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このところ、異常な気象現象が多いと思われませんか。それは、これまで滅多にない気圧配置が、頻繁に現れることが原因だと思われます。 地球の平均気温は、2000年以降、それほど上昇している訳ではありません。しかし、一方で、5月11日の日経の夕刊によれば、ハワイのマウナロア観測所での二酸化炭素濃度が、初めて400ppmを超したとのことです。 と言うと、二酸化炭素のような温室効果ガスを排出しても、温暖化は起きていない、これは変だ、と思う人が多いと思います。しかし、そこには、あるマジックがあるのです。比べているのは、平均気温だからです。温暖化が引き起こすのは、確かに平均気温が上昇することではあるのですが、それと同時に、場所場所での最高気温と最低気温の差が大きくなります。 もう一つの要素が、海洋です。地球の温度と言っても、気温だけが温度ではありません。本当は、海洋の温度も計らなければならないのです。しかし、水の熱容量は、同一体積で比較すると、非常に大きいので、かなりの熱を吸収しても、本当にわずかな温度上昇にしかならないのです。 気温が上昇するとどうなるかに話を移します。赤道でのある場所の温度がかなり高くなると、上昇気流が強くなって、低気圧帯になります。一旦上昇した空気は、北と南に運ばれ、そして上空で冷やされると降りてきます。これが高気圧帯です。 サハラ砂漠は高圧帯になっている時間が長いために、乾燥していて、その結果、砂漠になっています。 アフリカは赤道が地上を通っていますが、アジアではシンガポールが大体赤道の位置ですので、そこに大きな陸地があるわけではなく、またインドも北半球にありますから、赤道はインド洋を通っています。 水の熱容量は、空気よりも大きいと述べましたが、土壌などよりも大きいので、熱を加えられても、温度上昇が余り大きくなりません。そのため、アジアには余り明確な砂漠地帯がありません。強いて言えば、アフリカに近い地域であるアラビア半島、パキスタンあたりまでは砂漠気候です。 中国のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠は、山に囲まれた場所で、雨が山によって遮られているために砂漠になっていると考えられています。 タクラマカン砂漠やゴビ砂漠は、偏西風の地帯なので、その乾いた空気が内モンゴルを経て、北京近くまで運ばれ、北京の砂漠化を引き起こしています。 さて、赤道近傍がもっとも太陽によって暖められるので、ある部分の海水が極めて熱くなることがあります。太平洋ですと、赤道付近での貿易風が強く吹いて、暖かい水がチリ方インドネシア付近に貯まるか、逆に貿易風が弱くてチリの沖合に暖かい水が貯まるかによって、赤道のどの部分が暖かくなるかが決まります。 チリ沖が暖かい場合をエルニーニョ、インドネシア付近が暖かい場合をラニーニャと呼びます。この暖かい空気が、中緯度での高気圧の強さや位置に影響を与えるのです。 このような現象は、インド洋にも大西洋にも、多少なりともあって、赤道のどの部分が暖かいかによって、地球の中緯度での高気圧の配置がかなり変わります。 そのため、まっすぐ流れているときと、高気圧に阻まれて曲がって流れるときで、偏西風の流れ方が変わって、ときには、真北から偏西風が流れるといった状況を引き起こすこともあります。 こうなれば、真北からの風が吹き込むことになりますので、その影響を受ける地域では非常に寒いことになります。 結論としては、地球温暖化が進むと、赤道付近の温度差が大きくなって、その影響で中緯度域での気圧配置が影響を受け、そして、この地域での寒い日と暑い日の差が大きくなります。 現象として現れ、我々が日常生活で感じることは、気候が荒くなること、穏やかで心地良い気候が失われることを意味するのです。 別の言い方をすれば、丁度良い気温の日が減少するとも言えます。最近、秋がすごく短くなったと思いませんか。 さらに言えば、極端現象と呼ばれる現象が増えます。 今年の冬、青森県酸ヶ湯温泉の降雪量は、過去最高の566cmを記録しました。東京もかなり寒い日が続きました。その割には、東京の桜の開花は、過去2番目に早かったのです。それは、3月としては非常に暑い日が有ったからです。 さらに、5月になったのに、帯広などではかなりの積雪を見ました。 これらの現象は総称として「気候変動」と呼ばれています。 平均気温の上昇も当然起きるのですが、それよりも「気候変動」が生活に重大な影響を与えます。 もっとも、今年の冬の寒さや、5月の降雪ぐらいであれば、「この程度なら大したことはない」と言われるかもしれません。 しかし、昨年の4月、つくば市で起きた竜巻は、積乱雲が極端に発達したためでした。これは、冷たい空気が入り込んだところで、地表が太陽で熱せられれば、上昇気流が起きて積乱雲が発達します。大気の温度差が原因です。 つくば市の竜巻の規模はかなりのものでした。これほどの規模の竜巻は、記憶にないのですが、歴史はどうなっているのでしょう。 ![]() 表1 竜巻の被害状況 このような被害状況ですが、どうやら、竜巻は徐々に強力になっているようにも思えます。 つぎに、昨年の10月に起きた、ニューヨーク市を停電させ、地下鉄にも1週間後にも20%が不通という被害を与えたハリケーン・サンディーですが、なぜ、急に西に進路を変えたのか。そのときのルートと気圧についてチェックをしてみましょう。 まず、当時の北極を中心とした気圧配置を見ます。次の図は、10月29日の12時00分のものですが、米国東海岸のニュージャージー州のすぐ東にハリケーン・サンディーがいます。その北東方向に、非常に大きな高気圧が居座っています。 ![]() 図1 10月29日12時00分の気圧配置 次に、進路を書いてみます。報告書はNOAAによるものが、 http://www.nhc.noaa.gov/data/tcr/AL182012_Sandy.pdf にあります。 ![]() 表2 サンディーの位置などの記録 これをエクセルでプロットし、丁度上陸地点であったアトランティック・シティーとニューヨークの位置を書き込んで見ました。 ![]() 図2 サンディーの進行経路 10月28日0時ぐらいから進路が西に変わり、図1に示した気圧配置の時点である10月29日12時から急に進路が西に向かったことが分かります。 ところで、この地域に来るハリケーンは、これまでのものはほぼ北東に進行し、そのまま海上を遠ざかるのが通例でした。しかし、サンディーは、なぜか西に進行方向を変えたのです。 これは、図1で説明した北東方向、大体、ニューファウンドランドのところに非常に大きな高気圧が居座っていて、サンディーの進路を阻んでいたことが原因です。 図1で見ると、その高気圧の周辺を吹いている風に乗って、サンディーは西に進路を変えざるを得なかったということになります。 高気圧の位置が原因で、五兆円とも言われる被害が出たのです。 さて、問題は、この高気圧はなぜ通常の位置とは違う位置に現れたのか。本当の理由は、高気圧に聞いてみないと分からないとも言えますが、一つの可能性として指摘されていることが、すでに若干の説明をしたように、大西洋の赤道域での海面の温度です。 赤道付近では、貿易風というものが吹いていることは、すでに説明しました。大西洋の場合、この貿易風が強ければ、赤道付近の海の表層にある太陽で暖められた温水が西に向かって移動し、ブラジルのあたりに溜まります。もしも、この貿易風が弱ければ、東のアフリカ付近に暖かい水が溜まります。貿易風の強さは、赤道付近の温度によって決まると考えられますので、地球の温度分布によって影響を受けます。 しかし、大西洋の赤道付近の構造は複雑で、ブラジルの最東端は赤道のわずか南、そして、アフリカの西端は、赤道のわずか北にあります。陸地の温度は、海よりも温まりやすく、冷めやすいので、太陽の影響を受けやすく、赤道付近の温度は、太平洋ほど単純ではないようです。 太平洋ですと、すでに述べたエルニーニョ・ラニーニャと呼ばれるはっきりした現象があって、これが太平洋沿岸諸国の気候に大きく影響を与えますが、大西洋では、これまで余りはっきりした影響があるという訳ではありませんでした。 しかし、このところ、赤道付近の温度が全体として上昇しているためか、大西洋でも、どうも通常ではない気圧配置が現れるということが始まったようです。すなわち、気候変動が、大西洋でも明らかになっているということだと思われます。 このように、地球温暖化は、文字通り気温が上昇することで、確かに一つの現象なのですが、実際に被害を受けるのは、明らかに気候変動がその直接原因です。英語では、Climate Changeですから、気候変化です。気候変化ですと段々と気候がある方向にずれていくといった感じがします。実際に重要なことは、気候が荒くなること、これまでの常識を超えた気圧配置が現れ、何らかの極端現象が出ることですので、気候変動というよりダイナミックな感触の言葉の方が、ピンと来るのではないでしょうか。 ということ分けで、「地球温暖化」という言葉よりも、より現実の被害などが表現できている言葉である「気候変動」を使おう。その方が、直感とも良く一致するのではないでしょうか。 これが今回の記事の主張です。 しかし、メディアが了解しない限り、これを実現することは無理です。それには環境省が、あるいは、政府がメディアに要請をすることが必要かも知れません。できれば、そんなことが起きるように、なにか方法を探って見たいと思います。 |
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