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     第一回ICEFの報告 
  10.11.2014
              低炭素社会のための日本開催の国際会議




 ICEFは、Innovation for Cool Earth Forumの省略形である。Hostは、経済産業省とNEDOであるが、第一次安倍内閣のときに出された「2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を半減し、Cool EarthをInnovationによって実現する」という安倍首相のメッセージに基づくものである。真の狙いは、World Economic Forumの環境版を日本で開催しようという訳である。

 その第一回目が、10月8日に椿山荘で開催された。登録数800名、そのうち、外国人300名。使用言語は例外を除いて、基本的に英語のみという国際会議で、京都で行われているSTS(Science and Technology for Society)の翌々日から行うことになっていて、多くの外国人を集める設計になっている。

 実際、かなり盛況であって、第一回目としては大成功だったのではないだろうか。



C先生:実は、4月にロンドンで行われた組織委員会から参加していた。なかなか議論が収束せず、ネイティブスピーカがどんどんと独自の意見を言うもので、これは先行き大変だ、と思った。実際、その後も、茅先生と川口順子元外務大臣のお二人が他の組織委員とやりとりをされていたがどうにも大変そうだった。

A君:外国人は、まさに人によりますね。細かいことを言い出して、常に困らせることによって、存在を主張するというタイプの人も居て。

B君:外国人だから全部が全部そうだということではなくて、信頼されて主役を任される人は、極めて妥当な判断をしてくれるのが普通。

C先生:まあ、そんなものだ。


ICEFの本当の狙いは?

A君:ところで、このICEFの本当の狙いは、何なんでしょうか。

C先生:気候変動問題は、すでに、極めて厳しい段階にあって、最終的な解決は、日本のような国が国内対策で何かできるという段階は終わっている。

A君:まあ、そうですね。ご存じのように、気候変動を引き起こすGHGの放出量を制限して、温暖化を2℃以下にするのは、もはや非現実的な状況になっています。

B君:強力な排出規制できない理由は多数あるが、いずれも、人類の欲望と深く関わっているので、非常に有効な国際的な規制が行われるなどということは、ほとんど考えられない。

A君:当面の目標は、来年の暮にパリで行われるCOP21で、世界のすべての国が参加できる自主的な取り組みを優先した枠組みが決まります。そこで、各国が何を言うのか、かなり注目を集めています。

B君:米国も、自国内のシェールガスのために、エネルギー自給国になると同時に、石炭への依存も減らすことができるようになっている。そのため、オバマ政権としては、UNFCCCが推奨している来年3月末までに、かなり意欲的な温室効果ガスの削減目標を発表すると言われている。

A君:ところが、日本はなかなか難しい状況にあるもので、3月末までの目標の表明は難しいとされている。

C先生:それはその通りなのだけれど、途上国にとっては、大きな削減目標を掲げることなどはできない、と主張している。それも当然だなのだ。先進国は、これまでエネルギーを独占的に使って、経済成長をしてきたのだから。

A君:その通りですね。そもそも、エネルギーはなぜ使うのか。主たる理由は3つあって、(1)美味しい食事を食べたいから、(2)遠くまで行きたいから、(3)便利に、楽に生活したいから、でしょうか。これらを実現するには、エネルギーを使わなければ全く不可能です。これらの3つの理由は、人間の本性というか、本音に関わることなので、これらを禁止することなどは、できる訳はないのです。

B君:そうなんだ。人間の本性は、変えることが難しい。
 それならどうするのか、答えはただ一つだろう。これまでと同じ様に美味しい食べ物を食べ、遠くまで出かけ、便利に、かつ、楽に生活しながら、温室効果ガスの削減をする以外にない。

A君:それはどうやって実現するのか、と言えば、(1)低炭素技術開発と普及、これをイノベーションと言っておきます。(2)サービスが減っても、満足度が変わらないような、新たな技術開発と普及を目指す、これは、次世代のイノベーションとでも言いましょう。
 これら以外にも(3)考え方を切り替えるというのもあり得るのですが、この3番目が非常に効果的に行えれば、苦労はしないのですが、(1),(2)以外の方法で、使用エネルギーを減らすのは難しい。
 そこで、ある程度の気候変動が起きても被害を最小限に抑えるという方法、いわゆる適応策を考えるということでしょうか。

B君:さらに、これは地球に対する劇薬・麻薬のたぐいに近いが、気温上昇を防ぐ・地球を冷やす技術開発を行うことも、全くないとは言えない。ジオエンジニアリングと呼ばれている。

A君:それにしても、日本がなぜこのように気候変動に対して関心が冷えているのか、ですが、じっくりと日本の状況を見ると、これまで原発に反対する人々の投票へ配慮しすぎて、全く手が着かなかった、という感じがするのです。

B君:まあその通り。気候変動への政治としての対応も、さすがに何かを始めなければならない時期になった。しかし、来年の4月ぐらいから2ヶ月掛けて一気に決めるといったぐらいだろうか。

A君:しかし、イノベーションでの解決は国内に限れば、かなり難しくなっていますね。いまさら省エネをやっても、温室効果ガスの削減を大幅に実現することは不可能な国になっています。
 例えば、冷蔵庫を取り上げてみても、2005年頃から現在までの10年間で、消費電力は43%も減っている。技術的な要因は、真空断熱とインバータを使ったモータの精密制御です。もう一言加えれば、実は、大型化も省エネに利いている。外寸が変わらない冷蔵庫を買うと、真空断熱のお陰で内容積は増えたのだが、単位体積あたりの消費電力が下がったのではなく、内容積は増えたのに、本当に、消費電力は下がっています。

B君:自動車にしても似た状況で、ガソリン車の燃費は、1995年から2010年の15年間で、48.8%も減っている。当然のことながら、ハイブリッド車の普及が大きな要因だ。

A君:日本国内での省エネはかなり限界になっているということは、今後は、海外に日本の省エネ技術を普及させるという努力をすることが、最善の方法になります。
 それが、JCM=Joint Credit Mechanism。すでに、12ヶ国と調印が行われていて、それらの国には、資金と技術の提供が行われ、その国での省エネによる二酸化炭素の排出削減の一部を日本の取り分として認めてもらうというやり方。

B君:これは、京都議定書の場合に行っていてCDMと違う枠組みなので、これがCOP21で認められるかどうかは分からないのだけれど、次の枠組みは、自主的な枠組みなので、方向性としては正しいと思う。

C先生:ということで大分長い議論になったが、個人的には、このJCMという新しい日本からの提案をCOP21で多くの国に認めてもらいたいというのが本音なのかもしれない。

A君:要するに、JCMという日本がもっている唯一の武器を世界に知ってもらいたい。ということは、来年の第二回のICEFでは、JCMを強調した議論を優先させるのでしょうか。

B君:まあ、当然とも言える。


第一回のICEFは?

C先生:さて、第一回ICEFでは、何が行われたのだろう。実は、10月8日の1日だけが会期だったもので、非常に忙しいものであった。

A君:そのプログラムは、ICEFのWebサイトをご覧いただきたいと思います。
http://www.icef-forum.org/index.html
しかし、このWebサイトのどこにも日本語のプログラムが出ていないことからも分かるように、公用語は完璧に英語です。

B君:もっとも、オープニングの安倍首相のビデオメッセージが日本語であったためと、プレナリー1でのベトナムからの大臣の発表がベトナム語だったために、日、英、ベトナム語の間での同時通訳があった。クロージングでは、小渕大臣などのご挨拶が日本語だったこともあり、日英の同時通訳はあった。

C先生:しかし、後は、完璧に英語だけだった。同時通訳を気にしなくて良いので、極めてさっぱりしていて、悪くはない。

A君:もっとも最近の同時通訳はかなりスキルが上がっているので、採用せよという主張もでるかもしれません。

B君:しかし、登録者は800名、そのうち、300名が外国人という画期的な人数分布だったのだから、同時通訳なしに、個々の議論を行って欲しいということなのではないか。

A君:午前中は、開会式とその後、トヨタの代表取締役会長の内山田竹志氏の基調講演がありました。

B君:ご存知のように、内山田氏は、プリウスの開発責任者だった。


コンカレント・セッション

A君:午後2時からはコンカレント・セッションで、次の7つが行われています。
★太陽エネルギー
★地熱
★自動車
★エネルギー効率
★スマートコミュニティー
★公的セクターのRDD&Dへの役割
★先進国と途上国の強力

C先生:午後に行われた一つのコンカレント・セッションの一つ、エネルギー効率でコーディネータを務めた。

A君:この課題であれば、日本は世界に誇れるはずだ、と思うでしょうが、実にその通りである部分と、そうでもない部分もあるのですね。

B君:次の図に示すのは、経産省が作ったスライドだけれど、2050年に世界の温室効果ガスの排出量を半減するためには、日本が優位性を持っている技術などを世界全体で活用すれば、半減が十分可能であるというもの。赤いドットは、技術のうち、エネルギー効率に直接関係するもので、今回、追加した。


図 世界に日本が優位性を持つ技術を普及させることで、2050年での半減が可能ということを示すスライドby経産省。小さな赤いドットを付けてみたが、それらはエネルギー効率に直接的に関係するもの

C先生:細かい説明は省略して、最初から、セッションサマリーをお示ししたい。英語が正式バージョンで、日本語訳は適当!



Session Summary(実際にClosingで発表したもの)

 In this session, the importance of energy efficiency has been reconfirmed, and it has become clear that there are still plenty of innovation opportunities in the field of energy efficiency notably for control technology and human behavior.(エネルギー効率はやはり重要。しかも、制御技術と人間の行動のエリアにまだまだイノベーションの余地がある)。

 First of all, policy is important driving force to promote energy efficiency and innovation in technology. This is made evident by Japan’s experiences with the Toprunner Program. Through the Toprunner Program, efficiency of individual devices increased significantly, and scope has now been extended to include building materials. One good example of technological innovation is inverter Air Conditioners, which can be 30% more efficient than conventional air conditioners and cost-savings in commercial buildings can be up to 67%.(政策が重要であることは、日本のトップランナープログラムの成果を見てもよく分かる。最近は、建築材料にまで拡張されている)。

 The trend of innovation is now shifting from device efficiency improvement towards intelligent control of devices. For instance, latest air conditioners now can be monitored remotely and their performance can be automatically optimized using data from sensors, and weather data.(イノベーションは、徐々に、デバイスの効率から、デバイスのより高度な制御に移行しつつある。例えば、センサーからのデータと気象情報とを加味した制御の導入など)。

 Optimization of building energy use is another interesting trend. Using wireless sensors, and cloud services, energy demand reduction, as well as peak shifting can be realized. New communication approaches between utilities and their customers is also an interesting areas for innovation. (ビルのエネルギー消費の最適化も重要。無線によるセンサー、クラウドサービス、ピークシフトや需要削減などが実現できている。電力事業者と消費者とのコミュニケーションの活用は、イノベーションの興味深い領域になる)。

 Finally, it was highlighted that, besides device efficiency, human behavior plays a critical role in energy efficiency. Human behavior is unpredictable, and poor usability of technologies may inhibit potential energy savings. Therefore understanding the relationship between human behavior and energy consumption is critical to keep on driving innovation in energy efficiency. (消費者の行動の解析と理解が、エネルギー効率向上に重要な役割を果たすだろう。行動はしばしば予測不能である。消費者の行動とエネルギー消費の関係をより深く理解することがイノベーションを深めるときに重要である)。


 さて、なぜこのようなサマリーになったのか、と言えば、それは、今回の報告者のお陰である。

最初のスピーカーは、中上英俊氏(住環境研究所)で、日本のエネルギー消費の状況やトップランナー制度の有効性についての報告があった。

次がKevin Facinelli氏 (Daikin Applied Americas Inc.)  ダイキン米国からのスピーカであるが、米国では、エアコンの効率が悪いこともあり、最大50%のエネルギー消費削減可能性がある。

Andreas C. Kramvis氏 (Honeywell International Inc.) やはり米国からのスピーカ。住宅とオフィスでのエネルギー消費の2/3は、改善の余地がある。設備のモニタリング、故障診断などが重要である。また、大きな地域のでデマンドレスポンスコントロールを自動化することで、全米のピークを9%落とすことができる。

Alex Laskey氏 (Opower)
 省エネが進んだ日本で、まだ実施されていないことが需要者の行動を変えることによる省エネの実現である。米国では、各家庭のその日までの消費電力をインターネットで見ることができるようになっている。

Alan Meier氏 (Lawrence Berkeley National Lab.)
 日本の省エネ行動は世界でも珍しい。特に、昼休みにスイッチを切ることによって、6GWも消費電力が落ちるのは、世界でも日本だけ。これと、インターネットでの電力消費の情報獲得が組み合わされば、さらなる消費電力の削減が可能。


 個人的には、OpowerのAlex Laskey氏とAlan Meier氏の発表のインパクトが非常に大きかった。

 今後とも日本の消費電力を低減するためには、機器の改善と普及では、もう無理である。各電力会社は、一刻も早く、スマートメーターを普及させ、様々な情報を比較検討できる状況を作るべきであろう。




C先生:このサマリーからお分かりのように、これまで、エネルギー効率を高めようという努力は、主として、設備や装置の効率を高めることで実現するという方向だった。特に、日本の場合には、すでに記述したように、設備や装置の効率は、ほぼ限界まで高くなっている。

A君:今回、海外からの参加者が盛んに主張したことは、設備や装置の場合には、むしろそれらがどのように使われているかモニターをし、そして、もしも故障をしたり性能が劣化した場合には、その情報を修理に結びつけることなどが重要だ。

B君:さらに、ユーザが複雑になった装置をキチンと適切に設定できるとは限らないので、モニタリングが極めて重要という意見もあった。

A君:さらに、電力消費量をいつでもどこでもインターネット経由で知ることができたり、場合によっては、これまで米国などでは外出時にも動かしっぱなしだったエアコン(主として、室内植物のためと言われている)を気象データと組み合わせて、雨の日には止めるとか言った方向性も重要という指摘があった。

B君:一人の講演者であるMeiyer氏の自宅の現時点での消費電力をインターネット経由で見せてくれた。

A君:これと同じことが日本でいつになったらできるようになるのでしょうか。

C先生:いくら早くても2020年頃になるようだ。やはり、日本流も、一部ではかなり遅れてしまったようだ。