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  自動車グリーン税制改善必須  07.20.2003



ロンボルグ本の批判にも多少疲れたので、今回はお休み。

今年度から、資金不足でグリーン税制の適用は、「超低排出量車(NOxとHC)」かつ「2010年燃費適合車」の2つの条件を満たす車だけになった。いずれにしても、これまでは、グリーン税制に適合する車が売れたようだ。

 「今月の環境」7月15日でも記述したように、低公害車が世の中に受け入れられること、それ自身は目出度いことではあるのだが、このグリーン税制が本当にグリーンなのか、と言われれば、それは同じ「今月の環境」で指摘したように、かなり妙な点がある法律である。

その説明をして、皆さんにご感想を伺ってみたい。「このグリーン税制が本当にグリーンだと思いますか?


C先生:グリーン税制なるものがある程度の成果を収めたのは事実である。それは認めた上で、この税制にはおかしなことがあること、さらに欧州の基準などに比較すると、余りにも時代遅れである点をきちんと指摘しておきたい。

A君:それでは、グリーン税制について説明しますが、実は、国のグリーン購入法も同様の基準です。
 グリーンというと排気ガスの規制のように思われるかもしれませんが、実際には、「燃費」、「排気ガス中のNOx」、「同じくHC(炭化水素)」、この3種類の異なる条件が満たされなければならないのです。

B君:まず、燃費だが、もともとは、1998年12月17日の運輸技術審議会の答申が元になっている。それによると、ガソリン乗用車は、2010年度までに22.8%の燃費を向上をしなければならないとされている。これを元に、省エネ法が改正された。

A君:したがって、この基準のことを2010年燃費基準などと呼ばれることが多いです。

B君:問題は、この基準が次のような表の形で提示されたこと。

区分 基準エネルギー消費効率km/L
1 車両重量が703キログラム未満のガソリン乗用自動車 21.2
2 車両重量が703〜828キログラム未満 18.8
3 車両重量が828〜1,016キログラム未満 17.9
4 車両重量が1,016〜1,266キログラム未満 16.0
5 車両重量が1,266〜1,516キログラム未満 13.0
6 車両重量が1,516〜1,766キログラム未満 10.5
7 車両重量が1,766〜2,016キログラム未満 8.9
8 車両重量が2,016〜2,266キログラム未満 7.8
9 車両重量が2,266以上 6.4

A君:具体的問題の一つは、車両重量で決めていること。もう一つは、不連続な基準であることの2つです。

B君:車両重量で決めているということは、やはり大きな車に変えれば、燃費は悪くても当然ということを黙認することになる。最近の車は、全体的に重くなっている。したがって、いくら省エネをやろうとしても、重くなれば、効果は出にくい。本当に省エネを考えるのであれば、現在使用中の車よりも小型・軽量の車へ誘導するような基準にしないと駄目だ。

A君:やはりアルミボディーですかね。安全性を確保するのには、重量増になります。しかし、棺桶型の死亡軽減もこのぐらいで良しとして、そろそろ燃費重視の軽量化でしょうね。

C先生:この1998年の時点では、まだ、当時の運輸省にそのような考え方が無かったということだろう。しかも、燃費については、相当に緩い基準を作ってしまったと言えるだろう。現時点でも、まだ、国土交通省には、燃費の良い車を優遇するという考え方が無いように思える。

A君:現在のグリーン税制に対応する車の実例を見てみると、極めて変な例が見つかります。例えば、トヨタだと、マークUの2.5リットルグランデG。普通だと、この車は車両重量1490kg、10・15モード燃費12.4km/Lで、2010年燃費基準は13.0km/Lなので、グリーン車の条件を満たさない。ところが、このグランデGには、メーカーオプションが2種類ある。DVDナビ関係が10kg、電動ムーンルーフが20kg。この両方をつけると、車両重量が1520kgになる。燃費は多少下がって、11.6km/Lとなるのです。

B君:そう。そして、車両重量1515kgが一つの限界値になっているので、この車はオプション追加によって上のクラスに入る。そこでの燃費基準が10.5km/Lになっているので、楽々とこの条件を満たすのだ。すなわち、燃費が悪くなったのに、グリーン車の条件を満たしてしまう。

A君:そんな例は結構あって、日産だとティアナやシーマにも。いずれにしても、このようなある範囲内の車を一定の燃費に設定するという方法論では、限界があるということ。

B君:もうひとつの問題が、この2010年基準が緩すぎるということ。次の図は、前の図を多少書き換えたもので、左側の線は、基準値の緩い方の点をつないだもの、右側の線は、厳しい方をつないだもの。そして、点は、超低排出量車についての実データを入れたもの。要するに、車両重量と燃費だが、対象はオートマ車。

A君:これをみると、明らかにいくつかの車がすでに厳しい方の燃費基準も簡単にクリアーしていることが見て取れます。実は、マニュアル車は、もっともっと簡単にこの基準をクリアーしています。この図で示しているものは、いずれもオートマチック車なのですが、クリアーしているものは通常のトルクコンバータ形式ではなく、CVT形式のものです。車種としては、トヨタ・ビッツとホンダ・フィット。それよりは多少落ちるけれども、モビリオ、コルト、eKワゴンなどが、すでに、この2010年燃費規制を軽々と突破しています。

C先生:大型車はCVT化するのが難しいので、また、燃費を良くしても売れないので、現時点では小型車だけが燃費向上のターゲットになっている。

A君:今回発売されたホンダのNewインスパイアが比較的真面目に燃費重視のエンジンを作ったようですが、はたして、どうなるか。これが実燃費が良ければ、大型車の動向を決めるでしょう。実は、カタログ性能は大したことは無くて、1540kgで11.6km/Lで、普通。この車重なら13.0km/L欲しいところです。

B君:ビッツ・フィットも良いが、もとっとすごいのが一群のハイブリッド車(白丸で表示)。もっとも、このハイブリッド車の燃費が本当か、というと、確かに怪しい。しかし、10・15モードの燃費は全部怪しいので、相対値を示すものだとすれば、それなりのデータだとも言える。


C先生:実際の燃費に近いデータとしては、これもかつてご紹介したことがあるが、e燃費なるサイトがある。
http://autoascii.jp/e-nenpi/

A君:そこからランキングというページを見ると、色々な情報を得ることができます。月例の総合ランキングのほかにも、現行車種ワースト燃費ランキングだとか、現行コンパクト車のランキングなどがあります。

B君:そので注目すべきは、カタログ燃費達成率。ホンダフィット1300CVTが62%、ビッツは多少ましで最高で71%。ハイブリッド車でも、プリウスだと60%ぐらい。インサイトは多少ましで72%だけど、シビックハイブリッドだと58%。

A君:ところが、外国車では、MCCスマートクーペなどになると、カタログ燃費のほぼ100%を達成できる。

C先生:要するに、外国車を除くと、国産車の間では、状況は余り変わらない、すなわち、10・15モードのカタログ燃費と、実燃費とは、かなり良い相関があるということだろう。要するに、この図も相対的な表現だと理解すれば、悪くも無い。

A君:そうですね。コンパクト車だけだと、この図に使ったデータのランキングでは、 フィット、ビッツ、コルト、マーチ、デミオといった順番。e燃費だと、フィット、ビッツ、マーチ、コルト、デミオ、の順とちょっと逆転もありますが、まあ大体の傾向は合っているようです。

B君:いずれにしても、ハイブリッド車のような日本独自の技術があって、それを育てるつもりであれば、それを目指した政策が必要だと思われるにも係わらず、グリーン税制は、全くそんな考え方が無いというのが問題。

C先生:世界的には、水素燃料電池車だと思われるかもしれないが、全くそんなことはない。少なくとも、向こう20年間は、車はガソリンで走る。あるいはもっと長期間そうかもしれない。となると、ハイブリッド技術が、省エネ・温暖化対策技術として最先端である状況は、意外と長いのかもしれない。日本が開発したこの技術は、優遇して、さらなる進歩を目指すべきなのだ。

A君:プリウスもこの9月に初の大々的モデルチェンジですが、実用車として何が問題ですか。

C先生:使っている立場から言わせてもらうと、やはり、電池の寿命ではないかと思う。それ以外の信頼性はかなり高いが、やはり電池が心配だ。初期型のプリウスの電池は、すでに、大体交換されているようだ。この間5年目の車検を通したので、すでに、電池は保証期間を過ぎた。これで電池がへたばったら、それこそいくら掛かるのだろうか。こんな電池こそ、リース形式にでもするのが良さそうに思える。

B君:ハイブリッドのような新しい車には、新しい販売のシステムが必要。車体は購入するとしても、電池はリースといった形は、確かに合理的のように思える。

A君:しかし、いくらで貸すのか。これが問題。例えば、月々1万円だとしたら、ガソリン代に比べて高すぎるでしょう。プリウスで月に1000km走る人が払うガソリン代は平均燃費が15km/Lだとして70L足らずですから、7000円以下。

B君:それなら、ある種の保険システムを作るか。月々2000円程度で、保証期間を10万キロ、9年程度に伸ばすとか。

A君:しかし、本当に電池がいかれたらそんな保険料では合わないでしょう。

C先生:最初のプリウスの電池は、かなり凝った形式になっていて、そのために図体がでかかった。単一のような電池を多数積み上げたものだったらしい。この電池の電圧は、288Vで電池はすべて直列だった。となると、どれか駄目になると、全部駄目。新しいプリウスは、電圧が500Vに上がったらしい。何かインバーターで昇圧するのかもしれないが。いずれにしても、電池の寿命をどう考えるか、これが問題だが、トヨタは、どうも、最近の電池は10年間は持つと確信しているようだ。

A君:さて、最後の話題が、ヨーロッパの燃費規制。これは燃費規制というよりも、会社としての二酸化炭素排出量規制のようなもの。
日本の自動車工業会も、ヨーロッパに対して、遵守することを約束しています。仕組みは、それぞれの企業がヨーロッパで販売する車の燃費の平均値を2009年に140g/kmとすることでして、こんな文書が出ています。
http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/199911/17.html

自工会のコミットメント (1999年11月)
  [1] 目標年次と目標値
自工会は、EUで販売された自工会メンバーの乗用車(新車)のCO2平均値について、2009年までに140g/kmを達成することを約束する。
(参考:95年の自工会実績値は193〜202g/km)
  [2] 中間目標見込み
2003年時点での削減については、目標見込みを165〜175g/kmとするのが適当と考える。
  [3] 中間見直しの検討
2012年までにCO2120g/kmを達成するというEUの目標にさらに近づくため、自工会はCO2のさらなる削減について2003年に再度検討を行う。
  [4] 120g/km車の投入
自工会メンバーの一部は120g/km以下の乗用車を2000年までに欧州市場に投入する。

B君:問題は、2つある。ヨーロッパ向けだけ、小型化をするのか、ということ。そして日本国内には、燃費の悪い車を売るといのなら、それは余りにも無責任ではないか、と言える。もう一つは、現在の日本の10・15モードは緩すぎること。すでに本日も言っているように、欧州車の燃費の絶対値は日本車よりも悪いが、カタログ値との乖離は少ない。

A君:燃費測定モードが変わって、実際の運用状況に近いものになったら、それは困るのではないですか。

C先生:140g/kmという二酸化炭素排出量は、燃費にすると、17km/Lぐらいだ。ヨーロッパ車は小型のものが多いが、それでも、この値を実現するのは困難だろう。大体欧州車はエンジンの効率が悪い。ディーゼルエンジンは日本のものよりも良いかもしれないが、それでも、ディーゼル車の二酸化炭素排出が決定的に少ないという訳でもない。日本車の優れたガソリンエンジンに比べて、ちょっと良い程度。

A君:ダイムラーなどの大型車のメーカーはどうするのでしょうか。スマートが19km/Lといった燃費ですが、その上のA160になると、もう13km/L。メルセデスが全部A160になるとも、とても思えない。

B君:BMWが水素燃料車なる非実用的な車を出しているのも、何か、考えがあってのことかもしれない。全く無意味な車だが。

C先生:大型車は、いざとなったら、天然ガス車にするのだろうか。ボルボにはそんな車もあるが。

A君:ところで、自工会のコミットメントの[4]ですが、プリウスが英国で走っているとか。この約束を果たすためのものなのでしょうか。

C先生:確かに。先日、英国で1台だけ見た。プリウスの英国での燃費はいくらなのだろう。

A君:英国のバース大学でのシンポジウムの記録では、80mpgとなっています。33km/L以上で、日本の10・15モードと変わらないですね。

B君:EPAのGreenCarのページに、燃費が出ている。米国の燃費は、市内とハイウェーという区分になっていて、プリウスだと、それぞれ、52mpg、45mpg。高速の方が燃費が悪い車は、そう多くない。日本流燃費に変換すれば、それぞれ22km/L、19km/Lだから、かなり現実的な値になっているようだ。
http://www.epa.gov/autoemissions/all-rank-03.htm

A君:プリウスの10・15モードは、33km/Lになっているから、大幅に違う。

B君:ホンダのアコードの2.4L版、オートマチックが、10.1km/L、13・9km/L。 日本における10・15モード燃費が12.0km/Lですから、まあ、そんなにも違わない。

A君:同じトヨタでも、カローラの1.8Lが、市内12.2、ハイウェイ16.0km/L.これが10・15モード燃費だと16.0km/L。ハイウェイモードと同じぐらい。やはり、多少日本のカタログ値が甘い。10・15モード用のチューニングがなされているのでしょうね。

B君:欧州車はEPAのデータでも、やはり余り燃費が良くない。VWゴルフ2L版が市内9.7km/L,ハイウェイ12.2km/Lだ。2.4Lのアコードに負けている。

C先生:このEPAのページの燃費あたりが、渋滞の無い場所なら、日本でも実用的な数値なのではないだろうか。

A君:いずれにしても、そのページは面白いですね。燃費以外にも、排ガスのクリーン度の評価があって、どのぐらいスモッグを出すかということで、ランク10(最良)からランク0(最悪)まであって、ランク0には、多くのアメ車とならんで、トヨタのランドクルーザーが入っていたりして。ランク10のかなりの割合をホンダ車が占めている。それだけアメリカにおけるイメージを重視しているのでしょう。

C先生:そろそろ結論にしたいが、グリーン税制は、まだ継続しているが、このグリーン税制における燃費の基準は、余りにも低水準で、将来を見通したものになっていない。国土交通省は、まだ護送船団方式的な考え方で、もしも厳しすぎる税制にすると、それを満たすのは、限られたメーカーのみになってしまって「まずい」、とでも考えているのだろう。しかし、2008年から京都議定書の第一約束期間が始まることを考えると、いくらなんでも、今の値では低水準すぎる。早急に、3割増ぐらいの値にして、さらに、都市を中心に走る車には、アイドリングストップ装置を義務化するといった英断が欲しい。