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  IT技術による地球環境問題解決 04.20.2008
     



 前職の国連大学の部屋にあった本を、やっと自宅に持ち込んだ。これまで、自宅には本をあまり置かないでも済む状況だったので、本箱が不足。大量に本箱を調達して、なんとか納めた。
 そこで、一冊の本を発見した。「ITが地球環境を救う 情流がもたらす環境革命」、ダイアモンド社、松田晃一監修、天野一哉著、ISBN4-478-87095-0、\1600。発行日が2003年2月27日。今から5年前の本である。記憶が消えていたのだが、この本の発行にあたって、取材が行われており、私自身が取材協力者リストに入っていた。
 さて、5年前に比べて、この話題で何が進歩したのだろうか。


C先生:ITの世界は、ある意味で日替わりメニュー的だった。この本の監修者である松田氏がはじめにで述べているように、「20世紀末に声高に叫ばれたIT革命も、21世紀に入ってあえなく失速し、ITバブルが崩壊したと言われている。しかし、間違えないでほしい。崩壊したのは、ITを使った即効的な金儲けへの期待である。。。。。」

A君:松田氏は、環境問題には3つの道があると指摘していますね。(1)このまま有限な資源を使い尽くして破滅する道を邁進(2)資源の利用量を大幅に減らし、一昔前の不自由な生活に戻る道を選ぶ(3)現在の快適な生活を維持する道を我々の知恵で切り拓く。これらのうち、松田氏は第3の選択が正しく、それにはITと環境の関係が重要と述べています。

B君:まあ、現在のほとんどすべての解決シナリオは、この第3の選択、すなわち、知恵と技術によって、なんとかなるというものになっている。

C先生:日本という国を考えれば、ほとんど問題なく、そのようなシナリオが実現可能。しかし、「問題なく」とは言っても、実は、現在の日本の産業構造は相当変わってしまう規模の縮小を迫られる産業としては、電気以外のエネルギー産業、特に、ガソリンと軽油。すなわち、輸送用燃料関連セメント産業は、建築物の寿命を延ばす以外にないので、やはり縮小。電気製品も、寿命が長くなるので、出荷量は重さで測れば減る。しかし、自動車がエンジンではなく、バッテリーとモーターで走るようになるので、自動車が電気製品化することで補うことになる。電気自動車は、軽量化が命なので、当然、素材も重さでの出荷量は減る。しかし、単価は上がる可能性が高い。鉄がアルミへ、アルミが複合材料へ、という転換が行われるだろうから。土木用・建築用の鉄が明らかに減る。しかし、高付加価値製品はかえって増える可能性もある。原料が高くなることもあって、製品価格は当然上昇し、売上は減らないだろう。
 こんな形での変化は、かなり急速に起きるだろう。となると、このような変化に対応できないような企業は、業種に関わらずダメになる。

A君:しかし、世界全体となると、やはりかなり困難が予想されますね。特に、今後も鉄とセメントを中心とした需要は途上国の経済発展のために必要不可欠ですから。

B君:ITによる環境対応にしても、やはり先進国の技術であって、途上国がそのために便益を得ることになるのは、しばらく先。しかし、途上国でのIT技術でもっとも期待されることは、世界の情報を知ることによる間接的な影響、特に、出生率の減少への効果かもしれないが。

C先生:まあ、IT技術は先進国向けということで議論をするしかないだろう。そんなときに、考えなければならないキーワードはなんだろか。

A君:ひとつは、その本に出てくる言葉である「情流」でしょうか。これまでの経済は「物流」、すなわち、モノを流すことによって、利潤を得る。手数料を得ることですが、それが今度は、モノは固定したまま、情報を流すことによって、同じ満足を得ること。

B君:最後に人間が求めていることは何か、ということがやはり重大な問題だろう。「お金を稼ぐ」ことが人生の目標だという人も居るが、それは決定的に間違い。「お金を使うこと」がその先にある目的で、それこそお金は墓場に持って行けないからね。

A君:日本人だと、「子孫に美田を残す」ことが目的の人も無い訳ではない。欧米でも一部の資産家は似たようなものですが、良識的な欧米人は、「子孫に美田を残さず」が主流でしょうか。むしろ、「子孫に自然をそのまま残す」という発想が日本よりも多い。

B君:だから、IT技術が環境面で目指すべきことは、同じ満足度を与えること。

C先生:さらに段階が進めば、同じ満足度を得た場合にも、地球への負荷を少ない行為を選択して得る満足度には、なんらかの付随的な満足度があって、地球への負荷を増やして得る満足度よりも結果的に大きい、ということに気付くはずなのだ。

A君:それは、かなり高度な満足度。かなり知的な満足度とも言うことができる。

B君:となると、人々が意味のある知的な情報を得ることがITの重要な機能だから、なんらかのきちんとした情報を得るために支援する機能が発揮できれば、IT技術の貢献は大きいことになる。

C先生:多少短絡的ではあるが、現在、環境省が「見える化」なる言葉を使って、自らの環境負荷、特に、二酸化炭素の発生量を知ってもらいたい、というある種のキャンペーンを行っている。しかし、どちらかというと、まだ、そんなに二酸化炭素を発生して良いのですか、というタイプの情報提供のように思える。さらに高度な情報を提供することによって、自らが選択した行為によって二酸化炭素の発生量が減ったという満足度を与えるレベルに到達するには、もう一段階の努力が必要となる。

A君:そのためには、やはり自らの情報を集め、自らが行為の選択基準を作ることができて、それに従って行動するという相当に高度な知的なレベルへの到達を支援する必要があるのでは。

B君:それはかなり難しい話だ。しかし、ひとつのIT技術の活用の最終目的の一つではないだろうか。

C先生:実は、文部科学省の現代GPの枠組みの中で協力を要請され、上智大学の学部の文系と理系の学部生の協力を貰って、自らが情報を集め、そして、自らの行動基準を作るといったことが可能かどうか、そんな試みを行いつつあるところだ。具体的には、「各種の行為の二酸化炭素排出量を直感的に分かるようにすること」、なのだが、それには、やはりいくつかの基礎的な技術や知識を頭の中に埋め込まなければならない。それが、どちらかというと、理系の知識なので、難しい面がある。

A君:IT技術が進歩して、誰かが作ってくれたツールを使って自分の行為によって発生する二酸化炭素量が出たとして、それで付加的な満足感が得られますかね。

B君:例えば、車だが、本来的には、どんな車を買うかというで自らの判断基準で適切な選択を行うことが最良であって、いったん買ってしまったら、後は、多少のエコドライブをやったところで、そんなにも効果がある訳ではない。しかし、プリウスの燃費表示のような装置がすべての車に搭載されれば、それなりに変わるかもしれない。

C先生:スカイラインGTRを買って、そんな燃費表示がでても、誰も見ないのではないか。

A君:全く違う話ですが、オムロンの万歩計の高級モデルには、USBでパソコンに接続し、その数値をWebに登録する機能がある機種があるらしいですね。これだと、有料のWebサイト(Walker's Index)で自分の努力を他人に見せびらかすという効果があるので、そのためにかなり歩いてしまうとか。http://www.healthcare.omron.co.jp/product/hj710it_1.html

B君:なるほど。二酸化炭素排出量削減を競うという万歩計類似のIT機器を開発し、それをすべての人が持つことが可能か、という技術的な検討をしろか。

A君:まあ、GPS機能を持つことは最低の条件。そして、振動の解析をして、徒歩なのか、あるいは、交通機関を使ったかを判定できる機能が必要。それにしても、電車、バスとかタクシーなら、それなりの数値を入れることで良いでしょうが、自家用車に乗ったら、プリウスなのか、メルセデスなのかを判定しなければならない。

B君:機器としては万歩計とお財布機能付きかつGPSつきの携帯電話が一番近そうだ。まだ、そんな機種は無いが。どうもチェック不足だったようだ。現実にあることが判明。ドコモのらくらくホンプレミアムF884iがそれ。2名の方にご注意をいただきました。)どのような交通機関に乗ったかは、バスを含めてSuica、Pasmo機能などと連携すれば分かるし、もうちょっとでできるではないか。タクシーにもGPSを設置して、Suicaなどで支払うときに、どこからどこまで乗ったかを情報として携帯側に移せば良い。飛行機にしたところで、最近のマイレージカードの機能を持てば、十分に判断可能。

A君:となると自家用車だけが対応できれば良い。これだって、カーナビと連携すれば、簡単だ。燃費は車から受け取れるようにすればよい。

B君:ただし、何人で車に乗ったかは、入力する必要があるかもしれない。

A君:家族全員がそんな装置をもっていれば、同じ空間に何台が共存しているかを判定することは可能だろう。互いに通信をすればよいので。

C先生:一つ、新しいIT環境商品ができたな。特許でも出すか。まあ、このIT環境技術は、個人的移動の見える化商品とでも分類するか。

A君:個人の移動に関するエネルギー消費を計測して、見える化ですね。移動以外のエネルギー消費をなんとかできませんかね。

B君:家庭でのエネルギー消費は、HEMS(Home Energy Management System)を開発すれば、それで十分なのでは。今すぐにでも技術的には可能。

C先生:家を新築するときには、テレビを表示装置にするHEMSの設置を義務化すべきだろう。価格は10万円以上するかもしれないが、それによる省エネルギー効果は非常に大きいはずだから、すぐにでも元が取れる。

A君:となると、残りは購買ですか。これは、ICチップですかね。

B君:いや、バーコードの追加で十分だろう。すべての商品に環境バーコードをつけ、その商品の輸送や加工に関するエネルギー消費かCO2排出量の環境情報を書き込んで、それをレジで読み込んで、そして、お財布携帯で支払ったときに、携帯に転送すれば良い

A君:なんだ。簡単ですね。ほぼできるではないですか。

B君:電機製品のような耐久消費財は、まあ、家庭内やオフィス内での電気の使用が環境負荷の大部分ですからね。それ以外の商品だけを対象として、そんなバーコードを付ければ良い。

A君:日常的な買い物、キオスク、コンビニ、スーパー、本屋(雑誌)、などといったところが対象になりますか。

B君:単行本などは、まあ、対象にするほどのこともなさそうだし。

A君:なんとか実現の方向に進むべきですね。

C先生:その通りだ。個人の日常的消費生活の見える化システムを作ることは、多少の工夫で簡単にできそうだ。しかし、問題は、その環境情報を添付することをどうやって義務化するか、という法制度の問題の方が大きい。毎度同じ話になるが、これが現代日本の問題点。いくらでもアイディアはあるが、それを実行することが不可能な社会。

A君:今回は、個人の移動と日常的消費に関する二酸化炭素排出量の見える化商品に関しての話でしたが、すでに、本HPで提案していることをまとめると、こんな感じでしょうか。

個人の日常生活の見える化
(1)交通・購入の温室効果の見える化

人の移動を情報移動へ
(2)超リアルな高度テレビ会議
(3)超リアルなバーチャル海外旅行

必要なサービスだけを行う
(4)視線検知型テレビ
(5)行動検知型エアコン


B君:これって、すでに全部説明したか。

A君:視線検知型テレビは、
http://www.yasuienv.net/EnergyInnovation21.htm
に書きました。
 それ以外は、まだですね。テレビ会議は、最初に紹介した本にも出ています。二酸化炭素85%削減の効果があるとしていますが、計算に使ったのが、会議に参加する人の移動に要するエネルギーと、コンピュータなどの消費電力。国内だと、移動に要するエネルギーはそれほど多くもないので、北海道とか九州・四国のような飛行機を利用することが必須の地域から人が来るかどうかで、効果が大幅に違う。

B君:超リアルな高度テレビ会議というが、その中身も説明していない。Webを見ると、次世代型多元的テレビ会議などという提案はあるようだが、
http://www.rso.titech.ac.jp/innovative/pamoh2006/makoshi2006.pdf
それほど、革新的ではない。

A君:いずれにしても、次回以降に徐々に説明ということです。

B君:超リアルなバーチャルという形容詞は、そもそも自己矛盾。

A君:Webでバーチャル海外旅行とかで検索すると、海外各地のWebカメラのページが出てくるだけ。これでは、何も面白くない。

B君:それを乗り越えるのがIT技術ということ。

A君:海外旅行は、このところ燃料の高騰もあって、結構値上がり気味。それでもまだなんとか実体験ができますが、今後、そんなこともできなくなるのではないか、ということで、この超リアルなバーチャル海外旅行は、10年後の実現を目指すもの。説明はこれも後日。

C先生:とうことで、説明が行われないものが多いが、冒頭に紹介した本の中身は、ETCが環境にやさしいとか、上述のテレビ会議とか、まだまだアイディアが少なかったということを実証している。5年間で環境問題がより地球規模化し、特に、温暖化対策に徐々に重点が移ってきた。

A君:その本の最後には、未来展望の記述があるのですが、そこで強調されていることは、IT技術が電気の大食いだということ。そのため、もっと省エネの機器を開発しないと、ITが環境を破壊する可能性があると指摘しています。

B君:最近のインターネットだと、YouTubeのような動画サイトがかなり一般的になってきて、データの伝達量が莫大になりつつある。これらの情報伝達をスムースに行いつつも、エネルギー消費があまり増えないような革新的な技術の開発がやはり必要不可欠だ。

C先生:未来展望は常に重要だが、今回取り上げた本の内容を検討しても、環境分野での変革が非常に速いことを実感させられた。環境分野、特に、先端的な環境分野は、単行本を出すべきではないのかもしれない。すぐに、陳腐化してしまう。しかし、一方で、哲学的な思想も余り進化もしないが、人々の考え方もなかなか変わらない「温暖化対策」という言葉を聞くと、「経済減速」という反応しかできない産業人がまだまだ多いのが現実だ。実際には、世界全体としての経済規模が減少する訳ではなく、新しい産業構造への変革が起きるだけなのだが。このような理解を得るためにも、新しいアイディアを次々と出していくことが重要だと思われる。