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新聞報道によれば、母乳からヨウ素131が見つかった。 毎日新聞の例 「福島第1原発:4人の母乳からヨウ素 民間検査会社分析」 市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」(村上喜久子代表)は21日、福島第1原発事故を受け、福島県など4県の女性9人の母乳を民間検査会社で分析した結果、千葉、茨城両県の4人から1キロあたり最大約36ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表した。 生活協同組合の組合員から3月下旬に母乳の提供を受け、千葉県柏市の女性から1キロ当たり36.3ベクレル、茨城県守谷市や同県つくば市の女性3人から31.8〜6.4ベクレルの放射性ヨウ素を検出した。福島県と宮城県の女性は、不検出か検査中という。 厚生労働省は、母乳に含まれる放射性物質の安全基準を設定していないが、検出した数値は水道水に関する乳児の摂取規制値(1キロ当たり100ベクレル)以下で、同省母子保健課は「健康への影響を心配するレベルではない」と話す。 一方、枝野幸男官房長官は21日の会見で、検査結果について「過度な心配をしなくても大丈夫な状況だと判断しているが、お母さま方は心配だと思う。念のため、政府としても一定の調査を行う必要がある」と述べ、厚労省に調査を指示したことを明らかにした。具体的な調査方法は今後検討する。 水道水のニュース その1: 千葉県と複数の自治体で構成する北千葉広域水道企業団は29日、江戸川を水源とする北千葉浄水場(流山市)で22日に採取した水から一般向けの国の暫定規制値(1キログラムあたり300ベクレル)を超える336ベクレルの放射性ヨウ素を検出したと発表した。 その2: 千葉県水道局は24日、ちば野菊の里浄水場(松戸市)と栗山浄水場(同)の2か所で23日に採取した水道水から乳児が飲む暫定規制値(1キロ・グラム当たり100ベクレル)を超える放射性ヨウ素131が検出されたと発表した。 同局は松戸市や千葉、成田市など11市の県水道供給世帯に対し、乳児の飲用を控えるよう呼びかけている。 ちば野菊の里浄水場では1キロ・グラム当たり220ベクレル、栗山浄水場では同180ベクレルだった。給水先は、野菊の里浄水場が松戸市全域と船橋市の一部。栗山浄水場が松戸、市川、船橋市の一部。 同局では、暫定規制値は長期にわたり摂取した場合の健康影響を考慮して設定したもので、代わりの飲用水がない場合は摂取してもさしつかえない、としている。 (2011年3月24日13時02分 読売新聞) C先生:今回の新聞報道のように、千葉県柏市の女性から1キロ当たり36.3ベクレル、茨城県守谷市や同県つくば市の女性3人から31.8〜6.4ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたが、このようなことが十分にあるかどうかを検討したい。 まずは、集めたデータを簡単に説明して貰おう。 A君:以下のものです。 まずは、体内でのヨウ素の代謝に関する一般的な説明。 「ヨウ素の代謝は?」 ◎標準的なヨウ素の摂取量は? 日本人は非常に多い。 1000〜3000μg/日 ◎甲状腺は体内のヨウ素の90〜99%を貯蔵。 ◎甲状腺中のヨウ素の量は、6000〜12000μgにもなることもある。 日本産婦人科学会 http://www.nutweb.sakura.ne.jp/webdemo/JIodine.htm 母乳中にはどのぐらいのヨウ素が含まれているのか、というデータ。 「母乳中のヨウ素の含有量は?」 ![]() 図 食品別ヨウ素の含有量 ◎母乳 7μg/100g ◎1日母乳を800gとすれば、56μg 出典:糸川嘉則著 最新ミネラル栄養学 http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20110408/p1 より間接的に引用 ヨウ素は、1日どのぐらいの摂取量が必要かというデータ。 「ヨウ素の必要摂取量は?」 通常の男女 150μg/日 妊婦 260μg/日 授乳中 340μg/日 日本人の食事摂取基準 国民栄養調査結果 http://nutrition.gotostyle.net/mineral/indole.html 摂取したヨウ素の代謝速度 これはイソジンクリームという産婦人科用の外用薬なので、経口摂取の場合よりも、立ち上がりが多少遅いかもしれない。大体は24時間で、ほとんどが48時間で代謝されてしまうようだ。FacebookでのT.Suzuki氏からの情報提供による。 ![]() 図 母乳中のヨウ素濃度 http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2612701N1033_1_02/ より 母乳中に含まれるヨウ素の行き先は不明のようだが、こんな記述もある。 「摂取したヨウ素の25%が母乳に?」 http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110324.pdf 以下は、暫定基準などの各種情報。 「水道水暫定基準」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000015ox9-img/2r98520000015oyx.pdf 「日本医学放射線学会」 http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=912 「放医研のサマリー第一号」 放医研の情報は分かりやすい。 http://www.nirs.go.jp/data/pdf/i13_j1.pdf B君:まずは、摂取したヨウ素の20〜30%%が甲状腺に、25%が母乳に行くとしたら、母乳のベクレル数はどのぐらいかの検討。 A君:簡単にするために、母親が300Bq/kgの水道水を2L摂取。総量が600Bq相当のヨウ素が母体に入ったとする。その25%が母乳にと仮定すれば、150Bqが母乳に入ったことになる。 次は、そのヨウ素が1日分の母乳にすべて含まれて、体外に出たと仮定。 母乳の量の推定。1〜2ヶ月で平均体重4.9kgの子の場合、一回に140mlで一日6回、2〜3ヶ月で一回160ml、として1日800mlと仮定。 母乳のベクレル数は、150/0.8=200Bq/kgぐらい。すなわち、母体が摂取する濃度の2/3ぐらいの濃度の母乳になるのか。 B君:しかし、これだと実測データよりかなり濃度が高い。 A君:となれば、ヨウ素の25%が母乳に入るという仮定が間違っているか、あるいは、摂取した量のすべてが1日で母乳に出るという仮定が間違っていることになりますね。 B君:あるいは、今回の千葉県のケースでは、摂取した水道水あるいは食物の汚染度合いが低かった。 A君:いずれにしても、福島県で出なくて、千葉県で出たということの説明は難しい。 B君:詳しいことは分からないものの、このような簡単な仮定から、数値としてありえないということではない、と結論できるだろう。 C先生:日本人は、毎日必要量の10倍近いヨウ素を摂取しているらしい。これがすべて甲状腺に貯まることは、最大でも甲状腺での存在総量が6000〜12000μgということからありえないので、ほとんどすべてが排出されることになる。こんなことを考えたらどうなる。 A君:それは、25%が母乳へという評価が過大評価だとい結論になるのではないですか。もしも、昆布をかなりの量食べていて、ヨウ素は毎日3000μg摂取している。当然、授乳期に必要な340μg以外は排出しているとしたら、90%近くを排出していることになる。残った量を甲状腺へ4%、母乳に6%と仮定すれば、600Bqのヨウ素131を摂取したとしても、36Bqぐらいが母乳にでることになる。 B君:ただし、摂取したヨウ素を1日で全部排出するという仮定の妥当性がどうか。。 A君:イソジンクリームのデータから判断すると、比較的妥当なもののように思えます。 B君:まだまだ不明な点は多いが、千葉県の女性の場合には、ここで記述したいくつかの状況の一つが起きたのかもしれない。 A君:人体影響という観点から言えば、毎日600Bqといった量のヨウ素131を摂取していると、母乳が問題になる可能性はあるけれど、今回のケースのような状況であれば、水道中のヨウ素量は急速に減少したし、たまたま食べた野菜が問題という可能性も含めて、30〜40Bqが母乳中に出たからといって、乳児の健康が問題になる可能性はない、という結論です。 C先生:いずれにしても、単発での調査では、ほとんど無意味なので、厚労省が継続的な調査を行うことが必要だろう。 |
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