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 生物多様性と人間活動    07.18.2010
     




 本年10月に、名古屋で生物多様性条約のCOP10(Conference of the Parties) が開催される。あわせて、遺伝子組換えに関するカルタヘナ法のMOP5(meeting of the Parties) も開催される。

 7月17日の夕刊、18日の朝刊には、モントリオールで行われていた準備会合が不調に終わったことが報じられている。

 先進国と途上国の意見の違いは大きい。生物資源あるいは遺伝子資源が豊富だと考えられているのは、主として途上国である。日本は例外的に極めて豊富である。

 遺伝子資源が豊富な場所を意味するホットスポットという言葉があるが、日本も立派なホットスポットである。それは、森林が多いことがその基本的な理由である。

 先進国と途上国の意見の対立は、遺伝子資源へのアクセスとそれによって生ずる経済的利益の分配に関する原則について合意ができないことにあるが、その基本的な情報は、昨年、すでに本HPで記述してある。

 今回は、もう一度、基本から考え直したい。すなわち、

(1)そもそも生物多様性とは何か。
(2)その重要性をどのようなスタンスから検討すれば良いのか。
(3)生物多様性に配慮した人間活動とはどのようなものなのか。
(4)地球温暖化などとの関連をどのように考えれば良いのか。

 いずれも、簡単なことではない。まず、定義そのものも良く分からないのが、この生物多様性という言葉だからである。

 今回、この記事を書くきっかけとなったのは、次の本が出たからである。

 「生物多様性とは何か」、井田徹治著、岩波新書1257、2010年6月18日初版

 井田さんは、共同通信社の記者である。国連大学に所属したいときに、色々な会合に出席して下さったので、しばしばお話をする機会があったが、このところご無沙汰である。
 なかなかの良書だと思うので、お薦めである。是非ともお読みください。

 今回のHPは、連休で気楽なためか、記述が非常に長い。



C先生:生物多様性ということについて、ジャーナリストとしての見解を述べる新書が刊行されたことは、極めて望ましいと思う。これまでも生物学者などが解説書を書いているが、やはりジャーナリストだけあって、明快だし、誰にでもわかる本の書き方ができている。書き方も極めて中立的で、この手の本でしばしば見られる感傷的な記述が無いので、読みやすい。

A君:まえがきは、築地市場から始まります。クロマグロが並んでいる。1日に取引される魚は17億9千万円。

B君:この本のスタンスが、もっともよく分かるまえがきの主題だとも言える。生物多様性と言いつつも、実は、食料という言葉で表現しているものが、すべて他の生命、他の生物であるという現実をどう考えるのか。

A君:菜食主義者にしても、食べているものは、やはり他の生命、他の生物。人間も地球生態系の一部であるという認識なしに、キレイ事を言っても全く意味が無いということを認識するには、毎日食べているものを認識することから始めるのが、もっとも妥当です。

B君:世界中から海産物が来ている。イカはイエメンやオーマン、タコはモーリシャス、クロマグロはマルタやクロアチアやスペイン、エビはインドネシアやベトナム。

C先生:日本人は、世界の海産物を買い漁っているということだったのだが、このところ、中国の経済力にこの面でも負けている。要するに、買い負ける。高すぎると買えないというのが日本の現状。

A君:井田氏は、生物多様性が今注目されている最大の理由は、現時点で、「それが急速に失われているから」だと述べています。まさに、その通り。地球生態系の最上位にいる人間が、その活動を拡大すると、それは、人間を頂点とするピラミッドのすべてに影響を与える。

B君:一方で、生物多様性保存ということと関係の無い非難が、生物多様性保存という言葉を借りて、世界の各地で起きている。
 まずは、オーストラリアで起きている日本の調査捕鯨に対する非難。先日、IWCが議長案をまとめようとしたのに、最後の最後に、オーストラリアが国内の政治的な理由で、そのまとめに抵抗した。

A君:日本だけでなく、世界中の政治というものが劣化している。オーストラリアのクジラも、国民の人気取りのひとつの手段。

毎日新聞の記事より:「オーストラリアのケビン・ラッド首相(52)は6月24日午前、自ら党首を務める与党・労働党の議員総会で辞任を表明した。後継党首にはジュリア・ギラード副首相(48)が選出され、同国初の女性首相に就任した。豪州では年内に総選挙が行われる見通しで、労働党は支持率低下に苦しむラッド氏に代わり、国民に人気の高いギラード新党首の下で態勢の立て直しを図る。
 ラッド政権は先月末、南極海での調査捕鯨廃止を求めて国際司法裁判所に提訴。提訴は前回総選挙の主要公約の一つで、国民の反捕鯨感情に訴えて支持率向上を狙ったが、人気回復にはつながらなかった。」

B君:オーストラリア人は、牛をあれほど輸出していて、そして、クジラ・イルカはダメだというのだから分からない。いかなる生命についても、再生不能・絶滅の危機が無い範囲での捕獲は、食物連鎖のピラミッドの最上位にいるヒトというものの本質だと思って許容するしかない。

A君:南氷洋の調査捕鯨にしても、資源がどうなっているかを調査せよとIWCが言うから調査している、というのが日本の立場。単に数だけでなく、群れとしての特性がどのようになっているか、などという疑問に答えようとすると、多数のクジラを対象にすることになる。余り意味が無い調査だと思う。

B君:南氷洋の調査捕鯨は、そろそろやめにして、古来の食文明の形態である沿岸捕鯨を再生不能・絶滅という危機が来ない範囲内で行うことを許容すれば良い。これがIWCの議長が狙っていた方向性だったのだが、オーストラリアがその合意を壊した。

C先生:まだ、目次の紹介もできない状態で、随分と話が飛んでしまった。

A君:はいはい。目次ですが、
第1章:生物が支える人の暮らし
第2章:生命史上最大の危機
第3章:世界のホットスポットを歩く
第4章:保護から再生へ
第5章:利益を分け合う−条約とビジネス
終章:自然との関係を取り戻す


B君:第1章は、様々な命が余り意識しない形でヒトの生活に貢献しているという例示。
例示その1:ハゲワシが消えた。それは、動物用の医薬品(消炎剤)ジクロフェナクが原因だったのだが、そのために、ハゲワシの機能である「死肉などの廃棄物処理業」を果たす役割も消えた。そのため、野犬やネズミが急激に増えた。狂犬病が増えたのも、そのためかもしれない、というインドの話。

A君:ジクロフェナクの副作用ですが、どうも、腎不全を起こすためとのこと。Wikiからの情報で安易ですが、パンジャーブ州では、すでに使用が禁止されていて、ハゲワシが復活をはじめているとか。となると、因果関係はかなり明確になっているということなのでしょう。

例示その2:中国での「四害追放運動」。スズメは農作物を食べるので、害鳥であるとして、ネズミ、ハエ、カとともに追放の対象となった。たった数日で、北京市だけで80万羽のスズメが捕獲された。その結果起きたことは、農作物の虫害の増加であり、全国的に大減収の原因となった。

B君:スズメは日本でも減っていると言われている。しかし、その実態は、こんなことらしい。
http://biology-ee.iwate-med.ac.jp/osamu_mikami/chunichi-shinbun.html

A君:三上氏の「もし身の回りからスズメがいなくなったら文化的な意味での損失が大きいように思えます」、という指摘になかなかの含蓄がある。

B君:三上氏は、「マングース(沖縄と奄美に持ち込まれ昔からいたさまざまな生きものに悪い影響を与えています)を駆除するのは可愛そうだから、駆除するのを止そう」という考え方もありうると主張している。生物多様性の保全とは、なかなか難しい。

C先生:外来種は、絶対的に悪なのか。カミツキガメはすでに悪の権化になっているようだが。

A君:外来種は無条件に悪だから人工的に根絶すると決めたら、日本の生物の何%がなくなるのだろうか。

B君:むしろ、何が本当の固有種かを議論しなければならなくなる。

C先生:単にペットショップの経済的な効果を守るために、禁止されている生物を除けば、何を輸入しても良いというのは問題。ペットには、その種類に一定の限度を設けるべきだ。

その他の例示:鳥の種まき、ミツバチの消失、ハリナシミツバチとバニラ、ダーウィンのラン、自然の授粉、などの話題が取り上げられている。もしも、授粉の利益を計算したら、世界で、年間19兆円になるという。

A君:そして、生態系サービスという一般的な概念の説明をしている。
 生態系サービスとは、「供給サービス」、「調節サービス」、「基盤サービス」、「文化的サービス」の4種類に分けることが普通。

B君:「基盤サービス」が要説明か。植物が光合成を行って、あらゆる生態系の基盤を作っていることをこのような言葉で表現している。陸上の植物は、年間1320億トンのデンプンなどの栄養分を生産しているという。これを「一次生産量」と呼ぶ。

A君:ちなみに、世界の穀物生産量は、大体、22億トンぐらい。その他の食用油、さとう、イモなどを全部含めた農業生産が70億トンぐらい。

B君:大部分の「一次生産量」は非食料だということになる。

A君:答えはそれで良いのですが、本当のところを考え始めると、それほど簡単ではないように思いますね。
 IPCCに採用された陸域の「一次生産量」は59.9〜62.6[PgC/year]だった。炭素をセルロースに換算するために、C6H10O5と仮定して、変換係数を2.25倍とします。すると、134.8〜140.8となります。PgC(ペタグラムカーボン)は、GtonC(ギガトンカーボン)ですから、1348〜1408億トンとなって、井田氏の1320億トンと大体一致するのですが、食料と呼ばれるものには、水を含んでいますよね。多少なりとも。

B君:それはそうだが、穀物の平均含水量は30%ぐらいのものではないか。木材の含水量は、どうだろう50%ぐらいか。まあ、誤差50%倍と考えれば良い。

A君:生態系サービスの経済学なる節では、様々なサービスの総額が、33兆ドル(環境白書によれば16〜54兆ドル)にもなるというコンスタンザによる計算結果を説明しています。

B君:最大の効用は、水の浄化、淡水資源の調整機能。

A君:生態系サービスは、経済学的にはフローのサービスだが、グレッチェン・デイリーの自然資本の考え方も紹介されている。具体的な数字としては、WWFとユトレヒト大学の数値が紹介されています。

B君:このあたりの実感を持つのはなかなか難しい。そのために、アマゾンの熱帯林といった特定の地域の生態系をその代表選手として指摘することが多い。となると、その地域だけが特殊で、その地域だけを保全すれば良いといった短絡的な考え方になる。

A君:絶滅危惧種もそうですね。鳥類だとオオタカ、オオワシ、さらに、ヤンバルクイナなどが有名ですが、実は、環境省の絶滅危惧種になっている鳥類だけでも、92種類ぐらいある。すでに絶滅したとされているものが鳥類だけで13種類。

B君:絶滅というものをどう考えるか。これが重要な課題だが、それは第2章にあるみたいだ。

A君:最初の例示がカワイルカ。中国長江に生息する淡水のイルカであるヨウスコウカワイルカは、2006年に絶滅が確認された。

B君:絶滅は、地球の歴史では必然でもあった。

A君:E.O.ウィルソンによれば、地球上では、これまで5回の大絶滅があった。最後は6500万年前の恐竜の絶滅で、極めて有名。大型の隕石(小惑星)が地球に激突したためだとされている。

B君:恐竜が絶滅したために、哺乳類が進化を始めたとも言える。

A君:だから、絶滅するから絶対にダメというものでなくて、非常に短期間内に、しかも、人間活動がその原因となって、急速な絶滅が起きているということは、問題にせざるを得ない。

B君:ヒトがはびこりすぎたのが、大きな原因。一般的には、乱開発、外来種、気候変動などがあるが、やはり圧倒的に自然を人類が支配してしまったのが問題。

A君:ウィルソンによれば、「(人類は)陸上植物が有機物質として捉える太陽エネルギーの20〜40%を独占している」、と述べた。

B君:さて、どうやって計算したのだろう。最大の有機物質利用は、木材だろうか。

A君:森林からの木材の切り出し量は、FAOによれば、
http://foris.fao.org/static/data/fra2010/KeyFindings-en.pdf
”At the global level, reported wood removals amounted to 3.4 billion cubic metres annually,”となっていますね。

B君:34億立方メートル。簡単のために比重は1として、34億トン。含水量を40%程度とすれば、セルロース換算でエイヤで20億トンぐらいか。

A君:どうやら食料の方が、資源収奪量は大きいようですね。井田氏の1320億トンと比較すると、まあ、全体として10%ぐらいがヒトによる資源収奪率と考えるべきではないだろうか。

B君:アフリカなどでの薪炭用としての資源利用は含まれているのだろうか。良く分からない。それに、人工的に改変した土地の割合を資源収奪率とするのが正しいのかもしれない。

A君:手付かずの自然など、残っていませんよ。しかし、世界中のどこを見ても、もと森林だったところは、現在草地になっていますからね。

B君:確かに、歴史的に見れば、特に、米国などはひどいものだ。1620年にメイフラワー号が米国に到着したとき、中西部の一部の乾燥地帯を除けば、米国全土は森林だった。ところが、現在、森林などはほとんど残っていない。

A君:どこかGoogle Earthで見てみますか。イリノイ州あたりからスタートして、コロラド州のデンバーぐらいまで、低空飛行で飛んでみると、本当に自然=森林を破壊して農業をいかに進めたかが良くわかります。

B君:スマトラ島、あるいは、別名だとカリマンタンというと、熱帯雨林のジャングルだというイメージを持たれるだろうが、やはりGoogle Earthで低空飛行をしてみると、特に、マレーシア領の開発は余りにもひどい。

A君:やはり現在進行中の第6の絶滅は、かなりヒドイと言うべきでしょうね。やはり、基本的な考え方を多少とも変えるべきなのでしょう。

C先生:しかし、そう簡単ではない。地球温暖化が問題になると、化石燃料の代わりに、バイオ燃料を使おうという話になる。先程低空飛行をした米国中西部では、トウモロコシからバイオエタノールを作っているが、それは、決して温暖化防止にはなっていない。ほとんど同じ量の化石燃料を使って、単に、バイオ燃料に変換しているだけなのだ。それなのに、なぜ、こんな馬鹿なことをやるのか。それは、ブッシュ元大統領の選挙地盤だからだったのだ。農家を金持ちにさせることが、政治家にとって政策と呼ばれて実行される。どうみても、これが元凶だと思う。

A君:農業だけではないのですよね。井田氏の著書の第3章では、世界のホットスポットを歩くとなっています。ホットスポットとは、生物多様性が豊かな土地。米国のノーマン・マイヤーが言い出した。その一例として、ニューカレドニアのニッケル鉱山の話が出てくる。

B君:鉱山と自然破壊か。ニューカレドニアのニッケルは、ラテライト鉱と呼ばれる酸化物系の鉱石で、これは、地表の浅いところに存在している。だから、採掘すると地表を剥ぐしかない。

A君:これも、Google Earthで見ると大変に興味深いですので、是非。場所は、-22.310538,166.916313 を検索してみて下さい(普通の検索と同じ方法で可能)。

B君:ニューカレドニアは、このような重金属含有量が多い土壌なので、それだけに、妙な植物が生息している。

A君:ホットスポットの一般論としては、マダガスカル、ブラジルのセラード、インドシナ半島、そして、日本について、井出氏は記述をしている。

C先生:ここまでが現状分析といったところで、第4章以降が、解決法の提案となっている。まずは、保護だけではダメで、再生を目指すべきだということ。

A君:中米ベリーズのジンベエザメの再生の話。アグロフォレストリーの話。スリナムの森林保護の話。テナガザルの人工繁殖の話。砂浜再生の話などが出てくる。

B君:保護区を作ること。これが大切。しかし、それだけではダメで、再生をすると同時に、保護地域を増やすことが重要。

A君:今回のCOP10では、先進国は15%を保護区にせよと言っている。しかし、ヨーロッパで、国土の15%を保護区にせよといって、できるのだろうか。もともとは、天然林だったはずなのだから、歴史を遡るべきだとも言える。

C先生:しかし、またまた経済を優先すると、それができない。ニューカレドニアの一部の人々は開発を優先すべきだと述べると同時に、「自然保護はフィジーなどの貧乏な国でやれば良い」と述べているらしい。

A君:ニューカレドニアはフランス領なので、GDPのデータが世界銀行などには出ていない。CIAのデータにはあって、ひとりあたりのPPP換算で、$15000。一方同じソースだと、フィジーは$3900。

B君:フランス領というのはそもそも問題だな。アフリカなどでも、フランス領では、収奪の限りを尽くしたという歴史がある。

A君:同じような資源国でも、ボツワナが$13100、南アフリカが$10100。比較的金持ちだけど。

B君:ところで、露天掘りというものは、確かに規模は大きいのだが、面積だけからみれば、そのインパクトは余り大きくない。

A君:まあ、確かに。世界最大の銅山としての露天掘りは、米国ユタ州のビンガムとされている。東西6km、南北9kmぐらい。しかし、本当に最大なのか?
 インドネシアのニューギニア島にあるGrasberg露天掘り。銅山ですが、金なども取れる。Google Earthでは、雲が多い写真なので、良く分からないのですが、どうも長さが20kmぐらいありますね。ただし、これは本の一部みたいで、JOGMECの記述によれば、
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/08_06.html
100kmに及ぶとか。

B君:まあ、100kmでも、農地と比較すれば、確実に小さいのだが、質的に見れば、完全な破壊であることに間違いはない。

A君:農地だって、現在、アマゾンが農地になることを心配しているのですから、同じようなものですよ。

B君:米国のように、歴史的に古いものは許容されて、アマゾンのような未開の地を農地にするのは許容されない。これが、やはり、生物多様性の根源的な問題点だ。先進国と途上国との対立は根深い。だから、生物多様性条約のCOPも、なかなか合意に至らない。

C先生:第5章の利益を分け合うということの難しさがそれなのだ。地球温暖化だって、ほとんどタダだった石油をふんだんに使って経済成長をしたのは、日本までだ。あるいは、韓国までと言うべきかもしれない。中国は、今後、エネルギー価格の上昇が必須の情勢の中で、経済成長をどうやってやるか、という問題が大きい。

A君:いずれにしても、利益配分は難しい。それにアクセスを保証しなければ、利益も出るはずもない。

B君:細菌類から医薬品ができるというのは、歴史的な事実だが、このところ、その速度は落ち気味。しかし、途上国は、それを過大に期待しているところがあって、非現実的な対応を迫ってくる部分がある。

C先生:今後、どう対応をするのか。それがビジネスになるという記述が井田氏の著書の最後の部分になる。

A君:紙で言えばFSC認証などですね。二酸化炭素で言えばオフセットがありますが、これを生物多様性に拡張した「生物多様性オフセット」と「クレジットバンク」。二酸化炭素のCDM(Clean Development Mechanism)のCをGreenのGにしたGDMなどなど。

B君:今後、日本企業もこのような対応に追われることになるのだろう。

C先生:そろそろ結論に行きたい。最初に述べたように、今回は、こんなことを議論する予定だった。
(1)そもそも生物多様性とは何か。
(2)その重要性をどのようなスタンスから検討すれば良いのか。
(3)生物多様性に配慮した人間活動とはどのようなものなのか。
(4)地球温暖化などとの関連をどのように考えれば良いのか。


A君:(1)のそもそもですが、なかなか定義が難しい。個別種の絶滅から、外来種などがしばしば問題にされるけれど、個人としては、むしろ土地利用をどのようにするか、という問題として捉えたい。鉱山開発を行うのであれば、その代替地として、すでに生態系が破壊された地域の自然回復を義務化するような方向性。

B君:鉱山開発のように、比較的地域が狭ければ良いが、農地開発だとどうしようもない。米国の農地の15%を森林に戻せといった要求をするのか。アマゾンの森林を保全するだけでは駄目だ。

A君:しかし、土地利用を根幹に据えた考え方に替えないと。絶滅危惧種の場合でも、代替地という考え方で対応することが多いのだし。


B君:全く別のところに保護区を自前で作るというのは理論的にありうるが、農業だと難しい。

A君:結局、アマゾンの森林は切られることになる。これが結論になるのだろうか。だいちというJAXAの衛星が、アマゾンの森林の見張り役をやっている。その詳細をもっとJAXAは発表すべきだ。
 Google Earthでも、-9.914744,-63.039551 あたりを見ると、林業が大変に盛んであることが一目瞭然で分かる。

B君:そろそろボリビア国境という地域だ。相当な都市化をしているが、やはり経済活動が盛んに行われているということなのだろう。

C先生:我々の共通の見解として、やはり、大規模な土地利用というものをどのように考えるのか。開発行為を行うのなら、多少の規制をしないと無理だということになるか。しかし、それには、すでに開発を済ませてしまった先進国が資金をある程度出す必要があるだろう。

A君:先程の地域の森林伐採と思われる空き地は、長さがkmオーダーになる。これだと、残っている樹木からの種子が飛ぶ距離を遥かに超えていて、自然再生が難しい。一旦、伐採するのはある程度仕方がないとしても、ある期間内で再生することを条件にすることは必要不可欠。

B君:ラオスのような地域だと、焼畑農業を行っても、10年ぐらい放置すると、かなり元の状態に戻る。それは焼畑の規模が、小さいからだろう。このあたり 20.397491,101.822319 に見えるのが、焼畑の跡地ではないかと想像するのだが、森林が失われる個々のサイズは100m程度。

A君:斜面が急なこと、さらには、土壌の厚みなども影響しているような気がする。

C先生:そろそろ次だ。(2)その重要性をどのようなスタンスから検討すれば良いのか。

A君:ひとつは、生態系サービスという考え方なのですが、それは合理性もあるように思うのですが、むしろ、絶対的な価値というものを組み込んだ議論が必要なのではないか、と思いますね。

B君:絶滅危惧種といった個別論もある程度重要だが、やはりその地域の生態系全体を支配しているメカニズムをなかなか知り得ないということから、ある程度の範囲をマスとして守るということの重要性を絶対的な価値に組み込む必要がある。

A君:基本的な原則は、やはり再生可能な範囲内での利用。それには、再生を常に考えた利用速度を守ること。それに、どこかに、手付かずの地域を保全しておくこと。できれば、できるだけ多くの場所に。すなわち随所に。

B君:やはり再生速度と保護地域というものを合意することになるのだろうか。

A君:人工的な再生も重要なのですが、単一樹種の植林や水田、あるいは、牧草地のように単一生態系にすることは、必ずしも十分ではないのでは。やはり多様性を考えると、ある部分は残しつつ、ある部分では植林ということになるのではないだろうか。

B君:やはり土地利用のプランの立て方に、ある種のガイドラインを作ることか。強制する方法も含めて。

A君:再生というものを米国の大規模農地のようなところで実験すれば良いのにと思いませんか。

B君:米国は、そんなことを言われるのが嫌で、生物多様性条約を批准していないのではないか。建前上の理由は、これとは別で、ブッシュ元大統領は、「生物工学の進歩を遅らせ、アイディアの保護を阻害する」と述べたのだが。

A君:そうかもしれない。米国ほど見事な自然破壊は世界中にも無いので。

C先生:それではつぎ。(3)生物多様性に配慮した人間活動とはどのようなものなのか。

A君:ハーマン・デイリーの「再生速度の範囲内での利用」が原理。

B君:それを具体化する必要がある。やはり土地利用なのではないか。大規模な土地を一気に改変してしまうのは確実に破壊と言えるのではないか。

A君:やはり土地利用をそれなりにすること。大規模地域を分ける。再生を考える土地。保護地域にする土地。利用する土地。鉱山などだと、余り顧みられそうもない提案ですが。

B君:残念なことに、鉱山は、途上国にあって、どうしても経済優先的な考え方になってしまう。

A君:やはり先進国が見本を示す必要があるのかもしれない。資金援助の話だけでなく。

C先生:最後だ。(4)地球温暖化などとの関連をどのように考えれば良いのか。

A君:これは、生態系にとって、特に”移動できない植物”にとっては、脅威になりうる。やはり、温暖化の速度を適切な範囲内に抑える必要がある。同時に、農業などは、未来を予見し、対策を練っておく必要がある。

B君:鹿児島あたりでは米作はできなくなると言われている。品種改良などを行えば克服できるのだろうか。

A君:同様のことが生態系にも言える。何か、対応をすれば、ある種が別の種に変わって、全体としてはなんとか維持をするという形式を実現できる可能性が無いとも言えない。

C先生:そのあたりの学問が全くできていないように思うのだ。今回、文部科学省は、気候変動適応策の提案を求めているのだが、生態学者からの提案がほとんどない。たまにあっても、何か大きくピントが外れているものばかり。

A君:やはり、全体として、何が変わらないと、生物多様性という複雑なものは、守ることができない。

B君:経済最優先主義は、その最たるものだが、変えるが難しいという意味でも、最たるものだ。

C先生:そろそろ結論か
 この10月に名古屋で行われる生物多様性条約のCOP10がどうなるか。これは大きな国民的な関心事であるべきなのだが、どう考えても、そうなっていない。それは、日本の生物多様性保全という概念が、自然保護という名称を使用しての個別種の保護に偏りすぎているからではないか、と思う。このような理解では、「自然を大切にしましょうね」、といっても、生物多様性の保全などはできる訳がない。やはり、土地利用との関係をもっと中心的な課題として考え、どうしたら、持続的な利用になるのか。これを中心的に考えていく必要がある。
 日常生活と生物多様性は無関係だと思われてしまうことも、ひとつの問題点。実際には、食糧生産というものが、最大の自然破壊行為を伴っていると考えなければならない。
 農薬が環境破壊だからと言って、有機農法をやっていれば良いということではない。有機農法は、一般に土地生産性が低いから、より多くの農地を必要とする。したがって、土地利用の面から言えば、自然破壊の責任は有機農法の方が大きく、農薬を使用しているという面から言えば、通常の農業の方が責任が大きい。要するに、有機農法は、生物多様性の保全に有効だと簡単に結論するのは不可能。
 今回のCOP10/MOP5を遺伝子組換え反対を主張する場だと考える人々も居るが、すでに自然が完全に破壊された米国で実験をやってもらうだけなら、余り問題は無いのではないか。日本に導入するのは反対。それは、種子産業を米国に乗っ取られるから。遺伝子組換え食品が健康に悪い訳もない。むしろ、アレルギーなどを含めて、安全性の確認がされているだけ、品種改良による新しい野菜よりも安全性は高いだろう。
 ただし、油産生藻類を人工生命手法によって合成しようとするエクソン・モービルなどの動きは、警戒感をもって注視する必要がある。これは、地球滅亡に至る試みかもしれないので。
 いずれにしても、どんな農業をするか。どんな食料をどのように生産し、どんな食事をするか。これが生物多様性との関係でより深い議論が行われることを期待したい。
 それだけではない。ある種の鉱山は、面積はそれほどではないものの、破壊の程度という観点から言えば、生物多様性にとって、大きな脅威である。銅などの有用金属は、家電などに使われて、日常生活を便利にしている。新たに金属資源を使わないで済ませること。それには、まず、できるだけ長い間使うこと。使い終わったら、リユースに回すか、廃棄する場合にはリサイクルを行うこと。こんなことが生物多様性の保全に貢献していることをもっと理解すべきではないだろうか。
 いずれにしても、紙、木材などはそういう理解がされているだろうが、食事、家電、薬品類など身の回りの製品が、特に食事が生物多様性と極めて密接に関連しているという事実を知るべきである。