すると一体どうなるのだろうか。

A君:キャデラックのエスカレード(SUV)にも2009年モデルにはハイブリッドを出す予定だったのですが、こちらは、EPAのGreen Vehicleのページにもでていますね。発売されたのでしょう。

B君:しかし、Air Pollution Scoreが低いなあ。6Lのエンジンを積んでいるからなあ。

C先生:3月7日の日本経済新聞朝刊を見て驚いた。GMが4枚連続の全面広告を出したからだ。GMアジア・パシフィック・ジャパン社長のブラウン氏がメッセージを出している。「より力強く生まれ変わるために、現実の目標を着実に達成していく」。

A君:本当に生まれ変わることができるかどうか。これまでのツケが回りそう。

B君:何のツケか。当然、技術開発をさぼったツケだろうが。

A君:その通り。環境技術に投資をしなかった。エネルギーの動向を読み違えた。

C先生:そのブラウン氏のメッセージの中に、こんな言葉があった。「このたび誕生したアメリカのオバマ政権は、グリーン・ニューディール政策を提唱していますが、GMは以前から環境対応車の開発を進めており、もちろんこの政策に積極的に参画していきます。「キャデラック・コンバージ」や「シボレー・ボルト」など電気自動車の開発はもちろん重要ですが、GMが基本的に追及しているのは、ゼロエミッションです。その意味で今後も、燃料電池車の開発に注力することになるでしょう。今後、4年間を通じて先進技術への投資は削らないことを明言しており、やがて先端技術がキャデラックなどの高級車にも搭載されることになります」。

A君:なるほど。環境技術に投資をしてきたとどうしても主張したいようだ。

B君:それは客観的には違う。燃料電池車の開発を世界的に刺激したのは確かにGMでもあった。メルセデスもすごかったが。

C先生:その話はもうちょっと後にして、燃料電池車がゼロエミッションだということは、誰が言い出したのだろうか。

A君:ちょっと調べたぐらいでは良く分からないですね。日本のメディアは、いつでもそのように記述をしてきましたから。

B君:こんな記事を見つけた。これは車専門のWebみたいだが。
 「VWが新世代燃料電池車“space up! blue”を発表
“space up! blue”は新世代の燃料電池システムを搭載しており、ゼロエミッション(無排出ガス)を実現しているのだ」。

A君:新世代燃料電池とは何だろう。

B君:記事には、高温型燃料電池だと書いてある。

A君:ちょっと調べてみましたが、高温型燃料電池の実体は不明です。英語のページにも説明はなかったですね。

C先生:常識的に、固体酸化物電解質型だと考えるべきだろう。それなら、この記事は2重におかしい。固体酸化物電解質型の燃料電池なら、燃料は炭化水素だ。要するにガソリン類似の燃料だ。二酸化炭素が出る。
 それにもう一つの過ちは、もしも水素だとしたって、ゼロエミッションなどは有りえないのだ。水を排出するし、排熱が出る。それに水素を作るときには、現状であれば、天然ガスから炭素分は燃やしてエネルギーを得て、そのエネルギーで水素を取り出す。すなわち、水素を作るときに、すでに二酸化炭素が出ている。
 さらに言えば、電気自動車よりも効率が悪いだけ、都市のヒートアイランドの原因になる排熱は5倍ぐらいになる。
 というと、太陽光で水素を作れば良いのだ、ということになるが、それなら、太陽光から電気を作る方が簡単で、それを電池にためれば良い。
 本当のゼロエミッションなどは存在しないし、その上、燃料電子車よりも電気自動車の方がゼロエミッションに近いのだ。

A君:ゼロエミッションだから燃料電池車優位ということは、もともと無い話なのに、日本のメディアの頭の中には、それが刷り込まれている。一向に変わる気配がない。

B君:GMが燃料電池車に拘泥しているのは、実は、またまた売れるハイブリッド車が作れないということの裏返しなのではないか。

C先生:その通り。GMが燃料電池がゼロエミッションだからということで、世界に燃料電池開発競争フィーバーを引き起こしたのは、裏に意図があったと思う。それは、プリウスとかシビックハイブリッドのような高燃費のハイブリッドを作ることができなったものだから、意図的に、ハイブリッドは日本の田舎から来たニッチな技術だということを宣伝したかった。そのために、「燃料電池が究極の技術だ」と主張する、いわば目くらまし兼責任回避手法を取ることにした。GMが燃料電池車フィーバーを煽ったのは、いずれにしても、企業競争という国際政治学、具体的には、ハイブリッド無視の中で行われた戦術だったのだ。

A君:その燃料電池フィーバーに日本も乗った。それは、トヨタ、ホンダのリードが確定したハイブリッド車に、他の自動車メーカーは、開発投資ができなかったからだという要素がやはりあったのでは。もっとも、トヨタ、ホンダも乗ったのだが。

B君:そして、その後日本メーカーの中でも賢いメーカーは、電気自動車に投資を移した。電気自動車は、簡単な技術なので、多額の投資を必要としないことが理由ではあったのだが。

C先生:その当時、日産の社長のゴーン氏はハイブリッド嫌いで有名だった。「ハイブリッドはニッチ技術だ。本物ではない。日産は本物の燃料電池車をやる」、と主張していた。しかし、今はどう思っているのだろうか。GMに騙された最大の犠牲者が、実はゴーン氏かもしれない。

A君:しかし、不思議ですね。ゴーン氏に技術の進歩というものの本質が分かっていなかったなんて。

B君:自動車技術の原理原則は、古典的な物理学。古典的な物理学が完成したのは、19世紀の末の話。すでに、100年以上前に原理原則が分かっている技術は、いきなり進歩などをすることは無い。例外が、材料がからむ技術ぐらいなもので、その典型が電池だろう。

A君:リチウム電池、ニッケル−水素電池と2種類も新しい電池が実用化された20世紀後半といのは、電池にとって画期的な時代だったと言えるでしょうね。

B君:次に画期的な電池が出て来るのに50年掛っても不思議ではない。

C先生:そんな自動車技術だから、進歩というものが起き方はすでに決まっているのだ。ハイブリッド車が実現したことは画期的で、その後、電池の進歩のおかげで、プラグインハイブリッド車と電気自動車になり、そして、その次は電気自動車にオプションとして発電装置を付けることになる。しかも、トレーラーのような形で必要なときだけ付ける。発電方式としては、燃料電池が望ましいが、他の高効率熱機関でもよい。ただし、液体燃料が使えることが条件だ。なぜならば、エネルギー密度、すなわち、燃料の体積あたりのエネルギーが大きいからだ。

A君:すなわち、水素ではない。

B君:結論的には、GMが本当に売れるプラグインハイブリッドが製造できるか、あたりがGMが生き残れるかなのに、ブラウン社長は、燃料電池に未練があるようなことを言っている。

C先生:それがGM最大の問題かもしれない。オバマ大統領はグリーン・ニューディールの具体的な目標として、2015年までにプラグインハイブリッドを100万台生産する、と述べている。これを実現できる技術力があれば、GMは生き残ることができるし、これを実現できなければ、GMは消滅するのだろう。

A君:日本でも同じようなことが言えませんか。

C先生:ただし、プラグインハイブリッドが2020年でも有効な技術なのか、となると、米国ではそうかもしれないが、日本では多少違うかもしれないという気がする。むしろ、電気自動車+発電ユニットの方がより未来的な姿のように思える。

A君:となると、シボレー・ボルト的になる。

B君:しかし、電気自動車に発電用エンジンを常時載せるのは不合理。当然、外付けで必要なときのみ使う。

C先生:それは当然なのだ。しかも普通のエンジンでは効率が悪すぎる。固体酸化物型の燃料電池も運転停止が難しいので、まだまだ完成していないだろう。水素は毎回述べているようにあり得ない。そらならというかもしれないが、ダイレクトメタノールのような燃料電池もあり得ないように思える。さて、この問題を解決するのはどのメーカーなのか? 政府に支援を仰ぐようなメーカーがまず脱落するのは明明白白だ。
 本日の話のポイントだ。GMが破綻することになった技術的な背景を一言で表現すると、ハイブリッド技術を日本の田舎から来たニッチな技術として、簡単にブッ飛ばせると思ったことである。ブッ飛ばす道具として燃料電池車を持ち上げたが、その技術はまだまだ未完成だったし、さらに言えば、水素という気体燃料は、タンクにいれて車に乗せようとしたら、性根が腐っていて、言うことを聞かない奴だということが分かった。しかし、水素の性根が悪いことなど、化学屋なら常識なのだが、ハイブリッド技術をブッ飛ばすのが目的だった自動車屋には分からなかった。
 GMはエネルギー供給の動向を無視し、そして、ハイブリッド技術を無視したツケで、この世界から消え去るのだ。