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  地球温暖化防止技術シンポジウム  10.24.2003



 10月22日〜24日、北九州市西日本総合展示場においてエコテクノ2003の展示会があった。参加者総数3万数千人規模ながら、北九州のエコタウンをバックに、なかなか活気のある展示会である。

 今回も、CREST研究チームは、展示場内アンケート実験を行なった。恐らく、データが1200件以上取れているものと思われる。

 24日の午後から、地球温暖化防止技術に関するシンポジウムがあった。本日は、その報告。


C先生:「北九州はエコタウン。エコタウンはリサイクル」、という印象ではあるが、そろそろ次の環境ビジネスを考えようというのが、今回の地球温暖化防止技術シンポジウム。

A君:日本全体としては、まだまだ温暖化対策技術を開発するという機運には有りません。

B君:温暖化対策技術といっても、その中心的な課題をなす二酸化炭素排出削減技術は、言葉こそ違うが、省エネ技術とほぼ同義。

A君:省エネ技術だというと、余り経済的なメリットは無いですから、投資をしなければという気にならない。

B君:しかし、環境税などが入り込んでくると、その使用法によっては、技術開発が加速される可能性が無い訳ではない。今から準備しておくと、なにかとビジネスになる可能性がある。

C先生:プログラムは以下のようだった。

13:00〜13:35 開催挨拶 北九州市

13:35〜13:55 記念講演
「我が国における地球温暖化対策について」
  経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 
  課長補佐 佐藤太郎

13:55〜14:40 基調講演 
「温暖化対策技術の開発方向と課題」
  東京大学 生産技術研究所 安井 至

14:40〜15:40 企業の取り組み紹介
「自動車の温暖化対策技術−ハイブリッド車、燃料電池車等―」
  トヨタ自動車(株) 
  環境部 担当部長 米光徹志
「中小企業が支える省エネ技術」
(株)岡部マイカ工業所 
 取締役 品質技術部長 池田敏彦
「分散型エネルギーの技術開発と活用」
  西部ガス(株) 
  総合研究所長 太田 哲
「自動車リサイクルからみた環境評価」
  西日本オートリサイクル(株)
  代表取締役 和田英二

15:50〜17:00 パネルディスカッション
■コーディネーター 東京大学 安井 至
■パネラー 
  経済産業省 トヨタ自動車 岡部マイカ 西部ガス 西日本オートリサイクル

A君:まず、経済産業省の佐藤太郎氏が、温暖化防止関係の概要を説明。

C先生:その後、基調講演を行なったのだが、今回、以下のような要旨を提出し、こんな調子の講演を行なった。


温暖化防止技術の開発方向と課題

1.概要

 「温暖化問題は、もはや環境問題ではない。政治・経済の問題になった。京都議定書からの米国の離脱によって、この条約の意味が無くなったから、日本も離脱すべきだ」、という考え方は、間違いである。この温暖化問題は、地球という限られた資源の中で、人類がどのように生存していくのか、という問題であり、先進国は、できるだけの削減策を講じて、途上国のために排出の余地を空ける必要がある。
そして、日本という国は、二酸化炭素排出量の削減に、そろそろ本気で取り組むべき段階になった。そして、結果として、世界最高のエネルギー効率、資源効率を目指し、結果として温暖化ガスの排出を削減すべきである。

2.二酸化炭素対策技術

 経済発展との関連性が深い二酸化炭素発生量削減の技術は、
(1)省エネによる削減
(2)発生後の処理処分による削減
(3)自然エネルギーの利用による削減
(4)その他、燃料転換など
に大別できる。

2−1.産業界における削減概要

 発生後の処理処分による削減技術は、深海処分、地中処分などが有りうるが、そのためには、二酸化炭素を分離する必要があり、そのためのエネルギー消費が馬鹿にならないことが最大の問題である。しかしながら、産業界には、100度以下の利用していない廃熱がある。この低品位の廃熱利用技術を開発することが、この技術が受容されるかどうかを決めるだろう。少なくとも、分離・処理処分によって、過剰に消費するエネルギー量が10%を切らない限り、社会的受容性は無いと考えるべきだろう。
 したがって、二酸化炭素削減対策は、発生量を減らすという方法論から取り組むのが妥当である。
 燃料転換という方法論による二酸化炭素発生の削減がある。例えば、石炭を使用した発電装置を天然ガスに切り替えただけで、二酸化炭素発生量は、大幅な削減になる。
 しかしながら、このような方法論による削減では、将来に付回しをしているだけである。地球温暖化が重大な影響をもたらすのは、100年後である。天然ガスの資源賦存量は、100年分はない。すなわち、現時点で天然ガスを使用し、その枯渇後に石炭に切り替えるという方法は余り有効とは言えない。むしろ、現在から石炭を使用し、2050年以降に天然ガスを残しておく方法がより望ましい。
 製造業の省エネルギー対策は、すでに限界であるとの見解があるが、現状の経済的な状況を反映したものであって、技術開発にコストが掛かるといった言い訳である可能性が高い。しかし、製造プロセスの改善による二酸化炭素発生量の削減は、やはり量的に魅力がある。
 となると、純粋に技術的な開発課題というよりも、社会的な制度を改善することによって、企業に二酸化炭素削減対策費を与えるという方向を試みるべきである。具体的には、温暖化対策税の使用法をそのような方向性を持たせることだろう。
 製造業における熱効率の向上には、やはり熱をいかにハンドリングするか、に掛かっている。排熱を段階的に使用し、熱交換器を効果的に使用することによって、総合的な熱効率を高めることがポイントであろう。

2−2.家庭における削減概要

 家庭における二酸化炭素の発生源は、現時点では車による発生が圧倒的であり、続いてエアコン、冷蔵庫、テレビ、照明などが大きい。
 エアコンは、依然として絶対的な発生量は大きいが、効率的な改善は著しい。となると、短期的な改善は望み薄のように思える。エアコン以外のヒートポンプについては、可能性がまだあるように思える。
 冷蔵庫の改善もかなり限界的である。10年前の冷蔵庫を買い換えることによって、大幅な省エ
ネが可能になるが、これ以上の削減はかなり難しいところに来ている。真空断熱技術が適用されて
いるが、その効果の持続、すなわち、長寿命な断熱技術あたりが鍵だろうか。
 テレビは、大型化による消費電力の上昇をどのように防止するかが最大の課題だろう。プラズマディスプレイの消費電力を1平方インチあたりに、現在の2/3%程度にすることが当面の目標だろう。42インチで現状では300W程度である。これを200Wには落としたい。だからといって液晶テレビの消費電力が格段に低い訳ではない。32インチで150W程度である。面積あたりにすると、プラズマよりも僅かに低い程度でしかない。もしも42インチで200Wが目標だとすると、32インチなら115Wにならなければならない。
 最近の光学機器では、液晶プロジェクターで光の有効活用をしている光学系の工夫はすごいものがある。高価な機器だけに可能になったのだろう。まだまだテレビなどにも技術的な可能性は残っているように思える。
 エネルギーを光に変える技術は、非常に効率が悪い。白熱電球では、電気の僅か2%ぐらいが光になっているに過ぎない。燃料からだとすると、僅か0.6%が光になっているのみである。
 蛍光灯の効率は白熱電球に比較すれば、圧倒的に優れている。すべての電球を電球型蛍光灯にすることは、コスト的にともかく、LCA的には正しい行為である。
 LEDの発光効率はかなり高いが、蛍光灯に比較して優位ということでもない。指向性の強い光源という照明用としては、余り適していない性質もある。いずれにしても、照明技術のさらなる向上が必要不可欠だろう。

3、個別課題について 

3−1 家庭における熱利用

 家庭でのエネルギーのもう一つの利用法が、熱利用である。多くの場合、お湯としての利用、さらには、調理用としての利用がある。
 調理用のエネルギーは、温度が高く、したがって、かなり高品位のエネルギーを使用せざるを得ないために、電力、ガスといったものが使用される。この分野における熱効率の向上も、このところ目覚しいものがある。電力も誘導電磁加熱が一般的になり、またガスによる加熱も、バーナーの工夫によって効率の向上が計られている。さらなる効率向上のための競争が行なわれることだろう。
 もう一つの利用であるお湯は、お風呂や洗浄用であり、たかだか40℃程度の温度である。そのため、様々な排熱利用や自然エネルギーといった考え方が利用できる。
 後述する分散型エネルギー源を導入すると、このお湯のエネルギーが大量に発生する。しかし、残念ながら、一般家庭で必要なお湯の量はかなり限られており、総合的な効率の向上には、余り有効ではない。

3−2 深夜電力の利用とロードレベリング

 家庭においても、深夜電力を利用することによって、電力コストを下げることは可能である。深夜電力は、主として原子力発電、石炭発電など、定常的な出力を出すことに適性をもった発電方式によって賄われており、ベースロードと呼ばれる。原子力発電の寄与率が高いために、電力あたりの二酸化炭素発生量は低い。
 さて、この深夜電力を多く使用し、昼間の電力を余り使わないという生活様式であれば、コストの削減は可能である。特に、太陽電池による発電装置を組み合わせることによって、昼間発電した電力を高く売って、深夜電力を安く購入するして氷蓄熱熱なども組み合わせて経済的な効果を得ることは可能である。
 しかし、これによって、エネルギー消費量そのものの節約であるとか、あるいは、二酸化炭素の排出量の大幅削減などが実現できるものではない。
 
 以上は家庭における深夜電力を利用であるが、その大規模な利用として、ロードレベリングと呼ばれる技術がある。

 現在もっとも実用的なロードレベリングの技術は、揚水発電である。しかし、さらに小規模な技術としては、高性能二次電池による蓄電、フライホイールなどのエネルギー貯蔵技術などの応用がある。日本の技術レベルは、まずまずのところにあるとは思うものの、なお一層の発展が必要不可欠な分野である。

3−3.自然エネルギーの利用

 自然エネルギーの利用は、なかなか難しい問題を含む。確かに、太陽エネルギーの利用を行なうことによって、二酸化炭素の発生量を削減することは可能である。しかしながら、太陽光発電のLCAデータにしても、確実なデータのものが存在しているようにも見えず、どうも、寿命が20年程度ないと、本当に意味でのエネルギーゲインは望めないように思える。
 シリコン製の太陽電池だけでなく、色素増感型の太陽光電池が本当に普及するのであれば、コスト面での優位性はほぼ確実である。問題点は、やはり寿命だろう。ほぼ半導体にのみからできているシリコン製太陽電池の寿命は、ほぼ確実に20年程度は持つものと思われる。むしろ、配線などに使用されている塩化ビニルや他の樹脂部品の寿命が心配である。しかし、色素増感型の太陽電池では、やはり有機物が鍵になる以上、寿命がどこまで長くなりうるかが最大の問題だろう。
 風力発電は、太陽光発電に比較しても、装置の製造に必要なエネルギーのペイバックタイムが短いために、実用的であるとされている。しかしながら、その間欠性のために、電力系統に接続できる量は自然エネルギー全体でも10%程度であろうと考えられている。
 これ以外にも、波力発電、海洋温度差発電、さらに、太陽熱発電などなど様々な技術が有りうる。海洋温度差発電や地熱発電を除けば、いずれも間欠性が問題で、そのために、後述の水素エネルギーとの組み合わせを考えるのが本筋なのかもじれない。
 しかも、自然エネルギーには、通常の技術であれば、導入量が増大すればするほど、コストの低下が実現できるが、自然エネルギーの場合には、有利な場所から設置されるために、規模の拡大とともに、コスト的には不利になるという性格を持っている。そのため、自然エネルギーの総導入量には、限界があるものと思われる。

3−4.分散型エネルギー源の活用

 現在の電力供給は、僻地に発電所を設置し、そこから送電線網を設置して、都市へのエネルギー供給を行なっている。コンバインドサイクルなどの高効率の熱利用が行なわれているとはいえ、発電所では、排熱は捨てられている。さらに、電力の伝送効率なるものがあるので、都市で電力をいくら効率的に利用したとしても、全体的な熱効率としては限界がある。まあ、40%行けば、理想的?
 工場以外でも、熱利用が多いケースというものも無い訳ではない。例えば、レストラン、病院、調理などである。これらのところでは、電気・熱同時発生の分散型エネルギー源の利用が意味がある。
 分散型エネルギーの具体例としては、(1)ガスエンジン、(2)マイクロガスタービン、(3)燃料電池、(4)高分子電解質型燃料電池、などが有りうる。
 ガスエンジンの効率は余り高いとは言えない。したがって、エネルギー換算で電気の4倍以上のお湯が必要な用途にしか向かない。ただし、電気料金が高い日本では、コスト面でメリットが出る場合がある。
 マイクロガスタービンも、それほど発電効率が高いとは言えない。高々25%ぐらいだろう。となると電気の3倍のお湯が必要な場合ということになる。
 高分子電解質型燃料電池は、すでに実証試験などが始まっているが、本格的な普及となると、まだまだ未来の話である。発電効率が33%になれば、電気の2倍のお湯が必要という場合まで有効になる。
 以上のように、お湯が大量に必要ということが分散型エネルギーの必要条件になってしまっては、この技術の利用範囲が非常に限られたものになる。なぜならば、分散型エネルギーには、それなりの欠点があるからである。それは、ヒートアイランド現象を酷くするということである。これまで、排熱は僻地に捨てて、エッセンスの電気のみを都市で使用していたため、ヒートアイランド現象は現在程度で収まっている。しかし、分散型エネルギーが普及すると、発電効率が悪い装置が大量の熱を出すことになる。いくらお湯が有効活用されても、発熱量があることに代わりは無い。
 となると、本当に必要な技術は、排熱をお湯以外に有効活用する技術なのかもしれない。例えば、高効率吸収型のヒートポンプが実現すれば、様々な有効活用ができるだろう。

3−5.輸送分野における削減

 1990年時点から二酸化炭素放出量が格段に増加したものが、民生部門と輸送部門である。トラックの燃費が悪くなった訳ではなく、輸送量が増えたためである。
 あるいは、輸送量そのものよりも、小口の貨物の輸送が増えたためだと考えるべきかもしれない。
 輸送量を減らせないとすると、燃費の向上が必須である。車の燃費は、概ね、車重に比例すると考えれば良い。現在の車は軽量化を目指しているとは言えない。一部の高級車に、アルミ素材を利用して軽量化を目指しているものもあるが、少なくとも日本の車は、まだ重量感を高級だと考えているようだ。今後、アルミ素材を利用した車に本格的に取り組むべきだろう。
 二酸化炭素排出量削減というと、後述する水素系の燃料電池車が思い浮かぶ。しかし、二酸化炭素発生量を考えると同時に、エネルギー効率を高くするという発想を持つことが重要である。
 エネルギー効率も、燃料から駆動力という範囲での考察は環境的な意味は薄く、Well to Wheelという考え方、すなわち、採掘段階から駆動までの総合エネルギー効率を問題にすべきである。すなわち、総合エネルギー効率=燃料エネルギー効率×車両燃料効率が重要である。実際、現時点で販売されている自動車のうち、もっとも効率の高い車が新プリウスである。総合エネルギー効率で、32%と言う。現在すでに導入されている燃料電池車の総合エネルギー効率は29%に過ぎず、商品化されているハイブリッド車に対する優位が出るのは、現在58%程度の天然ガスからの水素を得る燃料エネルギー効率を70%に高める必要がある。すなわち、燃料電池車の効率には、いかにして水素を作るかが最大の問題である。
 このようにして検討すると、ハイブリッド車という技術が燃料電池車への繋ぎの技術という位置づけは間違っており、当分の間、本命の燃費改善技術であると言わざるを得ない。
 ハイブリッド車の弱点は、車両重量の増大である。そのため、ハイブリッド車の特徴が出にくい高速道路の走行で不利になる。もっとも、新プリウスの高速燃費は、信じられないぐらい優れているが。
 ストップ・ゴーの繰り返しの都市内交通には、ハイブリッド車が非常に優れている。特に、アイドリングストップは、無駄なだけでなく、環境負荷の増大、ヒートアイランド現象への寄与が大きいので、大都市で登録する車はすべて最低限、アイドリングストップ車を義務化すべきだろう。ハイブリッド車は、最善のアイドリングストップ車である。

3−6.水素エネルギー技術

 水素が最終的なエネルギー源になる可能性は否定しない。しかし、GMの副社長の発言、「中国は天然ガスや石炭が豊富だから水素エネルギーへの転換は早いかもしれない」、は理解しがた。究極の水素エネルギーは、アイスランドのように、地熱がほぼ無限に使える、あるいは、離島のように風力発電と太陽光発電が主力にならざるを得ない状況下のみで、転換が行なわれる。
 それ以外の地域では、まず、化石燃料が枯渇し、液体燃料が相当に高騰するという過程を経る必要がある。なぜならば、水素供給インフラを構築するには、そのための費用が必要だからである。誰がそれを負担するのか、恐らくは、燃料供給業者である。燃料供給業者にとって、インフラを変更せざるを得ない状況にならない限り、あるいは、水素が相当に高価でも売れる状況ができない限り、着手する可能性は低い。
 GMの副社長が2010年に燃料電池車のコストを下げ商品化を狙うとしているが、それは無理である。大量生産すれば価格が下がるだろう、と思ったら、大間違いである。燃料電池車のコストは、大量生産によって却って高くなる要素を含む。それは、貴金属類である。酸化触媒に使用される白金類は、燃料電池車が普及するにつれて枯渇傾向を強めるだろう。白金類に変わる鉄−白金などの新しい触媒の開発が必須である。ところが、これが結構難しい。酸化触媒となると、白金類を凌駕するものはなかなか見つからないだろう。

3−7. エネルギー貯蔵技術

 各種蓄熱システム、圧搾空気、新型二次電池、機械的方法、などなどの各種エネルギー貯蔵技術は、もしも安価であれば、自然エネルギーなどとの併用によって、効果的なエネルギーシステムが構築可能である。
 特に、電力の効果的な貯蔵方法が家庭レベルで実現できれば、太陽光発電の一層の普及に弾みをつけることができるだろう。
 しかも、系統電力への接続が不可避ではなくなるために、日本全体としての導入限界値が上がるという効果も期待できる。

3−8. 効果的な熱移動技術

 熱交換器、ヒートポンプ、吸着式冷凍機などの技術的な開発が必要不可欠だろう。

4.環境税とそのシステムについて

 環境税は、その税額によって消費者が使用削減の動機を得るほどの税額のものにはならない。むしろ、集めた税収を何に使うかによって、全体的な効果が決まると言えるだろう。
 目指すべきは、世界最高の省エネルギー・省資源技術の開発による「結果としての二酸化炭素排出削減」を実現すべく、技術開発・商品開発と普及・その要素技術の貢献に対して支援をすべきである。

5.世界的協調による途上国の発展の余地形成

 まず、前提として、2050年までは、世界全体としてみたときに、多少の排出量の増大は、やむをえないだろう。しかし、2050年からは、世界的な合意形成によって、地球全体として見たとき急激な二酸化炭素排出の削減を行なわなければならない。
 北欧を中心とした国々は、すでに、二酸化炭素排出をはじめている。日本や英国などは、今後削減を実現すべき時期に到達した。
 米国は、しばらく排出量を増やすだろう。しかし、それは米国が発展途上国であると認定して、認めざるを得ないことでもあるだろう。しかし、今後10年以内には、削減の枠組みに戻ることを強制すべきだろう。
 中国は、恐らく今後20年間近くは、排出量を増やし、アジアの最貧国は、今後50年以上の排出量の増大傾向が続くのはやむを得ない。すなわち、発展途上国が経済発展する余地が、二酸化炭素限界によって阻害されないようにすること、これが世界にとって守るべきことのように思える。

6.まとめ
 
 温暖化現象が本当に地球に危機的状況をもたらすかどうか、まだ見えない部分が多い。しかし、予防原則的に、対応をしないとそれこそ間に合わない。二酸化炭素排出量削減は、これまでの産業構造を維持する限りにおいては、経済活力の低下を招く。すなわち、あらゆる産業の経済活力が二酸化炭素排出量と無関係になるようにすること、これが究極的目標である。実現には多大の困難があるだろうが、なんとか実現することが、日本という地域の持続性のために必須のように思える。


C先生:その後、メーカーから発表。

A君:トヨタは、ハイブリッドと燃料電池車を中心とした技術の紹介。

B君:岡部マイカは、日本碍子のNAS電池用のヒーターを作っている企業で、北九州のベンチャーをヒアリングして、今後のタネのようなものをご紹介。

A君:西部ガスは、都市ガスの企業だけに、分散型エネルギーの紹介が主。

C先生:特に驚いたのは、ガスエンジンの効率が、最近、極めて良くなってきたとのこと。もっとも大型のガスエンジンで、ミラーサイクルの方式を使ったものらしいが。

B君:そして、最後に、西日本オートリサイクルの自動車リサイクルのLCA。新たに作る場合の1/3以下のエネルギーで鉄に戻る。

C先生:経済産業省の佐藤さんは、もと自動車を担当していたので、自動車関係が3名いて、割合と盛り上がった。自動車以外についても、いくつかの議論をご紹介しよう。

パネルディスカッションの概要(発言者の確認を取っていません。文責は安井にあります。)

話題その1:水素社会になるか

佐藤:自動車の将来燃料と技術に関するシナリオができないかを考えている。いくいくは水素社会になるだろが、それ以前にどんな道を通るか。徐々に置き換わっていくという「ガソリン−水素並列の社会」の期間が長いだろう。かなり長い絵を持たなければ。
 自動車側から見ると、水素供給が様々な方式で実現され、その間で投資競争が起きないと、実際に実現する道は難しい。

米光:Well to Wheel=「油井あるいはガス井から最後に車輪を動かす効率は、すでに新プリウスは、トヨタのFCVを超した。現在、メタンから水素を得る効率が58%。これが将来は70%になることを期待している。

太田:ガス産業として、それは真剣に取り組むべき課題である。

安井:本当のところは、石油の枯渇待ち。さらに、自然エネルギーの間欠性を水素製造プロセスと組み合わせて解消することに意味がある。


話題その2:自動車リサイクルを効率的に

和田:先日初代プリウスがリサイクル工場に入ってきた。初めてであったので駆動バッテリーを慎重に外した。

米光:色々な新しい技術が入る。リサイクル分野は担当していないが、プリウスの新車の認可を取るときに、役所からリサイクルシステムが無いと認可はしないと言われた。電池を再生することを見つけることが必要になった。そして、電池はリサイクルされる。また、触媒はほとんどリサイクルされている。

安井:リサイクル情報を十分に伝達する必要がある。家電の場合だと、メーカーが自分でリサイクルしているようなものなので、最適リサイクルの情報がしっかりと伝達される。自動車は必ずしもそうは言えないので、情報伝達を工夫する必要があるだろう。

話題その3:2010年燃費基準というものが、なんであれほど低いのか。

佐藤:1997年頃から検討をしていた。その時点では、技術的な限界からあのようなものだという結論になった。

米光:その後、ヴィッツが出たが(1999年1月)、あのエンジンは効率が高い。

安井:今のままでは、2010年にあの基準を満たさない車がなくなってしまう勢いだ。これでは、昔の護送船団方式の目標だ。未来の目標は、もっと志の高いものにしないと。

話題その4:二酸化炭素排出を防止する社会的システム

佐藤:別に環境税に限るものでもない。もしも、技術開発費が欲しければ、エネルギー特別会計から出すという手も考えられる。

安井:それはそれで考えて貰うこととして、環境税の意義は、国民への行政からの意思の表明と徹底だ。税金を掛けてもやるという意思を伝える必要がある。

佐藤:すべての経済活動から出てくる。直接コントロールは難しい。法規制は難しい。排出量取引もありうる。省エネ法なるものがあって、事業所、製造業、が排出量を自主的に報告する。原単位ベースで目標を立てて。今後、業務用ビルにも適用。アメリカでもヨーロッパでも厳しい規制はできない。経済的な手法のようなものが議論されているのが実態。

安井:PRTR法のように、省エネ法の報告値を公開すると良いと思われる。そんな方向を目指すべきだ。

話題その5:メタンへの燃料転換の意味

太田:基調講演のなかで、石炭からメタンへの転換は余り意味が無いという趣旨の部分があったが、日本の場合は、天然ガスの利用率が13%。世界全体の平均が20%である。
 石炭の場合に、CH比が1:1、天然ガスが1:4。石炭に変えると、多量の二酸化炭素が発生すると。それでも石炭を普及させるのか。

安井:温暖化だけが環境的危機であるのなら、すべてメタンに切り替えるべきだ。しかし、エネルギー関係の本当の危機は、枯渇にある。将来、なんらかのエネルギー源が開発されても、使えるのは電気だ。飛行機は電気でどうやって飛ばすか。あらゆるエネルギーを平均して残すのが次世代のためだ。


フロアーからの質問を紙で収集

質問その1:家庭用風力発電は可能性があるか

安井:太陽光発電と風力とのどちらを選択しようかいろいろと調査したが、相当な大型でないと発電量が不十分。さらに、風速の3乗に比例する発電量なもので、風速が低いとほとんど役に立たない。

太田:台風が来ると、風力発電はかなり厳しい。倒壊する可能性がある。

質問その2:ハイブリッド車は、電池分居住性が悪くなるのではないか。

米光:初代プリウスの電池は大きかったが、その後、マイナーチェンジして、サイズが半分程度になった。トランクサイズも広がった。燃料電池車になって、モーターが車輪の中に入るようになると、自動車のレイアウトは大幅に変わる。今回の東京モーターショーにすでに例が出てきている。


質問その3:学校教育で、ものづくりをやれそうな子供達が少なくなった。

安井:今の子供達は、すべてのものが大人から与えられ、さらに、どんな基本的な技術が改善されると、先端技術にも役に立つといった情報の読み解きが行なわれていない。

質問者からのメールによるコメント:

ディスカッションの中で学校教育について質問をさせていただいた中学の教諭です。
時間のない中、ちょっと場違いな質問ではないかとも思いましたが安井先生に取り上げていただいて、とても嬉しく思っています。
 私は技術科の教諭をしていますが、子供達のものづくり離れを年々感じています。もちろん素晴らしい子もいますが、絶対数が少なく昔はよく見かけた「勉強もがんばり、ものづくりもアイデアがある子」が「学力はあるが、アイデアがない」タイプの生徒に変化しています。今日のシンポジウムで先生が「技術が先鋭化して、普通の人には実態感がないのではないか」と言われてましたが、まさしく本質を突いていると思います。