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 エコナと発がん物質グリシドール   09.27.2009
     



 花王の食用油エコナが販売停止になっている。その理由は以下の通り。

 一般に、グリシドール脂肪酸エステルという不純物成分が食用油を製造するプロセス中で自然(非意図的)に生成し、他の食用油にも全く含まれていないという訳ではないが、パーム油中の含有量はかなり多い。この成分が体内で消化されるときに、グリシドールという物質に分解される可能性があるが、そのグリシドールには発がん性がある。そのため、パーム油を原料として使った乳児用の人工ミルクは危険なのではないか、という指摘が、今年になって欧州でなされた。

 エコナは脂肪酸の含有量を減らすために特殊な製造方法をとっているが、分析をしたところ、このグリシドール脂肪酸エステルを、パーム油の30倍以上も含むことが分かった。

 花王は、「グリシドール脂肪酸エステルは、通常の食用油にも含まれており、エコナの製造プロセスを見直して、含有量を通常の食用油並に減らす作業中である。その作業が完了するまで、販売を停止する」と発表した。

 その発表を巡って、消費者団体などは、エコナは、体に脂肪が付きにくいということで、特定保健用食品の認可を取っている。例え不純物が原因でも、健康上の問題あるとの認識で販売を停止するようなら、厚生労働省は、特定保健用食品としての認可を取り消すべきだ、と主張しているようだ。

 食品安全委員会がどのような見解を出すか、厚労省がどのような対応をするか、しっかりと見極めたい。

 実は、このエコナは、その主成分であるジアシルグリセロールという物質そのものに発がん性があるのではないか、という疑念がもたれ、現在食品安全委員会で評価中である。そこに、このグリシドール脂肪酸エステルという不純物に関する新しい事態が持ち上がったのだ。

 食品安全情報No.10/2009(国立医薬品食品衛生研究所)によれば、
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2009/foodinfo200910.pdf
グリシドールの問題は、最初は、ドイツのThe Chemical and Veterinary Test Agency (CVUA) Stuttgartが乳児用のミルク(注:完全に植物油から作られた人工ミルクを想定しているように思える)について問題を提起した。それを連邦リスク評価研究所(BfR)が取り上げ、初期リスク評価を行った。
 英語の要約 http://www.bfr.bund.de/cm/245/initial_evaluation_of_the_assessment_of_levels_of_glycidol_fatty_acid_esters.pdf
 ドイツ語 http://www.bfr.bund.de/cm/208/erste_einschaetzung_von_glycidol_fettsaeureestern.pdf
 その結果、乳児用の人工ミルクに関しては、より完全な対策を取るように推奨された。

 その趣旨だが、最近各国で対策を強化している子どもの健康に関連した問題だと思われる。

 しかし、日本では、それがどちらかと言えば、大人向けのメタボ対策用健康食品で問題になっているのが、日本の現状をどことなく象徴しているようで面白い。

 本日の話題は、あなたは今後エコナを使いますか?



C先生:こんな訳で興味深い状況なのだ。再び、日本社会に「リスクゼロをどこまで求めるか」という根本的な問いかけがなされている。このリスクをどのぐらい深刻に考えるべきなのだろうか。このエコナを摂取することで、大人がなんらかの発がんリスクを受けるとしても、そのリスクの重大性については、どのぐらいのものだと考えるかだ。

A君:最近、このHPでリスク関連の記事が増えているように思いますが、時代の流れという振り返って見れば、日本の現時点というときは、史上もっとも安全を享受できる時代であることが確実。

B君:いや、これほどリスクの低い時代は、空前絶後なのではないか。今後、さらにリスクが低下するとは思えないし、むしろ、温暖化のリスクなどが増大することによって、総合的なリスクは確実に増大する。

A君:食に限っても、現時点の日本は空前絶後のリスクの低い状況にあるのではないですか。

B君:最近気になるのが、食べ物に好き嫌いがあることが美徳のごとく語られることだ。それは、偏食は自らにとって不利なことだという認識がない。

A君:できるだけ多種多様な食品をまんべんなく食べることでリスクを最小化できる。なぜならば、あらゆる食品に、完全に無害なものなどはない。ある特定の食べ物だけをいつも食べているということは、余り賢い選択だとは言えない。

B君:サプリメントは、特定の食品のある成分を強化したものだから、それに依存することは、偏食をしているのと同じこと。

C先生:本題からずれている。結論から述べてどうする。まず、今回の話の基礎データを集めること。次に、この手の話をどう判断すべきかという議論の筋道を示す。こんな手順で行くべし。

A君:基礎データですか。まずは、グリシドールやそのエステル、さらには、エコナの主成分などの物質関連ですか。

B君:グリシドールの毒性データは無いことはないようだ。エコナの主成分であるジアシルグリセロールの毒性データも、現在、食品安全委員会で検討が行われるので、ウェブ上にある。

A君:了解。まずは、グリシドール。
 このような物質名からどんな物質であるか特に、どのような毒性があるのかを知りたければ、次のような方法がある。
 ◎製品評価技術基盤機構(NITE)のCHRIPというデータベースを参照する。
http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/InputSearchKey.do
 今回は、名称が分かっているので、名称で検索(スペースで区切って複数入力可能)欄にグリシドールと入力し、検索実行ボタンを押す。すると、この場合には、一つしか結果が出てこない。
 そこで、その物質の番号[1]をクリック。これで様々な情報にアクセスできる。



図 グリシドールが検索された画面の最上部。NITEのCHRIPデータベースより。


A君:この画面で、構造式などをまず見る。それから、下の方に行くと、W.各国有害性評価情報というところがある。そこに、評価シートというものがあるので、これで有害性の概略は分かる。
http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/sougoupages/pdf/2000-17.pdf
 しかし、この文書は2000年に作られたもので、それ以後の情報は反映されていないことには、注意を要する。

B君:この文書を全部眺めるのか? それは普通には無理だ。

A君:今回は、発がん性が問題。しかし、急性毒性が問題のときには、この文書が役に立つ場合もある。
 それ以外にも、様々な情報があるにはありますね。
 例えば、物理・化学的性状に、
加水分解性:水中で加水分解を受け、グリセロール(一般名グリセリン)を生じる
 という記述があります。これは、結構重要ではないでしょうか。後で議論しますが。

B君:発がん性なら、先ほどの画面の下の方にある。これで十分ではないか。

A君:むしろ、pdfファイルよりも、メイン画面の方が情報が新しいです。




図 グリシドールの発がん性に関する情報。多くの機関が情報を出している。 NITEのCHRIPデータベースより。


B君:「ヒトに対しておそらく発がん性を示す」ということが共通理解のようだ。

A君:それもある意味で当然でして、エポキシ基、C−Cの上に酸素Oが付いているところですが、この構造は結合角が自然ではなくて、無理な形であると化学者は考える。無理ということは、そこが切れやすい。切れやすいということは、化学反応を起こしやすい。すなわち活性が高い。

B君:そのような活性の高い部分を含む物質は、生体分子との相互作用が高く、DNAを切断したりしかねない。その結果、発がん性がある場合が多い。

A君:ただ、先ほどの示しましたが、水中だと加水分解が起きて、C−OHが2つという形に変化する。となると、分子全体は、グリセリンに戻る。そうなれば、毒性は格段に下がる(ほぼ無害)。

B君:加水分解は、酸やアルカリがあると進みやすいから、胃酸でも加速される可能性はある。

A君:ただし、胃の中に存在しているものは、水だけではないので、妙なものができる可能性もある。

C先生:ドイツのBfRのデータというものがドイツ語なのでやっかいだが、その内容は?

A君:それよりも、食品安全委員会で、このグリシドールの安全性を問題にし議論をしている資料が入手可能です。専門委員、国立感染症食品衛生研究所の菅野 純氏によるものです。そこに、BfRのデータが引用されています。
http://www.fsc.go.jp/senmon/tenkabutu/t-dai75/tenkabutu75-siryou5.pdf

B君:BfRが問題にした乳児用のミルクに使われていたパームオイル中のグリシドール脂肪酸エステルの濃度は、ドイツ語の方の文献には出ている。


図 各種食用油中のグリシドール脂肪酸エステルの濃度 by BfR。上からパーム油、オリーブ油、ヒマワリ油、ナタネ油、大豆油、アザミ油?、??と不明多し。

A君:生成したパーム油の濃度がなぜか格段に高い。2.9mg/kg。

B君:ところが、花王エコナ中のグリシドール脂肪酸エステルは、菅野氏によれば370ppm(=mg/kg)という発表だったとのこと。どうも、ドイツのBfRが問題にした量の100倍も高かったらしい。

C先生:花王からの発表だと、次の図のように、91ppm(=mg/kg)らしい。BfR発表値の約30倍。ただし、−OHの一つが塩素に置換した化合物も同時に検出される可能性があるとのことなので、実濃度はさらに低いだろう。ドイツのデータを見比べると、15倍ぐらいかもしれない。



図 花王からの発表
http://www.kao.com/jp/corp_news/2009/pdf/20090916_002_02.pdf


A君:いずれにしても非常に高い。なぜそんなことになってしまうのだろう。グリシドール脂肪酸エステルは、製造プロセスの最後と思われる脱臭過程で生成されるものらしいですが。

B君:そもそもエコナはどうやって作られるのか。原料は菜種油などの天然油。

C先生:食品安全委員会のHPの図を見ると良く分かるのではないか。
http://www.fsc.go.jp/sonota/diacylglycerol_dag_qa_20090924.pdf
 その最後のページに、ジアシルグリセロール、グリシドール脂肪酸エステルの図が出ている。これを見ると、なぜ、グリシドール脂肪酸エステルができるか分かる。



図 ジアシルグリセロールとグリシドール脂肪酸エステル 食品安全委員会の資料から引用

A君:普通の食用油は、脂肪酸3分子をグリセリンが繋いで1個の分子にしたもの(上図の右上)。脂肪酸の−COOHとグリセリンの−OHの間の結合はエステル結合と呼ばれる。

B君:エステル結合を作る反応は、脱水反応の一つ。逆の反応である加水分解をするとエステル結合は比較的簡単に切れる。

A君:すなわち、脂肪酸3分子のうちの1つを、緩やかな条件で加水分解して、1本の脂肪酸を外したものがエコナの正体(上図の左上)。

C先生:後ほど、これがどうして、「体に脂肪が付きにくい」油なのかの説明をして欲しい。

B君:いずれにしても、加水分解を穏やかに行って、まず、1本の脂肪酸を外す。

A君:しかし、問題は、3本の脂肪酸のうち、1本だけを外すのは難しい。ときには、2本外れる場合もある。

B君:それはそうだ。3本とも外れてしまえば、グリセリンと脂肪酸になるから、そこで反応は止まるが、1本だけ外れたところで反応が止まる理由がない。2本外れた化合物、モノグリセロールと呼ばれるが、それを全く作らないのは無理だ。

A君:そんな生成物を脱臭する。一般に食用油の場合にも行うようだが、触媒と一緒に加熱して、臭い成分を分解する。そのときしばしば使われるのが活性白土とかゼオライトなど。活性白土は、粘土のようなもの。

B君:ところが、活性白土で臭い成分だけが分解されれば良いが、そうは行かない。1本だけ脂肪酸が残っている物質(モノアシルグリセロール)の余っている2個の−OHから水が取れて、エポキシ基になる。

A君:それがまさしくグリシドール脂肪酸エステルの正体(上図の下)でよく分かる。

C先生:このグリシドール脂肪酸エステルを食べたとき、消化過程でどのような分解をするか。これが次の問題なのだが、それは現時点でまだ分かっていない。

A君:ただ、推定はできますね。やはり胃酸などの酸性雰囲気だと、加水分解が行われて、エステル結合が切れて、脂肪酸とグリシドールとに分解される。

B君:そこまでは確実だろう。しかし、反応がそこで止まるかのか、それとも、もっと先に進むのか、それが問題。

C先生:BfRの報告書には、「ワーストケース」という表現があって、摂取したグリシドール脂肪酸エステルが完全に分解して、全量がグリシドールになって、しかも、反応がそこで止まることを仮定している。

A君:一方、化学的な常識では、すでに述べられているように、グリシドールは水と反応(加水分解)して、グリセリンになる。

B君:こんな反応は、生体の中でも、その状況を再現した試験管の中でも同じようなものではないか。

A君:要するに、肉野菜炒めでも食べた直後とか、野菜サラダを食べた直後のヒトの胃の中身を再現した試験管の中に、グリシドールを入れてみて、どのぐらいの速度で分解するかを測定すべきではないですか。

B君:簡単にできそうだが、まだ、やられていないようだ。

C先生:それで100%再現可能か、と言われるとそうではないだろうが、少なくとも、「ワーストケース」がどのぐらい実態に近いのかという判定には使えるのではないだろうか。

A君:菅野氏の文書を読んでも、「ワーストケース」と実態との差を解明することがもっとも重要だということにはなりますね。

B君:菅野氏は、エコナには、グリシドール脂肪酸エステルが370mg/kg含まれていたという数値を用いて、安全と思われる濃度の40倍も高い、という結論を下している。

A君:40倍ですか。花王の発表値だと、91mg/kgですよね。分析法を考慮すれば、さらに低いかもしれない。これが正しければ、ここで少なくとも4倍は違う。グリシドールの加水分解が進めば、「ワーストケース」が10倍過大評価だという可能性も無しとはしない。としたら、まあ、安全係数(マージン)もギリギリセーフということもあり得る結果ですね。

B君:まあ、なんとも言えないが、「ワーストケース」が成立している訳はない。発がん物質の場合、健康に心配が無いという安全のマージンは大体10000倍を取るべきだが、それが、今回、2000〜5000倍程度しかマージンが取られていなかったかもしれない、ということだろう。

C先生:正確な数値を出すには実験が行われるのを待つしかないが、この程度のマージンが確保されていたとしたら、エコナを毎日摂取している人と、通常の食用油を摂取している人の発がん率に明らかな差が出るとは思えない。なぜならば、脂質、特に、獣脂を大量に摂取することは、もともと、がん、特に大腸がんの予防という立場からはお奨めできないことだからだ。

A君:脂質の摂取は、天然物だろうが人工物だろうが、いずれもリスクはゼロではない。

C先生:次に、それならエコナを摂取することは、もしもグリシドールの問題が無かったら有効だとお奨めできるのか、という検討を行って欲しい。

A君:エコナのメリットは、「体に脂肪が付きにくい」こと。

B君:なぜ「体に脂肪が付きにくいか」と説明されているか。それは、肥満の原因である、体脂肪あるいは中性脂肪の正体が、これまた脂肪酸とグリセリンとの化合物だから。動物は、脂質を消化、すなわち一旦分解して小さな分子にして、それを腸から吸収したものを再び合成しなおして、皮下脂肪などとして蓄積し、エネルギー源として使用する。通常の3本の脂肪酸が付いた食用油を摂取するより、2本しか脂肪酸が付いていない食用油を摂取すれば、脂肪酸の量が2/3と少ないから、中性脂肪になる率が下がる。

A君:それはそうですが、単純すぎる理屈です。決して脂肪酸の量は2/3にはならない。

B君:その通り。1gの普通の食用油とエコナとを比べてみると、その理由が分かる。

A君:脂肪酸をリノール酸だったとしますか。3本のリノール酸(分子量280.45)とグリセリン(分子量92.1)からできる脂質の分子量は、280.45×3+92.1から水3分子(18×3)を引いたもの。その値は、879.45。

B君:2本のリノール酸とグリセリンからできる脂質の分子量は、同様にして、617。

A君:さて、それでは1gの脂質からできる脂肪酸の量を計算します。
 3本のリノール酸とグリセリンからできた脂質の場合は、
 1×(280.45×3/879.45)=0.957g
 もう一つの2本のリノール酸とグリセリンからできている脂質の場合には、同様にして、0.909g

B君:要するに、食用油1g中にある脂肪酸の量は、エコナを食べたとしても、5%しか減らない。それだったら、通常の食用油を5%少なく摂取した方が良いのではないか、とも言える。

C先生:我々が考えると、この程度の効果だということになるな。
 次に、これが特定保健用食品として認められることはどうなんだろう。

A君:我々は、どちらかと言えば健康食品否定派ですからね。どうしても疑問に思う。

B君:欧米の食品メーカーが、利益率の高い健康食品で儲けるやりかたを日本でもやらない理由はないと、という思いではないか。

A君:しかし、過剰摂取の可能性が高まるサプリメント系の食品には、やはり懸念がある。

C先生:食品安全委員会に検討が依頼された特定保健用食品で、製造者が取り下げをするケースというのが結構あるのだ。その議論を議事録で読んでいると、かなり面白いことが分かる。

A君:本HPの読者であれば、一度お読みになるのを推奨ですか。

C先生:そうだ。カルシウムのような極々一般的な有効成分を含む食品についても、かなり慎重な議論が行われている。ちょっと古い議事録だが、これを。
http://www.fsc.go.jp/senmon/sinkaihatu/s-dai35/sinkaihatu35-gijiroku.pdf

A君:結果的に、明治もっとカルシウムベビーチーズは、特定保健用食品の表示を取り下げた。

B君:カルシウムは、不足している人は不足しているのだけど、過剰に摂取すれば、それなりに不都合は出る。血管のような軟組織を硬化させたり、シュウ酸カルシウムになって結石の原因になったり。

C先生:そのカルシウムベビーチーズは、一箱に10個の小さなチーズが入っている。一つのチーズにカルシウムが430mgも入っている。食品以外からの摂取量としては、最大でも700mgという上限があるが、2つ食べただけで、それを超す。

A君:もっとも、1日のカルシウムの摂取量の上限は2300mgとなっているのですが。

B君:サプリメントのように、大量摂取の可能性が高いものからの摂取量には、厳しめの上限を設けるのが当然なのだ。それが700mg。

C先生:エコナの場合も、現時点では、グリシドールが問題になっているが、もともと、エコナの有効成分であるジアシルグリセロールそのものに発がん性があるのではないか、という疑いがあって、食品安全委員会で検討していた。

A君:そちらの方も、未決なのですが、グリシドールの問題が発生しなければ、「まあ大丈夫」という評価になったのでは、と思いますが。

B君:グリシドールも、もう少々細かい実験などをするか、花王が製造プロセスを改良して、グリシドール脂肪酸エステルの含有量を下げることができれば、再度認められる可能性が高いですね。

C先生:基本的に、食品というものは、よほど明らかな害があることが示されないと、禁止にはならないものなのだ。すべての食品には、もともと若干の有害性があるのが当然だからだ。

A君:そこを理解できないと、どのような食品に対しても、誰かが問題だと言うと、それで不安になってしまう。

B君:食品に限らない。あらゆるものが不安になってしまう。

A君:「100%天然の食品を含めて、全ての食品になんらかの有害性はあり、リスクはゼロでない」という真実を認めることが難しいようだ。特に、消費者団体系の人々には、どうも困難のようだ。

B君:アクリルアミドという化合物の有害性が話題になったこともある。これは、ジャガイモを高温にすることによって、自然に発生する。

C先生:大分前だが、ポテトチップスとか、カリントウにはかなり大量にアクリルアミドが含まれていることが問題になった。
http://www.linkdediet.org/hn/modules/pico/index.php?content_id=34
このアクリルアミドという物質は非意図的にできてしまう物質だ。アクリルアミドに発がん性がある(グリシドールと同じ2A)といって、ポテトチップスやカリントウの販売が禁止されるということはない。

A君:農薬を使った野菜よりも、有機農法で作った野菜の方が、天然農薬成分は多い可能性が高い。天然農薬成分も、実は、発がん性がある場合が多い。だからといって、誰も有機農法で作った野菜を危険だとは思わない。

B君:「それを言ったらお終いよ」、に属する言葉の一つとして、「タバコと酒類を許可していたら、どのような食品や食品添加物を禁止しても無意味」というものがある。

C先生:まあそんなものだ。グリシドールの発がん性に不安を覚えるのなら、ビールや晩酌の酒にも不安を覚えて貰いたい、と言いたいぐらいなのだ。
 しかし、食材というものは、実際のところ、歴史的に長く食べているからなんとか成立しているとも言えて、本当に毒性があるかどうかなど、長期間に渡って人体実験をやってからでないとなんとも言えない部分が残る。タバコ、酒は、その害が明白ではあるが、酒だと全世界的に数1000年、タバコでもアメリカ大陸では恐らく数1000年に渡って人体実験が行われ、大体こんなものだ、ということを理解している人が多いから、圧倒的に強い有害性があるにもかかわらず、いまだに許容されていると言えるのだ。
 実際、市場に出回っている多くの食品は、本当に安全かどうか、十分な検討が行われたものはほとんどない。となると、食材にどうしても不安な人は、過去数10年以上に渡って多くの人が実際に食べていて、「害が無いようだ」という合意が得られている食品か、遺伝子組み換え食品のように、かなり厳重なテストが行われている食品を選択することが賢明だと言える。しかし、問題は、新しい食材がどんどんと現れることだ。マイクロトマトとか、生食用ホウレンソウとか。
 それだけでなく、特定保健用食品も新しい食品だ。
 しかし、特定保健用食品のリスクが完全に分かっていない以上、エコナが他の特定保健用食品に比べて危険性が高いということは無いかもしれない。むしろ、現時点で、そのリスクと効用がよく分かったために問題になったとも言えるかもしれない。
 分かっていないということで言えば、ある種のサプリメントなどはものすごく危険だと推測できる。サプリメントという言葉がついていたら「何か良さそう」と感じるマインドは速やかに修正すべきだ。
 カルシウム・マグネシウムの含有量が多いミネラルウォータなども、日本人はまだまだ経験不足だ。そもそも、ミネラルウォータに含まれている無機質のカルシウムの吸収は極めて悪いことが知られており、カルシウムの補給用としては無意味。単に、下剤としての機能ぐらいしかない。
 ということで、結論的には、もしも台所に残ったエコナがあったとしても、それをすぐさま捨てるべしというほど危険性が高いとも思えない。「安全係数は、本来なら10000倍あるべきだが、2000〜5000倍に下がったと推定される」という程度なので。
 となると、残っているエコナを廃棄しないで有効活用して食べるという選択肢も、リスクの本質を十分に理解すればあり得ることだ。そもそも安い食用油ではないから。しかし、エコナが再度売り出されたとき、新しく買うかどうか。これは、まあ十分に考えて下さい。