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     水素エネルギーは未来エネルギーか 
   09.21.2014
             PDFの形でメモを残すための最初のトライアル



 タイムスタンプを見ていただければお分かりのように、先付けになっています。次の土日は、ポーランドとスロバキアに居る予定なので、その分をフライングでアップしたいと思います。

 今回は、初めて行うトライアルです。PDF化した同じ内容のものをダウンロードできるように致します。今回、これを作ったのは、さる雑誌から記者が取材に来て、1時間ほどで、水素エネルギーとは何かを説明して欲しいという要求がありました。そのとき、何らかのメモなしには、すべてを論理的に話すのが難しかったので、急いで、こんなメモを作って対応しました。

 次回以降に同じ要求があったとき、このような配布用の資料を作っておくことが、個人的な時間的節約になりますし、もしも、どなたかに使っていただけるのであれば、それはそれで嬉しいと考えております。ダウンロード、配布はご自由に。ただし、もしも、何らかの記述不足や間違いを発見されましたら、ご連絡いただけますか

https://dl.dropboxusercontent.com/u/8952137/Keep/HydrogenIsItFutureEnergyNew2.pdf
  4月15日2015年更新

 記者の関心を引くために、某大学の研究センターが発表している文章から始まりますが、メディアではないのですから、水素の欠点も書くべきだと思ってしまうような表現になっています。その訂正をすることで、より真実に迫ることができると考えて、メモの先頭に使うことしました。



1.まずは、某大学の研究センターからの文書のご紹介

化石燃料を水素エネルギーへ
現在、私たちはエネルギー資源の大部分を、石油をはじめとした化石燃料に頼っています。
 しかし化石燃料は無限にあるわけではなく、大量に燃やすことによって地球温暖化や酸性雨などの問題を引き起こす原因ともなり、地球環境へ与える影響は深刻なものとなっています。
 そこで、化石燃料に代わる次世代のクリーンエネルギーとして注目されているのが、地球上で最も多く存在する元素であり、環境への負荷が少ない水素です。

水素エネルギー
水素をエネルギーとして利用する方法は、水素エンジンで燃焼させるほか、 酸素と反応させて電気を得る方法があります。
この方法は燃料電池等として、各国で研究開発が進められています。

水素エネルギー利用社会実現に向けて
水素研究は未だ解明されていない点が多く「水素エネルギー利用社会」の実現には、多くの技術的課題があります。
 水素には、貯蔵タンク等の材料に、原子・分子レベルで侵入して材料を劣化させる特性があり、この現象は「水素脆化」と呼ばれています。
 クリーンな水素エネルギー利用社会実現には、こうした現象を科学的に解明し、安全性を確保するための研究が必要です。
 当研究センターでは、こうした水素と材料に関わる様々な現象を科学的に解明し、安全・簡便に水素エネルギーを利用できる技術を確立することを目指します。

同時に、各企業等が抱えている水素材料に関する研究開発の課題に密着し、独自の科学的な分析等を通じてこうした問題の解決に積極的に応えていく、産業界の「駆込み寺」として幅広く貢献していくことも目指しています。


2.以下、上記文書で記述されていないことを明らかにする

★1:二次エネルギーであること

問題点1:水素は二次エネルギーであることを表現していない。本来、何かから作らなければならない。

問題点2:一次エネルギーは、化石燃料(太陽エネルギーのストック分)、原子力(宇宙創生時にできた放射性元素のお陰)、自然エネルギー(大部分は、現時点での太陽エネルギー、月の存在など、宇宙からのエネルギー供給:例外が地熱で、これは崩壊熱(原子力)と摩擦熱)の3種類しかない。

問題点3:したがって、水素をどうやって作るか、それによって、水素の地球環境との相性は決まる。言い換えれば、水素だから良いというものではない。

水素の作り方の候補としては、
(1)電気 ←自然エネルギー(含むバイオマス)、原子力
(2)電気 ←化石燃料
(3)化石燃料(水素源として)
(4)バイオマス(水素源として)

もしも電気から作るのであれば、電気をそのまま使う電池との優劣を、できるだけ多くの視点から比較すべきだということになる。


★2:水素の特性 かなり悪女であること

問題点4:水素の二次エネルギーとしての欠点を持つことを明らかにしていない。(国プロの水素は、JXなどの石油企業に対する姿勢提示なのか)

自然エネルギーの余剰分を電力線以外の方法で運搬する:エネルギーは電力を化学エネルギーに変換されるが、もっとも簡単なものが水素
低質の化石燃料を、現地で脱炭素しCCS処理+可燃性のガスとして運搬:この方式だとエネルギーは一旦、水素の形となる

方式は2種類
○水素をそのまま運搬する
*高圧水素
*液体水素
○水素を変換してから運搬する
*水素を液体状化合物にする
*冷却で容易に液化する化合物にする
*常温で液体の化合物化する


液体水素とは
沸点は-252.6℃ ボイル・オフ分を常に排出する必要がある
液体水素は非常に軽い液体で、その密度は70.8kg/立方メートル(20Kの時)と水(1000kg/立法メートル)の約14分の1

ガソリンと水素の発熱量の比較   
1.重量あたりにすれば、水素はすごい
ガソリン   47 kJ/g 
水素(気体)141 kJ/g 
2.同じ体積ならのガソリンの1/3000の発熱量
ガソリン   47 kJ/g  → 35000kJ/L
水素(気体)141 kJ/g  → 11.7kJ/L
3.液化すれば、ガソリンの体積の3.5倍程度で収まる
液体水素  141kJ/g   → 9980kJ/L


水素の気体の特性
ガソリンの体積の3000倍以上。
そのため、同じ体積の燃料タンクなら3000気圧にする必要がある。
これは技術的に無理なので700気圧以上程度。ただし、公称700km走る量の水素を700気圧にするエネルギーは、同じ仕様の電気自動車を150km走らせる量で、莫大である。
タンクの材質に、鉄などは水素脆性を起こすので使えない
カーボンファイバー強化のプラスチック
形状は、円筒状なのでガソリンの5倍以上のスペースが必要
cf.液体のタンクは、自由な形状になる。

水素のキャリア:エネルギーキャリアという化合物にして運ぶ
  水素を運ぶのは難しい。そのためエネルギーキャリア

○有機ハイドライド
トルエンを水素化して得られる
C6H5CH3 + 3H2 ⇒ C6H11CH3 
水素の体積は 1/500になる cf. 発熱量で比較:ガソリンなら1/3000

○アンモニア
N2 と H2 から合成
N2 + 3H2 ⇒ 2NH3
10気圧程度で液化する
アンモニアは直接燃焼でき、CO2を出さない
問題点は、運搬やタンクの設置、などに大問題あり。それは、刺激性の臭気のあるこの物質に対する一般社会からの受容性が獲得できるかどうかという点である。


3.応用面からの検討

★3:自動車は2050年で何をエネルギー源にしているか

 2050年であれば、日本であっても、自動車が排出するCO2を90%削減すれば良いぐらいだろう。もっとも簡単な方法は、自然エネルギー、原子力による電力を使う電気自動車とし、自動車のライフの走行距離の10%をレンジエクステンダーを使えるようにする。

 それならば、電気自動車+長距離用のレンジエクステンダーで良い。プリウスのような高効率PHVであれば、ガソリンでの走行距離を全走行距離の20%以下に抑えれば良い。

 電気自動車の走行距離は、100km程度。通勤用、あるいは、買い物用など普段の使用であれば、これで十分のはず。どうしても、これでは不足のとき、すなわち、年に1〜2回の家族長距離ドライブなどには、レンジエクステンダー用にガソリンを使う。

 さらに排出量削減が求められた場合には、金属−空気電池を搭載した電気自動車になっている可能性もある。金属は、エネルギーキャアで、自然エネルギーを用いて作られている。金属の候補は、亜鉛、マグネシウム。

 水素燃料電池車とは、何者か。水素ガスが自然エネルギーから作られて、ゼロカーボン燃料になれば、それなりに意味がある。現時点で、水素ガスを化石燃料から作れば、特に、石炭、褐炭などから作れば、LCA的には、普通のハイブリッド、もしくは、PHEV、EV+レンジエクステンダーの方が、環境負荷は低い。

★4:飛行機は2050年に何をエネルギー源にしているか

 炭化水素燃料以外に飛行機を飛ばすものはない。そこで、バイオ燃料、もしくは、バイオを燃焼して得たCO2を集めて、自然エネルギーを使った水素生産と反応によって、合成炭化水素にする。

★5:家庭用のガス配管に水素が入るか

 家庭用の燃料電池は、分散型エネルギーとしての価値はある。特に、固体酸化物型の燃料電池、いわゆるSOFCの場合であれば、熱よりも発電量の方が多いので、必要な熱量を出すために発電し、余分な電力は、販売するか(安くなるが)、自家用の電池に保存することで、有効活用とともに、家レベルでのエネルギーセキュリティーの向上になる。

 しかし、二酸化炭素の発生は避けられないので、排出量削減が厳しくなる2050年以降には、むしろ、集中型の発電所にCCS(Carbon Capture and Storage)を整備する方向だろう。


★6:不安定な自然エネルギーの安定化には、蓄電池か、それとも、燃料電池(水素)か

 大量に太陽光発電や風力発電が入った電力網は、不安定になる。将来、不安定な電力をそのまま配電する状況になれば(恐らく2050年以後だろうが)、需要側がなんらかの安定化装置を入れる必要がある。現時点で考えられる安定化装置は、蓄電池と燃料電池である。燃料電池の燃料としては、水素もあり得る。

 性能的には、蓄電池の方が優れているが、価格面では現時点ではなんとも言えない。燃料電池が絶対的に不利なのは、電気を物質に、そして、物質を電気に変換するため、変換損が存在することである。どうしても半分程度の熱量が温水の形で出てしまう。この温水を使えるような条件であれば、水素から電気+熱への変換がそれほど不利にはならない。

 現在のリチウム電池では、安全性面にも若干の不安があるが、2050年までには、リチウム電池を超えた新型電池が使われていることだろう。




付録1
◆シェールなら問題解決というものではない
コストも米国国内はパイプラインのお蔭で安いが、輸出入のためにLNG化すると、コストアップ。

エネルギー源    単位 発熱量kcal kg-CO2 g-CO2/kcal
一般炭(輸入炭) kg 6,354  2.39 0.376
液化天然ガス(LNG) kg 13,019  2.77 0.213
ガソリン L 8,266 2.38   0.288

*石炭の変わりに天然ガスで発電しても効率が同じならば、44%削減にしかならない。
*自動車の燃料として、ガソリンの代わりに天然ガスという選択肢もなさそう。レンジエクステンダー用なら可??




付録2
◆ネガティブエミッション水素による水素燃料電池車 vs. ネガティブエミッション電力による電気自動車 
東京オリンピック2020での公用車は何か?


水素燃料電池車など、最先端と思われているが、実際には、その環境負荷が現時点で実用になっているHVやPHVよりも多いものがある。しかし、強味もあって、水素をバイオマスから得ると同時に、バイオマス中の炭素分を燃焼によって大気中に放出するのではなく、一部でも良いので、炭化して固体にし、どこかに土壌改良剤としてでも埋めるという方法を採用することによって、ネガティブエミッション水素、すなわち、使えば使うほど、大気中の二酸化炭素が減るという燃料を作ることができる。
 これを通常の用途に使うのは、余りにも非現実的ではあるが、東京オリンピック2020のように、一つの環境の祭典としても意味があるようなイベント用に限定して準備するということは、十分にあり得る。
 しかし、東京オリンピック用として、純粋に環境面だけを見れば、EVは電力のみを使用しているため、水素燃料電池車のような発電装置からの排熱がない。その分、都会のヒートアイランド対策としては優れている。もしもネガティブエミッション電力を作ることができれば、その環境負荷は、水素燃料電池車よりも優れたものになる。
 ネガティブエミッション電力は、バイオマス発電の排ガスをCCS処理すれば良い。コストを別にすれば、実現は可能である。




                            
      もし、本資料を配布される場合には、内容の妥当性については、個人個人でご判断下さい。  By Itaru YASUI