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       本年のICEF Top10イノベーション
          
2030年、2050年に必要な技術



 本年も、経産省・NEDOが主催したICEF=Innovation for Cool Earth Forumが無事に終了いたしました。筆者個人のノルマは、一つのコンカレントセッション、今年は、サーキュラーエコノミーが課題でしたが、その担当。さらに、Top10イノベーションと呼ばれる過去1年間にどのようなイノベーションが起きたかを参加者皆様に投票してもらう仕組みがあるのですが、その候補を選ぶこと、そして、最終結果を閉会式の際に報告することも毎年のノルマの一つです。
 今年のTop10イノベーションとして、どのようなものが選ばれたかをご報告したいと思います。


C先生:という訳で、やっと終わった。終わると本当にホッとする。精神衛生上余り良いとは言えない行事なのだ。
 そして、今回ご紹介するのは、
投票によって、どのようなイノベーションが選択されたかのご紹介だ。

A君:Top10イノベーションの仕組みについて、代理で説明します。まず、
カテゴリーがAとBの二種類に分かれています。

B君:
カテゴリーAは、2050年頃には実用化される可能性が高い、という長期的なイノベーションを対象としていて、カテゴリーBは、2030年、すなわち、これから10年後には実用化されていることだろう思われる短期的なイノベーションが対象。

A君:当然のことながら、カテゴリーAは、より実現が困難と思われるイノベーションが選ばれることになる。

B君:それでは、ご紹介を始めますか。

C先生:ちょっとまった。今回、このウェブサイトには、図は掲載しないことにした。図はやはり著作権問題があって、提案者からの許諾をもらっているが、このヴェブサイトへの掲載の許可を貰っていないからだ。ということで、
その図などが掲載されている、ICEFのウェブサイトをまず、見ていただきたい。次のサイトなので、すべての読者の方々よろしく。

A君:まずは、このTop 10 Innovationsのサイトをアクセスしてください。
 https://www.icef-forum.org/top10/

B君:
ICEF 2020 Winnersというテーブルがあると思います。そこに10件のイノベーションがリストされていますが、Categoryという最初のカラムをご覧ください。最初の4件が、2050年までは、実用化の目途が付くだろうと思われる技術。残りの6件が、2030年には、実用化されている可能性があるという技術のリストとなっています。

A君:それでは、ICEF 2020 Winnersというタイトルをクリックしてください。それぞれの課題が出るはずです。

B君:最初が「新型ナトリウムイオン電池の開発」となります。実施者は、ワシントン州立大学と米国パシフィックノースウェスト国立研究所。その先の説明には、
『従来のリチウム電池と同程度のエネルギーを保持しつつも安価なナトリウムイオン電池を開発』とあります。

A君:この電池は、1000サイクルの充放電が可能ということが書かれています。1年365日使うと、3年ぐらいですから、充分に長いとは言えませんが、新しい電池ですから、寿命も徐々に改善されると期待できるように思います。

B君:さて、この
電池の価値は何か。それは、リチウム電池でなく、ナトリウム電池だということ。リチウムというアルカリ金属の主たる産地は、南米の塩湖で、その塩水から作る。特殊な湖だけに、地球上の資源量が多いとは言いがたいのだ。

A君:それに対して、
ナトリウムであれば、海水中にいくらでもあるので、資源採取が簡単。

B君:価格的にも安価にできる可能性もあるように思える。

A君:さらなる情報は、Press Release URLというところをアクセスすれば良いのだけれど、実は、それをクリックしても、無反応。そこで、以下にそれを示します。次のアドレスをクリックすればそのサイトに飛べます。https://news.wsu.edu/2020/06/01/researchers-develop-viable-sodium-battery/

B君:アクセスすると、
ワシントン州立大学で、Song氏、Lin氏、Li氏による発表だということが分かる。恐らく韓国国籍なのでは。

A君:細かい情報としては、ACS Energy Lettersを見ると分かるということまで得られますね。

B君:その記事をざっと読んでみると、その電池の有利な点がより明らかになる。やはり、
Liを使用する電池だと、Li資源の限界がそのうちやってきて、価格が急激に上昇するという理由であることが主張されているね。

A君:
地殻中の存在率だけれど、Liだとなんと0.002%しかない。しかも南米の湖沼に偏在している。それに比べれば、Naは、海水中に無尽蔵にありますからね。Naの電池が新しいことになる。

B君:同様の研究は、実は世界中で行われている。日本でもいくつかの例があって、競争になっている。今回のICEFでは、
2050年までには完成するという予測だけれど、もっと早く実現しないとまずいかもしれない。しかし、2030年までに商品化は難しいと思う。電解質などが詳細な設計が確立しているのかどうかだろう。

A君:では次に行きます。
「低温での二酸化炭素のメタン化技術の開発」です。この研究の実施者は、早稲田大学。その主張によれば、新しい触媒を開発したので、二酸化炭素を100℃台の温度で迅速にメタンに変換が可能になった。二酸化炭素の再利用が可能になったと言える。

B君:そのWebサイトは、
https://www.waseda.jp/top/en/news/73353

C先生:あれま。この
早稲田大学のサイトをアクセスしたら、関根先生の研究室からの報告であるということが分かった。触媒としては、CeOなる化合物とルテニウムRuから構成される触媒が使われるようだ。COをメタンに変換することをメタネーションと呼ばれるが、これが今後、非常に重要な技術になることがほぼ確実だ。

A君:それでは、次に行きます。
「高効率な太陽光エネルギーによる水素製造プロセス」で、オーストラリア国立大学の成果。
https://science.anu.edu.au/news-events/news/
anu-researchers-set-new-solar-hydrogen-efficiency-record


B君:そうも、太陽光を吸収する太陽電池に、
ペロブスカイトと呼ばれるシステムとシリコンによるシステムを両方使うようだ。

A君:それによって、
17%を超える変換効率で、太陽光エネルギーから水素が発生するとのこと。

B君:それでは、次に行こう。この課題は、相当に先鋭的なのだ。したがって、かなり理解が難しい。
励起子と呼ばれる「特殊な励起状態」を実現して、一つの光子のエネルギーによって、二つの電子を放出させることができるようになり、そのために、理論効率が29.1%といわれていたものが、35%ぐらいまで引き上げることが可能になった。

A君:そのためには、かなり高エネルギーの光子が必要にはなる。ちょっと、原論文を見てみますか。
http://news.mit.edu/2019/increase-solar-cell-output-photon-2-electron-0703

B君:どうやら、6年前からこのような狙いの研究を行っていたらしい。しかし、もともとの
アイディアは、1970年代にすでにあったらしいのだけど、MITのサイトでは、これを実現するのに、たった40年しかかからなかったと、記述している。そのぐらい、自慢にあたいするのだ、ということなのだろうと思う。

A君:材料の設計から相当変えなければならないようだけれど、
原理的には、「電子を半分に切って、そして、再度にはまた合体させる」、というアイディアだったらしい

B君:うーーん。難しい。次に行こう。

A君:はいはい。次からは、2030年には実現できる可能性が高いというジャンルになります。より実用的な開発が対象。

B君:最初のイノベーションは、
日本発。それは、家庭用燃料電池で、世界最高の発電効率を備えているというもの。
https://www.osakagas.co.jp/en/whatsnew/_icsFiles/afieldfile/2020/03/03/20200225.pdf

A君:すごいですね。参加した企業もすごい。
大阪ガスがメインで、その他、アイシン精機、京セラ、ノーリツ、パーパス、リンナイ。いわゆるエネファームの最新版で、その名は、「エネファームtype S」というもの。発電効率は、55%と世界最高。同時に、設置面積を小さくし、耐久性も高めたとのこと。

B君:
もう完成しているので、2030年には実用になるなどというノンビリしたものでもない

A君:次も完成していたというもの。それは、
国際水素サプライチェーン実証のための液化水素運搬船が進水した。
https://www/nedo.go.jp/news/press/AA5_101250.html?from=nedomail

B君:上のアドレスからも分かるように、NEDOが実施しているのだけれど、そのタイトルが長い。
「未利用褐炭由来水素大規模海洋輸送サプライチェーン構築実証事業」

A君:
日本では、水素をどこからから輸入するかの決断が、間もなく必須になる。もはや、石油や天然ガスの時代ではなくなる。もっとも、日本がもっている長期計画では、2050年にCOの80%削減なのではあるのだ。それを実現すれば良いのだと開き直れば、石油・天然ガスが輸入されなくなるのは、2050年以降なのでは。

B君:さて、話を戻して、この
液化水素運搬船がどこから水素を運んでくるのか、と言えば、オーストラリアの褐炭が資源で、それをガス化し水素を生成、液化水素にして、日本まで海洋輸送というシナリオ。これを2020年度から実施するということになっている。そのための液化水素運搬船ができた

A君:水素を液化するには、−253℃という超低温が必要。そのため、アンモニアにして運ぶとか、様々なアイディアがあるのだけれど、アンモニアも有毒なので、液化水素がもっとも有力な方法なのかもしれない。いずれにしても、
今年から実証を実施するとなると、やはり液化水素になるのでしょうね。

B君:
オーストラリアには褐炭という低品位な石炭がかなり埋蔵されているのだけれど、褐炭は、水分・不純物を含むけれど、それを乾燥すると、自然発火を起こしかねない、という厄介な性質を持っている。そこで、水素にして、輸送することが考えられている。

A君:
褐炭があるのは、ビクトリア州とのこと。メルボルンが州都。南の外れだから、日本までの航路は結構長いですね。

B君:次がコンクリート関係が2件。最初のものが、
「水の節約とCO2削減の両方が実現可能なコンクリート製造技術」なるもの。実体は、水の代わりにCOで固めるというもの。これは、最近のはやりとも言える。
https://assets.ctfassets.net/v4d7wct8mc0/Y4MhcaU19AcYKOjMsX.J9/
f15d5afod3b701409a878348aff76071/LH-Solidia-US-Commercial-news-release-FINAL-8-8-19-1.pdf


A君:この研究は、Solidia Technologiesなる企業によるもの。このところ、
COでセメントを固めることや、COをセメント原料に使うことが、先進技術でもある種の流行になっていますね。

B君:次に行こう。
「SF6ガスを使わない中圧開閉装置の開発」。Schuneider Electricなる企業。これは、かなりプロ向けの話だな。高圧の電気を遮断するとき、何が起きるのか、というと、スパークが飛ぶのだ。それを防止する機能があるのが、SF6と呼ばれるガス。硫黄とフッ素の化合物。しかし、SF6を使わないで、空気でやれれば、それほど良いことはない。真空遮断技術をもっているこの企業が、SF6を空気で置き換えることに成功した。
https://www.se.com/ww/en/work/products/
medium-voltage-swithchgear-and-energy-automation/news/2019/sf6-free.jsp


A君:その次。
船舶の動力とか、他のエネルギー利用のためにアンモニアを燃料として使おうというもの。具体的にはその燃焼実験を始めたということ。
https://www.wartsila.com/media/news/
25-03-2020-wartsila-advances-future-fuel-capabilities-with-first-ammonia-tests-2670619


B君:これも未来的ではあって、アンモニアを船舶用やエネルギー業界で燃料として使う燃焼実験を始めたということ。

A君:燃やしてもCO
がでない燃料ということになると、水素がもっとも可能性が高いのですけれど、水素の弱点は、液化しようとすると、−253度という超低温が必要になって、LNGの場合のー162度よりもかなり低い。そこまでも冷やすには大変。そこで、アンモニアを燃料として使おうということがかなり現実的なターゲットになっています。

B君:しかし、
アンモニアも有害だし、そもそも相当臭う。しかし、なかなかそれ以外に良い化合物が無いのも一つの現実。毎回、言っているかもしれないけれど、やはり、元素の数が足らないというのが実感。海運用のエネルギーとしてもアンモニアは有力候補の一つではある。

A君:その次は、
またまたコンクリートと二酸化炭素の技術。CarbonCure Technologiesという正に、そのままの名前の会社。この課題の新規性は、ガス供給事業者によって、回収されたCOをコンクリートに使うというところは、このところいくつもの例がみられるようになった。確かに、COを固化してしまえば、大気中のCO濃度の上昇を招くことはない。
https://www.carboncoure.com/news/
high-tech-low-carbon-concret-projekuto-a-first-at-yyc-calgary-international-airport/


B君:どうも、
コンクリートをCOで固化するというのは、近々本流になるそうな勢いを感じるね。

C先生:これで、一応、今年のTop 10 innovationはごご紹介も終わり。
特徴としては、CO2の利用技術が一つ。もう一つは、CO2排出ゼロの方向性。さらに、アンモニアなどの新燃料も一つの傾向かもしれない。