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    2050年までに必要なイノベーション  01.06.2019
        ICEF2018のTop 10 Innovationの候補から 



 ICEFとは、Innovtaion Cool Earth Forumのことで、2014年に始まった安倍首相の提言による国際会議で、昨年の10月に、椿山荘にて第5回が開催されました。
 筆者が担当しているものの一つのが、”ICEF Top10 Innovations”。毎年、コンサルタントによって400件ほどの最近のイノベーションと思われる事例が選択され、それをICEFのステアリング・コミッティーのメンバーによって、30件程度まで絞り込み、最終的には、当日の参加者の投票に掛けるというもの。
 ICEFの参加者は、これまで毎回1000人程度。その内、海外から300名程度の参加者があるため、公用語は英語Only。そのため、日本人の参加者は、恐らく、投票の際に、英語で書かれた技術的な説明が十分には理解できていない可能性が大きいのではないか、と想像している次第。
 そこで、今回は、未来が見える初夢の続きのような気分で、2050年の技術の状況を考えつつ、説明を試みてみようということです。


C先生:ICEFは、昨年が第5回目。Top10 Innovationは、一回お休みになったけれど、過去4回行った。方式は、毎回ちょっとずつ進化。いや、単なる変化かもしれないけれど。昨年方式は、まず、技術的な進化のグループとビジネス的な進化のグループを分けてみた。勿論、その境界線はかなり曖昧。それでも北アイルランドとアイルランドの国境線よりは明確かもしれないけれど。

A君:ということで、昨年新設された技術部門の候補として、総計恐らく3〜400件ぐらいから選択されたものは、以下の14件。読み飛ばしていただいても結構ですが、ちょっと眺めていただいて、なぜ、こんなイノベーションが今後必要となるのかを考えてみる、あるいは、どんな内容なのか想像をしていただけると、面白いと思います。

技術編の14件
◯500kWのカイト・パワー・システム
  KPS   英
◯空中風力 
  X Development LLC.  米
◯高効率パワーツーガス変換
  Karlsruhe Institute of Technology 独
◯水素を高効率で生成する新たな光触媒の開発 
  Osaka Univ.  日
◯水と窒素による高効率アンモニア合成
  Giner Inc.  米
◯ダイヤモンドMOSFETのディープディプレッション  仏、日など
  Universite Grenoble Alpes et,al.
◯先進小型モジュール炉(aSMR)
  Advanced Reactor Concepts, LLC. 米
◯大気中のCO2削減とカーボンナノチューブへの変換
  C2CNT LLC 米
◯CO2のコンクリートへの吸収
  Univ. California, Los Angeles  米
◯燃料電池旅客機の初飛行
  H2Fly GmbH  独
◯新たな難燃性のリチウム電池用電解質の開発
  Hitachi and Tohoku Univ. 日
◯二次元金属有機構造体(MOF)の超極薄ナノシート膜の開発
  Dalian Institute of Chemisty 中
◯世界初の実海域での100kW級海流発電の実証実施
  NEDO & IHI 日
◯超臨界CO2による発電(アラム・サイクル方式)
  NET Power Supported by Toshiba etc. 米


B君:日本が多い理由は?

A君:まあ、日本開催だからとも言えるのではないでしょうか。

B君:そして、ビジネス部門の候補が以下の通り。こちらも読み飛ばし可。

ビジネス部門の14件
◇最先端のビルディングオートメーションシステム
 Siemens AG  独
◇半自動運転隊列走行に向けたパートナーシップ
 Scania AB, et al. 瑞
◇クロスセクター・エネルギーマネジメントのためのIoTプラットフォーム
 SMA Solar Technology AG  独
◇世界最大の洋上風力タービン
 GE Renewable Energy  米
◇廃熱を利用した発電
 Climeon  米
◇世界初の量産型電気小型トラック市場投入
 Mitsubishi Fuso  日
◇電気バスバッテリーサービス契約
 Proterra, Inc.  米
◇コバルト削減電極
 CAMX Power LLC.  米
◇“Light as a service”ビジネスモデル
 Signify N.V.  蘭
◇“世界初のリチウム金属電池の開発
 Solid Energy Systems Corp. 米
◇100MWの蓄電池を100日以内で設置
 Tesla, Inc.  米
◇世界初の水素燃料電池による電車
 Alstom  仏
◇ブロックチェーンを活用した太陽光発電のP2Pトレーディング
 TRENDE Inc.  日
◇機械学習を活用したビルでの省エネ
 Riptide  米


A君:こちらは、日本が少ない。

B君:新ビジネスといった発想は日本が弱いところなのではないか。

C先生:それでは、それぞれについて、極簡単に説明を付けてみよう。Webサイトのアドレスも紹介するので、詳しい情報については、そちらをちょっと覗いていただきたい。

A君:了解。まずは、技術部門から。
◯500kWのカイト・パワー・システム KPS  英
 再生可能エネルギーの新しんジャンルとして、かなり昔から提案があります。凧がプロペラのように回転しながら上昇して、つなぎ縄を引っ張ることで発電機を回し、凧が上昇しきると下降を始め、今度は同じ発電機に繋がれたもう一つの凧が上昇し発電機を逆回転させ、1 基あたり 500kW の出力で発電する。より高度で風を受けることができるため、発電稼働時間が長くなる。
https://www.jepic.or.jp/world/2017/20170526.pdf

◯空中風力 
  X Development LLC.  米
 飛行機型の空中発電。この企業は色々なことをやっていますので、Webサイトで。Radical New Technologiesが売り文句。
https://x.company/

◯高効率パワーツーガス変換
 Karlsruhe Institute of Technology 独
 Power to Gasは、電気だけだと、エネルギーを貯めるのが難しいので、電気分解で水素。そして、COとの反応でメタンなどのガスを作ること。
https://www.kit.edu/kit/english/pi_2018_110_methane-based-fuels-for-the-transport-and-energy-sectors.php

◯水素を高効率で生成する新たな光触媒の開発 
Osaka Univ.  日
 光触媒は、日本独自の研究課題。個人的には、余り有用にはならないと思うけど。なぜなら、水素と酸素が同じところから発生してしまうので分離プロセスが不可欠だから。
http://resou.osaka-u.ac.jp/en/research/2017/20170926_1

◯水と窒素による高効率アンモニア合成
  Giner Inc.  米
 ARPA-Eの研究費で研究中のようだ。ハーバー・ボッシュ法はエネルギー消費量が多いので、高効率な合成法が必須。
https://arpa-e.energy.gov/?q=slick-sheet-project/anion-exchange-membrane-ammonia-production

◯ダイヤモンドMOSFETのディープディプレッション  仏、日など
  Universite Grenoble Alpes et,al.
 ダイヤモンドは、究極の半導体材料。交直変換素子などが小型化可能。
https://www.engineering.com/ElectronicsDesign/ElectronicsDesignArticles/ArticleID/16076/
New-Technique-for-Diamond-MOSFETs.aspx


◯先進小型モジュール炉(aSMR)
Advanced Reactor Concepts, LLC. 米
 次世代の原発で、軽水炉の使用済み燃料を無害化することができる。Top 10 Innovationに選ばれたことも述べられている。
https://www.arcnuclear.com/

◯大気中のCO2削減とカーボンナノチューブへの変換
C2CNT LLC 米
 大気中のCO2を原料にして、高価な製品を作る。大気中から採取したCOなので、使用後に焼却してもCO濃度が増えない。
http://www.c2cnt.com/

◯CO2を吸って固まるコンクリート
Univ. California, Los Angeles  米
 COを吸収して、そして、固まるコンクリート代替材料。セメントは、石灰岩を原料としていたら、COの発生が必然的なので、このような新しいコンクリートが、Net Zero Emissionの実現には必須。
http://newsroom.ucla.edu/releases/ucla-researchers-turn-carbon-dioxide-into-sustainable-concrete

◯燃料電池旅客機の初飛行
H2Fly GmbH  独
 水素で飛ぶ4人乗りの飛行機が初飛行に成功。将来は、やはり電気飛行機か。となると、プロペラ機だけということ???
https://www.youtube.com/watch?v=PFQ2zQiDIJ4
http://compositesmanufacturingmagazine.com/2016/10/
worlds-first-four-seater-hydrogen-fuel-cell-plane-first-flight/


◯新たな難燃性のリチウム電池用電解質の開発
Hitachi and Tohoku Univ. 日
 有機電解質を燃えにくいものにして、安全性を強化。しかも、電気伝導度は4倍優れている。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20180216_01.pdf

◯二次元金属有機構造体(MOF)の超極薄ナノシート膜の開発
Dalian Institute of Chemisty 中
 MOFの研究は盛んだが、この新規材料は、ガス分離に使えるとのこと。
http://english.dicp.cas.cn/ns_17179/icn/201412/t20141212_133539.html

◯世界初の実海域での100kW級海流発電の実証実施
NEDO & IHI 日
 海流発電は、日本に必須の技術で、実験に成功した。まだテスト用で、発電能力は100kWと原発の1万分の1程度。
https://www.nedo.go.jp/content/100874638.pdf

◯超臨界CO2による発電(アラム・サイクル方式)
NET Power Supported by Toshiba etc. 米、日
 化石燃料を空気ではなく、純酸素で燃焼させて、発生する高温の純粋COでタービンを回す。排気は、分離を必要としないのでそのままCCSなどに回せる。
https://qz.com/1292891/net-powers-has-successfully-fired-up-
its-zero-emissions-fossil-fuel-power-plant/


C先生:これで技術部門を終わって、ビジネス部門へ

A君:了解です。

◇最先端のビルディングオートメーションシステム
Siemens AG  独
 このシステムを導入すれば、インテリジェントビルのすべての要請に答えることができると主張している。
https://new.siemens.com/global/en/products/buildings/automation/desigo.html

◇半自動運転隊列走行に向けたパートナーシップ
Scania AB, et al. 瑞
 トラック編隊。次のサイトによれば、3台以上のトラックが一人の運転で編隊走行が可能。
https://www.scania.com/group/en/
scania-and-ahola-transport-agree-on-semi-autonomous-platooning/


◇クロスセクター・エネルギーマネジメントのためのIoTプラットフォーム
SMA Solar Technology AG  独
 電力と熱の管理をまず統合化。そしてIoT化して、総合エネルギーの取引が可能になる可能性が出てくる。
https://www.sma-sunny.com/en/
take-off-into-the-future-of-energy-with-the-sma-data-manager-m/


◇世界最大の洋上風力タービン
GE Renewable Energy  米
 これは、文字通りのもの。12MWで、220mのローター、107mのブレードからなる。
https://www.ge.com/renewableenergy/wind-energy/turbines/haliade-x-offshore-turbine

◇廃熱を利用した発電
Climeon  米
 比較的低温の排熱を有効活用する技術を持っているようだ。
https://climeon.com/

◇世界初の量産型電気小型トラック市場投入
Mitsubishi Fuso  日
 全電動化トラックを商品化。宅配用などには、これで恐らく行ける。
https://www.mitsubishi-fuso.com/content/fuso/jp/truck/ecanter/lp.html

◇電気バスバッテリーサービス契約
Proterra, Inc.  米
 ディーゼルと初期価格が同一の電気バス発売。ただし、運用時コスト低減分を12年間に渡って払う契約をする。
https://www.proterra.com/news-resources/blog/financing-a-proterra-bus/

◇コバルト削減電極
CAMX Power LLC.  米
 高性能なリチウム電池には必須と考えられているコバルトの使い方を変えた電池。粒界濃度だけを高くすることで、50%削減
https://www.prnewswire.com/news-releases/camx-power-introduces-gemx---a-universal-high-
performance-cathode-material-for-use-in-electric-vehicle-batteries-300744168.html


◇“Light as a service”ビジネスモデル
Signify N.V.  蘭
 どうやら、Philipsの一部のようだ。センサーを導入して、照明を合理化し、省エネルギーを実現する。
http://www.lighting.philips.co.uk/services/managed-services

◇“世界初のリチウム金属電池の開発
Solid Energy Systems Corp. 米
 通常のリチウム電池は、炭素にリチウム原子をインターカレーションした電極を使っているが、このリチウム電池は、金属リチウムを電極にしている。
http://www.solidenergysystems.com/

◇100MWの蓄電池を100日以内で設置
Tesla, Inc.  米
テスラがオーストラリアにおいて、100MWのバッテリーシステムを、たった100日で設置した。これで、南部オーストラリアの電源危機が回避された。
https://www.powermag.com/
tesla-bet-and-delivered-100-mw129-mwh-energy-storage-system-within-100-days/


◇世界初の水素燃料電池による電車
Alstom  仏
 フランス・Alstron製の水素電車が、ドイツで運用が開始された。たしかに、ディーゼル車で運用しているところであれば、電線を整備するよりも、水素電車の方がコスト的に有利かもしれない。
https://www.alstom.com/press-releases-news/2018/9/
world-premiere-alstoms-hydrogen-trains-enter-passenger-service-lower


◇ブロックチェーンを活用した太陽光発電のP2Pトレーディング
TRENDE Inc.  日
 最初のFITが終わる2019年を考えているかどうかは不明だけれど、東電が日本国内でオンラインによる再生可能エネルギーの取引を可能にするTRENDEという企業を立ち上げた。
https://www7.tepco.co.jp/newsroom/press/archives/2018/180329-01-e.html
http://trende.jp/

◇機械学習を活用したビルでの省エネ
Riptide  米
 商業ビルでのエネルギーは、どうやら1/3が無駄に使われているらしい。それを人工知能を活用して大幅に削減するというビジネス
https://riptideio.com/wp-content/uploads/2018/08/Riptide-Application-Tour.pdf

C先生:実は、これらについて、ICEFの当日に投票が行われているのだけれど、その上位になったからといって、どれほど重要な意味あるかどうか、個人的には判断が難しいのが実情だ。参加者がどこまでイノベーションの技術的な中身(科学的な必然性と過去からの進化度)を理解しておられるか、これはかなり難しい問題だと思うからだ。
 今回、これらの候補を眺めていただけたとしたら、是非とも、どれが優れたイノベーションだと思うか、ちょっと考えていただき、もしも、Facebookの環境学ガイドのメンバーである場合には、そこでトップ3ぐらいをお教えいただけるとありがたいと思う次第です。