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   HV・PHV・EV車の動向
   01.13.2012
       将来の本命はどれだ?!




 このところ、新しいハイブリッド(HV)車、プラグインハイブリッド(PHV)車が発売されている。少なくとも、日本と米国は、ハイブリッド指向になっているようだ。

 米国で今年もっとも売れるセダンは、トヨタのカムリだと予測されていて(Wall Street Journal)、そのかなりの割合がHVになるだろう。それに迫るものが、フォード・フュージョンで、こちらもハイブリッド版がかなり売れるだろうとの評価である。ちなみに、このフュージョンのハイブリッドは、プリウス方式に近い。しかも、Energiと呼ばれるプラグインモデルもある。

 ヨーロッパでも、BMWが現行のAH3システムのようなウィークなHVではなく、プリウス流のストロングなHVを出すのもそれほど先のことではないだろう。そうなると、やっとのことでヨーロッパもHVの時代になるかもしれない。

 まずは、先日来所有しているプリウス・PHVの環境性能、経済性に関する若干の記述から始めたい。この最初の部分は、「自腹人のモノ評価」兼用の記事である。



1.プリウス・PHVの経済性と環境性能
   通常版プリウスとの比較

 11月中旬に納車されてから、余りヒマがなくて、走行距離が伸びない。しかし、燃費について、いくつかの事実が分かってきた。

(1)高速道路を含む100kmぐらいの長距離の場合

 ここで言う長距離とは、決して本来の意味での長距離ではなく、EVモードで走ることができる20km程度を超す距離という意味である。

 EVモードで高速道路を走ると、PHVは100km/hの速度を出すこともできるが、アッという間に電池が空になるので、通常のハイブリッドモードで走るのが正解。

 そうでなくても、冬のEVモードは、いくらシートヒーター、ハンドルヒーター完備といっても、やはり寒いので、その意味でも、エンジンの熱で暖房が可能なハイブリッドモードを、自然に選択してしまう。

 逆に短距離の運転であれば、ハイブリッドモードでもどうせ暖房が利くのは15分後なので、シートヒーターとハンドルヒーターのお陰で、通常版プリウスよりも、むしろ快適である。

 さて、電池をフル充電してからハイブリッドモードで走り出すと、電池は徐々に徐々に無くなっていく。そして、最後には、通常のHVプリウスと同じモードになる。まだ、確認できていないものの、概ね200kmぐらいは走る感触。

 このときの燃費は、燃費メーターによれば、35km/L程度となっている。一見、すごく良い燃費に見えるが、充電した電気を徐々に消費しながら走るのだからあたり前の話である。この同じ経路をもし普通のプリウスで走れば、経験的には25km/Lぐらいの燃費がでる状況ではないだろうと判断した。

 さて、このような条件で、プラグインの経済性と環境性能(CO2発生量)の両面で、アドバンテージはあるのだろうか。

費用の計算結果
価格の仮定:電力20円/kWh。ガソリン1L=145円
*プラグイン車の場合
  電気代 3.5kWh分   70円
  ガソリン代 5.71L分 857円
  合計           927円
*ハイブリッド車の場合
  ガソリン代 8.0L分 1160円

 ということで、それほど違わないことになる。すなわち、PHVが運用コスト上有利になるのは、EVモードで走れる20km程度の運転を多用する場合に限られるだろう。


CO2排出量の計算結果
 原単位の仮定:
 ガソリン:2.38kgCO2/L
 電力:0.46kgCO2/kWh
*プラグインの場合
  電力から    1.6kgCO2
  ガソリンから 13.6kgCO2
  合計     15.2kgCO2
*ハイブリッド車の場合
  ガソリンから 19.0kgCO2

 ということで、こちらも多少は良いけれど、PHVの効果絶大という訳ではないようだ。


(2)冬期に短距離をチョコチョコモード

 そこで、もっとも有利と思える極端なモードを考えることにする。それは、ちょっと近所のスーパーまで買い物といった用途だろう。まあ、往復5km程度と考える。

 ハイブリッド車でも、特に、冬だと、エンジンが暖まるまでの燃費はかなり悪いので、長距離のケースの半分、12.5km/Lと仮定する。

 完全EVモードで走れば、暖機運転は不要。電費はシートヒータ、ハンドルヒータのために多分ちょっと悪くなったとしても5km/kWhは走るだろう。

 このような仮定で比較をしてみると次のようになる。

費用の計算結果
 価格の仮定:電力20円/kWh。ガソリン1L=145円
*プラグイン(EVモード)の場合
  電気代 1kWhを消費。 20円
*ハイブリッド車の場合
  ガソリン0.4Lを消費。 58円

 これは3倍弱なのでかなり違うが、絶対値としてみれば、差は40円/買い物1回程度に過ぎない。

CO2排出量の計算結果
 原単位の仮定:
 ガソリン:2.38kgCO2/L
 電力:0.46kgCO2/kWh
*プラグイン(EVモード)の場合
  0.46kgCO2
*ハイブリッド車の場合
  0.95kgCO2

 差は2倍あるとも言えるが、差を絶対値としてみれば、0.5kgCO2程度であって、決して、多いとは言えない。


(3)結論

 プラグイン・ハイブリッドの存在意義は、毎日の通勤が往復20km、あるいは、職場で充電が可能な場合には往復40kmで、ほぼEVモードのみで走ることができる場合が最大である。それに対して、フル充電をしてからハイブリッドモードで走るというケースでは、それほど多くの効果は期待できない。

 特に、冬期で長時間運転になる場合には、快適さから言えば、エンジンを動かして暖房を入れることが多いだろうから、差はさらに縮まるものと思われる。

 夏期のエアコンは、比較的負荷が低いのでエンジンを掛けないEVモードでも同じように使えるはず。こうなれば、快適さを求めてエンジンを掛けるということは不必要になる。ということは、PHVは、暖房が不要な時期に適した車だということになる。

 EVモードを使いやすい暖かい時期にだけ使うなら、純EV車を買うことが効果が最大だということになるが、やはり、EVだけでは難しい。どうしても、ときどきは長距離を走るからである。このようなケースを想定すると、普段はEV、長距離HVが可能なPHVが適切だということになる。

 もし2台持てばどうだろう。それなら、通勤用の超小型EVと、長距離用のHVを持つことになるが環境負荷や燃費からは最高だが、それだと車購入費用が増えるから、経済性が悪くなる。となると、超小型EVとHVではなく、超小型EVと高燃費エコカーという組み合わせになるのかもしれない。

 あるいは、超小型EVはカーシェアリングをして、レンタカーでは供給台数に不安がある年末年始の帰省用などに備えて、ワンボックスを持つけど、余り使わない、というスタイルになるのかもしれない。

 そうなると、今後、超小型EVがどのような枠組みになるのか、ここに関心を持たざるをえない状況である。詳細を知らないが、今年中には、なんらかの枠組みができるのではないだろうか。



2.最近のHV、PHV、EVなどの注目動向

(1)三菱がPHVを発売予定 

 1月24日からアウトランダーPHVを発売すると発表。332万4千円〜429万7千円。
http://www.mitsubishi-motors.co.jp/outlander/index.html

 最大の関心事であるアウトランダーPHV燃費関係の性能は、
ハイブリッドモード燃費18.6km/L
複合燃料消費率が67.0km
/L
EV航続距離が60.2km

 プリウスPHVは、
ハイブリッドモード燃費31.6km/L
複合燃料消費率が61.0km/L
EV航続距離が 26.4km


 ハイブリッドモードの燃費はかなり違うが、複合燃料消費率は似たような値になっている。それは、EV航続距離の違いである。

 そこで、
「プラグインハイブリッド複合燃料消費率」の計算方法

 プラグインハイブリッド車のガソリンなどの燃料の消費率は、測定した充電電力使用時燃料消費率およびハイブリッド燃料消費率とユーティリティファクターを用い、次式により計算する。

FC(P) = 1 / { UF/ FC(E) + ( 1 - UF ) / FC(H) }

FC(P) : 複合燃料消費率(プラグインハイブリッド燃費) [km/l]
FC(E) : EVモードの燃費 [km/l]
FC(H) : ハイブリッドモードの燃費 [km/l]
UF : ユーティリティファクター

 この最後のUFというパラメータがその鍵である。この定義は全走行距離に対する外部充電電力による走行割合を意味している。

 もしもEVモードで20kmしか走れなければ(EV航続距離20kmということ)、その車は、生涯の総走行距離のうち、40%ぐらいがEVのモードで走ることになるだろう。もしも50kmをEVモードで走ることができるのであれば、67%ぐらいはEVモードで走ることになるだろう。この割合を使って、生涯燃費を計算するというやり方である。

 アウトランダーPHVは、電池を12kWhとかなり大量に搭載したため、EVモードでの走行可能距離がプリウスPHVの2倍以上になっていて、その結果、ハイブリッド燃焼消費率が大きな数値になっている。ちなみにプリウスPHVの電池は、4.4kWhである。

 アウトランダーは、ハイブリッドの方式が全く異なる。どちらかと言えば、米国GMが販売しているシボレー・ボルトのタイプである。しかし、4WDなので、走行用モーターが、前輪だけでなく、後輪にも装備されている。しかも、その出力が半端ではなくて、前に60kW、後ろにも60kWのモーターを搭載している。それに対してエンジンは2.0Lであるが、その出力は87kW(118PS)とエンジン:モーターが4:6程度だから、より電気自動車的になっている。合計207kWと、とてつもなく強力な出力である。

 シボレー・ボルトの場合には、フロントドライブなので駆動用モーターは一つである。
エンジン 1400cc 63kW/84PS
モーター 111kW
バッテリー 16kWh

 このように、よりEV的である。

 シボレー・ボルトは、当初、シリーズ型のPHVだと発表されていた。すなわち、駆動はすべてモーターが行なって、エンジンは、電池が空になったときに、発電用にのみ使われるという方式である。ところが、後日、エンジンも高速走行時になると、実は、駆動軸につながるという機構を持っていることが判明した。

 アウトランダーも同様で、高速で追い越し時などのようにパワーが必要になると、恐らくクラッチを持っているのだろうと思うが、前輪にエンジンの駆動力を伝える型式になっている。

 さて、この車の存在意義は何なのだろう。通常のエンジン車は、2.4リットル版と2.0リットル版がある。2.4リットル版でも出力は124kWであるから、PHV版の207kWという駆動力は極めて強力であることが想像できる。しかし、燃費は、2.4リットル版の14.4km/Lに比較すれば、18.6km/Lと優れている。

 恐らく完全に充電をしてから出発すれば、この車の燃料費はかなり安上がりになる可能性が高い。

 一般に燃費の悪いSUVであるが、PHV化することによって、燃料費を節約できること、さらに強力な踏破力が最大の売りということになるのではないだろうか。

 PHVのGグレードの価格が356万9千円もする。通常の24Gが269万2千円なので、この価格差を燃料費で取り戻すのは全く無理で、やはり、PHVを持っているのだという気持ち、さらに、走行性能は遥かに高い、といったところに価値を見出すことになるだろう。

 仕様だけからみれば、電池の搭載量などをを考えると、比較的妥当な値段かもしれない。性能はどんなものなのだろう。誰か、自腹評価をやりませんか?


(2)日産リーフのマイナーチェンジ

 これまでのリーフの暖房は、空気を温める方式で、5kWのPTC素子が使われていた。PTCというのは、チタン酸バリウム素材で、120℃程度の温度を自動的に保つ能力がある。

 これに加えて、今回、ヒートポンプ型の暖房を導入した。これは興味深い。なぜならば、電流をそのまま熱に変えるPTC素子だと5kWもの電力を必要とした。しかし、暖房がヒートポンプ型になれば、多少は改善されることが予想されるからである。

 エアコンを暖房に使用するときのCOPは、定格の性能が出るのは外気温が10℃ぐらいのときで、外気温が−3℃まで下がると、COPは大体半分になるといった見当で良いだろう。それでも、まだCOPが2程度以上が期待できるのであれば、消費電力は2.5kW程度となる。

 リーフの場合、24kWhの電池を搭載していて、航続距離はマイナーチェンジ後に228kmまで増加した。電費は、1kWhで9.5km走る計算になる。

 実際には7掛けぐらいか。仮に、1kWhで7km走るとすれば、普通道路をかなり効率よく走っているとして、平均速度が28km/hあったとすれば、1時間のドライブで4kWhを消費する。もしも、5kWのヒーターを1時間フルで動かしていたら、ヒーターの消費電力が5kWhになって、走行に使用した消費電力を上回る。

 これが半分になって、2.5kWhになったとすれば、ヒーターを使っているときの電費はかなり改善されることになるのだ。

 ただし、問題が残るのは、外気温が−10℃にもなる北海道での暖房だろう。そのためもあって、ヒートポンプを装備したリーフであっても、これまでの5kWのPTCヒータは残している。

 結論だが、ヒートポンプで多少改善はされたとはいっても、電気自動車ならやはり接触型のヒーターが良いだろう。シートヒータ・ハンドルヒーターに加えて、決して運転の邪魔にならないようなひざ掛けヒーターや、電磁誘導で加熱する暖房ブーツなどを開発するのがベストのように思える。



3.HV,PEV以外の技術

(1)マツダのSKYACTIVEディーゼル

 この低圧縮比のディーゼルエンジンは、なかなかおもしろい。良いアイディアなのではないか、と思う。周囲の評価もかなり高いようだ。日本燃焼学会の技術賞、日本自動車殿堂カーテクノロジー賞などを受賞している。

 低圧縮比のディーゼルにすることによって、開発者が主張しているように、20%の燃費の改善ができて、さらに、NOxの後処理が不要になったとすれば、これは革命的な技術である。

 詳しくは分かりやすい解説があるので、お読みいただきたい。
http://www.mazda.co.jp/philosophy/skyactiv/engine/skyactiv-d.html

 それなら欠点は無いのか。CX−5のガソリン版と比較してみると、

ディーゼルモデル2WD
 価格 298万円
 重量 1530kg
 出力 129kW
 トルク 420N・m
 燃費 18.6km/L


ガソリンモデル2WD
 価格 254.75万円
 重量 1440kg
 出力 114kW
 トルク 196N・m
 燃費 16.4km/L


 注目点は、ディーゼルエンジンのトルクと重量の増加か。やはり、どうしてもエンジンが重くなるということだろうか。その分、折角の燃費の優位性が多少割り引かれてしまうようにも見える。

 もともと、ディーゼル燃料の方が、ガソリンよりも発熱量が大きい。一例だが、38.2GJ/L34.6GJ/Lのように、10%ぐらい大きい。

 上述のCX−5の比較によれば、ディーゼルの燃費の優位性は、13%程度であったが、この発熱量の違いを差し引けば、その差は僅かしか無い。この程度の差では、ディーゼルの方が効率がかなり高いとも言いがたい。
 もっとも、実用燃費は、カタログ燃費と相当違うだろうから、そこが分からないとなんとも言えないという結論になる。

 米国のEPA燃費のように、実際の使用状況に近い数値を出すことはできなのだろうか。EPAのコンバインド(町中と市外の平均)の燃費は、プリウスの場合、50MPG(マイル/ガロン)である。これを日本流に直せば、21km/Lである。一方、日本のJC08燃費では、32.6km/Lである。日本でも、ネット上で公表されている一般ユーザの燃費は、当然のことながら、21km/Lに近いものである。 

 もう一つのパラメータであるCO2発生量はどうなのだろうか。ディーゼル燃料とガソリンのCO2発生源単位は、一例であるが、ガソリン2.38kgCO2/Lに対して、軽油2.65kgCO2/L。これまた11%ぐらいの差であって、ディーゼルが13%ほど燃費が良いからといって、CO2発生量が絶対的に少ないとは言い難い。

 燃料の価格面での優位性となると、日本では、ディーゼル燃料は、多少安いのが普通だが、英国など欧州ではほとんど変わらないか、場合によっては、ディーゼル燃料の方が高いこともある。それは、税制が違うからである。日本は、産業用ということで、ディーゼル燃料の税金を安くしている。ということで、価格の優位性については、確かに若干有利だろうが、それは、単に税制のためであり、技術的なアドバンテージがあるからだとも言いがたい。これが実情ではないだろうか。そう言えるぐらい、最近のエンジンは、ディーゼルだけでなく、ガソリンエンジンも同時に進化しているのである。