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  ガラスリサイクル、日本の役割 09.10.2006
     



 今や、日本は世界のリサイクルの見本のような国になった。環境規制というと、ヨーロッパが先進的だと思う人が多いが、実情は全く異なっている。

 家電リサイクルに相当するヨーロッパの規制WEEEは、昨年の8月にやっと動き出したが、それから各国が自国の法制を整備しなければならず、現状、まだまだ数ヶ国に留まっている。しかも、不完全のようだ。

 このWEEEとペアだと考えられる有害物規制であるRoHSは、今年の7月から動き始めているが、実質上、どうやって運用したら良いのか分からないぐらいの悪法であり、しかも、リスク削減にはほとんど貢献しない。せめて、非関税障壁としての恣意的な運用が行われないことを望みたい。

 今回のお題は、ガラスのリサイクルである。なにが理想のリサイクルなのか。それを追求することが、日本の役割だろう。


C先生:先進国型リサイクルの見本のような国になった日本だが、まだまだ歪があるのも事実。リサイクルには、やはり乗り越えられない壁があって、無理やりそれを乗り越えようとすると、歪む。今日は、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、建築リサイクル法などを横に並べて、ガラスというもののリサイクルを考えてみたい。

A君:容器包装だけ考えると、プラスチックというものへの取り組みをどう考えるか、それが中心的な課題になるのですが、ガラスは様々な製品のリサイクルに関係する素材。

B君:現時点のリサイクル法は、すべて縦型だと言える。同じ素材でも、使用目的によって規制の対象になったりならなかったり。

C先生:今後、何年かでその点も改善される必要があると思う。現時点では、法律を作る立場でのリサイクル法になっている。もっともこれも当然と言える部分はある。リサイクル法の本質は何か、といわれれば、それは、何が目的か、という当然のことを除外すれば、リサイクル費用を誰が直接的に払うか、ということを決めること。となると、法律的な適用範囲を先に決めないと、議論が難しい。

A君:リサイクル費用を誰が払うかという議論は、本当は、深い意味は無い。なぜならば、最終的に、消費者が払うから。しかし、公平な支払いか、となると、なんとも言えないというところが問題。容器包装リサイクル法などでは、それが最大の問題だったりする。

B君:最大の問題は、素材が最終的に有価物になるのかならないのか。例えば、容器包装リサイクル法だと、ペットボトル。最初のうちは、いくら集めてもマイナスの価値だったが、最近では、集めれば有価物になった。集めるのは、自治体なので、もっともコストの掛かる収集段階は税金で賄われている。そのため、無料のリサイクルルートに乗せるよりも、海外に売り払って若干でも費用の補填をするべきだということになる。これが、一方で、日本におけるペットボトルリサイクル業が、リサイクルすべきボトルが戻ってこないために苦しいという状況を生み出している。

A君:スチール缶が容器包装リサイクル法の枠組みから外れているのは、それは有価だからという理由だった。しかし、法律が施行された当時、まだ中国の素材ブラックホールの活力は弱かったので、アルミ缶のスクラップと組み合わせてやっとなんとかタダで引き取ってもらう状況だった。一方、現在のペットボトルは、集めれば完全に有価物になった。しかし、容器包装リサイクル法の枠組みから抜け出せない。

B君:容リ法の話は、本日の話題ではない。ガラスの話をすべき。

C先生:というより、ガラスという素材を法律の枠を超えて横断的に眺めることによって、次に何が行われるべきか、それを探ることが目的なのだ。

A君:どこから説明しますか。まずは、法律的な枠組み以外に重要なポイント、すなわち、リサイクルが可能なのかどうか、という話でしょうか。

B君:材料のリサイクル特性、そして、それぞれの法律的な枠組みの状況、そして、結論か。

C先生:もと材料屋、しかも、ガラス屋ならでは、という記述が必要なのだろう。

A君:それでは、リサイクルに関係するガラスという材料の特性から。

(A)ガラスの製造プロセスの特徴
(A−1)高温プロセスである。1400〜1500℃といった高温で、素材を溶かして、それを板状などに成形し、冷却して作る。
(A−2)他の素材と違って、通常の製造プロセスにも、カレットという屑ガラスが使われている。原料だけを溶かしてガラスを作るのは難しい。
(A−3)高温が必要なのは、製造中にできる泡を抜くため。要するに、品質維持のため。
(A−4)金属系素材と違って、製造中に「精製」が行われることは無い。変なものが混じった原料を使ったらアウト。結果として、「欠点」というものができる。「欠点」=不均一な部分である。すなわち、目で見える。上記泡も欠点の一つ。

(B)ガラスの組成の違い
(B−1)普通系(ソーダ石灰系)
 板ガラス(建築用、自動車用)、瓶ガラスはこれに属する。組成に微妙な違いはあっても、それほど本質的なものではない。
(B−2)鉛ガラス系
 光学ガラスの一部。食器用クリスタルガラス。今は少なくなったテレビのCRTの一部。
 最近鉛を含んだ光学ガラスが一部メーカーから嫌われているが、もし、それが有害なら、食器用の鉛を含んだクリスタルガラスはどうするの。飲み物が直接接触するし、唇も触れる。
(B−3)耐熱ガラス系
 ガラス製の鍋、コーヒーメーカーなどに使用されるホウ酸系が主なもの。しかし、透明でありながら、結晶化ガラスと呼ばれるものもあって、これが他のガラスに混じると厄介。
(B−4)薄型テレビ用
 液晶テレビには、それ専用の、そして、プラズマテレビにも、それ専用のガラスが使用されている。プラズマテレビは、低融点の鉛系ガラスがリブと呼ばれる部分に使われていることが多いので、リサイクルは非常に難しい。
(B−5)その他
 光ファイバーは、ほぼ純粋な石英。めがねのレンズは、ホウ酸系に類似。

(C)着色
 ガラスには様々な方法で着色がされている。単なる飾りとしての着色の他に、太陽光をさえぎることによって、機能を持たせている場合も多い。
(C−1)着色元素の添加
 コバルト、鉄、ニッケル、希土類などの添加によって着色する。
(C−2)脱色:不可能
 一般には不可能。一度着色したら色は消せない。例外的に、ビール瓶の茶色は、鉄によって着色された青緑の瓶なら、原料に使える。それは、溶かす雰囲気が炭素などを添加することによって還元性に保たれているから。鉄による着色は、一般に還元すれば消える。


(D)リサイクルで困る不純物
(D−1)透明なために混ざる結晶化ガラス
(D−2)アルミニウム金属の砕片


B君:さて、ガラスのリサイクルに関して良く質問されることとしては、

(1)ガラスをリサイクルすると、どのぐらいのエネルギーの節約になるか。

(2)同じく、どのぐらいの二酸化炭素排出量の削減になるか。

(3)リユースはどうなのか。特に、リターナブルのビール瓶は環境にやさしいのか。

(4)ガラスのリサイクルは、何か問題を起こすのか。

(5)なぜ、建築リサイクル法で、ガラスが対象になっていないのか。

(6)自動車リサイクル法で、なぜガラスが対象になっていないのか。

(7)さて、ガラスリサイクルの現状はどうなっているのか。


C先生:順次答えよう。

(1)ガラスをリサイクルすると、どのぐらいのエネルギーの節約になるか。

 ガラスをリサイクルして得るガラスの細かい破片をカレットと呼ぶ。このカレットを再溶融することによってガラスができる。その際、すべて新しい粉体混合物(これをバッチと呼ぶ)から作る場合の、70%ぐらいのエネルギー使用量でガラスになるようだ。

 ただし、100%カレットのガラスは、これまた作りにくいようだ。

 現実的には、ガラス瓶の場合には、100%カレットを使ったものがあるが、板ガラスの場合には、工場内で生じたカレットは使われているものの、一旦市場を経由したカレットは全く使用されていない。

 すなわち、多少リサイクルをしたところで、大きなエネルギーの節約にはならない。

(2)同じく、どのぐらいの二酸化炭素排出量の削減になるか。

 エネルギーで70%。すなわち、30%節約。二酸化炭素だと、これ以外に、原料として使用する炭酸ナトリウムからの二酸化炭素の排出削減分が加わる。40%削減といっても良いだろうか。


(3)リユースはどうなのか。特に、リターナブルのビール瓶は環境にやさしいのか。

 ガラスのような物質はリサイクルは実質上効果的とも言いがたい。ガラスは、洗える、磨ける、という優れた特性を持っているので、そのまま再利用がベストなのだ。

 ビール瓶の場合、収集のための輸送、その後の瓶の洗浄などを含めて、もしも20回使うことができれば、1回あたりの環境負荷は、新品を作ることに比べれば1/4程度になる。

 それならすべてリターナブル瓶にすれば良さそうなものだが、やはり、消費者がガラス瓶よりもアルミ缶を好む。

(4)ガラスのリサイクルは、何か問題を起こすのか。

 コスト面から言えば、リサイクルは余り有利ではない。廃棄物の処理費用は高くなったが、原料は依然として安すぎる。金属資源でそうだが、鉱業による自然破壊は相当なものであるが、その自然破壊を復旧するための価格が、鉱石価格に含まれて居ない。だから、リサイクルをもっと推進させるような価格体系が必要。

 さらに、市場からのカレットを利用したリサイクルでは、ガラスの品質が若干落ちる可能性がある。

 現時点では、自動車用フロントガラスや建築用のガラスの品質基準が異様に高い。実質上、欠陥はゼロでなければ、受け入れられない。カレットに若干でも品質の異なるガラスが混じると、ガラスメーカーとしては、自動車業界、建築業界から受け入れられない不合格品が増えることを気にしているようだ。

(5)なぜ、建築リサイクル法で、ガラスが対象になっていないのか。

 これは、不思議の一つ。コンクリートのリサイクルよりも、ガラスのリサイクルの方が、資源削減効果としてはありそうに思える。

 コンクリートの場合、使用する骨材は、国内で採掘される。しかし、すでに川砂利などの資源は無さそうにも思える。

 ところが、ガラスの原料は、主として外国産である。したがって、採掘による自然破壊が起きても、余り問題にされない。

(6)自動車リサイクル法で、なぜガラスが対象になっていないのか。

 これも不思議の一つではあるが、自動車用のガラスといっても、実は多種多様。フロントガラスは、合わせガラスといって、2枚のガラスの間に、ボリビニルブチラール樹脂の膜をはさんで、割れても貫通しないような構造になっている。さらに、周辺には、黒いセラミックコートと呼ばれる部分がある。

 リアガラスは、曇り止めのための熱線が印刷されている。プライバシーガラスと呼ばれるやや色の濃いガラスが使われることもある。

 サイドガラスに印刷は無いが、リアウィンドのガラスはプライバシーガラスが使われていることもある。

 このように、自動車用ガラスは、4種類ぐらいの異なったガラスが使われている。したがって、これらのガラスが別々に処理され、リサイクルに回ることになって、効率が高いとは言い難い。

(7)さて、ガラスリサイクルの現状はどうなっているのか。

 容器包装リサイクル法によるガラス瓶ガラスのリサイクル。ガラス瓶へのリサイクルが行われているが、製造量が減っているために、かなりの部分が、カスケードリサイクルされる。

 例えば、ガラス繊維、建設材料、タイル、発泡体などにリサイクルされている。

 そして、どうしようもないものは、路盤材へのリサイクルが行われる。路盤材は、トン当たり単価が安く、できるだけ避けたいリサイクル製品である。

 家電リサイクル法の元で、テレビのブラウン管(CRT)のガラスは、回収されている。しかし、日本国内でのブラウン管の製造は止まったので、日本国内でのリサイクルは不可能な状態になっている。CRTは一体になっているが、実は、異なる3種類のガラスからできている。前面部(パネル部)、裏側の部分(ファンネル部)、電子銃が入っているところ(ネック部)で、パネル部は、バリウムやストロンチウムを含むガラスである。ファンネル部もネック部も鉛ガラスである。日本国内でキレイにされたCRTガラスは、「精製CRTガラス」と呼ばれ、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールなどのCRT製造メーカーに輸出されている。パネル部には使われないで、多くの場合は、ネック部ようにリサイクルされている。

 勿論、廃棄物の輸出入を制限しているバーゼル条約対応もしっかり行われており、精製CRTガラスは、廃棄物ではないとの認定を得ている。

 自動車リサイクル法では、シュレッダーダストの処理費用が消費者によって支払われる。ガラスは、別に取り出すのではなく、通常、シュレッダーダスト(ASR)に入る。減量のために、燃焼されて、その灰の中に入っているガラスがほとんど価値の無い路盤材にリサイクルされている。

 建築リサイクル法関係だが、建築物からのガラスは、直接埋め立てされている場合が多い。

A君:これでリサイクルに関係のあるガラスの特性から様々な疑問、さらには、リサイクルの現状までを説明されたことになります。

B君:色々だ。

C先生:ここで問題は、管理している法律によって、リサイクルの程度が違うということ。容器包装リサイクル法、家電リサイクル法によるリサイクルは、かなり厳しい。特に、家電リサイクル法によって、リサイクルのやりにくいCRTガラスがリサイクルされている。

A君:ところが、建設リサイクル法にガラスの記述が無いため、ガラスのリサイクルが進んでいない。これは、何故?

B君:原理的にはできるのだが、建物の解体コストがかさむ問題が大きい。さらに、建築物の解体を行う事業者が、建設業者ではない上に、建設事業者の関与が不十分。

C先生:それに、建設事業者にとって、あるいは、建築主にとって、リサイクルガラスを使うというマインドが醸成されていない。むしろ、完全無欠陥ガラスを求めるといったメンタリティが強い。

A君:ガラスなど、多少時間がたって、黄砂を含む雨でも降れば、汚れてしまう。ガラスがいかに完全無欠陥でも意味はない

B君:しかし、顧客のわがままを建設会社としては認めざるを得ないのだろう。業界としての体質がそうなのだ、と言わざるを得ない。また、ガラスを提供する事業者は下請けで、下請けは見下ろされている。

C先生:封建的というか、そんな体質が色濃く残っているのが、建設業界だともいえるだろう。いずれにしても、誰がリサイクル料金を払うのか、それは建物の所有者ではあるが、その仕組みがまだできていないのが問題。次回の改正で組み込まれることを希望。

A君:さて、それでは、自動車リサイクルでガラスがどうして進まないか。

B君:これも、自動車業界が解体を行っているわけではない。昔から、解体業者が存在し、自動車業界とは独自の世界を構成している。

A君:やはり解体コストが大問題なのでしょうね。丁寧に解体をしていたら、コストが上がってしまう。

B君:自動車リサイクル法では、シュレッダーダストの処理のためにリサイクル費用を負担している。これを流用して、シュレッダーダストが減るようなガラスのリサイクルにも使えるように変更すれば、なんとかなるのでは。

C先生:自動車用ガラスを作っているガラスメーカーは、日本に3社。世界でも6社しかない。技術開発は進んでいるようなので、その気になりさえすれば、なんとでもなるだろう。

A君:それでも、完全無欠陥ガラスを自動車業界は要求するのでしょうか

B君:完全無欠陥は、自動車こそ無意味。特に、フロントガラスには、ワイパーという時代錯誤的な装置が付いている。一度動かせば、ガラスに擦り傷が付く。

C先生:完全無欠陥ガラスが全部駄目という訳ではなくて、通常のグレードには、通常のグレードのものを使い、もしも顧客が完全無欠陥ガラスを欲しがったら、通常のガラスの価格にプレミアムを上乗せして提供すれば良いだけだ。欲しがる人には商品を提供して、それでより多くの利益を出すことを考えれば良い。何も、すべての車に完全無欠陥ガラスを使えば良いというもではない。

A君:無欠陥ガラスはプレミアム商品。プレミアム商品にはプレミアム商品らしい価格を、ということで。

C先生:プライバシーガラスも、実際には、プラスチックフィルムを内側に張り込む方法で実現すれば、ガラスの組成は同じものが使えるようになる。

A君:自動車もやる気になれば、やれる。ただし、誰がリサイクル料金を払うか、それは別。リサイクル法の拡大解釈で不可能ではないようにも思える、ということですか。

B君:自動車の環境負荷を下げることは、自動車メーカーにとっても、社会に良い印象を与えることになって、良いはずなのだ。

C先生:実は、市場からのカレットを10%含有する板ガラスには、エコマークの準備をすでにしてある。どのガラス会社からも、何の申請が無いのが問題。リサイクルガラスを使った車を買ってくれたら、「環境負荷の低いガラスを買って下さいまして、感謝いたします。完全バージンガラスよりも、欠点がでる可能性が多少高いですが、実質上性能的な問題はありません」、といった感謝状を付ける。

A君:自動車の環境負荷は、家電などの負荷の比ではない。やはり、重さが違う。家電と同様、あるいはそれ以上の配慮が必要になると思いますね。

B君:自動車は、価格競争が厳しすぎるのでは。開発経費をケチることが原因で、あのトヨタでも、このところリコールの嵐のような状態になっている。むしろ部品の重要性を再確認する必要がある。同時に、完全無欠陥のような無意味な品質要求も要検討。

C先生:このようにしてみると、ガラスについては、建築用、自動車用の板ガラスのリサイクルが、組成などから技術的には可能であるにも関わらず、社会的な枠組みが遅れていることが分かるだろう。これは、早急に実現する方向性だろう。

 家電リサイクル法関連では、液晶テレビ、プラズマテレビのリサイクルが大きな問題になるだろう。

 なお、今回の話題は、9月6日、慶応大学で行われたシンポジウムでの講演を元にしている。使用したパワーポイントファイルがご入用の方は、ご連絡を