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  理想的なゴミ処理法とは  05.25.2003



 

 このHPは、明日のための準備である。明日26日、このような題目での講演を依頼されている。このような問題に答えを出すのは、結構難しい。正しい現状認識が必要なのだが、その現状にとらわれ過ぎると、答えがでない。現状を離れて、なにか理論的な根拠を元に、未来予測が必要だ。しかし、これも何が正しい理論なのか、その論拠が難しい。


C先生:こんな題目で講演をすることになった。しかし、そもそも何を話すべきか、まだ決まっていない。ちょっと付き合って貰いたい。

A君:環境問題の場合、正しいかどうかの判断だって難しいのに、理想的とは何かと言われたら、不可能に近いでしょう。経済的な効果とか、様々な要素を考えないとならないので。

B君:いや、「理想」となると、かえって答えが出せるのかもしれない。あくまでも理想なのであって、と言い訳をして、現実から離れることができるから。

C先生:ただ、「ゴミゼロ」が理想だなどということになると、その理想が実現可能か、と言われるとこれまた問題を作りそうだ。

A君:5月16日の朝日新聞に、リコーが世界の全工場で「ゴミゼロ」を達成したというニュースが載っていましたが、この「ゴミゼロ」がどのようなものなのか、検証する必要がありますね。

B君:「廃棄物」にしないで、「リサイクル」すること。これが「ゴミゼロ」の実態。ところが、リサイクル段階では、ゴミは必ず出てしまう。確かに自社からゴミは出ていないが、それ以後処理業者に渡ってから出ているゴミは、無視している。

C先生:以前にゴミゼロを実現したという企業の担当者から聞いた話だが、個人が持ち込むゴミは、持って帰って貰わないと、ゴミゼロにはならないとのこと。だから、出る方だけではなく、入る方も制限しないと。

A君:そのリコーの例でも、251種類のゴミが出ると特定されているのですが、もしも、個人がゴミを持ち込んだら、種類の限定は不可能になります。

B君:要するに、社会全体を考えたら、ゴミゼロは不可能。

A君:しかし、ゴミゼロの方向性が間違っているという訳ではない。ゴミを作らないのがやはり基本中の基本です。

C先生:市民レベルで理想的と言えるのは、問題意識を持っている市民にとって違和感の無いゴミ処理法が実現することだろうか。

A君:個人の考え方というか価値観が大きく影響しそうですから、全員が違和感を持たないゴミ処理法が存在するというのも難しいでしょう。

B君:過去のゴミの常識で、これは駄目、あれは駄目と言われたら、それは大変に困る。最低限、それは避けたい。

C先生:ゴミ問題と言っても、それは環境問題の一種に過ぎないのだから、環境問題の解決の原理原則から入るという方法があるだろう。

A君:それだって、様々な原理原則がありますね。「リスク−ベネフィット論」、「持続可能論」、「世代間調停論」

C先生:「持続可能論」も色々な意見があるのだが、最近の好みは、「この持続可能に関する議論は所詮、リスクのウェイトの掛け方に関する議論なんだ」、という解釈なんだ。これは分量が多くなるので、今回は説明はしないで使うだけ。

B君:いくつかの理論でやってみて、同じになればそれが結論になる。

A君:それでは、「リスク−ベネフィット論」、これは「リスクを最小にし、ベネフィットを最大にする」。ベネフィットとしては、利便性がもっとも一般的なんですが、健康とか長寿などを採用することも有り得ます。

B君:リスクについては、伝統的にはヒトの健康リスク。しかし、最近の動向では、生態系へのリスクや将来世代へのリスクも考えることにすれば、持続可能論や世代間調停論に化ける可能性もある。

C先生:本HPの「WHOの世界健康報告」で示したように、環境などのリスクは、日本のような先進国ではそれほど大きくは無い。命への影響という意味に限定すればだが。

A君:ですから、「リスク−ベネフィット論」で、ゴミを議論するとすれば、将来世代に関わるリスク、例えば、最終処分地の不足、資源・エネルギーの枯渇といったリスクが主な要素ということになりますね。要するに、「世代間調停論」ですね。

C先生:ということは、どの理論を使っても、大体は、同じような議論になるという結論で良いとするか。

B君:そして、方法論としては、「循環」だ。

A君:ゴミを語るには、「循環」を知ることが必要。「循環」がどのぐらい必要かを知るには、物量の概要を、そして資源というものを知る必要があって、雑学をマスターすることになりますが。

B君:まあ、そうなのだが、循環がどのぐらい行なわれているのか、今後、どんな方向なのか、先日公表された循環型社会基本計画でざっと振り返ることが必要になるでしょう。我々の議論は、ここ。

A君:そして、資源・エネルギー面でのリスクを解析するツールとして、LCAなるものを紹介。

C先生:そこででてくるのは、例によって、容器素材。ここでの結論は、リターナブルガラス容器がやはり資源・エネルギー面での優位性が高いこと。特に、20回ぐらいリユースすれば格段に低い環境負荷を実現できる。

A君:このあたりの議論を根本から理解するには、やはり材料なるものの特性をある程度理解しておく必要があります。

B君:鉄、アルミ、ガラス、プラスチック、紙、などをリサイクルという観点からまとめることが必要。

C先生:リサイクルというものの本質を分かること、これがゴミ戦略を考える際に必要な基礎知識の一つ。

A君:循環は、どうも人間の直感を拒否するところがあって、これを見やすく提示するのは難しい。そこで、物質フローを直感的に把握できるツールとして、これまでも何回か教育ソフトを公開してきました。

C先生:このアドレスからアクセス可能。RecycleEdu2.htm
 ただし、注意事項が一つ。最近になって、やっと分かったことなのだが、EXCEL2002では、セキュリティーチェックがユーザによって設定可能。マクロを実行できないというレベル設定があるので、ご注意を。いまだに、常用は2000なので、知らなかった。

A君:このソフトの欠陥は、カスケードリサイクルの環境負荷低減効果が入っていないことですね。

B君:確かに代替原料としての価値はあるのだが、その価値をどのぐらいに見積もるか、となると原理原則が無い。

C先生:次のバージョンでは入れてみようと思っている。それほど、重大な変更では無いので。価値の見積もりは、やはり資源としての価格かと思う。スクラップがいくらで取引されているか、新品の同等品との価格比を価値比較の指標にすれば良いだろう。もしも、価格がゼロならば、そこで切り離せばよいことになる。となると、現在のスチール缶などは、ちょうどそんなところなので、カスケードによる環境負荷低減効果は考えなくても良いことになるだろう。

A君:ただ、同等品というものが本当に存在し、その価格が分かれば良いのですが、スチール缶のスクラップと同等の新品というものは何ですかね。

B君:同等品があるとしたら、その価格は、鉄鉱石よりは高く、粗鋼よりは安い。代替率と呼ばれる数値は、それが分母になって、分子がスチール缶スクラップの価格。

C先生:そのソフトのバージョンアップのときに、再度議論しよう。

A君:いずれにしても、このソフトの示すところは、リターナブル容器が、循環の様々な方法論の中では最良だ、ということ。しかも10回も使えばかなり圧倒的な優位性があるということ。

B君:洗浄などによる環境負荷が高いという解釈がしばしば出てくるが、それは誤解。大体のところ、上水と下水処理を合わせても、1kWh/立米まで行かない程度。二酸化炭素発生量にして、0.35kg/立米程度ではないか。

A君:水1立米は1000リットル。1リットルあたりにすれば、0.35g。プラスチックなら、たった1gでも5〜6g出ているでしょうから。

B君:鉄でも同じぐらい。アルミのバージンなら1gで25〜30gの二酸化炭素。紙1gだと、二酸化炭素の発生は1g以下。

C先生:モノを作るのに大量のエネルギーを要する。これが第一の原則。輸送や洗浄などはそれほどでもない。ただし、自動車、エアコン、冷蔵庫、テレビのように、使用段階に大量のエネルギーを使うものもある。

A君:リサイクルをして大幅にエネルギーの節約になるのが、アルミ。それ以外のものでも多少のエネルギー節約になるものがあるが、紙の場合には、ちょっと難しい。

B君:紙のリサイクルは、森林資源の節約のために行なうものであって、エネルギー的な観点は二の次。紙のリサイクルは、トータルのエネルギーの節約にはなるが、化石燃料の消費は増える。

C先生:今回、プラスチックというものをどう考えるか。これが問題意識の一つのようだ。

A君:プラスチックが悪者になるのは、それなりに分かるような気もするのですね。コンビニなどで商品を買えば、プラゴミが大量にでるものが多いですから。

B君:しかし、遠い将来を考えたとき、プラスチックゴミを全く出さないようなシステムが合理的か、といわれると、ちょっと違うように思える。

C先生:プラスチックの有用性は、食品などの保存性を高める機能があること。もしも、プラスチック包装を全廃したら、紙などに戻ることになるが、そうなると、水分の蒸発、酸素の進入による劣化の進行、好気性細菌の活動による腐敗などが起きる。現在、プラスチック包装+脱酸素剤の組み合わせによる食品の保存状態は、かなり良いものとも言える。

A君:勿論、完全に昔に戻って、毎日買い物に行って、腐る前に使い切る生活に切り替えれば、不要ではありますが。

B君:プラゴミが始末が悪いのは事実なので、これを処理処分するために、製造者がなんらかの拡大製造者責任的な負担をすることが必要だろう。

C先生:製造者が負担、とはいっても、最終的には消費者が負担することになる。製造者といっても、包装の製造者、食品の製造者がいるし、製造者だけでなく、販売に携わる事業者も責任の一部を負担すべきかもしれない。

A君:プラスチックの原料である石油がもったいない、という議論については、石油の使用量の85%ぐらいはガソリンなどの燃料になっているので、そっちの方がもったいないとも言えますね。

B君:原料面から、バイオプラスチックに切り替えるべきだ、という議論もあるが、現状でのバイオプラスチックの環境性能はそれほどのものとは言えない。バイオプラスチックは、生分解性プラスチックと呼ばれることも多いが、いまさらプラスチックの埋立を前提とした優位性の議論は時代遅れだ。

A君:バイオプラスチックの製造エネルギーは、今のところ他のプラスチックと同様に化石燃料を大量に消費するようですから、今後の改善に期待するといったところでしょう。

C先生:以上の検討によって、理想的なゴミ処理法について議論をする基盤ができたのではないか。

A君:ゴミの場合、各論的な議論も必要なのですね。これまで容器包装が議論の中心でしたが、(1)生ゴミ、(2)耐久消費財ゴミ、(3)紙(プラ)おむつ、ペット排泄物、(4)処理困難物、(5)下水への排水、といったことを考慮すべきでしょう。

B君:生ゴミは、それほど有効な資源とも言いにくい部分がある。しかし、活用することによって、循環を生み出すこともできない訳ではない。都会のど真ん中で出る生ゴミは結構厄介だが、農業が近くに有れば、有効利用を図るのも良いだろう。生産者と流通と消費者をつなぐ輪として生ゴミを使うという考え方だ。

C先生:先日(4月26日)に出演したNHKの地球だい好きの話題の一つが、スーパーから出る野菜の生ゴミを冷蔵庫に保存していて、農協がそれを堆肥化し、スーパーは、農産物の最低価格をある程度決めて循環を保証するというものだった。この最低価格を決めるというような考え方も、フェアトレードなる21世紀型の考え方の一つで、そのきっかけとして生ゴミが使えた、という好事例だろう。

B君:耐久消費財は、「長寿命商品の開発をすべし」、「修理してでも使いたくなるような商品を開発すべし」、「できるだけ価値の高い商品を販売すべし」ということにしておく。リサイクルは最後の手段。

A君:紙おむつといっても実体は超吸収プラスチックを使った「プラおむつ」。これは衛生上の観点から焼却しかない。ペットの排泄物も同様。

B君:紙おむつは、大量の水分を焼却炉に持ち込むのだから、拡大製造者責任を果たすべき製品の最右翼

C先生:と考えると、ペットの砂は可燃性の木製か紙製以外は禁止すべきだと思う。相変わらず、固まるネコ砂としてベントナイトなる鉱物を使った砂が売られているのは大変に疑問だ。

A君:処理困難物、具体的には、ボンベ、ライター、塗料、蛍光灯などは、デポジットの対象にしたいですね。

B君:引取り義務化だけでも良いとも言える。デポジットはそれを実現するツールだが。

A君:下水もゴミ処理の一つと考えて欲しいところ。将来は、ディスポーザをという考え方も無い訳ではないですが、それには、下水道の有機物処理能力を格段に高める必要があるので、実現性は薄いです。

C先生:突然話題が変わるが、日経エコロジーのエコミシュランの対象商品として、入浴剤の研究を始めた。ゼリー状になるものがあることが判明。200g近い超吸水ポリマーをお風呂に入れてゼリー状にして、排水には、pH調整剤を使って水を放出させ、ポリマーを繊維状にするという商品だ。200gの有機物を流すのは、下水に対する相当な負荷の商品だ。

A君:あとは、どんな順番で実現に向けて目標を設定するか、ということになりますね。

B君:最近の環境問題の解決では、遠い目標から設定して、徐々に、現在に近い目標を議論するという方法が採用されることが多い。それは、現状にしばられずに、理想を議論したいからだ。

C先生:かなり遠い目標、まあ、30年後としては、
(1)リユース容器+紙素材+限定的プラスチック利用
(2)拡大製造者責任の徹底
この2項目だけにしておこう。

A君:こんな状態になっても、やはりある程度の焼却は必要。

B君:その一歩手前の目標として、
(1)すべての素材は、新品の出荷時に排出費用を負担する社会システム
その理由は、複数回使用、あるいは、リサイクルをすれば、それだけ有利になるシステム。

A君:そのさらに一歩手前の目標として、
(1)容器包装リサイクル法を市民の視点からの全面改訂
例えば、クリーニング屋からのポリ袋がなぜ包装ではないのか、材質が同じだったら同じ処理が材料面から言えば合理的。

C先生:そのさらに前の、だから三歩前ぐらいの目標として、
(1)プラスチックからのエネルギー回収、還元剤としての使用をより徹底して高効率化する。
(2)処理困難物に対するデポジット制

A君:東京都に限っての話になりますが、
(1)不燃ゴミ、可燃ゴミという言葉を消したい。

B君:「不燃ゴミ」にプラスチックのような燃やすと有利なゴミが分類され、「可燃ゴミ」に生ゴミのように助燃剤が必要なゴミが分類されるのは、確かにおかしい。

C先生:「不燃ゴミ」は、「燃えないゴミ」に、「可燃ゴミ」は、「燃やすべきゴミ」にすべきだ。そして、第三の分別として、「プラゴミ」を入れるべきだ。このプラゴミは、紙ゴミの一部を利用し、紙プラスチック燃料化して、高効率エネルギー回収用、助燃剤などに使用する。これを、付け加えて、東京都の場合には、
(2)「プラゴミ」分類の追加。

A君:プラスチックを分別するのなら、容器包装リサイクル法の枠組みの中でやるべきだ、と言われそうですね。

C先生:材質中心で分類法を決めることが良いと思う。と考えると、容器包装リサイクル法の「その他プラ」は余り望ましい分類ではない。次期の容器包装リサイクル法の検討が、来年行なわれるだろうが、それに期待。

B君:収集費用が高くなるのではないか。

C先生:本当の意味での「燃えないゴミ」は少ない。1ヶ月に1回でもなんとかなるのではないだろうか。