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   新型HV車 続々と発表
       08.24.2013  
          いよいよハイブリッド車が主流に



 日本の新型車はハイブリッド(HV)が中心的存在になるのだろうか。ホンダのフィットが新型になって、9月6日に販売開始。この車種は、販売台数のかなりの割合がHVになることだろう。

 トヨタは、カローラにHV版を追加した。ハイブリッドユニットは、アクアと同じもの。アクアのユニットは、二代目プリウスのものを改造したものだから、実績は充分。恐らく、フィールダーというワゴン型のものは売れるのではないだろうか。勿論、お値段次第なのだが、このWebサイトでは価格にはコメントしないことにしている。

 トヨタは、さらに、今年中にノア、ボクシーのワンボックスのHV版を出すと発表した。これは爆発的に売れるような気がする。しかし、どのユニットを積むのだろうか。ノア、ボクシーは、通常のガソリンモデルで1600kgもある。HV化すれば、もっと重くなるだろう。現存するユニットは、1.5L(アクア、カローラ)、1.8L(プリウス)、2.4L(SAI)、2.5L(カムリ、クラウン)で、丁度良いのが無い。2.4Lのユニットは燃費が良くないので、恐らく、製造中止になるだろう。となると、1.8Lの上が2.5Lまで離れてしまう。本当のことを言えば、2.0〜2.2Lぐらいの新ユニットが欲しいところ(どうやらプリウスと同じユニットらしい。力不足かも)。

 以前、レンジエクステンダーという考え方は、シボレー・ボルトのお陰で消滅してしまったと書いたが、なんとBMWが本当のレンジエクステンダーを売り出すことになった。BMWi3なる車である。

 などと言っていたら、車だけでなく、人にも”新型”がでてきた。自動車評論家ではなく、電動化コンサルタント和田慶一郎氏が出現し、Tech-Onに記事を書いている。元三菱自動車で、i-MiEVを開発していたようだ。さて、この和田氏だが、HV、PHVに関する実力はどのぐらいだろうか。

 ということで、今回、記述するのは、フィットHV、BMWi3、そして、和田慶一郎氏の三題噺。かなり長尺の記事になりました。


1.ホンダ フィットHV 9月6日発売

 このクラスだと、トヨタ・アクアがチャンピオンだった。単に、燃費が良いだけでなく、販売数でも年間トップをプリウス競うほどであった。

 アコードハイブリッドが30km/LというJCO8燃費を売り物にして販売が開始され、すでに7000台の受注があったとのことだが、やはり燃費でクラストップとなると、それなりの関心を持つ顧客が多くなったことを端的に示している。

 新フィットHVの燃費は、正式なデータが発表され、36.4km/Lとアクアの35.4km/Lを凌駕した。しかし、売れ筋になりそうなFパッケージの燃費は、33.6km/Lにとどまった。

 本当にその数値が出るかどうか、それが最大の問題で、アコードハイブリッドの30km/Lも、国沢光宏氏の記事
http://autoc-one.jp/honda/accord_hybrid/report-1417053/
によれば、街中で18km/L、流れの良い道で20km/Lと、カタログ値からの乖離が激しい。もっとも、HV車の場合、どうしても乖離が激しいようだ。しかし、プリウスの燃費も、ほとんど売れないLグレードを除いてカタログ値が30.4km/Lだが、街中で22km、流れの良い道で25km/Lは行くと国沢氏は言うが、まさにそのぐらいで乖離度は多少ましである。やはり、アコードの数値はいささか過大なのではないかとも思われる。

 フィットの数値が過大かどうか、それは、かなりの台数が売りだされて、様々な状況における実績がでて、やっとどのような値が真実なのかが分かる。

 新型フィットHVの仕様だが、これまでエンジンとモーターを直結したIMA方式であったが、今回のシステムは、エンジンは新開発の1.5Lアトキンソンサイクルで、デュアルクラッチ変速機「i−DCT」に、薄型モーターを遊星ギアで結合したもの。モーターの出力が、これまでの10kWから、22kWに増強されている。

 デュアルクラッチになって、エンジンを切り離して、モーターのみで走れるようになった。しかし、20kWしかないので、モーターだけで発進しようとしても、まあ、無理で、すぐエンジンが掛かることだろう。

 電池はブルーエナジー(GSユアサとホンダの合弁企業)製のリチウム電池になる。これによって、エネルギー回収性能などは上がることだろう。もっとも、モーター出力が2.2倍になっていることが、ブレーキの電動化率を増やすことに貢献するので、回収はずっと効果的になると思われる。これが燃費にも利く。

 ブレーキング時のエネルギー回収は、実は、かなり難しい。モーターに流れる電力は、一義的には加速度(減速度)に比例する。発進時の加速度は、それほど大きくはならないが、ブレーキング時の加速度(減速度)は、かなり高くなる。1Gなどということもあって、そのときには、相当な電流値になる。この大電流を電池に効率的に貯めようとすると、半導体などの回路と電池の電流容量に余裕が必要となって、結果的には、コスト高になるからである。新フィットHVは、ここにどのぐらいこだわっただろうか。

 やっとエアコンが電動になるようだ。これは絶対にやるべきことで、やっとアクアに追いついたことになる。

 さて、このフィットHVが成功する確率はかなり高い。室内のサイズなどが、アクアよりも大きいからである。しかし、絶対的な優位性を決める最後の要素は、発進時のドライブ・フィーリングにあると見る。プリウス系の車が持つ電気自動車的感覚に、その半分以下の小さなモーターでどこまで迫ることができるか、それをユーザーが比較し、選択することになるだろう。


2.BMWi3が来年発売

2−1.i3とはどんな車か

 米国では、来年の第二四半期に発売予定。価格は、$41350〜$45200。

 これが電気自動車EVなのだ。純粋のEVであれば、取り上げることもないが、オプションで、なんと、小型のエンジンを搭載したレンジ・エクステンダーになるというので興味深々である。

 すでに記述したように、レンジ・エクステンダーとして発売されたシボレー・ボルトは、実は、ハイブリッド車で、ホンダ・アコードのように、高速になるとエンジンがタイヤにトルクを供給するタイプだった。このことがばれて、一部からは相当な非難を受けた。しかし、この方式の方が実は効率的で、燃費が稼げる。実は、レンジ・エクステンダーは、様々なメーカーで開発が試みられたものの、燃費が改善できなかったために、販売に至らなかった。それが、今回、初めて、しかも、BMWによって販売されようとしているのだ。

 一部の情報では、i3は、プラグインハイブリッドだという記述もある。例えば、このWebサイトhttp://www.technologyreview.com/view/517936/why-bmws-i3-electric-car-is-really-a-plug-in-hybrid/
での記述では、そうなっているが、実は用語の誤用だと思う。

 この雑誌MIT Technology Reviewは、MIT関係の情報誌だとしたら、用語の定義をはっきりさせて欲しいと思う。

 モーターもエンジンもホイールを駆動しているものをハイブリッドと定義し、プラグインは、電池を外部電力で充電できるもの、と定義すべきである。

 レンジ・エクステンダーは、駆動はモーターだけで行うEVであるが、発電用のみに使うエンジンを搭載しているものという定義が良いように思う。しかし、このエンジンの用途には、冬季の暖房用の熱を発生させるという機能を含む。

 文句をつけたものの、上記MITの URLをアクセスして、雑誌の写真をご覧いただきたい。駆動系のモーターと、その隣に入るエンジンユニットが実にコンパクトですごい。

 このi3だが、スペックが余りにもすごい。当然、値段も高い。アコードのPHVが500万円もするが(政府からの補助金が70万円ぐらいでるかも)、同じ価格だったら、BMWi3の方に魅力がある。

 スペック(最終かどうか不明)をまとめれば
1).カーボンファイバー強化プラCFRPのボディーで車重は1195kg
2).4人乗り
3).モーター 168hp
4).電池 22kWhで230kg(BMWのデータでは18.8kWh)
5).エンジンはオプションで、£3150 2気筒 650cc 34hp
 これで、25kWの出力の発電機を回す
 エンジン+発電機ユニットの重さは75kg
6).走行距離 電池のみで80〜100マイル、エンジンを使えば160〜186マイルに伸びる



2−2.i3を日産リーフと比較

 このi3をどう評価するのだろう。日産リーフと比較してみよう。まずは、数値の換算が必要。

比較1.モーターの出力

 168hp(英国の記事からの引用)は、1hp=745.7Wであるから、125kW。このモーターは、日産リーフのモーターは、定格70kW、最大出力80kW。リーフの車重は1440kgとi3より250kgも重たい。

 となると、加速性能の差は相当に大きいのではないだろうか。

比較2.電池の量と走行距離

 リーフの電池は24kWh。i3は22kWh。

 走行距離は、リーフが228km、i3は80〜100マイルということなので、128〜160km。これを直接比較するのは不能だと考える。

 なぜなら、リーフの電費は、114Wh/kmとされている。ガソリン的な表現にすれば、8.77km/kWhである。これに24kWhを掛けた値が、210kmになって、カタログ上はなぜか228kmになっている。リーフほどの車重であると、通常、6km/kWh程度ではないか、と思われるので、144km程度が良いところ。もしも急速充電をする場合であれば、電池容量の80%までの充電になるので115km。

 一方、i3の80〜100マイルは、カタログ値であっても、余り過大に書かないのが欧米流なので、リーフよりも軽いこともあり、そんなものだと思われる。一言で言えば、両者とも、120kmぐらいなら使えるということではないだろうか。

比較3.i3のレンジ・エクステンダー

 この装置の意味については、国沢光宏氏が、ここで解説している。
http://kunisawa.asia/archives/201307-1.html

 「一言でまとめれば、長距離を走るときには、電池容量がゼロになってから発電機を回すのではなく、適当なところから回す。すなわち、発電しながら走るモードを頭に浮かべればよい。25kWの発電機であるが、まあ、20kWぐらいなら34hp(=25.5kW)のエンジンでも発電できるだろう。20kWの電池からの出力で走ることができるのは、巡航80〜100km/hまで。それ以下の速度でとろとろ走るのであれば十分だろう」。

 大体、同意できる意見である。しかし、国沢氏も言っているように、電池残量がゼロになってから、長い坂を登るのは苦しいだろう。唯一の難点かもしれない。

 これは、昔ながらの持論なのだが、PHVやi3のようなレンジ・エクステンダーの発電機の制御は、カーナビにセットした1日の行程によって最適化を行うべきものである。行程での上り下り、高速道路の有無などを解釈して、電池のレベルを算定し、最適に発電をするのが良いということ。まだ国連大学時代に日産自動車で講演をしたとき、このアイディアを述べ、特許を取りませんかとお奨めした。多分、出願されたのではないか、と思う。

 話を戻して、街中の記述がないが、推測してみる。我が家のプリウスPHVの平均電費はやはり6km/kWhぐらいだが、環七経由で羽田空港まで行くと、時間は45分ぐらい掛かるが、まだ電池は残っている。しかし、駐車場を上まで登るときにかなり減って、帰りは2〜3km走ると、EVモードからHVモードになる。自宅から環七経由で羽田までの距離を18kmとすれば、約3kWhを使ったことになり、所要時間は45分だから、1時間だと4kWhの電力を使うことになる。これなら、発電機の出力を5kWぐらいにしておけば、走行距離の限界は、ガソリン量だけで決まることになる。

 しかし、i3のガソリンタンクの容量は、わずか2.4ガロン≒9L。
http://www.gizmag.com/bmw-i3-electric-car/28503/
ということは、もしも高速道路に入って、80〜100km/hで巡航したときの燃費が20km/Lだったとしても、ガソリンの残りを考えれば、150kmごとぐらいには、ガソリンスタンドに寄る必要がある。

 一般に、シリーズモードで走行するハイブリッドの燃費は、余り良くない。もしも、通常のハイブリッドほど燃費が伸びなくて、15km/Lしか走らないとすると、100kmおきに給油することになる。


2−3.i3とプリウスPHVとの比較

 このi3を正月の里帰り用に使うことを考える。東京から山形まで、約400kmを帰るものとする。冬だけに、おそらくエンジンをかけて暖房用の熱を得ることになるだろう。満充電、ガソリン満タンで出発して、おそらく4回の給油で山形まで到達できる。それほど大きな問題ではないかもしれない。ここが、純粋のEVと大きく異なるところである。

 25日(明日)から出かける、東京、陸前高田、石巻、亘理、白石、福島、双葉、二本松、東京の4泊のドライブ旅行をi3で行く場合にはどうなるか推測してみよう。

 初日は充電満タン、ガソリン満タンで出発し、435kmぐらい走行。これに最大5回の給油が必要となる。翌日は270km走行で南三陸町まで。前夜の段階で電池はおそらく空に近いだろうから、急速充電をする設備があればよいが、無ければそのままスタートで、3回ぐらいの給油になるだろう。山の昇り降りはあるが、この方式でも、上りのための余分なエネルギーは下りにほぼ完全に回収可能だろうから、燃費の低下はほとんどないだろう。3日目、4日目も似たようなことになる。

 何かが不可能とか、大変に時間がかかるという訳ではない。この点、通常のEVとは大違いである。しかし、約100kmごとに給油しなければ、と思っていると、次のガソリンスタンドはどこにあるか心配で、神経がすり減りそうだ。10Lぐらいの小さなガソリン缶を買っておきたいぐらいである。

 これがプリウスPHVであれば、給油にはほとんど気を払わない。満タンでスイッチをオンにすれば、まだ1200km走れますと言ってくる。上記の全行程約1500km以上でも、どこかで1回給油すれば、楽々帰り着く。

 となると、プリウスPHVに慣れた身にとって、i3を長距離もこなすファーストカーとして買うのは苦しい。なぜならレンジ・エクステンダーモードでは、燃費も悪い。どうしてもセカンドカーである。セカンドカーにどこまでの性能を求めるのか、特に、衝突安全性などをどこまで求めるのか、というところが考えどころである。セカンドカーでも衝突安全性が欲しい、ということなら、i3は選択肢である。

 もしも、700kg〜1トンを超す車には、すべて自動ブレーキを強制化するといった別の方法で、超小型車の衝突安全が確保されるのであれば、セカンドカーは、それこそ超小型モビリティー規格ぐらいで良いのではないか。航続距離も、ユーザの通勤距離に合わせて、電池をオプションで買うといったものが合理的ではないか。

 という訳で、i3は、なかなか魅力的な車であって、もし米国に住んでいたら、2台目として、絶対に買ってみたい存在である。しかし、現在のような車の使い方、すなわち、日常的には電気自動車として運用するが大量の買い物、人の送迎ぐらい。主たる目的は、ときどき長距離の旅に出るといった個人的事情では、やはり、プリウスPHVが最適だと言わざるを得ない。


3.新型の評論家 和田憲一郎氏

 三菱自動車の電気自動車であるi−MiEVのプロジェクトマネージャーを務めた人である。退社して、現在は、独立コンサルタントをやっている。電動系の車の評論家として新規参入してきた。

 活動の場所は、日経のTech−Onである。「一車両断!」と恰好は良いが、果たして実力はいかなるものか。

 第1回目としては、プリウスPHVを取り上げ、その題名が「ユーザー心理を見誤ったプリウスPHV」というものだった。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130628/290452/

 プリウスPHVは、2012年1月に発売された。すでに発売から1年半を経過しているのに、当初の目標である年6万台に届かない。2013年4月時点で累計販売台数は、3万3千台だそうだ。

 このような革命的な商品が売れないのは、ユーザ心理を見誤ったからだ、というのが和田氏の主張である。さて、対談形式で書いてみたい。

和田:PHVは、CO2排出量やガソリンの使用量から見て、ハイブリッド車(HV)と電気自動車(EV)の間に位置するクルマである。そのため、曖昧さがあって、ユーザーとメーカーの間で解釈の違いが生じやすい。

C先生:そうも言える。しかも、ユーザーにとってどこに魅力があるのか、よく分からないだろう。経済性だけで考えると、プリウスPHVのようにHVモードの燃費が良いクルマだと、充電をすることの経済的意義はかなり少なくなってしまう。

和田:PHVをHVとEVのどちらからの派生車だと見る人が多いか、それは、当然”EVの派生車”だと考える人が多いとみる。それは、”充電”が車両の性能に大きな影響を与えるからだ。

C先生:充電できるからPHVであることは事実。特に、HVモードの燃費が悪いクルマの場合には、充電が燃料コストを支配する。しかし、和田氏の解釈は間違っている。EVを所有したことのある人は少なく、EVがどのようなものか、その本質が分かっている人は極めて限られている。だから、”EVの派生車”だと思うことができる人数は、もともと極めて少ない。一方、プリウス型のHVを買ったことがある人は、全世界ですでに数100万人居る。このタイプのHVを所有してみると、あのガソリンを全く使わないでEVモードで走る感覚がもっと長い間継続すれば良いのになあ、と思う。(ホンダのIMAの場合には、電気のみで走行するのは極めて稀なので、そうは思えないが)。しかし、EVが欲しいとは思わない。それは、1000km無給油という気持ちの良さを経験してしまっているからである。そして、PHV版が欲しくなる。
 和田氏の誤謬は、自身でプリウスを所有したことがないことに起因している。まずは、三代目プリウスの中古でよいから、明日にでも、一台発注すべきである。

和田:PHVをHVの一種とみるユーザーは、充電作業が煩わしいと考えて負担に感じがちだ。

C先生:充電設備が設置されてしまえば、充電そのものの作業は、全く負担だとは思わない。むしろ、その前段階である充電設備を自宅に設置することが極めて煩わしい。マンション住まいではほぼ不可能だし、一戸建ての場合であっても、車庫と電力計の位置の関係から極めてやりにくいケースがある。個人的には、たまたま楽に設置できたから、PHVを選択できたが、これは状況がラッキーだったにすぎない。

和田:プリウスPHVがEVモードで走行可能な距離は26.4kmにとどまる。これは一般の人が1日に走る平均距離である20kmをEVモードで走れないことになる。

C先生:事実誤認。実際に使用してみれば分かるけれど、街乗りでも平坦地であれば、20kmぐらいは普通に走行可能である。それに、電池が空になってHVモードになったとして何が問題なのだろう。もしもオプションがあったとして、電池量が追加できたら追加するかどうか。もし、1日に20kmしか走らないのなら、今の量で充分である。電池を増量すれば、車重が重くなるデメリットもある。
 これも経験不足の発言である。通常のプリウスだけでなく、プリウスPHVも発注されたらいかが?

和田:JC08モードは、エアコンとヒータを使わない状態の燃費。状況にもよるが、エアコンを使いながら走ると、モード値から2割減る。ヒータを使うとさらに減る。

C先生:これも事実誤認。それはエンジンでエアコンを駆動する場合で、モータで駆動するのHVでのエアコンなら、1割も落ちたら一大事だ。ヒータを使うとさらに減る、というが、例えば、冬の雨のような暖房も必要な状況であれば、最初からむしろHVモードにして走る。ガソリンを多少使うけれど、そもそも普通の車よりは格段に燃費は良い。最適なモードで走れる、これがPHVの良いところ。

和田:PHVやEVでは、車内モニターに走行可能距離を示すが、その値は余裕分を考慮して、少な目に表示する。10数キロ走れる場合でも、実際には10kmと表示することが多い。ユーザーはモニターの走行可能距離で航続距離を判断する。これらを考慮すると、実際に使う場合で20kmの航続距離を必ず実現するには、モード値で少なくとも35km以上にしなければならない。

C先生:そんな詐欺まがいのことをしているのは、EVだけだろう。PHVであれば、電池が空になってEVモードが終わっても全く問題はなく、ガソリンは使うが燃費の良いHVになるだけ。実際、プリウスPHVのEVでの走行可能の表示値はかなり正確である。表示でユーザを誤魔化さなければならないのは、電池が空になったらどうにもならないEVだけ。自分がi−MiEVだけしか知らないことを思わず暴露してしまっている。

和田:プリウスPHVには急速充電機能がないことも指摘したい。しかし、ユーザの心情を想像すると、走行中に電池残量が減ると、急いで充電したいと思うものだ。オプションでかまわないので、用意すべきだった。実際、アウトランダーPHVでは、急速充電機能をオプションとしたが、9割以上のユーザが購入する。

C先生:まず、指摘したいのは、走行中に電池が減ると急いで充電したいと思うというが、それは電池が空になる大きな恐怖を感じてしまうEVの不幸なユーザだけである。アウトランダーのように、HVモードになると燃費が悪いPHVのユーザも、少しは不安を感じるかもしれない。プリウスPHVなら、単に、ああHVモードになったなと思うだけ。
 プリウスを家庭用の200Vで充電すると、空の状態からフルまで大体1時間半で充電できる。これで全く困らない。アウトランダーの充電消費電力量は10.2kWhなので、200Vでも、5時間以内ぐらいの充電時間だろうか。となると、どこかで急速充電をしたくなるかもしれない。なぜならば、アウトランダー型のPHVは、電池が満充電状態での走行は快適だろうけれど、電池が空になると、燃費が格段に落ちる。PHVの燃費が67.0km/Lなのに、HVモードになると18.6km/Lでしかない。要するに、PHVといっても、EVで走らないと燃費が稼げないタイプの車なのである。67.0km/Lという数値は、マジックでしかないのだ。
 なぜかそんなことになっているのか。それはPHVの国土交通省の燃費の定義がそうなっているから。もう少々定量的に表現すれば、電池量を増やせば、国土交通省が定義しているカーブにしたがって、ユーティリティーファクターという不思議な数値が増大し、PHVの燃費が見かけ上向上するようになっているから。アウトランダーの場合、電力消費率が5.90km/kWhで、充電消費電力量が10.2kWhなので、60.2kmのEV走行が可能になっている。プリウスPHVは、HV燃費が31.6km/Lなのだが、EV走行可能距離が26.4kmと短いために、PHV燃費は61km/Lに留まる。このPHV燃費は、色々と議論がなされて現在の形になったようであるが、実態を反映していない、まさにマジックなのである。
 アウトランダーでオプションの急速充電装置を付けた人が多いのは、HVモードになったときの燃費の低下が余りにも大きいので、それを気にした人が多く、出先で時間を若干掛けても、充電したいということである。あるいは、200Vの充電装置を自宅に付けられない人だったのかもしれない。
 プリウスPHVは、HVモードになったときの燃費が通常型プリウスのプラス5%ぐらいと若干良く、坂の昇り降りが多い場合には、おそらく10%以上良い。だから、HVモードになっても、燃料費はほとんど気にならない。

和田:プリウスPHVは、未知の領域に挑む革新的な商品である。読み違いが多く出てくるのは当然のことである。次のプリウスPHVに、今回の分析を生かせばよい話だ。
 次を見据えるのであれば、もっとEV寄りに企画を立てるべきだ。次期車両を発売しそうな2015〜2017年にかけて、(1)電池の価格が低下する、(2)エネルギー密度も向上、(3)充電インフラが充実する、(まだ記述があるけれど、本質的でないので省略by記録係のA君とB君)からである。

C先生:次世代のプリウスPHVは、少しだけEV的になるだろう。その原因は、現在モデルの読み違いでもなんでもない。理由は和田氏によって示された電池価格なども一部関係しているが、もっと本質的なことがある。実際運転をしてみれば分かるが、プリウスPHVには、もう少々モーターパワーが欲しいからだ。現在のモーターは、最大出力60kWに過ぎない。プリウスPHVの車重は、1410kgもあるのだ。プリウスPHVにもっと電池を積みたくても積めなかったのは、価格面と搭載場所の問題以外にもあり、これ以上電池を積むと重量が増加し、加速がとろくなってしまうからだった、と推測している。
 それも、BMWi3と比較してみれば分かる。i3は、車重1260kgで、モーターの出力はなんと125kWもある。日産リーフは、定格出力70kW、最大出力80kWであり、車重は1440kgである。次世代プリウスPHVは、せめて、リーフと同じ最大出力80kWぐらい欲しい。
 しかし、そうなるだろうか。プリウスはあくまでもHVで在り続けるのか、それとも、今のプリウスPHVのような、PHV的HVを目指すのか。それによって、考え方が変わってくるように思う。
 個人的に考える理想形は次のような3種の構成だ。
 エンジンは今のものと同じもので、モーターパワーだけを80kWにし、電池はリチウム電池とし、充電電力量を1.5kWhぐらいまで増やす。これでHVとして画期的な高燃費を実現する。これを充電機能を付けないでHV車として売る。そして、充電電力量5kWhぐらいのリチウム電池を搭載したものを短距離用PHVとし、自宅で充電ができない人のために急速充電器をオプションとする。さらに、長距離通勤をする人のために、電池を2倍量の10kWhまで搭載する車種を設定するといった戦略が取れれば、非常に面白いと思う。10kWhの電池を搭載したPHVの場合だけには、急速充電器が欲しくなるので標準装備がよいだろう。
 この3種類でいく次世代プリウス戦略が採用されれば、価格と性能バランスが最強のHV、PHVの称号を維持できることだろう。 もし、自分で買うとしたら、バランスのよい充電消費量5kWhの中間タイプにする。


 という訳で、和田氏とC先生の対談が終わった。どちらがPHVについて、正しい評価をしていたと思いますか。

 その答えは、プリウスPHVとアウトランダーPHVのオーナーに聞いてみて下さい。