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  もし福島第一がこんな形だったら  04.20.2011 

    



 福島第一で起きた事態は、原発というものがもともと持っている特性を明らかにした。

 100万kWレベルの発電量を維持するために、原子炉が出している熱量は莫大である。安全係数を高くとっているため、熱の利用効率は原発の方が低く、同じ発電量の火力よりも、さらに大量の発熱をしている。

 熱源は勿論、臨界状態における核分裂という機構である。しかし、臨界状態を止めることは瞬時にできても、その後にも継続する発熱を止めるためには、外部から莫大なエネルギーを使って、冷却を継続することが必要不可欠である。

 この特性は、化石燃料の燃焼によって作られるエネルギーとの最大の違いである。化石燃料であれば、燃料の供給を止めれば、とにかく止まる。停止用のエネルギーを注入する必要はない。スパッと止めても、多くの場合、ちゃんと止まるので、問題も起きない。

 核分裂だとなぜ発熱が残るのか。核分裂では、ウラン235が2つの元素に分かれる。この際に、莫大なエネルギーを出す。分かれてできた核分裂生成物は不安定で、安定な状態になるまでに、崩壊と呼ばれる現象を起こしつつ、徐々に徐々に安定な状態になる。この間、核分裂には比較しようもない少量ではあるのだが、発熱が継続する。

 要するに、核分裂そのものは止まったのだが、燃料棒から出る発熱は、通常の運転状態よりははるかに少ないものの、まだ継続している。その発熱量は、水を沸騰させ、燃料棒の容器と水が反応して、水素を出すには十分以上の量であった。そして、燃料棒は破壊された。

 プールに貯蔵されていた使用済み核燃料ですら、かなり大量のエネルギーを注入し続けて冷却し、やっと正常な温度が保たれる。すなわち、全くエネルギーを注入しなくても、止まった状態を自然に継続できるようになるには、1年間程度以上掛かるということを意味するようにも思える。

 一方、東北新幹線は無事に止まったようである。新幹線も時速300kmといった速度で走っているのだから、停電したら無事に止まるのか、大変心配である。ブレーキを掛けるのに必要なエネルギーを外部からの電力に依存していたら、停電になれば止まらないのではないか。

 しかし止まった。非常ブレーキは、ボンベに貯めた高圧圧縮空気がエネルギー源になっているのか、それとも、モーターを発電機にする回生ブレーキも使われるのか。このあたりの情報はもっていないが、いずれにしても、止めるエネルギーもしくは仕組が最初から列車編成のどこかに組み込まれているに違いない。

 一方、福島第一のケースでは、非常用電源が津波の影響で失われた。ごく短時間、一部の装置は動作したようではあるが。予備の電源車も無かった。

 さて、このようなことを考えると、次に浮かんでくる疑問は、もし、新幹線の非常ブレーキのような発想を取り入れたら、原発の構造はどうなるのか、である。

 そこで、想像を逞しくして、こんな絵を作ってみた。題して、フェイルセイフ型の原発はあるのか?


図 フェイルセイフ型?

 基本的には地下に作られている。津波が襲ってきても、地下だし、十分な高さの防潮設備がある。蓋(屋根)を閉めてしまうことも可能。

 非常用動力などの設備も地下にある(非常用発電機のエンジンの吸排気をどうやるのか。普通なら昔の潜水艦のようなシュノーケルだろう)。

 万一のとき、いや、兆一のときかもしれないが、その場合には、水を貯めた巨大タンクと設置した地下空間の間の堰をぶち破って、水を導入し、水浸しにする。当然、建屋には、水の出入口が出来る。格納容器にも、そのような普段は閉じている水の出入口がある。しかし、圧力容器などが非常に高温だと水蒸気爆発を起こすかもしれないので、要検討ではある。

 巨大な水タンクは複数あるので、直列に繋いで水を循環することで、自然冷却もできるのでは。

 もしも、福島第一原発が、もともとこんな形であったら、少なくとも、現在の状況にはなっていないようには思える。

 もう一つは、化石燃料をすべて使い切った時代である2300年頃のカプセル型の超小型原発。街の公園の地下などに設置されている。


図 2300年型のカプセル型原発

 装置の寿命は30年で、この間、燃料は交換しないで、装置ごと交換。このようなコンセプトは、すでに東芝などによって発表されている。イメージは原子力潜水艦の原子炉。もっとも原子力潜水艦用の原子炉の核燃料は、10年ぐらいで交換するのかもしれない。

 なぜ2300年なのか。それは、30年間無交換・無故障で動くなどという技術ができるのは、2300年頃のことではないだろうか、という理由。

 やはり、非常事態用の水タンクを地表付近に持っている形。何か起きたとき、水漬けにできれば、しばらくの間、かなりの安全性を保つことができるだろう。

 ちなみに、原子力潜水艦の軸出力は6万馬力ぐらいらしい。もし発電用に使えば、出力は5万kW程度か。もしそうなら、地上の原発の約1/20ぐらいの原子炉のようだ。

 オハイオ級だと、全長170m×全幅12.8mの船体だが、原発のサイズはどのぐらい??