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    2040年に1.5度上昇 IPCC予測 07.29.2018
       CO濃度は、すでに危険レベルに入った

               




 日経の7月24日の記事で取り上げられました。

 その趣旨は、IPCCが10月開催予定の会議で公表する、特別報告書の内容の紹介。新たに、2040年時点の予測を公表することになるが、それは、初めてとのこと。

 2017年時点で、産業革命以前の気温と比較して、すでに1℃の上昇であったが、今後、10年あたり0.2℃ペースで少々することが予測され、2040年には1.5℃の上昇になるということ。

 2012年までの温度上昇は、1880年を起点とすると、0.85℃上昇しており、その速度は10年あたり0.06℃だった。

 台風12号も見たことのない異常なコースで移動。異常なコースだと、災害も想定外のもの(小田原から熱海)が起きることを認識しました。


C先生:IPCCの特別レポートが、今年の10月に開催される韓国での会合で公表される。IPCCは、政府間パネルと呼ばれるので、役人の集まりように聞こえるが、実際には、世界中から気候関係のあらゆる分野の学者が作業に協力していて、その報告は、科学者全体によって共有されるレベルのもの。勿論、学者は、かなり勝手な存在なので、IPCCの特別報告とは違った意見を持っている学者も多い。しかし、気候変動を専門とする学者の「平均的な理解」がこんなものだ、という報告書になる。

A君:2012年までの上昇のペースの3倍のペースで進行するということになると、これは大変。

B君:IPCCは、AR5(5th Assessment Report)WG1(Working Group 1)を2013年に発表している。その中で、もっとも重要な図として、次の図がいつでも紹介されるのだけれど、この図と、今回の発表との整合性がどうも良くわからない。そのあたりは、恐らく、10月に正式発表によって詳細が分かるのだと思う。



図1 IPCC AR5 WG1の図。排出量と温度との関係。

B君:待てよ、この図だと、1890年が原点=0。そして、2010年が1.05℃上昇ぐらい。日経の記事とは数値が違う。 10年あたりにすると、120年で、1.05℃だから、0.0875℃。これも数値としては違う。このあたりの整合性のある発表が、今年の10月に行われるということなのだろう。

A君:確かににそうですね。この図だと、2040年での温度上昇は、1.7℃ぐらいに見えますね。しかし、未来に関する数値の変更には理由があるようにも思えます。確実なのか、と言われるとそれほどの自信はないですが、一番大きいのは、キガリ改正の効果によって、CO以外の温室効果ガス、特に、寿命が非常に長いフロン系のガスの規制が決まったこと。2029年までには、日本では大騒ぎになる可能性がありますね。現在、主力のR32と言われるガスが、エアコンに使われているのですが、それ以前のもっと温室効果が大きい冷媒用ガスを含めて、エアコンの廃棄の際、本来であれば回収することになっているのに、実際には、放出され続けているのです。それが、2029年に向けて、厳しく規制されることになるはず。

B君:その2029年というのが重要。モントリオール議定書によって、排出禁止になることが決まった枠組み、これを会議が行われた場所の名前を付けて、「キガリ改正」と呼ばれるのだが、達成目標が時系列で書かれていて、日本の場合には、2029年の目標の達成が難しいのではないか、と思えるものになっている。

A君:いずれにしても、キガリ改正が効力を発揮し始めると、この図1の予測よりは、多少、低めに推移する可能性があるのです。要するに、キガリ改正は、気候変動を真摯に考えて行われたものだということですね。

B君:すでに、本Webサイトでは、取り上げているが、その通り。
http://www.yasuienv.net/KigaliHeater.htm

A君:もう一度示すべき図が、これで、これを見ると、2029年にガックリ厳しくなっていることが分かりますね。それまでの40%削減が、急に70%削減になるので。パリ協定の最初のゴールが2030年なので、その前の年に、このような厳しい条件が付け加わったと言わざるを得ない。


図2 キガリ改正の図示 2029年で急に厳しくなる

B君:もう一度記述すれば、生産量の定義が重要。「「生産量」とは、規制物質の生産された量から締約国により承認された技術によって破壊された量及び他の化学物質の製造のための原料として完全に使用された量を減じた量をいう。

A君:家庭用のエアコンからのフロン類回収はほとんど行われていないのが、現時点での状況。廃棄時に、大気中に放出されてしまうのが普通。

C先生:ところで、話を戻すことになるけれど、日経の記事では、気温が1.5℃上昇したときに何が起きるか、という表が付いている。この記述の妥当性はどうだ。

A君:その通りでして、気象、海洋、健康の3つの分野について、それぞれ2項目、合計、6項目が記述されています。妥当性となると、個別検討ということですね。

  気 象
●大気中の水蒸気量が増え、1回に降る雨の量が10%以上増える。
●気温が5℃以上高くなる地域もでる。
  海 洋
●海の酸性化が進む。
●潮位が極端に高くなる。
  健 康
●生物を媒介した感染症が拡大する。
●食糧や水の確保に影響がでる。

表1 予想される1.5℃気温上昇による影響


B君:注として、IPCCの資料などから作成された、とあるが、これだけなのか。もっと色々な影響が出てくるはずなのだけれど、いささか限定的のような。

A君:線状降雨帯のような話が無いということですよね。それによる集中豪雨が増えるといったことが、「1回に降る雨の量が10%以上増える」という記述で良いか、ですね。

B君:それはダメに決まっている。今回の西日本集中豪雨だけでなく、ラオスでは、豪雨で建設中の水力発電量のダムが決壊した。

A君:我々がよく言うように、エネルギーの大量保存は、非常に多くのリスクを生み出す。要するに、水力発電用のダムは、大量の水を高いところに保存している、という意味で、エネルギー大量保存の典型。日本では大規模決壊をしたことはないけれど、ラオスだということだと、工事は中国がやっていると思うけれど、こういうことが起きてしまう。

B君:いや。チェックしてみると、韓国企業で、SK建設らしい。

A君:SKテレコムというと携帯通信の企業ですよね。それが設けを元にして、建設業にも進出したということなのでしょうね。

B君:いやいや、どうも、かなり古い企業で、第二次世界大戦で日本人経営者が韓国内の資産を放棄したが、その一部を大韓民国政府から一括払い下げを受けて、1956年にできた企業。紡績・繊維業が元々だったが、その後、石油精製、重化学工業、ホテル・カジノ、そして、1994年に、韓国移動通信の払い下げを受けて、SKテレコムができたらしい。

A君:なるほど。韓国の大財閥なんですね。プロ野球、プロサッカー、バスケットなどのチームを持っているようですし。大財閥でなければ、ラオスの事業などを獲得できないだろうし。

B君:まだ確実なニュースが無いのだけれど、ダムがかなり早い時期に沈下を始めたという情報もある。

A君:ダムの工事ですが、コンクリートで作るのですが、アーチ式のダムでも、鉄筋は入っていないと聴いたのですが、本当ですかね。

B君:多分そうだと思う。例外が全く無いかどうか、それは未確認。吊橋の両側の重しであるアンカレイジも、無筋コンクリートらしい。アーチ式ダムであっても、コンクリートに引張応力が掛からないような設計にしているように見えるのだ。鉄筋というものは、ビルのコンクリート部材のように、引張応力が掛るから有効なのであって、圧縮応力だけしか発生しないような場合には、無用のものだから。

A君:ということは、今回のラオスでの状況、すなわち、中央部が陥没を始めたというのは、ダムの構造そのものというよりも、基礎地盤を固めるという作業がいい加減だったか、そもそも、地盤の強度解析そのものが不十分だったのか、といった問題のようですね。まあ、一種の手抜き工事であることは間違いの無いところでしょう。

B君:そんなところだと思う。中国製の日本語Webサイトでは、「韓国ザマミロ」みたいな記事が見つかるのが、現時点でのこの二国の関係を示しているようで面白い。

C先生:ラオスの話、日本の話、それ以外にも、ギリシャの火災カナダ東部の熱波で33名死亡、カリフォルニアで52度ノルウェーのバルドゥフォスで33.5度スウェーデンで50箇所の森林火災、などなど、完全に異常気象だ。

A君:その通りなのですが、カリフォルニアの気温は、デスバレーなので、まあ、なんとも。

C先生:あ、そう。デスバレーは、たしかに、異常な地域だった。というよりも、異常な観光地だったと言うべきかもしれない。

B君:驚くのはカナダ東部、より具体的には、モントリオールらしいのですが、35度になったらしい。

C先生:モントリオールの平均気温は何度なんだ。住んでいたニューヨーク州から、何回かはドライブで行った。エアコンは夏でも不要な地域だと思うが。

A君:平均気温は、25度をやや上回る程度とのことです。快適というか、東京標準で言えば、むしろ肌寒いのでは。

B君:モントリオール市の公衆衛生担当者によれば、死亡した市民はほぼ65歳以上で、空調を持っておらずと同時に、健康問題を抱えていたとのこと。

A君:それ以外にも、いくつも、似たような例がありますね。4月のことですが、ロンドンで気温が29.1度。

B君:表1の文書で言えば、「●気温が5℃以上高くなる地域もでる」、という表現だと、怖さが全く伝わってこない、ということが最大の問題なのだろう。しかし、現実は、命が危ない。

A君:まあ、IPCCの学者連中は、社会を驚かすような表現をすることを基本的に嫌がるのです。「俺たちは学者であって、メディアではない」ということで。

C先生:その通り。確かに学者なのだ。しかし、学者だからといって気象学者が気象そもののが変わるという警告を社会に発信できなくてどうするのだ、という議論を何回もしたことがある。その根拠は、今や、学者は、かつてのように貴族によって養われているのではない政府などの公的な資金で養われている。となれば、その社会に対して、あるいは、人類全体に対して、もともと学者という特権を持っているのだから、警告に関しても、科学的に正しい表現の範囲内で行うのが当たり前で、それで良いのだから、むしろ積極的に行うのが役割ではないか。

A君:というと、「そのような行動をすべきだとう理屈は、学者の範疇にはない」と言われる、のでしたよね。

B君:その解釈だけれど、「C先生は、すでに学者の範疇では無い人間だ」ということを主張されてしまうということかな。まあ、当然だな。個人の成り立ちが、全く違うではないか、という主張なのだろうよ。

A君:いずれにしても、表1の表現は、余りにも客観的な情報伝達。メディアの脅迫的な表現をしろとは言わないけれど、現実に起きること、すなわち、自然現象には強弱があるのだから、平均的に10%ぐらい雨が増えるということは、時と場所によっては、100%以上増えることも当然あるのだ、という注釈を付けるべきだということになります。

B君:IPCCは、学者としての真実を述べる。それをメディアは、メディア流で脅かす口調で公表する。我々は、その実態を学者でもなく、メディア流でもない表現で伝達する。こんな役割分担か。

A君:「何が正しいのか」、というのが、我々の情報伝達の最重要遵守事項だと思っています。事実としての表現だけでなく、感覚的な表現の強さについても、ですが。

B君:どこかで、ブロッキング高気圧の記事を書いたか、とチェックしているうちに、「地球は寒冷化に向かう!!?」という記事を発見。それは、2013年の1月の記事で、確かに、北米は寒かったし、日本でも酸ヶ湯温泉の積雪量が1月11日現在で290cm。
 こんなニュースが頻発しただからなのだろう。あのNHKが、JAMSTECの研究員、中村元隆氏のインタビューを放送したのだ。
http://www.yasuienv.net/GlobalCooling.htm

A君:中村氏は、気温の振動の寄与が重要という主張をしたいようでしたね。それが彼の専門ですから。しかし、ちょっと自分でグラフを作ってみれば、定量性が全くないこと、すなわち、全体的な傾向に対して、振動要素の寄与はかなり限られているということが明確になるのです。

B君:本題に戻って、我々は、ブロッキング高気圧がどうして起きるのか、ということをちゃんと説明していないような気がしてきた。最近では、2階建て高気圧とかいう表現もメディアが使うようになった。

C先生:それも重要だけれど、そもそも地球になぜ中緯度高圧帯などいうものがあるのか、極めて簡単な理屈で説明ができることなので、それこそ、小学校の理科の教科書にでも掲載が可能なのではないか、と思うぐらいなのだ。そんな話も、実は、このウェブサイトでは、やっていないような気がしてきた。次回、基礎中の基礎に戻って、何か書いてみることが必要かもしれない。